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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百九十三話 三文芝居

 
前書き
お待たせしました。

今回はグタグタです。

第6次イゼルローン要塞攻防戦を終わらせられませんでした。 

 
宇宙暦795年 帝国暦486年 2月5日

■イゼルローン回廊 自由惑星同盟宇宙艦隊総旗艦アイアース

テレーゼ皇女からの一方的な宣言により混乱していたアイアースにイゼルローン要塞から再度通信が入ったのは15分後であった。
「イゼルローン要塞より再度通信が入っています」
先ほどの通信に不快感を得ていたロボスは無視しようかと考えたが、グリーンヒル総参謀長が頸を横に振る。
「閣下、此処は再度通信を受けた方が良いかと」
「しかし、あの様な馬鹿にした通信を再度受ける事は屈辱だ」
その様な中、帝国軍からの通信は宇宙艦隊司令長官エッシェンバッハ元帥からだと言う事がオペレーターから伝えられた。

その言葉に、ロボスは、いぶかしげに通信を受ける様に命じた。
「判った、通信は受けるが艦橋だけにせよ」
この指示は先ほどのような事で混乱しないようにする為であった。

指示と共にスクリーンに帝国側の映像が映ると、少々苦虫を噛みつぶしたかの様な表情のエッシェンバッハ元帥と、総参謀長グライフス大将が敬礼した。
『銀河帝国軍元帥宇宙艦隊司令長官エッシェンバッハです』
『銀河帝国軍大将宇宙艦隊総参謀長グライフスです』

それに返礼するロボスとグリーンヒル。
「自由惑星同盟軍元帥ロボスです」
「自由惑星同盟軍大将グリーンヒルです」

お互いの敬礼が終わると、徐にグライフス大将が話しはじめた。
『先ほどの件ですが、皇女殿下のお言葉がありますので、帝国軍としても命令には従う所存の為、卿らの帰還がスムーズに終わるように、要塞近辺で大破航行不能状態などの艦艇の救難を許可します。此に伴い、帝国は皇帝陛下の恩名に置いて24時間の停戦を宣言します。其方の考えは如何でしょうか?』

グライフスの放った言葉にロボス以下司令部の面々に衝撃が走る。何と言っても帝国は同盟を認めとおらず、叛乱軍としていたのである。それが24時間とは言え停戦を求め、航行不能状態で漂っている艦艇を攻撃もせず、捕虜を取らずに帰還を許すというのである。

先ほどのテレーゼの話では具体的なことが何も無かった為、困惑していた艦長達も縋るような目でロボス達を見ている。彼らにしてみればお偉方やエリート参謀様の虚栄心だけで戦場に出されるのはうんざりしており、今の状態では到底これ以上の攻勢は不可能で有ると判る為、帝国の提案を呑んで少しでも早く助けを求める友軍を救助したいと思うが故であった。

その様な将兵の機微を気が付いて居るグリーンヒル総参謀長は説得するようにロボスに話しかける。
「閣下、何はともあれ将兵の救助を第一に致しましょう。それからのことは後で考えても良いではないでしょうか?」
「うむー」
ロボスは唸るが、参謀以外の周りの将兵の視線を感じると、難しい顔をしながらも「判った」と呟く。

「承知しました。帝国軍からの24時間の停戦を受け入れましょう」
グリーンヒルがすかさず停戦の受諾をする。
『聡明なる判断を感謝します』
グライフスも返答する。

結果、この時間より24時間の間は双方が引き、病院船などにより負傷兵や遺体の回収が行われる事と成った。

同盟軍は24時間の停戦時間を生かして、テレーゼの口撃を受けた際の混乱の沈静化と事実の確認をする為と負傷者や遺体の回収をする為にイゼルローン要塞より30光秒の位置まで下がり事態の収拾に当たることとした。停戦とは言えども騙し討ちがある可能性を考えていたが、後退の際に危惧された帝国艦隊の追撃も全く行われず、同盟艦隊が下がれば下がるほど、同じ速度でイゼルローン要塞方面へと後退していった。此により停戦が本気であると判り、同盟側より多数の小型艇や救急船が戦場で動けなくなっている艦艇やスパルタニアンから将兵を回収していくが、警戒することが無駄であるが様に帝国軍は全く動かず遙か遠くから観察しているだけであった。

その様な時間を生かしてロボス元帥は今後のことを話し合う為に各艦隊司令官、参謀長を旗艦アイアースへ招集した。普通であれば戦闘中に指揮官が艦隊を離れるなど狂気の沙汰であったが、帝国軍が本気で停戦している以上は危険度は低いと言う事で行われる事になった。

宇宙艦隊総旗艦であるアイアースの作戦室はアキレウスクラスの中ではピカイチの広さと設備を誇っていた。此は宇宙艦隊総旗艦であるために、ロボスが宇宙艦隊副司令長官から宇宙艦隊司令長官に就任した793年に第2次改装を行った際に宇宙艦隊総旗艦に相応しい大規模作戦室を設置したのである。

