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戦国異伝

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第百九十六話 二匹の虎その十一

「上杉も動くぞ」
「では、ですか」
「春日山に戻り、ですか」
「そのうえで我等との戦に入る」
「そうなりますか」
「間違いなくな、それでじゃが」
 さらに言う信長だった。
「先陣じゃが」
「それがしに」 
 元親が出て来てだ、信長に不敵な笑みで言って来た。
「お任せ願いますか」
「御主がか」
「是非共」
「上杉と戦いたいのじゃな」
「はい、あれだけの強さなら」
 それならばというのだ。
「槍を交えてみたいと思いまする」
「いくさ人としてじゃな」
「左様です、宜しいでしょうか」
「それ程戦いたいのなら見事戦ってみせよ」
「さすれば」
「ではな、しかし上杉謙信は強い」
 信長はこのことを熟知していた、何しろ織田家で最も攻めの上手い柴田が負けたのだ。それで彼はこうも言った。
「しかしな」
「しかしとは」
「御主ともう一人に先陣を置きたい」
 元親と共にというのだ。
「この度はな」
「ではその先陣は」
「誰かおるか」
 自分で命じずに相手に名乗らせるのだった。
「この度の先陣は」
「さすれば」
 ここで応じたのは家康だった、家康は自ら手を挙げて名乗りを挙げた。
「ここはそれがしが」
「徳川家がか」
「はい、お願い出来るでしょうか」
「ならば頼む」
 これが信長の返事だった。
「御主にな」
「はい、それでは」
「徳川全軍で、じゃな」
「そのつもりです」
 まさにそうだrというのだ。
「それで宜しいでしょうか」
「そうじゃな、それではな
 こう言ってだ、信長は家康に言葉を返して告げた。
「御主にも頼む」
「さすれば」
 こうしてだった、家康もまた先陣を務めることになった。織田の軍勢は信濃に入りそこからだ、上杉の本城である春日山城に向かうのだった。


第百九十六話   完


                         2014・9・1 
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