ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
第十二話 裏切り騎士
「・・・・・・」
どうやらあの時のことはまだ鮮明に覚えているらしく、アスナは神妙な顔で黙り込んでしまう。
「サブダンジョンのモンスターとはいえ、六十層のモンスターの大軍を一人でやれるほどの力を俺は持ってるんだ。それに、おれはかつて、好奇心や腕試しってだけでフロアボスに挑み、倒してきたんだぞ。そんなやつをギルドに入れる物好きはいないってことさ」
「で、でも・・・、力があるからこそ引く手は数多なんじゃないの?」
アスナの素直な疑問にソレイユは首を横に振りながら答えた。
「違うよ、全然違う。持つ者と持たざる者では力に対する価値観が全然違う」
「力に対する、価値観・・・?」
「ああ、それ故に力を持つ者はいつの時代も常に孤独なんだ・・・。理解できるのは同じ実力を持つ者だけだ・・・」
寂しそうな表情で遠い眼をするソレイユに何を言っていいのかわからないアスナ。
しかし、ソレイユはそんなアスナを見て表情を一変して口を開いた。
「まぁ、結論を言ってしまえば、そんなことは一ミリも関係なく、ただ単に俺は気まぐれな性格だから入ろうとしないだけなんだよ」
「は・・・?」
「だ~か~ら~、ただ単に俺は気まぐれに、悠々自適に生きてるだけって話」
「じ、じゃあ、今までの話しとかは・・・」
「関係ないよっ!」
いい笑顔で言うソレイユに我慢の限界が来たアスナはソレイユに怒りながら詰め寄っていく。
「わ・た・し・が真剣な話をしているのに、どうして君はふざけるのかなっ!!」
「そんなの決まってるだろ!」
アスナを飄々と躱しながら爽やかな笑顔で断言した。
「アスナをからかうのが楽しいからだっ!!」
その言葉を聞いたアスナはブチッと何かが切れ、保護コードが発動するか否かという絶妙な力加減でソレイユに拳をふるっていくが、それを笑いながらすべて躱されたのは言うまでもないだろう。
そんなこんなでふざけていると、アスナが開いていたシステムウインドウに表示されているマップの光点が動きを止めた。それを見たソレイユがアスナに問いかけた。
「休憩か?」
「うん、多分小休憩だよ。もうお昼だし」
それもそうだな、とソレイユはつぶやき、再びマップに目をやった瞬間、クラディールの近くにあったゴドフリーの光点が消滅した。そして、次の瞬間ソレイユの視界からシステムウインドウのマップが消失し、アスナの姿がはるか遠くに見えた。それを確認したソレイユは呆気にとられるが、すぐさま冷静さを取り戻しアスナを追いかるために地面を蹴った。
◆
「クラディール、あなたは・・・・・っ!?」
目の前で起こった惨劇にルナは茫然と呟くことしかできなかった。ソレイユたちと別れ、キリトと共に集合場所に行ってみると、そこにはクラディールがいた。その時点で、ルナはパーティーの再編成を訴えたが、聞き入れてもらえずそのまま訓練の始まりとなった。
そして、迷宮区の手前で休憩を取っているときにそれは起こった。支給品として渡された水に麻痺毒が含まれており、クラディールを除く全員が麻痺状態となり動けなくなってしまう。キリトの指示でゴドフリーが解毒結晶で解毒しようとしたが、クラディールがそれを許さず殺害し、続けてもう一人いた団員も殺害した。
それを見たキリトとルナは悟った。クラディールが人を殺すのははじめてではない、と。
「よォ。おめぇみてぇなガキ一人のためによぉ、関係ねえ奴を二人も殺しちまったよ」
「その割にはずいぶん嬉しそうだったじゃないか」
そう答えながらキリトは必死になって状況の打開策を考えている。ルナも同じように打開策を練ってはいるが、名案というものは浮かばないでいた。
「お前みたいなやつが何でKoBに入った。犯罪ギルドのほうがよっぽど似合いだぜ」
「クッ、決まってんじゃねぇか。あの女とそこの女だよ」
そういって、とがった舌で唇を嘗め回しながらルナを嘗め回すような視線を送るクラディール。その視線を受けたルナは不快感に顔を顰めている。そこで、クラディールの言った人物が誰なのか気付いたキリトが全身で怒りをあらわにした。
「貴様・・・!」
「そんなコェ顔すんなよ。所詮ゲームじゃねぇかよ・・・・・。それにおめぇさっき面白れぇこと言ったよな。犯罪ギルドが似合うとかなんとか」
「・・・・・事実だろ」
