戦国異伝
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第百九十六話 二匹の虎その七
「御主だけでなくな」
「我等が、ですな」
酒井が家康に応える。
「四天王全員で」
「それもまた違う」
家康は酒井にも言った。
「ここはじゃ」
「では全員で、ですか」
「そうじゃ、我等全員でな」
まさに徳川家一丸となって、というのだ。
「攻めてな」
「そうしてですか」
「織田殿と共に攻めるぞ」
「そうしますか、では」
「うむ、行くぞ」
こう言ってだ、家康は自ら馬を進めてだった。
武田の後詰を攻める、信玄と幸村達を。
信玄と幸村は戦い続けそしてだった、遂に。
武田の主力を逃がした、それを見てだった。
信玄は確かな笑みを浮かべてだ、幸村に言った。
「やったな」
「はい、どの方もです」
「無事に戦の場から逃げた」
「しかも将の方だけでなく」
「兵達もな」
「それではですな」
「我等も退こうぞ」
「それでは」
幸村も信玄に確かな笑みで頷く、そして。
彼等も戦の場から退こうとする、だが。
ここでだ、信長がその信玄にこう言ったのだった。
「武田殿、待たれよ!」
「むっ、その声jは」
「そうじゃ、わしじゃ」
こう言ってだ、そのうえで。
信長は前に出てだ、信玄に馬上から言った。
「話がある」
「その話とは何じゃ」
「貴殿は充分戦った、戦は終わった」
まずはこう言うのだった。
「そしてじゃ、これよりじゃ」
「織田に降れというのじゃな」
「武田は敗れた」
次に言ったのはこのことだった。
「それならばじゃ」
「これ以上の戦はか」
「意味がない、降られよ」
「武田が織田に降れというか」
「降りそしてその力天下に役立てよ」
これが信長の言うことだった。
「これからの天下の長きに渡る泰平を築く為にもな」
「そう言うか、ではじゃ」
ここまで聞いてだ、そしてだった、
信玄は信長の前に出た、そのうえでこう言った。
「わしを今ここで倒せるか」
「一騎打ちでか」
「そうじゃ、それが出来るか」
こう信長に問うのだった。
「わしにな」
「出来ると言えばどうする」
信長はその信玄に不敵な笑みで返した。
「その時は」
「そう言うか、わしに」
「何度でも言うぞ」
「わかった、ではな」
ここまで聞いてだ、信玄はというと。
信長にだ、今度はこう言った。
「その意気受け取った、一晩起きていてもそう言う気概をな」
「気概だけか、受け取ったのは」
「それ以外もじゃ、それではじゃ」
こう言う信玄だった。
「御主の話を聞きたい、よいか」
「そうか、では茶を用意するからな」
「さすればな、ではな」
「何処で茶を飲む」
「そうじゃな、今ここで飲むか」
「信玄はこれ以上はないまでに確かな笑みになって信長に応えた、そのうえで彼にこうも言ったのだった。
「この設楽ヶ原でな」
「それではな」
信長も応える、そしてだった。
戦が終わりその場で茶の席が用意させる、そして。
信玄は幸村にもだ、こう言った。
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