魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epico10-Aシュテルンベルクの騎士~Perceval & Tristan~
†††Sideはやて†††
5月の上旬。わたしら八神家とシャルちゃんは、ミッドチルダはベルカ自治領ザンクト・オルフェンへと赴いた。その目的は、シュテルンベルク家に招かれたため。そやから今、シャルちゃんの案内で、シュテルンベルク邸のある自治領西区カールレオンへ向かってる最中や。
「ごめんなぁ、シャルちゃん。せっかくの休みやのにわたしらに付き合ってもろて」
「ううん、気にしないで。わたしも実家に用事があったしね~」
シャルちゃんの実家――フライハイト家のお城が在るんは中央区アヴァロンと南区ウィンザインの境目。シャルちゃんの用事があるフライハイト邸とは違う方角や。つまり完全な遠回り。それやのに、シャルちゃんは笑顔で案内してくれてる。
「それにしても、まさかはやて達がすでにパーシヴァル君たちと会ってたなんてね~」
「つい先日、事件現場で偶然会ってな~」
その時の事を思い返す。
・―・―・回想です~・―・―・
「――チーム八神各員、包囲陣形は大丈夫やな!」
『『『はいっ!』』』『うんっ!』
空間モニター4枚にシグナム達が映って、みんなが力強く頷き応えてくれた。そんで「マイスターはやて。被疑者グループは、10余人の人質を取って立て篭もっていますです!」リインがわたしの側で現状報告してくれてる。
そんなリインの今の格好は、リイン用に拵えた騎士服や。色はアインスとは逆に全体的に白色で、わたしやシグナムのようなオーバースカートを追加したもので、リインはすっごく気に入ってくれてる。
(人質の方たちを無傷で助け出して、なおかつ被疑者グループを1人も逃がさんようにせなアカン。さて、どうしようか・・・)
内務調査部ってゆう部署の研修を行ってるルシル君を除くわたしら八神家は今、ミッドチルダに降りて、特別技能捜査課・チーム八神に協力要請をくれた陸上警備隊101部隊の方たちと一緒にとある被疑者グループの逮捕に赴いてる。
そやけど、あともうちょいってゆうところで被疑者グループにわたしら管理局員の存在がバレてしもうて、一時的な逃亡を許して、3階建てのオフィスビルに立て篭もられた。そのうえ人質を取られてしもうた。痛恨の極みや。
「申し訳ない、八神特別捜査官。我々のミスで、気付かれてしまった」
「あ、いいえ。わたし達の方こそフォロー出来ずに申し訳なかったです・・・!」
101部隊捜査主任のジェイド・ホンダ一尉が申し訳なさそうに頭を下げた。被疑者グループに見つかったんはホンダ一尉の部下さん達やから、すごく責任を感じてる。そやけど今はごめんなさい合戦をしてる場合やないのはお互いに心得てる。
(どうする。下手に突入したら人質の方たちの身に何か起こるかもしれへん・・・!)
シャマルの旅の鏡で転送救出・・・アカン。こちらに引っ張り込む時に気付かれる。どうすればええんや。ルシル君やったらもっと上手く作戦を立てられるんやろうか。でも今、ルシル君は居らへん、頼ることは出来ひん。それにこれからの事を考えれば、ルシル君に頼りっぱなしってゆうのもアカン。
「マイスターはやて・・・?」
「大丈夫やよ、リイン」
それからわたしら八神家とホンダ一尉や部隊員の人たちと救出作戦を話し合う。そう時間は使えへん。他の建物に狙撃ポイントを置いて、被疑者を狙撃する射撃魔導師とか、拘束魔法の練度の高い魔導師とか、万が一の突入に備えて話し合ってたところで、ガシャァァン、ってガラスが割れる音が轟いた。それと一緒に男性ひとりが飛び出してきた。
「あの人は・・・!」
わたしらが追ってた被疑者グループの1人やった。さらに同じ窓から「うわぁぁ!」数人の男性が吹っ飛ばされてきた。慌てて101部隊の隊員さん達が手錠を嵌めて拘束してく。わたしはシグナム達に合流するように思念通話で伝えて、オフィスビルの出入り口の奥に姿を現した人影に警戒。
「マイスターはやて・・・!」
「リイン、ユニゾンや!」
「はいですっ!」
リイン――リインフォース・ツヴァイは、ストレージデバイス・“夜天の書”の機能の1つとしての管制人格リインフォース・アインスとは違くて、人格型のユニゾンデバイスってゆう括りや。わたしとユニゾンすることでお互いの真価を発揮することが出来る。もちろん、アインスみたく単独戦闘も行える。とは言うても今はまだわたしの支援で精いっぱいやから、今のところは予定、やな。
「「ユニゾン・イン!」」
ユニゾンを終えて、わたしの内にリインの存在を感じながら“シュベルトクロイツ”を構えて、“夜天の書”を開く。ホンダ一尉や隊員さん達も身構えて、「――他人様が大事な話をしているのに騒ぐなんて礼儀がなってないぞ。初等部からもう1度通い直すのをお勧めする」そう気だるそうに独り言を呟いてる男の人を警戒。
「あ・・・!」
男の人がオフィスの出入口から堂々と出て来た。ワイシャツにジャボ(貴族が付けてるスカーフみたいなやつ)、スラックス、革靴ってゆう格好。わたしはその人の顔を見てビックリ。リインからも驚きの感情を感じる。
(ルシル君の大人バージョン、それにオーディンさんにそっくりや! とゆうことは、この人が・・・!)