作戦室にはロボス元帥、グリーンヒル大将、第3艦隊司令官ルフェーブル中将、参謀長ヴォヴェル少将、第4艦隊司令官パストーレ中将、参謀長タナンチャイ少将、第7艦隊司令官ホーウッド中将、参謀長フェアリー少将、第9艦隊司令官アル・サレム中将、参謀長アフメト少将、第11艦隊司令官ドールマン中将、参謀長アドリアンソーン少将がスタッフを引き連れ集結していた。各艦隊では副艦隊司令官が残留し不測の事態に備えていた。

皆が揃った事を確認するとグリーンヒル総参謀長が話しはじめる。
「今回集まって貰ったのは、此からの事についてです」
余りにアバウトな話しに皆が怪訝な表情をする。

「此からの事と言いますと?」
余りのアバウトさに一番の常識人であるドールマン中将が質問する。
「打つ手がないと言う事だろうな」
そう言いながら手の平を返して顔を顰めるパストーレ中将。
「D線上のワルツ作戦が失敗に終わった以上、これ以上の犠牲を出す前に撤退するべきでしょう」
一番の年嵩のルフェーブル中将が眉間に皺を寄せながら呟く。
思慮しているのか目を瞑りながら顎髭をさするアル・サレム中将。
難しい表情のホーウッド中将。

このまま、沈黙続くかと思われた中、グリーンヒルが意を決してロボスに進言する。
「最早作戦の失敗は明白です。これ以上の犠牲を出さぬように撤退するべきです」
「これ以上、傷を深くするよりはイゼルローン要塞の外壁に穴を空け肝を冷やさせたことを喜とするしか無いでしょう」
グリーンヒルの言葉にルフェーブルが補足を行う。

ロボスはその言葉を苦虫を噛みつぶしたかの様な表情で聞いている。
内心ではこれ以上攻撃しても何ら戦果を与えられない可能性の方が多いことは長年の経験から判ってはいるが、このままおめおめと帰投したら、無謀な攻撃を行ったと世論からのバッシングなどで今後の栄達が望めなくなると言う恐怖心が沸き上がっていた。更に永遠のライバルで有り自分の前に立ちはだかるシドニー・シトレが高笑いする様を想像し、屈辱にはらわたが煮えくり返る状態で有った。

「閣下、ご決断を」
グリーンヒルの声が響く。
「判った、兵の収容が終わり次第、撤退する」
ロボスが顔を顰めながら絞り出すような声で決定を告げると、参加者達からホッとした表情が現れるが、ロボスからしてみれば忌々しいとしか言いようのない状態に成って居た。



宇宙暦795年 帝国暦486年2月6日19:00

1時間後に迫った停戦期間を残してイゼルローン要塞宙域での救難を終了させた同盟軍宇宙艦隊は、まもなく終わる帰投準備を今や遅しと待っていた。今回も負けだが命だけは助かったと将兵が安堵している。

20:00に成り停戦期間が終わると同盟軍はイゼルローン要塞と要塞後方に待機している宇宙艦隊に最大限の注意をしながら帰路に着こうとしていた。そんな中、突然イゼルローン要塞のトールハンマー付近の流体金属が盛りあがり大爆発が発生した。その光景は凄まじい程に明るく目を閉じる程であった。

混乱する同盟側では帝国側の各種電波を監視していた部署から緊急連絡が入電した。
『大変です。味方陸戦隊の決死隊が要塞のトールハンマーに辿り着き、爆破した模様です!』興奮しながら報告してくる防諜班員。

その報告に色めきだし騒ぎ始める参謀達、更に続報が次ぎ次ぎに入り始める。ロボスがスピーカーに流すように命じうる。スピーカーから流れる音声は、イゼルローン要塞はよほど混乱しているのか、全てが平文で命令だけでなく悲鳴や怒号が流れてくる。
『トールハンマー発射不能です!』
『馬鹿な、守備隊は何をしていたのか!』
『動力炉にだけは敵を近づけるな!』

『オフレッサー閣下がトールハンマーの爆発に巻き込まれ戦死しました!』
『馬鹿な、そんなはずはない!』
『24ブロックで中隊長殿が!』

『殿下は脱出したか!』


『殿下は未だです!』

『外には敵がウヨウヨ居るんだ』
『駐留艦隊を呼べ。幾ら何でもラプンツェルだけじゃ!』
『冗談じゃないぞ!死にに行く訳じゃ無いんだ!護衛艦を廻せ、旧型でも構わん!』

『殿下、如何為さいますか?』
『妾の脱出の為に30分時間を稼ぐのじゃ』
『しかし、今と成っては脱出こそ至難の業かと』
『妾が生き延びねば帝国は失われる』
その中にケスラーやテレーゼの声も混じって居るのが声紋分析で判った。

