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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico9春ランラン♪

 
前書き
春ランラン♪/意:温かな陽だまりの中で行うイベントに、ついテンションが上がってタガをを外してしまう、というたとえ。 

 
†††Sideイリス†††

「~~~~~っ、来ぃぃ~~~たぁぁ~~~ぞぉぉ~~~っ!!」

初めての学校、次元航行部から特別技能捜査課への異動、そんな慌ただしかった4月もいよいよ終わりに近付いてきた今日この頃。わたしがホームステイしてるハラオウン家、なのはの高町家、アリサのバニングス家、すずかの月村家、はやての八神家、みんな揃って花見っていうイベントへとやって来た。

「わぁ、満開だね~♪」

「散る前にお花見が出来て良かったね~」

「本当よね。もしかしたら今年は出来ないかもって思っていたけど・・・」

「スケジュールがいっぱいになる前に、リンディ提督が合わせてくれたんだよね」

「クロノも頑張ってくれたんだよね~♪」

「感謝せなアカンなぁ・・・って、おお! すごい絶景やなぁ! な、アインス!」

「はい。とても美しいです」

なのはとすずかとアリサ、フェイトとアリシア、そしてはやてと車椅子を押すアインス(リインフォースって名前は後継騎の子に受け継がれたことで、アインスって呼ぶようにお願いされた)、みんなで小高い丘から目の前に広がる満開の桜林を見て感動。
ちなみに花見っていうのは、桜っていう特定の落葉樹だけじゃなくて、梅や桃の花を眺めながら食事会をするイベントの呼称らしい。わたしたち異世界組はピクニックの一種だっていう認識。

「そう言えば参加メンバーの数聞いた? 50人以上になっちゃってるって」

「連絡網が巡り巡ってアースラや本局スタッフまで行っちゃって・・・」

「気が付けば大所帯だよね」

後ろに振り返って見ると、みんなの家族はもちろん、アースラスタッフのみんながシートを地べたに敷いたりお弁当を広げたりと準備中。お弁当は各家庭や管理局組のみんなが持ち寄って、さらには鉄板セットを使ってここで料理を作ったりもする予定。

「わぁ、綺麗です・・・!」

「お? 起きたな、リイン」

「あ、リインちゃん。おはよう♪」

「っ、お、おはよう・・ございますです・・・」

はやての膝に置かれたショルダーバッグのカバーを押し上げるようにして顔を覗かせたのはとっても小さな女の子、リインフォースⅡ。愛称はリイン。わたし達に紹介されてから1週間ちょっと経った。聴いてた通りの可愛さにわたし達みんなリインのことが好きになったんだけど、生まれたばかりってことも原因なのかちょっとおどおどしちゃってる。

「すごいやろ? 桜、ってゆう花なんよ」

「さ・・くら・・・、桜・・・憶えましたです」

目の前をヒラヒラ舞う桜の花びらをキョロキョロと目で追いながらリインが頷いた。と、1枚の花弁がリインの鼻先に触れると、「へくちゅっ」くしゃみした。もうそれだけで可愛い。なのは達もくしゃみしたリインを微笑ましく見る。

「リイン、アインス。今日はみんなで楽しもうな♪」

「は、はいです・・・!」

「はい。主はやて」

本当に幸せそうに笑顔を向け合うはやてとアインスとリインを見て、わたし達も嬉しくなってまた笑顔が生まれた。 それからお花見の準備が整うまで他愛無いお喋りをしながら桜を眺めてると、「あ、はやてちゃん。ヴィータちゃん達も来たよ!」そう言ったなのはの指さす方には、シグナムとヴィータとシャマルとザフィーラが居て、リンディ提督やクロノのところへ合流していた。

「レティ提督も一緒だね。それと、もう1人の女の人は・・・?」

「ちょっ、ヴァスィリーサ准将!? なんで!?」

「おお、リアンシェルト総部長や」

フェイトの疑問にわたしが答えたんだけど、その正体には驚いた。リアンシェルト・キオン・ヴァスィリーサ運用部総部長だった。よほどの事がない限りは本局から出られないって有名なのに。

「あの人がヴァスィリーサ准将さんなんだ・・・」

「名前だけしか知らなかったけど、思ってたより若いんだね~」

「若いって言っても・・・少なくとも30代後半で、リンディ提督よりは年上だったはず・・・」

「外見って割と当てになんないわよね、あたし達の周りに居る大人たちってさ」

わたしがそう言うとアリサが腕を組んで唸った。わたしもなのは達も「そうだね」って苦笑。リンディ提督やレティ提督、桃子さんも、子持ちとは思えない程にすっごい若い外見だもんね~。

「レティ提督とリアンシェルト総部長にご挨拶せなアカンな。アインス、よろしくや」

「あ、はい」

「みんなはどないする? 一緒に挨拶に行く?」

時空管理局が始まって以来の“無敵無敗(トップエース)”と謳われる氷結の魔導師、ヴァスィリーサ准将やレティ提督に挨拶しに行かない?っていうはやての問いに「行くよ」わたし達も挨拶に行くって答えた。人事などを司る運用部の全権限を有するヴァスィリーサ准将には、わたしやはやて達はもちろん、なのは達も少なからずお世話になってるからね。
みんな一緒に小高い丘を下って、みんなの家族と挨拶を交わしてたレティ提督とヴァスィリーサ准将に「こんにちはー!」挨拶をする。