その人の髪型はルシル君とおんなじ。顔立ちは、オーディンさんに比べて確実に男の人って感じやけど。髪色は茶色。瞳は青色や。数ヵ月前、シャルちゃん家で見せてもろた写真に写ってた。そう、名前は・・・
「これは管理局・陸士隊のみなさん、お勤めごくろうさまです! 誠に勝手ながら、聖王教会騎士団・銀薔薇騎士隊所属、パーシヴァル・フォン・シュテルンベルクが片付けさせてもらいました」
ルシル君のご先祖様、オーディン・セインテスト・フォン・シュテルヴァロードさんの子孫、聖王教会騎士団の最強の槍騎士、パーシヴァル・フォン・シュテルンベルクさん。そんなパーシヴァルさんはニコッて笑顔を浮かべて、わたしらに敬礼した。
「銀薔薇騎士隊・・・!」
「あの有名な・・・!」
「ご協力感謝いたします、騎士パーシヴァル。・・・1、2班は被疑者を連行、3、4班はオフィス内の人質の救出。・・・騎士パーシヴァル。申し訳ありませんが、職務ですので事情聴取を行いたいのですが・・・」
隊員さん達に指示を飛ばし終えたホンダ一尉がパーシヴァルさんにそう伝えると、「あー、ああ、判った」渋々と言った風に応じた。とそこに「兄様・・・」か細い女の子の声が聞こえて来た。
そっちに振り向くと、出入り口の陰から顔だけを覗かせた、パーシヴァルさん以上にルシル君のそっくりさんが居った。ゴシックロリータとかゆうドレスを着た、デフォルメされたライオンみたいなぬいぐるみを抱えたわたしと同い年くらいの女の子。
「ごめんな、トリシュ。ちょっと管理局の人たちと話して来るから・・・、あ、そこのお嬢さん。そう、君」
パーシヴァルさんがわたしを呼んだから「はい、なんでしょうか?」って応じる。パーシヴァルさんは、トリシュちゃんって女の子に近寄ると片膝立ちして、「君も局員なんだよね。歳も近そうだし、良かったら一緒にいてあげてくれないか?」肩を抱いてそうお願いしてきた。
「えっと・・・」
「構いませんよ、八神特別捜査官。被疑者グループの事情聴取の際にまたお呼びしますので」
「「ヤガミ・・・?」」
ホンダ一尉からの許可も下りたことで「了解です、ホンダ一尉。騎士パーシヴァル。お引き受けします」って、パーシヴァルさんのお願いに応えることにした。そやからそう言うたんやけど、「え、あ、ああ、ありがとう」パーシヴァルさんはなんでか呆けてて、わたしへの返事がちょう遅れた。
「それじゃあヤガミ特別捜査官。しばらく妹をよろしくお願いするよ。トリシュ、大人しく待っていてくれな」
「はい、兄様。いってらっしゃいませ」
手を振り合うパーシヴァルさんとトリシュちゃん。そんでホンダ一尉はパーシヴァルさんを連れて捜査車へ向かった。そんな2人を見送ってると、「あの、ヤガミ特別捜査官」名前を呼ばれたから、「はい、なんでしょうか、トリシュ・・・さん」ってトリシュちゃんに振り返ったとき、「はやて!」ヴィータ達が合流した。
「みんな、お疲れ様。被疑者グループ全員逮捕や」
「っ!! ヴィータ様、シグナム様、シャマル様、ザフィーラ様・・・!」
「うお!? ルシルがドレス着てる!? つうか、なんでここに居んだ!?」
ヴィータの第一声はそれやった。それほどまでに似てる。でも目つきはルシル君とは違くて柔和で、髪も瞳も色違いや。そんなヴィータに「よく見て、ヴィータちゃん。人違いよ」シャマルが苦笑。トリシュちゃんは「やっぱり本物です・・・!」目を爛々と輝かせたと思えば、「あの!」大きな声を挙げて佇まいを直した。
「わたくし、シュテルンベルク家長女、トリシュタン・フォン・シュテルンベルクと申します。お会いできて光栄です。シグナム様、ヴィータ様、シャマル様、ザフィーラ様」
トリシュちゃんの自己紹介を聞いたみんなが、やっぱり、って風に納得した。トリシュちゃんは「あの、シュリエルリート様はご一緒ではないのですか?」ってキョロキョロ辺りを見回し始める。わたしは「今は居ないんです」って答える。
