ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第4章 俺の幼馴染とテロ屋さんが修羅場すぎる!
バレンタイン特別SS とある年のバレンタイン
前書き
遅れてしまって本当にすみません!
しかも久々の更新が本編でなくてすみません!
……いや、前回の後から研究所が年末で忙しく、年が明ければ明けたで年度末で忙しくってですね、もう全然余裕がなくて。
でもそんな中バレンタインの話は書きたくって頑張りました。
最新話も半分くらいは書けてるんでもう少しだけ待ってくださいね。
ついにこの日がやってきた。来て欲しかった、でも来て欲しくもなかったそんな微妙な日。それが俺にとってのバレンタインだ。
高校生になって初めてのバレンタイン、もしかしたら、なんていう淡い期待と共に学校に行ったわけだけれど、例年通り収穫は0。いや、まぁ、うん。分かってはいたよ? 分かってはいたけどさ、それでも期待しちゃったんだよ。もしかしたら、なんてさ。 ……そんなことを言ったら松田元浜はもとより、クラスの男子全員にぶん殴られたが。
「ただいま~」
まぁそんなわけで今年も収穫は0で帰宅。肩を落としつつ玄関を開けると……仄かにチョコの香りが。
「あら、おかえりイッセー。今日は遅かったわね?」
「おかえりなさいイッセーくん」
「いや放課後クラスの男子たちとさ……っておばさん? どうしたんですかエプロンまで付けて?」
いつも通り出迎えてくれる母さんに加え、今日はなぜかおばさんまでいた。しかもエプロンまで付けて。
「今日の晩は2家合同のバレンタインパーティーにしようと思いまして」
「お母さんと詩織さんとで腕によりをかけてご馳走作るからね?」
「……えっと、チョコの香りするけど、まさか夕飯チョコオンリーなんてことないよな?」
「やぁねぇ、そんなことあるわけないじゃない。これはお父さんたち用のチョコよ。あと黒歌ちゃんも手伝ってくれたチョコレートケーキもあるから楽しみにしてなさい」
まぁそれもそうか。と、そこで母さんが俺から鞄を取り上げる。
「それよりも早く行ってあげなさい。あの娘たち待ってるわよ」
「うふふ、娘たちのことよろしくお願いしますね?」
「あ、はい。……じゃあ行ってきます」
というわけでその場で反転、隣の家の玄関まで移動する。まぁこれがクラス男子たちにぶん殴られた原因でして、要するに学校では貰えなかったけど毎年家に帰ってから俺は幼馴染たちにチョコを貰っていたんだ。まぁ幼馴染たちから貰えるのは義理チョコだけどな。だからあそこまで怒ることはないと思うんだ。もし俺が逆の立場なら………………まぁ、うん。血涙流してるかも。
「お邪魔しま~す」
さてさていつもなら……っと、あったあった。毎年どういう順番で各部屋を回るかはこうしてメモ用紙で指示されてるんだ。なんでも毎回じゃんけんで決めてるらしい。で、今年の順番は……黒歌姉、龍巳、白音ちゃん、火織の順番か。う~む、今年の順番はなかなか……。
毎年くれるチョコはそれぞれ個人個人の性格がよく出てて……まぁ火織と白音ちゃんは安心して貰えるんだよ。だけど黒歌姉と龍巳は、ここ最近は突拍子もない物が入ってたりとか、それから一緒に悪戯とかされるんで毎年心臓に悪いんだ。で、今年はその2人が最初か……。
とりあえず心を強く持って黒歌姉の部屋に向かい、意を決してノックする。
「黒歌姉、俺だけど……」
「ど、どうぞ~」
黒歌姉の了承を聞いて部屋に入る。黒歌姉の部屋は比較的シンプルで、家具はベッドに勉強机、それから小物入れを兼ねた小さめの本棚。そして広く開いた部屋の中心にすっごくフワフワで分厚いカーペットが敷いてある。そしてその中心で若干頬を赤らめながら黒歌姉が待っていた。
「い、いらっしゃいイッセー」
「お、おう……」
「……」
「……」
き、気まずい。毎年のことだし、義理だって分かってるけど、それでもやっぱりこうして女の子からチョコを貰うのは恥ずかしい。小学生の頃なんかはもっと気軽に貰ってたのにな。
「……え、えっとねイッセー。今日はバレンタインなわけで……その……私のチョコ、貰ってくれる?」
とそこで、恥ずかしげに上目遣いをしてくる黒歌姉。ぐ、か、かわいい。いつも大胆なくせしてこういう時乙女の顔が出てくるからそのギャップがまた……
「……あの、イッセー?」
はっ!? い、いかんいかん。つい見とれちまってた。
「あ、ありがとう黒歌姉。喜んで貰うよ」
と、そこで気付いた。黒歌姉手ぶらだ。さっと部屋を見渡してもそれらしいものはない。おかしいな。いつもは一応ラッピングされた箱があるはずなのに……って!?
「黒歌姉何やってんだ!?」
黒歌姉がいきなり制服のリボンを取ったと思ったらブラウスのボタン外し始めた!