「あら、こんにちは、みんな。今日はお誘いいただきありがとう」

微笑みを浮かべてくれたレティ提督に、「楽しんでいただければ幸いです♪」みんなで笑顔返し。そしてわたし達の視線はヴァスィリーサ准将へと向けられた。リンディ提督が「レティ。リアンシェルト先輩を強引に誘ったんじゃないの?」ボソッとレティ提督に耳打ちしたのが聞こえた。

「だって先輩、暇そうにしていたから。それに本局を出ることの条件も満たしているし、ちょうどいいかな、って」

リンディ提督とレティ提督のヒソヒソ話をしてる姿をチラッと横目で見たヴァスィリーサ准将は小さく溜息を吐いた後、わたし達に目を向け直した。

「お久しぶりです、フライハイト三士、八神はやてさん、騎士リインフォース。そしてお初にお目に掛かります、高町なのはさん、アリサ・バニングスさん、月村すずかさん、フェイト・テスタロッサさん、アリシア・テスタロッサさん。時空管理局本局・運用部総部長の、リアンシェルト・キオン・ヴァスィリーサ准将と申します」

とても綺麗なお辞儀での自己紹介に、わたしとはやてとアインスは「お久しぶりです」ってお辞儀を返して、なのは達は「はじめまして」の挨拶と一緒に自己紹介返し。そしてレティ提督とヴァスィリーサ准将は誘われるままに、大人たちに交じってお喋りを始めた。

「あとは、ユーノ君とルシル君、それと・・・」

「石田先生やな」

ユーノとルシルは、午前中は仕事ってこともあって遅れて合流する予定で、石田先生もそうみたい。でもこれ以上、花見の開始を遅らせると管理局組のスケジュールに問題が発生するって言うことで、「――テス、テス」ハウリングするマイクを片手にエイミィがマイクテスト。エイミィの隣には、なのはのお姉さんの美由希さん。2人もわたし達のように親友みたいな間柄。

「ではでは、お待つまりのみなさん! おっ待たせいたしましたーっ! 本日の幹事を担当させていただきます、時空管理局・執務官補佐のエイミィ・リミエッタと――・・・」

「高町なのはの姉で、エイミィの友人、一般人の高町美由希でーすっ!」

今日の花見の立案をしたのはわたし達なんだけど、事細かな調整はエイミィと美由希さんが買って出てくれたから、幹事っていう立場なんだよね。

「そして、今回の運営を買って出てくださいましたのが――・・・」

「管理局メンバーにはお馴染み、我らがアースラの艦長、リンディ・ハラオウン提督に、ご挨拶と乾杯の音頭をお願いしたいと思いまーす!」

「はい、みなさん、こんにちはー! 今日はとても綺麗に晴れ、お花見日和になりましたね~♪」

エイミィと美由希さんに紹介されたリンディ提督が挨拶を始めて、「――とまぁ、硬いお話しはお題目として置いといて。今日は花を愛で、食事を楽しんで、お話をしてこの楽しい時を過ごしましょうーっ♪ それでは、私たちの出会いに、そして今日という良き日に・・・かんぱ~い♪」マイクを持つ手とは逆、左手に持ってるコップを掲げて音頭を取った。わたし達はジュースに注がれたコップを、大人組はお酒の入ったコップを掲げて、「かんぱーい!」した。

「早速飲み始めたわね、うちのパパと士郎さん。ていうか、リンディさんの乾杯より早くから飲んでたけど」

「にゃはは。お父さんとアリサちゃんのお父さん、仲良しだから」

自分の父親たちのフライングに呆れるアリサとなのは。さてと、それじゃあ「はいはーい、せっかくなんで、身内同士で固まらないで、普段話さない人たちと話して交流を深めましょーっ♪」エイミィの言うように、このイベントを利用してたくさんの人と仲良くなろう、というわけで、わたし達も一旦解散ってことに。

「――挨拶回りを済ませながら食事して、それが終わったらみんなで特等席に行きましょ♪」

アリサが胸を張ってそう言うと、わたしやフェイト、アリシアにはやてが「特等席って?」小首を傾げる。ニコニコ笑みを浮かべるなのはは「にゃはは。私たちだけが知ってる内緒の場所♪」って、すずかは「すごく綺麗な場所なんだ。シャルちゃん達も気に入ってくれると思う♪」って答えてくれた。

「全部済ませたらここに集合よ。そんじゃ解散!」

そうしてわたし達はそれぞれの知人・友人に挨拶するために解散した。

†††Sideイリス⇒はやて†††

みんなと別れた後、わたしとアインスとリインは、局員やみんなの家族の人たちと改めて挨拶をして、今はクロノ君となのはちゃんのお姉さん――美由希さんが一緒に居る鉄板セットの近くで「うん、美味しい!」クロノ君お手製の焼きそばを食べてる。アインスも「美味い」って微笑んでるし。わたしの膝の上に座ってるリインも、膝に乗せたお皿から面を1本ずつ口に運んでは美味しさに頬を緩ませてる。