『マイスターはやて。ユニゾンアウトして、わたしも自己紹介したいです・・・』
「『おっと、そうやったな。それじゃあ』ユニゾンアウト」
リインとのユニゾンを解除すると、「小さいシュリエルリート様ですか!?」トリシュちゃんはまたビックリして、30cmほどのリインを覗き込んだ。するとリインは「ひゃい、違いますですー!」ササッとわたしの後ろに回って隠れてしもた。
「ご、ごめんなさい! 驚かせちゃいました!」
トリシュちゃんがものすごい勢いで頭を下げた。それを見たリインも慌てて「こちらもごめんなさいです!」トリシュちゃんの前に戻って頭を下げた。
「あの、シュリエルリート様、ではないのですよね・・・?」
「はいです。マイスターはやてのユニゾンデバイス、祝福の風リインフォース・ツヴァイです」
「リインフォース・ツヴァイ、様・・・?」
「はいです、トリシュタンさん」
「トリシュで良いですよ、リインフォース・ツヴァイ様。ヤガミ特別捜査官とシグナム様たちも、どうぞそうお呼びください」
「そ、それじゃあわたしも、リイン、で良いですよ、トリシュ♪」
「はい、リイン♪」
リインとトリシュちゃんが微笑み合って、それから「八神はやてです。時空管理局本局・特別技能捜査課の捜査官なんやけど、まだまだひよっ子。はやて、って気軽に呼んでな。そんで、オーディンさんに代わってシグナム達と一緒に過ごさせてもらってます」わたしらも自己紹介をする。
「はい。それについてはイリスから伺っています。よろしくお願いします、ハヤテ様」
「様付けとか敬語はええよ、トリシュちゃん」
「はい、判りました、ハヤテ。あの、敬語については習慣づいてしまっていて。ですからお気になさらず」
目つきは違うけど、それでも顔立ちはルシル君にそっくりやから、笑顔を浮かべられるとホンマにドキッとする。
「では、次は私が。シグナムだ。シュテルンベルク家の者とこうして再会できたこと、嬉しく思う」
「シグナム様・・・! 私も嬉しいです!」
「じゃあ次、あたしな。ヴィータだ。よろしくな、トリシュ」
「よ、よろしくお願いします、ヴィータ様!」
「次は私ね。はじめまして、トリシュちゃん。シャマルです♪ それにしても・・・オーディンさんとエリーゼちゃん、2人にそっくり♪ 会えて嬉しいわ」
「そう言って頂けると嬉しいです! ありがとうございます、シャマル様!」
「最後だな。ザフィーラだ。・・・ふむ。確かに、主オーディンだけでなくエリーゼ卿の面影もある。エリーゼ卿に負けぬほどに素敵な淑女になるだろう」
「っ! て、照れてしまいますぅ! ありがとうございます、ザフィーラ様!」
顔を真っ赤にして照れるトリシュちゃん。ヴィータが『ザフィーラ。らしくねぇじゃん。どうしたよ』思念通話でそう言いながら狼形態のザフィーラに近寄って、肘で小突いた。確かに寡黙なザフィーラにしてはなかなかの褒め言葉を送ったなぁ。みんなでニヤニヤしてザフィーラを見る。
『・・・どうやら思いの他興奮しているようだ』
ザフィーラがちょう照れてることにまた微笑ましくなる。自己紹介を終えて、話は元の「シュリエルリート様、それと・・・セインテスト家直系の御方は・・・?」アインスと、そんでルシル君の話に戻った。
「シュリエルリートのことやけど、今はリインフォース・アインスって名前なんよ」
「リインフォース・アインス、様・・・?」
アインス達が”夜天の書”の守護騎士ヴォルケンリッターやってことは、トリシュちゃんやパーシヴァルさんは知ってるんやろか。とにかく、「名前を変える必要性があってな。それでわたしが新たに名付けたんよ」って伝える。
「はあ。・・・その辺りはシュリエ――いえ、リインフォース・アインス様にお伺いしたいと思います。あの、ですから一度シュテルンベルク邸にお越しいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