「褒めてるんだぜぇ?いい眼してるってよ」
甲高い笑いをもらしながら左腕のガントレットを外しインナーの袖をまくり、キリトとルナに見せつけるように向けた。
そこにあったのはあるギルドのエンブレムだった。
「ラフィン・・・コフィン・・・」
呆然と呟くルナ。キリトもせわしく呼吸をしている。
「なんで・・・今更・・・」
「おいおい、勘違いしてもらっちゃぁ困るなぁ。俺がラフコフに入れて貰ったのはつい最近だぜ。ま、精神的にだけどな」
復讐ではないと言い切るクラディール。そして、機械じみた動作で立ち上がり大剣を握りなおす。それを見たルナは身を固くするが、それを見たクラディールが口を開いた。
「おめぇはあとだ。あのガキを殺した後でゆっくりとかわいがってやっからよォ」
そういって抜いた大剣を手にしながらキリトのほうへ歩いていく。その眼には復讐の炎をもやし、両端をつり上げた口からは長い舌をたらしながら大剣を振りかざす。しかし、大剣が振り下される直前にキリトは左手首のみで投擲用ピックを投げたが麻痺による命中率低下判定により軌道がズレ、顔面ではなく左腕に突き刺さった。
「・・・・・ってぇなぁ・・・・・」
そうつぶやくとクラディールは鼻筋にしわを寄せながら振りかざしていた大剣をキリトの右腕につきたてた。そして、そのままこじるように二、三度回転させた。剣がキリトの腕をえぐるたびにHPが確実に減っていく。毒が消えるのを待つキリトだが無慈悲にも毒が抜けるまでもう少し時間がかかってしまう。そうしている間にもクラディールによってダメージは加算されていく。
「どうよ・・・どうなんだよ・・・・。もうすぐ死ぬってどんなかんじなんだよ・・・。教えてくれよ・・・なぁ・・・」
クラディールはキリトに話しかけるがキリトがそれに応じる様子はない。
「おいおい、何とか言ってくれよぉ。ホントに死んじまうぞォ?」
クラディールの剣が腕から引き抜かれ、今度は腹につきたてられた。腕よりも被ダメージが大きく、とうとうHPが危険ゾーンにまで達してしまった。しかし、キリトは先ほどのようにあきらめた様子はなく、腹に突き刺さっている剣の刀身をかろうじて動く左腕でつかみ、そのまま力を振り絞り引き抜こうとするが、剣先は確実な速度で下降しはじめる。必死に抗うキリトだが刀身は少しづつ確実にもぐりこんでいく。
「死ね――――ッ!!死ねェェェ――――――ッ!!」
金切り声でクラディールが絶叫した時、白と赤の色彩を持った一陣の風が吹いた。
「な・・・・・ど・・・・・!?」
驚愕の叫びと共に顔を上げた直後、クラディールは健吾と跳ね飛ばされた。
「・・・間に合った・・・間に合ったよ・・・神様・・・間に合った・・・」
震える声でつぶやき、崩れるようにひざまずいたアスナは目をいっぱいに見開いて唇をわななかせながらキリトとルナを見た。
「生きてる・・・生きてるよねキリト君、ルナ・・・」
「・・・・・ああ・・・・・生きてるよ・・・・・」
「・・・・・私も、なんとか・・・・・」
弱弱しくかすれた声で答える二人にアスナは頷くと、ポケットからピンク色の結晶を取り出しキリトを回復させた。それを確認するとキリトとルナに一言ささやてから細剣を抜きながらクラディールが倒れているほうへと歩き出す。向かう先ではクラディールは体を起こし、自分に近づいてくる人物を見て両目を丸くした。
「あ、アスナ様・・・ど、どうしてここに・・・。い、いや、これは、訓練、そう、訓練でちょっと事故が・・・、ぶふぁ」
必死に言い訳を募るがその言葉が最後まで続くことはアスナの右腕が閃き、クラディールの口を引き裂くことでなくなった。クラディールは口を抑え込みながら仰け反る。一瞬動作をやめ顔を戻すと、そこには憎悪の色が強く浮かんだ顔があった。
「このアマァ・・・調子に乗りやがって・・・。ケッ、ちょうどいいや、どうせオメェもすぐに殺してやろうと・・・」
しかし、その言葉が言い終えることはなかった。なぜなら、アスナが猛然と攻撃を開始したからである。両手剣で応戦するクラディールだが、光の帯を引きながら恐るべき速度で繰り出される剣尖に次々と体を引き裂かれ、貫かれていく。
「ぬぁっ!くぁぁぁっ!」
半ば恐慌を来し、むちゃくちゃに振り回すが、そのような剣が当たるはずもなく、アスナの手によってHPが危険ゾーンに突入した。
とうとうクラディールは剣を投げ出し、両手を上げ地面に這いつくばった。