その通信に参謀達が色めきだち、攻撃と味方の救援を口々に意見具申を行い始める。更に各艦隊からも同様の意見が出されてくる。ロボス自身も目を見開いて考える。確かにその意見に同意し今攻撃すればイゼルローン要塞奪取と共に皇女を捕虜に出来るかもと言う甘美な考えが脳裏に浮かぶが、グリーンヒルが『閣下、いけませんぞ』の言葉を放つ。

しかしその言葉も、次に起こった爆発で消し飛んだ。
色めきだつ参謀達も黙るほどの大規模な爆発がメインポート付近に発生した。
その閃光は先ほどの物と比べものにならないほどの目映さであり、減光フィルターを介したスクリーンをして尚、目がチカチカする程の光度であった。

「何があった?」
ロボスの質問に参謀達も唖然としている為に答えられない。
その間30秒ほどであったが、永遠に感じられた時間が動いたのはオペレーターの報告からだった。
「閣下、決死隊がメインポートでゼッフル粒子を使い脱出寸前のラプンツェルを撃沈した模様です!」
その報告に、時間が動き出し、参謀達が更に激しく攻撃を主張する。

よくよく考えてみれば可笑しな状態と言えるのだが、人間は自分の望む行為があった場合はそれを無意識に信じるという事が有り、今回の帝国の大混乱に勝てると考えた挙げ句、司令部の殆どが甘美な夢に酔ってしまったのである。常識派のグリーンヒル総参謀長が何とかしようとするが、フォーク中佐などがロボスに意見を具申し続ける為に次第にロボスも攻撃を主張し始めてしまう。

ロボスはテキパキと参謀達に指示を出した後、全艦に放送を行う。
「同盟軍全将兵に告げる。我々は帝国に騙されていた!あの停戦の最中でもイゼルローン要塞では我が同胞が決死の覚悟で戦闘を続けて居たのである。そして先ほど我が同胞がトールハンマーと艦船メインゲートの破壊に成功した。我らの英雄を救う為に攻撃を開始する。全軍全速前進!」

同盟軍はイゼルローン要塞へと急進撃を開始した。

そして11光秒に達したと同時に、ロボスが命令を発した。
「全艦攻撃開始」
数万のビームがイゼルローン要塞へと降り注いだ。


■イゼルローン要塞 司令室

「敵が多すぎる!」
「うわー!!!」
「脱出せよ!」
「人的物的損害が甚だしく」
「来援を請う、来援を請う」
「オフレッサー閣下がトールハンマーの爆発に巻き込まれ戦死しました!」

司令室のオペレーター達が悲鳴を上げたりしながら通信を行っているが、皆が皆、顔は笑っている。中には席から立って遮音力場へ駆け込み腹を抱えて笑い出す者も居る始末。そんな姿を見ながら、エッシェンバッハ、グライフス、シュトクハウゼン、ゼークトらは唖然とした表情で見ていた。

更には戦死したと言われているオフレッサーが遮音力場内でムシャムシャとピザを食っているのであるから何を況やで有る。

そうなのである、全てはテレーゼが仕込んだ芝居であり、同盟軍が更なる恥をかくようにとした結果こうなった訳であり、これ自体別に非難されることでも無い事は明白であるが、武人としての誇りを持つ者にしてみれば納得しかねたのであるが、テレーゼの『敵は最初に騙し討ちしてきたのだから、此方が小芝居でおちょくっても、おいたをした子供への躾と思えば良いのよ』という訳の判らぬ論理でこの作戦は決行された。実際の所では、大がかりな爆発などは指向性ゼッフル粒子による表層のみの爆破であった為、トールハンマーもメインゲートも何の損傷もなかった。

同盟軍が再攻撃を開始し着弾と共に軽い衝撃が要塞全体を揺らすが、その程度の攻撃では要塞の流体金属層を打ち抜く事は出来ない。

その様な中、司令室中央に仁王立ちしたテレーゼが命令を発した。
「イゼルローンツヴァイ発進せよ。メックリンガー、ビッテンフェルト、ミッターマイヤー各艦隊はツヴァイの後方より進撃せよ。ドック内の要塞艦隊、流体金属層内の艦隊はその場で待機せよ!」




■イゼルローン回廊

テレーゼの命令が放たれると、恒星アルテナを挟んで反対側に存在していたイゼルローンツヴァイ円周を取り囲むように配置されたエンジンの列に火が入り次第に加速し始める。何とイゼルローンツヴァイには航行用エンジンが装備されていたのである。次第に動き始めるツヴァイはアルテナの重力を使いスイングバイで加速していく。目指すは同盟軍艦隊で有った。その後方からは増援3個艦隊45000隻が急進撃していく。

同盟軍はまんまと罠に掛かったのである。しかい罠と気が付いたときには既に撤退できる状態ではなく成って居た。 
 

 
後書き
今回の台詞はガンダムから来ているものもあります。 
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