「い、イッセーはおっぱいが好きでしょ?」
「はい!? い、いやまぁそりゃ好きだけど」
「だからその………………はい!」
そこでバッとブラウスを広げて前をはだけさせた!
「私のチョコ受け取って!」
「ブゥっ!?!?」
俺の目に飛び込んできたのはおっぱいにブラジャーの形に塗られたチョコだった!
「す、好きなだけお姉ちゃんのおっぱい、ぺろぺろしていいよ?」
「ペッ……!?」
ぺろぺろって!? っていうか黒歌姉、顔どころか全身真っ赤じゃねぇか! そんな恥ずかしいならやるなよ! って!?
「黒歌姉溶けてる溶けてる! チョコ垂れそうになってる!」
「えっ!?」
恥ずかしさで体温がグングン上がっているのかチョコがどんどん溶け出してて、ついにはその桜色の頂上が……
「に、にゃぁぁああっ!?」
黒歌姉は両腕でおっぱいを抑えると、そのままうずくまっちまった。っていうか「にゃあ」って。ずいぶん可愛らしい悲鳴だなおい。黒歌姉のあんな声初めて聞いたぞ。
「その、黒歌姉。いくら俺に悪戯したいからって、流石にやり過ぎっていうか……そんなに恥ずかしいなら最初からやるなよ」
「う、うぅぅぅっ……」
いやそんな唸られましても。しかもめっさ涙目だし。
「イッセーは私のチョコ食べてくれないの?」
「いやその状況でどう食えと……」
「う、うぅ……じ、じゃあ……」
そう言うと黒歌姉は溶けてるチョコを人差し指ですくい取り、それをそのままこちらに差し出してきた!
「あ、あ~んっ」
「ってこれを食えと!?」
「……ダメ?」
「う……」
そ、そんな泣きそうな目で見られたら……
「わ、分かった! 分かったからそんな目で見るなって!」
俺は観念して黒歌姉の前にしゃがみ込んで口を開ける。
「えと、じゃあ改めて……あ~ん」
「あ~」
口の中に突っ込まれてきた黒歌姉の指を咥え込み、そのままチョコを舐めとる。さすが黒歌姉の作ったチョコだけあって味はとてもいい……んだけどそこに微かにほんのりとした塩み……多分これが黒歌姉の味なんだろうけど……それが混ざってもう頭がくらくらするというかいつまでもしゃぶっていたいというか……。
口の中からチョコが無くなると、名残惜しいと思いつつも指から口を離す。すると俺の口と黒歌姉の指の間にタラァッと唾液の糸が。うわぁぁエロい。
「えと、その、美味かったよ」
「そ、そっか、良かった」
そして恥ずかしがりつつもにっこり笑う黒歌姉。ぐ、可愛すぎてどうにかなっちまいそうだ。と、とりあえずチョコは貰ったし、どうにかなっちまう前に次に……
「あ~ん」
「……」
急いで立ち去ろうとする俺にまたしても差し出される黒歌姉の指。まさかその谷間に溜まってるチョコ全部この方法で食えと?
「……」
「……」
パクっ……と誘惑に負けて黒歌姉の指を咥える。こ、これで最後だ。これ食ったらもう次に……
「あ~ん」
「……」
パクっ
「じゃあまた後で、な……」
「う、うん……」
パタンと黒歌姉の部屋の扉を閉じて大きく息をつく。結局黒歌姉のおっぱいに付いてたチョコ全部食っちまった。黒歌姉に覆いかぶさって胸から直接チョコを食べようとする衝動を理性で抑えこむのは大変だったぜ。と、とりあえず最初の難関は突破したし、後の3人がこれよりも精神的にクることはないだろうから………………無いよな? これよりも酷くはないよな?
そのまま若干の不安を胸に龍巳の部屋へ向かう。もう今のだけで精神力使いきった感あるし、後は普通のチョコが来るのを祈ろう。
コンコン……
「龍巳、俺だ」
「ん、入って」
指示に従い龍巳の部屋の扉を開ける。龍巳の部屋は片側の壁が全部本棚とフィギュアラックになっており、その中にはぎっちりとオタクグッズが入っている。さらに反対の壁には様々なアニメのタペストリー、天井にはいろんなポスターが。さらにベッドには添い寝シーツが被せてあり、その上にはキャラ物の抱き枕。もう女らしさなんて欠片もないガチオタ部屋だ。そしてそんな部屋の中央には……
「イッセー、食べて♡」
全裸にリボンでおっぱいの頂上に輪がぎりぎり隠れるくらいにチョコを塗った龍巳がこっちに両手を広げて……って!?