「はやてとアインスに好評だと、僕の料理の腕前もなかなかなんだと自信が付くよ」

「あ、それ解るー♪ はやてちゃんのお弁当をさっき貰ったけど、絶品だったよ」

クロノ君と美由希さんからの褒め言葉に「おおきにありがとうございます♪」お礼を返す。それからエイミィさんが戻って来るまで(どうやら注文だけを受けた後どこかへ行って、そのまま戻って来てへんみたい)、クロノ君と美由希さんとお話ししてると、「焼きそば取りに来たわよ~」すずかちゃんとアリサちゃんがやって来た。

「おお、すずかちゃん、アリサちゃん。ちょっとぶり~♪」

「「ちょっとぶり~♪」」

すずかちゃん、アリサちゃんと片手を上げて挨拶してると、「ああ、焼きそば6人前できてるぞ。持って行ってくれ」クロノ君がパックに作り終えたばかりの焼きそばを盛って、美由希さんが「はい、どうぞ~」2人に手渡した。

「クロノの焼きそば、美味しいって評判よ♪」

「私もさっきシャルちゃんから少し貰ったけど、すごく美味しかった♪」

2人からもそう褒められたクロノ君が目に見えて「そ、そうか」テレた。そんなクロノ君を微笑ましく見てると、「そうだ、2人とも。エイミィを見なかったか? どこで油を売っているんだか戻って来ないんだ」呆れながらもクロノ君は次の焼きそばを作るためにお肉を炒め始めた。

「さっきカラオケんところで見たわよ」

「うん。フェイトちゃんとアリシアちゃんがデュエットしていたんだけど、ノリノリで合いの手を入れてて・・・」

挨拶回りしてる時、確かにフェイトちゃんとアリシアちゃんの歌声を聴こえてたなぁ。アリサちゃんとすずかちゃんの話を聴いてわたしらは一斉にカラオケのある方に顔を向けて、目を凝らして見る。
人垣でハッキリとは見えへんけど、「エイミィ、マイク持ってない?」美由希さんの言う通りマイクを掲げて見せてるエイミィさん、そんで隣でマイク片手にはしゃぐシャルちゃんが見えた。どうやら今度はシャルちゃんとエイミィさんがデュエットするみたいやなぁ。

「美由希さん。すみませんが、あの馬鹿を引っ張って来てくれませんか」

「あ、えっと・・・了解」

苦笑しながら駆け出した美由希さんを見送って、エイミィさんと話し合う姿を見守る。そんで、「・・・あ、アカン、取り込まれた」エイミィさんに肩を抱かれて、シャルちゃんにマイクを渡されてもうた美由希さんがこっちに向いて、ごめーん、って口パクで謝ったのが見て判った。

「アリサ、すずか」

「判ってる。シャルを連れて来るわ」

「あはは・・・。うん、しょうがないよね」

野菜を炒め始めたクロノ君が俯き加減にすずかちゃんとアリサちゃんの名前を呼ぶと、それだけで察した2人がシャルちゃんに向かって駆け出した。大きく溜息を吐くクロノ君に「クロノ執務官も大変だな」アインスが同情の言葉を掛ける。

「はは、ありがとう、アインス。おかわりはどうだ? はやてもリインも」

「ありがとう。しかし私はもう結構だ。美味しかったよ、ごちそうさま」

「わたしもや」

「あ、あの、わたしは――・・・あっ」

リインがそこまで言うたところでピタッと止まった。わたしとアインス、クロノ君の3人でリインを見る。リインは桜を見上げてて、わたしらも倣って桜の木を見上げると、「お?」桜の花に紛れて枝の中に何か居るのがチラッと見えた。

「小動物でしょうか・・・? リイン、見えたか?」

「あ、いえ・・・小さな動物だというのは確かだと思うですけど・・・」

ガサガサ動いてるのは確かやなぁ。一度気になったこともあって、その姿を見せるまで見てようとしてたら、「何してるの? はやてちゃん、アインスさん、リインちゃん」戻って来たすずかちゃんに声を掛けられた。

「枝の上になんや動物が居るらしいんよ」

「リインが見つけたのだが、なかなか姿を見せてくれなくてね」

すずかちゃんとアリサちゃん、そんで連れて来られたシャルちゃんも桜を見上げる。そやけど満開の桜が見事に動物の姿を隠してる。とここで、「へぇ。リイン、飛んで確かめてみたら?」シャルちゃんからそんな提案が。

「ちょっ、八神家のお母さんとして幼いリインにそんな事させられませんっ」

「ですが主はやて。リインは融合騎としてこれから私に代わって共に現場に立ちます。今回は飛行・偵察の練習と言うことで如何でしょう」

リインをギュッと抱いて却下するとアインスがちょう困った風にそう提案してきた。リインも「わたし、祝福の風リインフォースを受け継ぐに足る融合騎だって、アインスに見せたいっ、です」わたしの手から離れてそう意気込んだ。すると「おお!」すずかちゃんとアリサちゃんとシャルちゃんが拍手。アインスも「リイン、お前・・・」感動したって風に微笑んだ。

