美しき異形達
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第三十七話 川の中での戦いその十三
「違うのです」
「それでこの味か」
「お豆腐は京料理の軸の一つです」
そう言ってもいいまでのものだ、豆腐は京料理の軸でありまさにこれがなくては話にならない程の存在であるのだ。
「その中でも南禅寺の湯豆腐は」
「凄いんだな」
「その湯豆腐もありますので」
「京都のお豆腐は、か」
「他の場所のものに比べて味がよいのかと」
「成程な、こんな美味いお豆腐なんだな」
薊は冷奴を唸る顔で食べつつ述べた。
「京都のは」
「ここまで美味しいとね」
向日葵も言うのだった。
「幾らでも食べられそうね」
「ええ、本当にね」
菫は向日葵のその言葉に頷きだ、彼女も食べるのだった。
「これならね」
「お豆腐を食べ過ぎると独特のエグ味があるけれど」
菖蒲は湯葉を食べている、見れば豆腐以外のそちらから派生した料理もある。そのうちの湯葉を食べているのだ。
「これはなさそうね」
「お豆腐のエグ味ね」
「ええ、それがね」
菖蒲は裕香にも言った。
「なさそうね」
「お豆腐はね、あっさりして食べやすいけれど」
それでもとだ、裕香も言うのだった。
「それでも食べ過ぎるとね」
「エグ味があるわ」
「そうなのよね、どうにも」
「けれどこのお豆腐なら」
「エグ味がなさそうね」
「何かかなりの量があるけれど」
それでもだった。七人は食べていってだった。
相当に他寝ているがだ、それでもだった。
「何かね」
「まだまだ食えそうだよな」
薊はこう裕香に答えた。
「このお豆腐なら」
「本当にね」
「凄いな、このお豆腐」
「これが京都のお豆腐ね」
「後はな」
薊は湯豆腐も食べている、これがメインなのだ。
「お水が違うな」
「京都のお水ね」
「それが違うんだな」
「京都はお水がいいからね」
「お豆腐はお水も大事だからな」
作る際に水をかなり使う、そして作ってからも水の中に入れている。それで水が他の料理と比べても相当に重要なのだ。
「お水がいいとな」
「さらにいいのね」
「関東はさ」
ここでだ、薊は苦笑いになって言った。
「神奈川はそれ程でもないけれどさ」
「東京辺りはよね」
「お水が悪いんだよ」
このことは関東の料理の弱点とされている、関東平野は火山灰から形成されているのでどうしても水が悪いのだ。
「だからな」
「特にお豆腐はなのね」
「こんなに美味しくはないよ」
京都の豆腐程はというのだ。
「とてもな」
「そうなのね」
「関東のお豆腐も決して悪くないんだよ」
フォローも入れるのだった、一応は。
「けれどな」
「京都のお豆腐程は」
「これはまた別格だよ」
まさに、というのだ。
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