トリシュちゃんからのお誘いに、「よろこんで!」わたしらみんなで応じる。そんで「主はやて、車椅子をお持ちしました」車椅子を預けてた1台の捜査車にまでシグナムに取りに行ってもろて、「おおきにな、シグナム」車椅子に座ってから騎士服を解除。続けてリイン達も騎士服を解除した。
それからわたしらはパーシヴァルさんが戻るまでトリシュちゃんとお話して時間を潰す。そんなところに『八神特別捜査官。第2捜査車へ来て下さい』別の捜査官に呼ばれた。
「了解です、すぐに行きます。・・・リイン、シグナム、ヴィータ」
「はいです」「はい」「うん」
お供はリインとシグナムとヴィータに任せる。そんで、「シャマル、ザフィーラはトリシュちゃんの側で待機な」2人にはトリシュちゃんの話し相手として留守番をお願いすると、「了解です♪」シャマルは敬礼返ししてくれて、「畏まりました」ザフィーラも受けてくれた。
「お気遣いありがとうございます、ハヤテ」
「いってらっしゃ~い♪」
シャマルとザフィーラとトリシュちゃんに見送られながら指定の捜査車に向かい始めたその時、「きゃあ!?」後ろから悲鳴が聞こえた。その声は「トリシュちゃん!?」のものや。シグナムに車椅子を反転してもろて、トリシュちゃんの悲鳴の原因を見た。
「トリシュちゃん!」
「ぅ・・く・・・」
「このガキの頭をブチ貫かれたくなかったら、いま捕まえた仲間たちを解放し、逃亡をほう助しろ!」
ザフィーラみたいに筋骨隆々って感じの男の人が、トリシュちゃんの首に太い腕を回して締め付けてて、空いてる左手に持ってる拳銃の銃口を側頭部に突きつけてた。今にも飛びかかりそうなシャマルやザフィーラ、シグナム達を「動いたらアカンよ、みんな!」制する。
「八神特別捜査官! これは・・・!」
「見ての通りです! どうやらまだ仲間が居たようで・・・!」
「局のデータベースに問い合わせたところ、あと2人ほど居るそうなんです!」
「2人・・・! とゆうことは・・・」
もう1人どこかに隠れてるか、すでに逃亡してるか。とにかく『みんな、それらしい気配はあるか?』歴戦の騎士としての勘を頼るためにシグナム達に思念通話を繋げる。
『ダメですね、よほどの腕なのか気配が感じ取れません』
『もしくは、この近くに居ないかだな』
『両方とも考えられるな』
『うむ。しかし、もう1人を捜索しようと動こうとしても・・・』
「下手なマネをするんじゃねぇぞ、お前ら! このガキの頭をブチ貫くからな! 脅しじゃねぇぞ!」
被疑者の男の人が大きな声を出して、「ぅく・・・」トリシュちゃんの首に回してる腕の力を強めた。どうすることも出来ずに被疑者とトリシュちゃんを包囲するような陣形で待機。そんな時、『問題ありませんよ、みなさん。この程度の危機を乗り越えられず何がシュテルンベルクの騎士でしょうか』トリシュちゃんから思念通話。
『トリシュちゃん? 一体何を・・・?』
首を絞められて苦しいはずやのにトリシュちゃんは強きに微笑みを浮かべた。何をするんかと思うてたら、被疑者の目にたぶん意図的な陽の光が当てられた。目を見張ってた所為もあって「ぐわっ、目が・・・!」被疑者が怯んだ。
その瞬間、トリシュちゃんは踵を振り上げて被疑者の大事なところを蹴った。トリシュちゃんを解放して目と大事なところを押さえる被疑者。あと、わたしの側に居った男性捜査官の人たちが前屈みになった。
――コード・パシエル――
その直後、轟音と一緒にわたしらの間を一筋の銀色の光が高速で駆け抜けて、「うごぉっ!?」被疑者を貫いた。そんでそのまま十数mと弾き飛ばしたかと思うと、さっきまで立て篭もってたオフィスビルの外壁に被疑者を磔にしてようやく止まった。よう見ればそれは「雷撃の槍・・・!?」やった。