「・・・リインの思いは解った。・・・よしっ。リイン、桜の花に隠れてる動物がなんなのか調査、そんでわたしらに報告や!」

「は、はいっ、マイスターはやて!」

すぃ~と音もなく高度を上げて行ったリインを見守る。そんでリインの姿も桜の花で見えへんくなった。その直後、「ひゃあ!?」リインの悲鳴が響いた。わたしはすぐさま首から提げてる“夜天の書リインフォース・アインス”の分身――“シュベルトクロイツ”の首飾りを手にして、騎士甲冑姿へと変身。

「リイン!」

一足飛びでリインの元へ飛び上がる。一瞬だけ桜の花に視界が閉ざされたけど、すぐに開けた。そこでわたしが目にしたんは、「リイン・・・?」が体を左右からリスとハムスター(2匹ともちょう大きいかなぁ)に挟まれて「フカフカですぅ~」とんでもなく頬を緩ませてた姿やった。

「リイン・・・?」

「はぅっ! マイスターはやて! ご、ごめんなさいです!」

わたしに気付いたリインが慌ててリスとハムスターから離れようとしたんやけど、「ひゃっ?」2匹ともリインを放さへんってゆう風にさらにギュッと抱きしめた。すると「はわぁ、モフモフです~」リインはまた頬を緩ませた。

「(なんやろ、あのリスとハムスター。野生にしては人懐っこいとゆうか・・・。ん? リスとハムスター・・・? あ、もしかして・・・)セレネちゃんとエオスちゃん、か・・・?」

「「大正解っ♪ 直接会うのは初めてだよねっ!」」

ハムスターの姿に変身してるんがお姉ちゃんの、セレネ・スクライアちゃん。リスの姿に変身してるんが妹の、エオス・スクライアちゃん。ユーノ君のお姉ちゃんに当たる子らや。これまでに通信で3回ほどしか話したことあらへんけど、最初の1回だけで親友って自負できるほどに仲良くなった。そんでいつか、直接会おうね、って約束してたんや。

「はやてー! リインー!」

「何か居たー?」

チラッとセレネちゃんとエオスちゃんを見ると、2人は器用に前脚で、しぃー、って静かにするように伝えてきた。わたしとリインでコクンと頷くと、2人はウィンクした後、枝の上から飛び降りてしもうた。

「アリサー! フレイムアイズー!」

「すずかー! スノーホワイトー!」

「え、ちょっ、エオス、あんたなの!?」

「セレネちゃん!? セレネちゃん!」

真下から感極まった4人の声が聞こえてきた。わたしは「降りよか、リイン」って手を差し出すと、「はい、マイスターはやて」リインはわたしの手の平に乗った。そんでリインを胸に抱えるようにしてわたしは枝から飛び降りた。地面に降り立ったわたしの元に「主はやて、リイン」アインスが駆け寄って来た。

「ん。・・・さて。リイン。報告よろしくや」

「はいですっ。報告します、です。桜の中に隠れていたのは、動物の姿に変身していましたセレネ・スクライアさん、エオス・スクライアさんのお2人でした。以上です」

ビシッと敬礼してのリインの報告に、「御苦労さまや、リイン」わたしも敬礼を返した後、その小さな頭をそっと優しく撫でた。そんな時、「ふふ。リインの初任務は偵察だったか」わたしらの後ろから、わたしの家族であり、想いを寄せる男の子「ルシル君!」の声がした。

「遅くなってすまなかったな、はやて」

「ううん、気にせんで。それに、ユーノ君も。こんにちはー♪」

ルシル君の隣には、なのはちゃんのデバイス――“レイジングハート”の元持ち主で、前事件の関係者の1人、ユーノ・スクライア君も一緒やった。わたしの挨拶に対してユーノ君も「うん、こんにちは、はやて」笑顔で挨拶を返してくれた。どうやらセレネちゃんとエオスちゃんを連れて来てくれたんはルシル君とユーノ君らしい。

「それと石田先生も一緒だ」

ルシル君の視線の先、リンディさんと挨拶してる石田先生の姿があった。そやから「みんなで挨拶せな行かなアカンな」とゆうわけで、思念通話でシグナム達を呼び戻す。シグナム達と一緒になのはちゃん達も来て・・・

「ちょっとぶり、ユーノ君。セレネちゃんとエオスちゃんは久しぶりだね♪」

「久しぶり、2人とも。・・・あ、アリシアははやて達と同じで直接会うのは初めてになるんだよね」

「通信だと何回か話したことあるけどね~♪」

「「そだね~♪」」

子供組みんなで再会を喜び合った後、わたしら八神家は石田先生の元へ向かうことに。その間、すずかちゃん達はお喋りして待っててくれることになった。

「そうそう。ルシル君。リアンシェルト総部長もいらっしゃってるよ。挨拶どうする?」

「っ!?」

ルシル君の顔色が目に見えて悪くなる。実は、シグナムらもリアンシェルト総部長の名前や姿が出ると、揃って警戒心を強める。前に何でか訊いたところ、わたしにはよう判らんけどリアンシェルト総部長から滲み出る管理局最強のオーラに気圧されてるってことや。やっぱ歴戦の騎士ってなると、そうゆうのに敏感になってしまうんやなぁ。