「わ、解った!!わかったよ!!俺が悪かった!!も、もうギルドは辞める!あんたらの前にも表れねぇよ!!だ、だから・・・」
クラディールの甲高い叫び声が響く中アスナは細剣を逆手に持ち替え、土下座するクラディールにつきたてようとするが、その切っ先は障壁にぶつかったかのごとく停まり、アスナの細い体は激しくふるえていた。しかし、そんな状態のアスナを見たクラディールは剣を握り直し、奇声と共にアスナに斬りかかろうとしていた。それに気づいたルナはできる限り声で叫ぶ。
「アスナッ!!」
「っ!!あ・・・・・っ!?」
「アアアア甘ぇ――――――んだよ副団長様アアアアアアア!!」
狂気じみた絶叫と共にクラディールは何のためらいもなく剣を振り下そうとしたが、突然側面から剣を握る腕をつかまれ、振り下すことはかなわなかった。
「そのへんにしといたら?」
クラディールの腕をつかんだ乱入者は、そう言うなり掴んだ腕を突き飛ばした。その勢いで後退せざるを得ないクラディール。倒れはしなかったものの体勢を崩されるが、即座に立て直しながら乱入者のほうを確認したところで驚愕した。
「な、なンでテメェがここにいやがるんだよォ!?」
クラディールは乱入者であるソレイユに向かってどなりつけるが、ソレイユは意に介した様子もない。
「・・・・・また、ずいぶん派手にやってんな」
周りの状況を確認した後、溜息をつきながら、やれやれ、というように首を振っている。
クラディールはそんなことをしているソレイユに苛立ち、さらにアスナを殺すのを邪魔されたことによる怒りに任せて叫んだ。
「テ、テメェ・・・いったい何がしてぇんだよっ!!」
「何がしたいといわれてもねぇ・・・、特に何かしたいってわけじゃないんだけどね」
おちょくっているとしか言えないソレイユの物言いに沸点の低いクラディールが斬りかかろうとするが、ソレイユは構わずに言葉をつづけた。
「ぶっちゃければ、お前がどこで何をしようと知ったこっちゃないんだよ。人を殺したいなら殺せばいいさ、誰かをいたぶりたいんならいたぶればいいさ。何をしようがお前の自由なんだからな」
ソレイユの言葉に眉をひそめるキリトとアスナだが、ルナはたいした反応を見せなかった。
「俺の言いたいことは二つだよ、クラディール。他人を殺すなら、自分が殺される覚悟くらいはしといたほうがいいってこと。それから、殺されても文句は言うなってこと」
言い終えるとともに、ソレイユは流れるような自然な動きでクラディールに向かって歩き出す。無防備なことをするソレイユに驚くキリトとアスナが何かを言いかけたが、その言葉はクラディールの叫びによってかき消された。
「なにわけのわかんねェこと言ってんだよォォォォ!!」
叫びながらクラディールは上段に構えた大剣をソレイユに向かって振り下すが、ソレイユは体をそらすことでそれを避ける。避けられた大剣を今度は横薙に払おうとするが、払う直前にソレイユが大剣を持つ腕をつかみ、自分のほうに強く引っ張った。
そのため、クラディールは前のめりに体制が崩れ、ソレイユがクラディールの足を払ったため無様に地面へとうつぶせに倒れる。すかさずソレイユはクラディールの背中を踏みつけ、納刀してある鞘を首元へ突き立て、ゆっくりと刀を抜きながら、振りかぶった。
何をされるのか察したクラディールは必死な様子で命乞いをする。
「ヒ、ヒィ、まっ待ってくれ・・・し、死にたくねェ、死にたくねェんだっ!!だ、だからた、助けてくれよォ!!な、なぁ・・・・・」
「知らねぇよ」
しかし、冷たく突き放すような言葉と共に刃は振り下され、いまだに喚いているクラディールの首を切断した。当然のごとく残っていたHPは0になりポリゴン片となって消え去っていく。
その様子を冷めた瞳で眺め、完全に姿が消失したのを確認すると呆然としているキリトたちのほうへと歩み寄っていった。
後書き
また、原作と同じになってしまう・・・orz
わたしにオリジナルという言葉はないのか
わくわく感もなし、ひねりもない。
ホント申し訳ないですOTZ
ソレイユ「まったくだ、全然進歩してないじゃないか」
ぐはっ。そ、それを言われると返す言葉もない
と、とりあえず感想よろしくお願いします。
ソレイユ「どんな感想をかけってんだよ・・・」
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