「イゾルデ起動」
トリシュちゃんが、抱えたままやったライオン似のぬいぐるみの額にキスした。するとぬいぐるみの首に提げられてた金色の懐中時計が発光。光が治まると、反りの有る西洋剣2本の柄頭を連結したかのような長い弓がトリシュちゃんの手に握られてた。
「見えていますよ。弓騎士を甘く見ないでください・・・!」
――迅るは怠惰なる眠り姫――
ルシル君と同じサファイアブルーの魔力で形作られた1本の矢を、同じ魔力の弦に番えたトリシュちゃんが「もう遅いです」ポツリとそう漏らして、矢羽根を離した。そんで目にも留まらへん速度で飛んでった魔力矢。その軌跡を追うと、ここから数百mと離れたビルの屋上に消えた。
「・・・命中です。ハヤテ、あのビルの屋上に、ライフル型デバイスをこちらに向けて構えていた女性が居ました。私の魔法で今は眠っていますからしばらくは起きません」
「ホンダ一尉!」
「あ、ああ! 第1、第2班はスナイパーの確保!」
ホンダ一尉に指示された8人の捜査官が「了解!」敬礼して、トリシュちゃんの言うたビルに向かわせた。とそこに「トリシュ~~~!」パーシヴァルさんがトリシュちゃんに駆け寄って抱き上げた。
「兄様。ロンゴミアントの表面を使い太陽の光を反射させることで犯人の目を潰す、素晴らしいサポートでした。が、降ろしてください。みんなが見てます、恥ずかしいです」
「兄妹なんだから良いじゃないか~! 心配したんだぞ~!」
トリシュちゃんを抱え上げてくるくる回るパーシヴァルさんを見て、「シスコン?」ヴィータが呟いた。すぐに「ヴィータちゃん、しっ。ダメよ、本当の事でも口にしちゃ」シャマルが注意した。シスコンってゆうのはシャマルも思ったらしい。
「あぅ~・・・。あっ! に、兄様! そんなことより、シグナム様たちです!」
「シグナム様~?・・・シグナム様?・・・シグナム様だと!?」
ようやくわたしの側に控えてくれてるシグナム達に気が付いたパーシヴァルさん。トリシュちゃんを降ろして、シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラの順で見た後、「ふぉぉぉぉぉーーーーっっ!!」叫んだ。わたしら揃ってビクってなる。
「ほ、ほ、ほほほ、ほほ、本物だぁぁぁぁーーーー!」
そんでパーシヴァルさんは「感激です!」ってシグナム、シャマル、ヴィータの手を握って、ザフィーラだけには首に抱きついた。
「うわぁ、すごい嬉しいです! 本当に絵に描かれたとおりのお姿だ! シグナム様は凛々しいです! シャマル様は可愛いです! ヴィータ様は愛らしいです! ザフィーラ様はエリーゼ卿の日記に記されていた通りの狼姿、実に格好いいです! それで!? シュリエルリート様はいずこでしょう!?」
パーシヴァルさんが子供のような笑顔を浮かべてはしゃぐ。シグナム達が思い思いに「ありがとう」ってお礼を言ってる中、トリシュちゃんがそんなお兄さんの様子に「気持ちは解りますけど、もう少し落ち着いてはいかがですか?」そう言う。
そやけど、トリシャちゃんもまた興奮冷め止まずってゆう風や。そわそわしながらザフィーラに寄って行って、触れようとしてるんか手を出そうとしては引っ込めるを繰り返してる。
「トリシュタン。触れても構わぬ」
「あ、ありがとうございます、ザフィーラ様。・・・わっ、思ったよりふかふかです❤」
トリシュちゃんに撫でられて気持ち良さそうに目を細めるザフィーラ。そんな2人の様子を見て少し落ち着きを取り戻したパーシヴァルさんやったけど、「も、もしかして、この小さな子がシュリエルリート様なのか!?」リインを見て、さっきのトリシュちゃんと同じ反応をした。
「い、いえ、違いますです!」
「兄様! 彼女は、リインフォース・ツヴァイ、という方です。シュリエルリート様とは別人なんですよ。驚かせてごめんなさい、リイン」