「准将への挨拶は俺ひとりでいいよ。はやて達は石田先生と挨拶を済ませて来るといい」

「「「ルシル!」」」「ルシル君!」

小さく手を振ってリアンシェルト総部長の元へ歩き出したルシル君をアインス達が一斉に呼び止めた。あまりの切羽詰まったかのような声色に、わたしやリイン、すずかちゃん達もお喋りをやめてルシル君らを見た。

「大丈夫だよ。それじゃ行ってくる」

満面の笑顔をわたしらに向けた後、ルシル君は去ってった。

†††Sideはやて⇒ルシリオン†††

リアンシェルトが居る。この言葉をはやてから聴いた時、どれほど俺を恐怖させたか。共感してくれるのは、リアンシェルトが“堕天使エグリゴリ”の1機だと知っているシグナム達だけだ。古代ベルカ時代において、“エグリゴリ”のメンバーの名前はすでに彼女たちに伝えてあるからな。
局に務めることになって数日となっていたあの日、レティ提督からリアンシェルトを紹介された時のシグナム達の驚きようと言ったら。だからリンディ提督やレティ提督に思いっきり不審がられていたよな。ま、色々と言い訳をして有耶無耶にすることが出来たわけだが。

「――リアンシェルト准将。どうもです」

リアンシェルトを遠巻きに眺めながら花見をしていた局の知人や初見の人たち(表情からして、彼女に見惚れているようだ)と挨拶を終えた後、ひとり儚い表情(のように見えるが、実際は退屈でしょうがないって感じだ)をしてひとり桜を眺めていたリアンシェルトに声を掛ける。

「ええ。元気そうで何よりです、ルシリオン研修生」

「ご挨拶に伺いました。『こんなところで何をしている? 目的はなんだ? 俺の監視か?』」

「そうですか。わざわざありがとうございます。『そんなわけがありません。レティ・ロウランに半ば拉致のごとく連れて来られただけです。監視など、そんな暇はありませんから』」

俺とリアンシェルトの視線がぶつかる。少しの間見つめ合った後、「私を見ているより、友人たちと話す方が有意義と思いますけど?」リアンシェルトが先に目を逸らし、両手で包み込むように持っていたコップに口を付け、飲み物を呷った。

「・・・ではこれで失礼します」

リアンシェルトに一礼して踵を返し、みんなの元へ向かうために歩き出す。ふと、「あれ? アイツが呑んでいたのって匂いからして酒だよな、ワインっぽい香りがしたし」チラッと背後を振り向くと同時、「きゃぁぁぁ!? ヴァスィリーサ准将が倒れたぁぁーーー!!?」悲鳴が上がった。

(あ~あ。アルコールが弱いのは変わらず、か)

リアンシェルトはアルコールに弱い。数口程度なら大丈夫だが、ある一定の摂取量を超えると突然ぶっ倒れる。今がそうだ。女性局員に看てもらっているリアンシェルトを懐かしく思いながら、「・・・和んでいる場合じゃないよな」と頭を振るって、また歩き出す。

「おーい、ルシルく~ん! こっちや、こっち~っ♪」

石田先生と挨拶を終えたはやてとアインスとリインと合流し(シグナムとヴィータはシャマルとザフィーラは残念ながら別行動らしい)、なのは達の元へ。彼女たちとこれから秘密の場所――さらに綺麗な桜を見られる特等席に向かう。遅れて来た俺とユーノ、セレネとエオスの為に食べ物・飲み物を用意してくれていたなのは達と合流を果たし、彼女たちについて行って、その特等席へ到着。

「それじゃあ、あたし達だけでもう1度、乾杯しましょ♪」

メンバー全員に手渡されていくコップ。そしてシャルが「美味しいジュースを貰ってきたよ~♪」とそれぞれのコップに注いでいく。とそんな時、ビュッと強い春風が吹き、「おっと」俺の髪を結っていた髪紐が解けてしまった。

「すまない、俺のことは気にせずに乾杯は先に始めていてくれ!」

コップを敷かれたシートに置き、靴を履いて飛ばされた髪紐を取りに向かう。髪紐は結構流されてしまっていて、見つけ出すのに少々労してしまった。が、ちゃんと、見つけることが出来た。

「失くすわけにはいかないだろうな、やっぱり。はやてから貰ったプレゼントだし」

俺のバースデープレゼントということで、はやてから贈られた髪紐。買い換えればいいって切り捨てるにはあまりに高価なものだ。もちろん金銭的ではなく感情的なもので、だ。桜の枝に引っ掛かった髪紐を取り、長い後ろ髪をそれで結う。

(さてと。早く戻らないとな)

ダッシュではやて達の元へ向かって、「ん?」視界内に収めた彼女たちの様子に少し違和感を覚える。何かとは言えないが、何かが変だ。しかも既視感もおまけ付き。彼女たちの側に辿り着き、全てが確信へと変わる。

