ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
第十一話 それ故に・・・
死神と戦いながらソレイユはルナたちの様子を見ていた。固い皮膚を持つドラゴンに対して打撃攻撃ができるリズベットを主体に作戦を立てていくルナ。ピナと共に敵を引き付けるシリカ。そんなシリカをサポートしながらも十分な働きを見せるアスナ。状況に応じて指示を出していく司令塔のルナ。
初めて組むとは思えないような連携を繰り出し、徐々にドラゴンを追い詰めていく。そんな連携を見せる女性陣を見て死神に向きなおり、ボソッと一言呟いた。
「あんなの見せられちゃ、こっちも黙ってるわけにはいかないでしょ」
そして、先ほどまでとは比べ物にならない攻撃を繰り出していく。いきなりの攻撃の変化に対応しきれてない死神の体力が勢いよく減っていく。その時のソレイユの顔は晴れやかな笑顔であった。
◆
ドラゴンを何とかくだし、目的のものを手に入れたことを確認するとリズベットたちは死神と戦っているソレイユのほうに急いだが、その光景を目にした途端、驚きで動けなくなった。死神が倒れ、ソレイユが平然と立っているのだ。ソレイユのHPに大した変化は見られない。
そんなことを確認していると、ソレイユがリズベットたちに気付き声をかけた。
「・・・ん?よお、終わったのか。目的のもんは出たか?」
「え、っと、うん、とりあえず全員いくつか出たよ」
「そうか、こっちももうすぐ終わったところだ」
ソレイユの言葉にルナが死神にカーソルを合わせると、死神のHPは数ドットしか残されていなかった。一人でボス級を圧倒したソレイユに驚きを隠せないアスナ、シリカ、リズベットだったが、次第に状況が呑めてくると驚いた表情のままソレイユに食ってかかろうとする。
しかし、リズベットが食ってかかろうとしたとき、死神の口から不気味な声がフロア全体に響き渡った。
『オオオオオォォォォオオオォォォォォォォォ』
あらゆる負の感情が混ざり合ったかのような低く苦悶に満ちた声音だった。その声を発し終えると死神のHPはゼロとなりポリゴン片になって消えて行った。ソレイユたちは状態異常になってないか、持ち物に異変はないか確かめてみるがどこにも異変はなかった。
首を傾げるソレイユたちであったが、考えても仕方がないので若干数名が地面にへこたれながらそれぞれの現状報告となった。
「とりあえず、俺のほうは特に問題なしだ」
「私のほうはポーションが三つ減っただけだよ」
「私は、回復結晶一つとポーションが三つ減っちゃった」
「あたしは、回復結晶二つとポーション七つかな」
「あたしは、回復結晶二つとポーション八つ、ハイ・ポーションが一つです」
使用したアイテムの報告が終わり、次に相談することと言えば脱出についてである。しかし、そこで異変が起きた。
「そうか、ならあとはここを出るだけ、か。転移結晶で飛ぶか?」
「そうだね、結構疲れてるしそれがいいと思うよ」
そういって、全員が転移結晶を取り出し、転移を試みるが転移することはかなわなかった。
何かがおかしいとそれ言うが考えた時、ソレイユの索敵スキルに引っ掛かるものがあった。
「・・・・・めんどくさいことになったな」
「え?え?ど、どういうことですか?」
ソレイユの雰囲気が急に鋭くなったことを察して、狼狽するシリカ。ほかのメンバーも困惑気味だった。
そんなメンバーにソレイユは今の現状を説明していく。
「さっきの死神の声、あれには二つの効果があったんだ」
「二つの効果?」
「ああ、一つはこの遺跡を結晶無効化空間にすること。これは、今結晶が使えないことからの推測。そして、もう一つが・・・」
「も、もう一つが?」
言葉をきり、一息つくソレイユにリズベットが問い掛ける。それにこたえようとしたとき、ボスフロアの扉の奥でいろいろな鳴き声が響き渡ってきた。
「もう一つは、ボスフロア前の回廊にあった墓に眠るモンスターの復活だ。おそらく、墓の数だけ復活しているだろうよ」
「「「「ッ!?」」」」
淡々と告げるソレイユの言葉に驚愕する四人。否定したい気持ちがあっただろうが、響き渡ってくる様々な鳴き声にその気持ちは裏切られた。逃げ道なしの脱出不能な今の状況で、最後の命綱と言える結晶が使えない状況で怖がるな、というほうが無理だろう。
アスナやルナのように、最前線で戦っていればある程度の覚悟はできていようが、リズベットのような生産職やシリカのような中層プレイヤーには気が重い。それを察したソレイユは、アスナとルナに言い放った。
「ルナ、アスナ。お前らはシリカとリズベットを護ってろ。この中が安全とも限らないからな」
「あ、あんたはどうすんのよ?」
「外の雑魚共を片づけてくる」
「む、無茶よ!?いくら、あなたでもあれを全部一人で相手にするなんて!!」
「そうだよ!!ここは私たちも・・・」
「こんな状況じゃ、シリカとリズは足手まといだ。そんな二人を護りながら戦うのはつらい。だからそこでおとなしくしていろ」
