リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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第七十八話 漆黒の竜人の行く末
前書き
クラナガンに次元漂流したブラックウォーグレイモン。
そこで出会ったギンガ。
二人の物語が始動する。
遼「リリカルアドベンチャー、始まるぜ」
ギンガは黒いアグモンを自分のベッドに寝かせると、黒いアグモンの目覚めをじっと待つ。
[ぐっ…]
黒いアグモンが目を覚ましたが、動こうとした瞬間苦痛に顔を歪めた。
ギンガ「あ、まだ動いちゃ駄目だよクロアグモン」
クロアグモン[クロアグモン…だと?]
自身の身体を見ると、ブラックウォーグレイモン時より遥かに小さいことに目を見開く。
ギンガ「どうしたの?」
クロアグモン[これは一体どういうことだ…?]
ギンガ「あ、私が見つけた時は大きかったんだけど、すぐに身体が光って小さくなっちゃったんだよ」
クロアグモン[馬鹿な…そんなことが…]
スバル「ギン姉、クロアグモン起きた?」
ギンガ「うん」
アグモンX[よかったね。初めましてクロアグモン。僕はアグモン。といっても僕みたいな姿のアグモンはいないみたいだけど]
クロアグモンはアグモンXの言葉に反応する。
クロアグモン[まさか、お前もダークタワーから…!!]
アグモンX[だーくたわー?ううん、僕はデジタマから]
にべもなく返され、クロアグモンは肩を落とした。
デジタマというのがどういうものかはよく知らないが、恐らくはこのデジモンも普通に生まれてきた生き物なのだろう。
アグモンX[僕、突然変異なんだ]
クロアグモン[突然変異?]
アグモンX[何か、僕の構成データに異変が起きたらしくてね。僕のようにグレイモンの特徴を持ったアグモンはいないんだ。ほら]
尻尾を見せるとアグモンXの尻尾にはグレイモンと同様の模様がある。
スバル「お兄さんにも聞いたけどアグモンみたいなアグモンはいないんだって」
アグモンX[うん、だから僕は世界でたった一体の異物なのかもね…とにかく、君と話したくてさ]
クロアグモン[異物…]
突然変異でアグモンであってアグモンではない存在。
何故そんな柔らかい表情で言えるアグモンXにクロアグモンは不思議でならなかった。
少しだけ問い掛けたくなった。
クロアグモン[……話をしよう。ただし、俺の質問に答えてくれたらだ]
アグモンX[質問…?]
そう言われたアグモンXが、不思議そうに首を傾げる。
クロアグモン[心とは…何だ?何処にあるのだ?]
アグモンX[心?ここかな?ここかもしんないけど…やっぱりここかな……いやここかも……。……。ごめん、僕にはよく分かんないよ、心がどこにあるかなんて…]
スバル「ん~?ギン姉、心って何処にあるのかな?」
ギンガ「多分胸の辺りじゃないかなあ?」
クロアグモン[……お前達にも……分からない事なのか………心とは、本当にあるものなのか?もしかしたらそれは、錯覚ではないのか?]
アグモンX[それは違う!!誰かを想い合ったり、信じ合ったり、そんな気持ちが錯覚なんて絶対にない!!]
クロアグモン[では聞く!!………心とは……何の為に…あるのだ?]
スバル「えっと、それは…」
ギンガ「嬉しかったり楽しかったり辛かったり…色んな気持ちになるため…かな?」
かなり語尾が小さくなってしまう。
それはギンガが自分の言葉に自信が無いので無く、上手く自分の気持ちが言葉に表せないだけなのだが。
クロアグモン[俺はダークタワーから造られた…そんな俺に何故心があるんだ!!?]
「あるから…じゃないかしら?」
スバル、ギンガ「「お母さん!!」」
トレーにクロアグモンへの山盛りの食事を載せたギンガとスバルの母親のクイントがトレーをアグモンXに預けた。
クイント「そういうのは理屈じゃないの。心があるならある。それでいいんじゃないかしら?」
クロアグモン[心があって…何を得られるというのだ…?無機質の…ダークタワーから造られた紛い物の存在の俺に…何故…?こんな虚しいと感じるのなら俺は心など欲しくはなかった!!]