「にゃははは♪」

「おお、なんや世界が回ってる~♪」

「フェイト~❤」

「アリシア~❤」

「「ユ~ノ~❤ だ~い好き~~❤」」

「ぐ、ぐるじい・・・!」

「あたしはね、同じ炎の騎士として、シグナムに勝ちたいわけよ!」

「そーだねー、今度は勝とーねー♪」

「すぅすぅすぅ・・・Zzz」

「わぁーっはっはっは! 騒げ、歌え、踊れぇ~~~い!」

顔を真っ赤にして笑う者・踊る者・感情のままに行動を起こす者・行動を起こされ苦しむ者・人でない何かに力説する者・寝てしまう者、人格が変わってしまう者。その場限りで様々な人種を生み出すその原因は、「誰だ、酒なんか持ってきた馬鹿は・・・」アルコールだ。足元に転がっている酒瓶を手に取る。パッと見はジュースのボトルだが、ラベルをしっかりと読むと酒類であることは判る。だがシャルは詳しく読まなかったようだな。

「ルシルく~ん❤」

甘ったるい声で俺を呼ぶのは、踊りを止めたはやてだった。ちなみに笑っているのはなのは。フェイトとアリシアは姉妹愛を確かめるがごとく抱きしめ合い、セレネとエオスはユーノを左右から抱きしめ、ユーノは首や腹部を締め付けられて失神寸前。アリサは桜の木に向かって話しかけ、すずかは側でそれを眺めながら微笑み、リインは缶ジュースに抱きついたまま眠りこけ、シャルは桜の枝の上で仁王立ちして大笑い。溜息が止まらない。その間も「ル、シ、ル、く、ん❤ 抱っこ~~❤」はやてがハグを急いてくる。

「くぺっ?」

「「ユーノ~? うわぁ~ん、ユーノが死んじゃったぁ~!」」

勝手に殺してやるな、セレネ、エオス。気を失っただけだよ(と思いたい)、ユーノは。すると2人は、今度は「お別れのチュー❤」とか言いながらユーノにキスを始めた。なんていうか・・・ユーノ、ご愁傷様。それともラッキースケベとでも送ればいいだろうか。

「ん! ん! ん!」

はやてははやてでさらに急かしてくるし、「えへへ♪ うふふ♫ あはは♩」なのはとフェイトとアリシアは手を繋いで円陣を組んでスキップしながら踊りだし、「あたしは、強くなるっ!」“フレイムアイズ”を起動したかと思えば空に掲げてアリサはそう宣誓し、「私もぉ、もっと学んでぇ、みんなのデバイスを看ま~す!」すずかも別の桜に向かって宣誓しだす始末。

「ひゃっほ~い! 見よ、空を華麗に舞う我が姿!」

シャルは枝から枝へと飛び移りながら笑い声を上げ続ける。射撃魔法とかで撃墜したらダメなのだろうか。シャルのはためくスカートから覗く白い下着に溜息を吐いていると、「ルシル君! わたしを見て!」とうとうはやてが口調を荒げた。何度目かの溜息を吐いて、両腕を伸ばしているはやての体に俺の体を重ねて、横抱きにして抱え上げる。

「やった~♪」

俺の頬に頬ずりしてくるはやてに、「これで満足か、はやて? もう降ろすぞ」と言うと、「い~や~や~!」ジタバタ暴れ出した。今の子供の俺にそれをされて支えきることなんてできるわけもなく、無様に転倒する羽目に。倒れる瞬間、はやての後頭部だけは守るために左手を差し込み、右手は俺自身を支えるために地面に手を着いた。はやてに覆い被さるような体勢の中・・・

「すまない、はやて! どこか痛むところは――」

「ルシル君・・・」

はやてが両手で俺の顔をそっと挟み込んだ。まずい。そう思ったがすでに遅し。はやてが俺の頭を自分の胸に抱き込んだ。9歳の子供であるからこそ、子供特有の柔らかさと香りが俺を包み込む。そしてはやては俺の頭を愛おしそうに撫で始めた。これは非常にまずい。

「はや――」

「ルシル君、ひとりでなんでも抱え込み過ぎや。もうちょいわたしを頼ってほしい。騎士としてはまだ半人前やし、頼りないかもしれへんけど・・・、それでも家族やんか、わたしらは。もっと弱いところも見せて」

撫でるのを止めたはやては再び俺の頭を抱きしめた。

「いつかきっと、わたしはルシル君を支えられるほどにまで成長するから。そやから今は引き下がるわ。そやけど必ず・・・絶対にルシル君の隣で、ルシル君と一緒に生きるから・・・。ちょう早いけど、ルシル君。わたしは・・・ルシル君のことが・・・」

それ以上はダメだ。はやてに想いを伝えさせてはいけない。すでに態度からして伝わってはいるが、言葉で直接聞くことだけは未だに無いし、あってはならないと思っている。俺には決めていることが1つあるんだ。はやてから告白をされた時、俺は・・・

「はやて! ストップだ、それ以上はダメ・・・だ?」

「すぅすぅ・・・Zzz」

寝息を立て始めたはやて。ホッと安堵した俺は、はやてを起こさないようにそっと彼女の腕を退かしつつ顔を上げた。と、「ドキドキ❤」いつの間にか動物形態へと変身していたセレネとエオスが、俺とはやてをジッと見詰めていた。