「で、でも・・・っ!!」
必死で引き止めるルナたちを無視して、ボスフロアの扉のほうに歩いていくソレイユ。
「まったく、製作者の趣味は最悪だな」
その一言を呟いて、フロアボスの扉に手をかける。後ろではルナたちが何か言っていたがソレイユの耳には入らなかった。扉を開くと、数えきれないほどのモンスターが回廊を埋め尽くしていた。そんなモンスターを見てソレイユは微笑みながら告げた。
「さぁて、雑魚ども。復活早々悪いんだが旅立つ準備はいいかな」
言葉を紡ぎながらソレイユが剣を構えたところでモンスターたちはソレイユに向かって突進していく。突進してくる敵に対してソレイユは威風堂々とした様子で悠然と突っ込んでくる敵のほうに歩いていく。
1 v.s. 400
勝ち目がないと思われる戦いが始まった。
◆
「アスナ、ルナ、私たちは平気だからソレイユの加勢に行って・・・」
「そ、そうですよ。あのままだとソレイユさんが・・・」
リズベットとシリカの言いたいこともわかるアスナであったが、二人の言葉に首を縦に振ることなどできなかった。
「で、でもそれじゃ・・・」
「ううん、行こう、アスナ」
「で、でも、ルナ。そしたらシリカちゃんとリズが・・・」
「ソレイユが扉を開いて少したつけど、モンスターがこのフロアに入ってくる気配がない。けど、それがいつまでかはわからない」
ルナの言葉にハッとして入り口のほうを見るアスナだが、モンスターが入ってくる様子はなかった。
「行こう。今はソレイユに加勢しながら、敵をこのフロアには入れないようにする。そうした方が一気に守勢にはならないはずだよ」
「そう、だね。わかった!待ってて二人とも、すぐ戻ってくるからね!」
「当たり前よ!ちゃんと戻ってきなさい!」
「アスナさんもルナさんも頑張ってください!」
二人の応援を受け、武器を手に取ってフロアの入り口のほうへ向かうルナとアスナ。
覚悟をもって入り口を出て行こうとすると信じられない光景が二人の目に飛び込んできた。
――――――幻想的だった。
振るわれる刀の攻撃はすべて的確にクリティカルダメージを与え、たちまちモンスターをポリゴン片としていく。
――――――ポリゴン片が舞い散る様は桜のようであり、
次々とモンスターが倒されていくため、ポリゴン片が舞い終わることはない。
――――――その中で鮮やかに戦っている姿は舞を舞っているが如き美しさがあり、
死角から襲われようとも焦った様子を見せず、冷静に対処していく姿は圧巻としか言えなかった。しかし、
――――――どこか儚げなため、
申し合わせているようにしか思えないほど卓越していた戦いであるにもかかわらず、
――――――その姿を見た者は悉く魅入られていく。
その焦りを見せない表情にはどこか憂いに満ちているようだった。
ソレイユの姿に魅入られたルナとアスナは戦いどころではなかった。固まっているアスナとルナを不思議そうに見ていたリズベットとシリカはアスナとルナのほうへ近寄り、二人の向いているほうを見て、同じく固まってしまった。
目の前で行われているのが、戦闘ではなく演舞だと思えてしまうぐらい美しかった。加勢することなど忘れ、言葉すら失うほどその姿に魅入られてしまう。
数分後、ボス部屋前の回廊に立っていたのは、ソレイユだけだった。
砕け散るポリゴン片が舞う中でソレイユは前髪を右手でかきあげながら妖しく微笑んでいる姿は、その容姿も相まって見たものを悉く魅入られてしまう美しさがあった。
勝ち目がないと思われていた戦いは思わぬ結果に終わった。ソレイユ一人の圧勝。ダメージを負うことなくあれだけのモンスターを一掃してっしまったのだ。普通のプレイヤーには到底なしえぬことだった。そんななしえぬことを刀一本でなしてしまう。それがソレイユというプレイヤーである。そのため彼はある異名で呼ばれるようになった。
それは、数多のプレイヤーが認めたプレイヤーであるということ。畏怖の念を抱かせるほどの実力者であるという証。常軌を逸脱した異常者。剣を握る化け物。たった一人で、フロアボスを打倒した剣士。
それ故に、いつのころからかプレイヤーたちは、畏怖の象徴として彼をその名で呼び始めた。剣の頂に立つ者という意味を込めて、天蓋の化け物である証として。そう―――――
――――――≪剣聖≫、と
後書き
オリジナル回終了~。次回から原作のほうに戻ります。
しかし、私は何がしたいのでしょうかね?
こんなふうにしかかけない自分が恨めしいですorz
しかし、わたしは中二病なんだ(ドヤ
ソレイユ「そのドヤ顔が凄く腹立たしいんだけど・・・」
いいではないか。それより君の異名にそんな意味があったのか
ソレイユ「らしいな」
そっけなっ。もう少し愛想よくしないとだめだぞ
まぁ、そんなことはともかく、感想お待ちしております
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