ギンガ「そんなこと言っちゃ駄目だよ!!心が欲しくないなんて言っちゃ駄目!!」
目に涙を溜めながら叫ぶギンガにクロアグモンの胸に深い痛みが走る。
クイント「……ねえ、クロアグモン?」
クロアグモン[…?]
クイント「あなたは自分をどう思っているの?何がしたいの?」
クロアグモン[俺がしたいこと…?]
脳裏を過ぎるのは、パイルドラモンとの戦闘。
他の戦いは虚しく感じたが、奴との戦いは違った。
相手はマンモンと同じく完全体ではあるが、それを補って余りある戦闘センス。
最後の最後まで何を仕出かすか分からない圧倒的な迫力がある。
そして戦いを終えた時の充足感は他の奴では味わえない。
クロアグモン[強い相手と戦いたい。そして勝ちたい]
クイント「そう、それが答えよ」
クロアグモン[?]
クイント「だって心がなかったら、あなたの戦いに対する想いを感じることが出来ないのよ?戦いによる充足感を感じることすら出来ない」
クロアグモン[っ!!]
全身に雷が落ちたような衝撃を受けたクロアグモンは目を見開く。
心がなかったら、戦いに充足感を感じることがない。
それはとても考えたくないこと。
ギンガ「ねえ」
クロアグモン[…?]
話し掛けられて首をギンガの方に向ける。
ギンガ「私のパートナーデジモンになって!!」
クロアグモン[パートナーデジモン…だと?]
ギンガ「うん。クロアグモンに近づくとこれがスバルの物と同じように光るの。きっとクロアグモンが私のパートナーなんだよ!!」
キラキラと光る無垢な視線にクロアグモンはギンガをどう扱っていいのか分からず視線をさ迷わせる。
クロアグモン[そのパートナーデジモンというのは…よく分からん]
ギンガ「あ、そっか…じゃあ友達から始めようよ!!」
クロアグモン[友…達…?]
クイント「ギンガ、クロアグモンは怪我してるんだから無理させちゃ駄目よ」
困惑しているクロアグモンをフォローするようにギンガを窘める。
ギンガ「はーい」
クイント「さ、お腹空いているでしょう?沢山作ったから食べて頂戴」
スバル「わあ、美味しそう」
怪我をしているクロアグモンのために食べやすい料理の山盛りが置かれる。
しかしクロアグモンはジッと料理を見つめるだけ。
アグモンX[クロアグモン、食べないの?食べないなら僕が…]
バシィッ!!
アグモンXの手がギンガに叩かれた。
アグモンX[痛い…]
ギンガ「これはクロアグモンの分!!」
スバル「アグモンの食いしん坊~」
アグモンX[スバル達には絶対言われたくないよねそれ…でも何で食べないの?]
クロアグモン[食べるというのは…よく分からん]
クイント「あら?そうなの?ならギンガ、食べさせてあげなさい!!」
ギンガ「は~い」
クロアグモン[な、止めんか!!]
じゃれあうギンガ達をクイントは優しく見守っていた。
そしてギンガ達が部屋を出た後、クイントが疲れ果てたようにベッドに横になるクロアグモンを見遣る。
ギンガ達に散々玩具にされたのだろう。
クイント「すっかり仲良くなっちゃって…」
クロアグモン[仲良くなどなっていない]
クイント「あらツンデレ?」
クロアグモン[ツンデレとは何だ?]
クイント「いいのよ気にしなくても…ギンガとスバルにとってあなたの存在は嬉しいのよ…多分自分に近い存在が出来て嬉しいのね」
クロアグモン[何?]
クイント「これは誰にも言わないでね?スバルとギンガは…私のクローン…つまり無機質な機械から生まれたのよ」
クロアグモン[何だと?それをスバルとギンガは知っているのか?]
クイント「知っているわ。今は大して気にしてないようだけど…大きくなったら絶対に気にするようになるわ。あの子達もいつかは大人になって好きな人が出来るようになる。でもその時苦しむのは分かっているわ…だからクロアグモン…」
クロアグモン[……]
クイントの言葉の続きをひたすら待つクロアグモン。
クイント「あの子達の友達として支えになってあげて…」
クロアグモン[…分かった]
クロアグモンの返事を聞くと、クイントも部屋を後にした。
後書き
クロアグモンとギンガがパートナーに。
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