「チューするの?」

「ギュってしないの?」

外見はリスとハムスターであるため、小首を傾げるその姿はとても可愛らしいんだが・・・「しない!」中身がマセている少女だから遠慮なく声を荒げた。するとセレネとエオスは「それでも男の子か~」とか「意気地なし~」とか、好き勝手なことを言って、アリサとすずかの元へダッシュ。そして、「きゃっ!?」アリサと、「ひゃん!?」すずかの足を伝って服の中に侵入した。

「ちょっ、やんっ、だ、ダメだってば!」

「くすぐったい! んぁ、そこ、ダメ・・・!」

服の中を動き回られることでアリサとすずかが変な声を出しながらジタバタと暴れ、服の中からセレネとエオス(であることが判っているかどうかは不明だが)を出そうとする。そんな2人を見て・・・

「にゃはは、アリサちゃんの踊り、すっごい激しいね~♪ かっこいい~!」

「すずかー! しおらしい踊り、可愛いーっ♪」

「わたし達も一緒に踊る~♪」

酔っぱらっている所為で上手く思考できていないなのはとフェイトとアリシアが、酔いとは別に顔を真っ赤にして悶えているアリサとすずかの側に駆け寄り、「わぁ~い♪」踊り始めた。なんて・・・なんて酷い状況だろう。

「「おらー! 男の子だったら、これくらいやってみろーっ!」」

「出来るかぁぁーーーー!!」

そんな破廉恥な真似、相手が子供だからこそ不可能だ。もちろん大人の女性にもしたらアウトだ。そう、俺が男である以上は絶対に出来ない事だ。というか、「いつまでやっているんだ!?」ツッコみを入れる。アリサとすずかもとうとう座り込んではまだ悶えた後、「ひゃぁぁぁぁ!?」悲鳴を上げて、コテンと倒れ込んだ。うわぁ、アリサに記憶が残っていたら確実に殺されるぞ、セレネとエオス。

「そして、とうとうなのは達も・・・」

座り込んだかと思えばゴロンと寝転がり、なのはとフェイトとアリシアは川の字になってそのまま寝息を立て始めた。あとは、「この程度で眠るなど笑止千万! もっと騒ぐがよい!」シャルだけだ。しかしこのテンション。やはり既視感は間違いじゃなかった。

「世界を、時代を、魂を越えて現れたな、酔いの鬼神!!」

前世のシャルの悪酔い状態に与えられた称号・酔いの鬼神。今のイリスは正しくその状態だ。いや、イリスなのかも怪しい。ひょっとすると、シャルロッテの人格が表層に出て来ているんじゃないのか? そんな嫌な予感は・・・

「我が言の葉は幻想紡ぐ鍵~~❤」

その呪文を聞いたことで当たっているんだと確信した。シャルロッテが複製術式を発動させる際の呪文だ。“闇の書”事件の決戦の後、俺はシャルロッテに創世結界・“剣神の星天城ヘルシャー・シュロス”を返還した。
シャルロッテがイリスの体の支配権を得た状態――剣戟の極致の至りし者モード時、彼女は魔術を扱えるようになっている。そんな彼女に創世結界を丸ごと返還した。ゆえに、剣戟モードになると、それまでは扱えなかった結界内に残っていた複製術式も当然扱えるようになるわけだ。

「ちくしょう・・・!」

本来は俺とのキス(神秘のある魔力を流し込むための儀式)することで剣戟モードになれるはずなんだが、どうやら酔ったことでイリスが裏に引っ込んでシャルロッテが表に出、さらに“キルシュブリューテ”が暴走気味に目醒めてしまったことによるイレギュラーらしい。ダッシュでその場から逃げる。後の事? はやて達の事? 同性のユーノの事? ごめん、見捨てる。だって変な術式を掛けられて恥を晒すなんて真っ平ごめんだ。

「はぁはぁはぁ・・・」

「どうかしたんか、ルシル」

息を切らして来た俺に声を掛けてくれたのはヴィータで、「水でも飲め。落ち着くぞ」シグナムからは天然水のペットボトルを貰った。封が切れているが、誰の飲み止しなのだろうか。まぁ、それほど気にすることじゃないが。

「あら? はやてちゃん達はどうしたの?」

「何か食べ物を貰いに来たのか?」

シャマルとアインスからの問いに、「えっと、まぁ、その、なんだ・・・」俺は答えを言い淀んでしまう。

「どうしたのだ、ルシリオン。何か起きたのか?」

ザフィーラにすら問われる始末。ヴィータが「んだよ。あたしが見てくるから良いよ」そう言って特等席へ向かおうとするヴィータ。俺は「ちょっと待ってくれ」ヴィータの腕を取って制止を掛ける。

「なんで止めんだよ。何か見られちゃいけねぇもんでもあんのかよ」

不審がるヴィータに、シグナム達も不審の目を向けてきた。はやてやリイン、なのは達が酔っぱらって痴態を晒しているかもしれない、なんて言っても良いんだろうか。そんな迷いも一瞬の後、「レッツ・ファイアーっ!」特等席の方からはやて達みんなの声がした。俺たちがそっちに目を向けた直後、服装が変わったはやて達が姿を現した。

(危なかった。やはり対象を強制着替えさせるディゾルディネ・カンビャメントを使ったか)

先の次元世界や他の契約先世界でもシャルロッテはよくその術式を使っていた。俺は、この術式を使われると予想して逃げたわけだ。予想は見事的中。はやて達みんな、古代ギリシアの女性が身に纏っていた衣服――キトン(ドリス式ってやつだな)を着ていて、背中から一対の白翼を展開。まるで絵画に描かれる天使像。しかも魔法を使って空を飛んでいるから余計にそう見える。しかしその実は、ただの酔っ払い集団。

(ユーノ? ユーノはどこだ?)