「あ、はいです。こちらこそ驚き過ぎてごめんなさいです」
「いやいや、こちらこそ大声を出してごめんな」
リインとトリシュちゃんとパーシヴァルさんが頭の下げ合い終えた時、「八神特別捜査官。そろそろ捜査本部へ戻りましょうか。事情聴取はうちの隊舎で行います」ホンダ一尉からお呼びが掛かった。
「あ、はいっ! すぐ行きます! えっとですね、パーシヴァルさん。シュリエルリートの事や、ルシル君――セインテスト家の直系?でしたっけ・・の事は、また後日お話ししたいと思います」
「兄様。ハヤテとシグナム様たちを我が屋にご招待したのですが・・・よろしかったですか?」
「もちろん! ヤガミ特別捜査官。ご予定が整ったら、この連絡先にメールを送ってくれ。その予定に合わすから」
メールアドレスをパーシヴァルさんから受け取って、今日は解散ってことになった。パーシヴァルさんとトリシュちゃんに見送られながら捜査車に乗りこんで、わたしらチーム八神は陸士101部隊の隊舎へと向かった。
・―・―・終わりや~・―・―・
「――ってことがあってなぁ~」
「あはは。目に浮かぶよ、パーシヴァル君のリアクション! シュテルンベルク家って、聖王家の事も大事に思ってくれているけど、それ以上にオーディンとグラオベン・オルデンを敬い奉ってるって感じだから。生ける伝説となれば、誰だってテンション上がると思うもん」
シャルちゃんがそう言うと、「なんか照れるぜ」ヴィータは恥ずかしそうに頬を緩めて、「奉られるって、なんか不思議」シャマルはちょう困惑。そんでアインスは「しかし嬉しくもある」って微笑んで、「疎まれるよりかはマシだな」シグナムは唸った。
「ルシルはどういう気持ち? 直系の先祖が信奉されてるのって」
「いや、別に特別な思いは無い、かな」
「なーんだ、つまんないの~」
とまぁ、そんなこんなで到着するシュテルンベルク邸。シャルちゃん家のようなお城やなくて、洋館って感じや。大きな庭を囲う堀をぐるっと回って、庭に入るための門の正面へ。そんでシャルちゃんが門柱に備え付けられてるタッチパネルに触れた。
「こんにちはー! フライハイト家のイリスで~す。八神家を連れて来たよ~」
親しき仲にも礼儀ありって言葉を真っ向から壊すシャルちゃん。そんなシャルちゃんの挨拶に、『久しぶりだな、イリス。ありがとうな、八神家の皆様を連れて来てくれて』そう応じたのは、門扉の前に展開されたモニターに映し出されたパーシヴァルさん。
「親友だもん♪ それに、実家に用があってね~。そのついでだよ」
『そうなのか。・・・急ぎじゃなかったらイリスも一緒にどうだ? トリシュが会いたがっているぞ』
『兄様? 私の名前が聞こえたのですが、何かご用でも・・・あ、イリス! こんにちは!』
パーシヴァルさんの顔下から頭を覗かせるようにして姿を見せてくれたトリシュちゃん。表情を輝かせるトリシュちゃんにシャルちゃんも「じゃあ、ちょっとだけ」わたしらと一緒してくれることになった。
『決まりだな。いま門を開けるから、そのまま屋敷の玄関にまで来てくれ』
『お待ちしています!』
モニターが閉じると同時に門扉が左右に分かれて開いた。そんでシャルちゃんが「じゃ、行こうか」そう言うて歩きだしたから、わたしらも庭へと進んだ。
後書き
フーテ・モールヘン。フーテ・ミッタ-フ。フーテ・ナーフオント。
ようやく登場させることが出来ました、シュテルンベルク家のパーシヴァル・トリシュタン(ドイツ語ではトリスタンではなくトリシュタンだそうです)兄妹。パーシヴァルは、ルシルの遺伝子の所為なのかシスコンの気があります。トリシュタンは、弓騎士として登場させました。古代ベルカには珍しい射撃の名手という設定です。詳しくはまたの機会に、です。
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