ユーノの姿を捜し、そして見つけた。フェレットモードに変身しているユーノはまた気を失っているようで、セレネに胴体を鷲掴みされてブンブン振り回されていた。ダメだ、その姿に涙が出そうになる。思うのはただ1つ。ごめんなさい、だ。

「なんだなんだ!?」

「まあ♪ はやてちゃんもリインちゃんも可愛い♪」

「写真、写真!」

ヴィータは驚き、シャマルははやてとリインの天使(仮)姿にうっとりし、アインスはデジタルカメラで写真を撮りまくる。そしてはやて達はそれぞれデバイスを起動し、空に向かって砲撃を発射。唖然とする俺たち。放たれた砲撃は花火のように炸裂し、空に色々な魔力光の花を咲かせた。
至るところから拍手喝采が起こる中、フェイトとアリシアだけが両手に骨付き肉を手にしたアルフの側に降り立ち、そして彼女を引っ張ってカラオケ機器の元へ行き、マイクを手に取った。

「「アルフ~~~!」」

「リンディ提督~~~!」

「ク~ロノ~~~!」

「「エイミィ~~~!」」

2人がアルフ達の名前を呼んだ。

「この場をお借りして、お伝えしたい事がありま~す!」

「リンディ提督からお話ししてもらった事への返事をしたいです~~~!」

最悪だ。これ、きっとアレだぞ、フェイトの一大決心の思いを伝えるあの場面。それなのに、フェイトは酔っ払っている状態で、しかもカラオケで大々的に伝えるなんてあまりに酷過ぎる。花火が上がり続ける中、「私とアイリシアは、ハラオウン家の子供になりたいですーーー!」フェイトが告げた。

「大好きだよー! リンディ提督ー! クロノー! エイミィー!」

「大好きー! リンディ提督・・じゃなくて、母さーん!」

「大好きー! クロノお兄ちゃーん!」

「「大好きー! エイミィ・・・お姉ちゃーん!?」」

エイミィのところで疑問符が入ったところで僅かな笑い声が起きる。リンディ提督とクロノとエイミィが、フェイトとアリシアとアルフの側に駆け寄り、リンディ提督はフェイト達を抱きしめた。それは紛れもなく母親の姿だった。拍手や「おめでとうー!」が起こり、俺たち八神家も拍手をする。

「「アインス~~っ!」」

「主はやて! リイン!」

そんな中ではやてとリインが、アインスへと突っ込んで来てそのまま抱きついた。アインスはしっかりと2人を抱き止め、勢いを殺すためにその場でくるくる回った。翻るアインスとリインの銀髪、はやてとリインの背中から生える白い魔力の羽根。俺はアインスから受け取っていた(というか放り投げられた)デジカメの動画撮影機能で、彼女たちの姿を撮る。

「アインス、大好きやよ~❤」

「リインも大、大、大好きですよ~❤」

「はいっ。私も大好きですよ、愛しています!」

こちらは聖母と赤子の聖画と言った感じだな。はやてとリインを愛おしそうに抱きしめるアインス。俺はその光景をしっかりとデジカメと脳裏に焼き付ける。その3人の姿にシグナム達は涙ぐみ、俺も泣きそうになる。それほどまでに綺麗な光景だった。だというのに・・・

「わぁーっはっはっは! 宴はまだまだ終わらんぞ、皆の衆! 我を楽しませるために、もぉーっと騒げぇ~~い!」

――ディゾルディネ・カンビャメント――

空気を読まない、というよりは読めるほどの思考能力を失ったシャルロッテは、あろうことか花見イベント参加者全員を強制変身させた。そこからはもう大混乱。テンションが上がる者・下がる者、撮影会を始める者などが続出。それは日が暮れ始め、シャルロッテの魔力が尽きるまで行われた。

「――ま、こんな馬鹿騒ぎも悪くは無い、よな・・・」

“異界英雄エインヘリヤル”が一、レイチェル・アルカードのドレスに変身させられた俺はひとり騒ぎの中から離れ、騒ぎを見学しながらアリサの父――デビット氏が持って来たという年代物ワインに舌鼓を打った。

 
 

 
後書き
ゴーオンダイン。ゴットクヴェルト。
遅れてしまいすいませんでした。約2週間ぶりの投稿となってしまいましたね。なかなか執筆の時間を取れず、結構時間が掛かってしまいました。ネタを考えるのに数日、それを形にするにもまた数日。何度も思い知る日常編の難しさ。さっさと事件本格編に向かった方が良いのかもしれません。
 
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