「龍巳、お前もかぁっ!?」
俺は着ていたブレザーをすぐさま脱ぎ、龍巳に向かって投げつけた。
「ったく、お前なぁ……」
「うぅぅぅ……」
いやだからそんなに唸るなよ。今俺は龍巳のベッドの縁に腰掛け、隣には俺のブレザーを羽織った龍巳が体育座りでこっちを恨めしげに見ていた。っていうかそんな格好で足上げるな。いくらお前が俺より体ちっちゃいからって、俺のブレザーだけじゃ全部隠れきれてないんだからさ。さっきからおしりだの太ももだのチラチラ見えて目の毒だ。
「黒歌お姉ちゃんのは食べたくせに……」
「なんで知ってんだ。っていうか黒歌姉のも直接口つけて食べてはいないからな?」
それに黒歌姉は制服の前肌蹴させただけだったのに対して、お前の全裸にリボンはやり過ぎだ。しかもチョコの範囲があまりにも小さい。ピンポイント過ぎる。
「……分かった。譲歩」
そう言うと龍巳はブレザーの中に手を突っ込んでまさぐると、何かを手に取ってこちらに差し出してきた。
「これなら食べる?」
「……えっと、これって」
龍巳から差し出されたものを受け取る。それは茶色くて薄っぺらい円形のもので……っていうかこれってチョコだよね? そんでもってこの形から察するに……
「龍巳、これって……」
「うん、剥がした」
やっぱりか! これさっきまで龍巳のおっぱいに付いてた……というより乳首と乳輪に付いてたチョコを剥がしたものか! ということは……
俺は受け取ったチョコを裏返してみる。するとそこには乳首の形と、更に乳輪の表面の凹凸までくっきりと。うわぁぁ生々しい……。溶かしたチョコ直接塗って固めた所為か、ばっちりと型取りされていた。
「イッセー、それなら食べれる」
「……いや、これはこれでギリギリアウトな気も……」
でも龍巳がせっかく用意してくれた物だし……それに龍巳の目が若干潤み出してるし……食べるしかないか。
「じゃあいただきます」
「ん」
一口サイズのチョコを口に放り込み噛み砕く………………前に、その、なんだ……他意はないよ? 他意はないけどなんとなく噛む前におっぱいに張り付いていた面を舌で舐めてみる。今まで松田や元浜と見てきた映像とかでは分からなかったけど、乳輪って意外と小さな凹凸が……
「イッセー、おっぱいの味する?」
ガリゴリバリッッ!!
「あぁっ!?」
俺は龍巳が巫山戯たことを言うのと同時にチョコを思いっきり噛み砕いた。
「イッセー、酷い」
「酷いのはどっちだ」
「うぅぅ……」
「まぁその……なんだ……美味かったよ」
「おっぱいが?」
「チョコがだ!」
ったくこいつは。まぁ貴重な体験をさせていただきました。
「じゃあ俺もう行くな」
そう言って立ち上がるんだけど……
「待って、イッセー」
「ん、どした?」
何故か龍巳に呼び止められた。
「チョコ、もうひとつある」
「……あー」
まぁおっぱいは2つあるし、チョコが2つあるのも当然か。
「分かった。ちゃんと食べるから出せ」
そう言って俺は手を差し出す。しかし龍巳は
「ん」
ボロンと片乳をブレザーから出してこちらに差し出してきた!
「バッ!? 何やって!?」
「イッセーが剥がして」
俺が剥がすの!? っていうか無理だって! 今でも理性が効かずに龍巳のおっぱいガン見しちまってるっていうのに、更に触れたりしたら……
などと思っている間にも龍巳はどんどんこちらに迫り、更には俺の手を取って……
ふにょん
や、やわらけぇ! 間にチョコ挟んでるから直接触ったわけでもないし、そのチョコに触れてるのだって人差し指だけなのに、それでも感じられる圧倒的柔らかさ! こ、これがおっぱい!
そしてそのまま爪で引っ掛けてチョコをペリッと剥がす。するとその下のピンクのものが見えそうになって……俺はとっさに目を閉じた。
「……見てもいいのに」
「いや、流石にダメだろそれは」
目を閉じたままチョコを口に放り込みつつ言う。そして舐めてみれば、その凹凸が舌の上にしっかり感じられて………………形状って左右で若干違うんだな。
「じゃあ今度こそ俺行くからな」
「ん、食べてくれてありがと………………次は直接、ね?」
「バカ」
目を閉じたまま部屋の外に出て、ようやく一息つけた。っていうかやばかった。黒歌姉に続き龍巳まであんなチョコ用意してたとか。危うく理性が崩壊するところだったぞ。それに……
俺はそのまま視線を下に下ろす。するとそこにはしっかりとしたテントが張られていて……
「ちょっと落ち着いてから次行くか」
そのままその場で深呼吸を繰り返した。
「ずいぶん遅かったですね、お兄ちゃん」
白音ちゃんの部屋に入って言われた第一声がそれだった。っていうか白音ちゃん、若干不機嫌? ジト目で睨まれるし……。
白音ちゃんの部屋は全体的に薄いピンク色で統一されていて、さらに各所にフリル地などがあしらわれた、4姉妹の中でも一番女の子してる部屋だ。でも俺は知っている。部屋の入口すぐ横のクローゼットの中は龍巳に負けず劣らずオタク空間が広がっているのを。っていうか白音ちゃんは友だちを部屋に呼ぶときのためにこういった普通の部屋にしてるらしいんだけど、だったらパソコンの前のペンタブとトレス台も隠そうぜ。その2つだけが部屋にマッチしてないからさ。というか学校の連中も白音ちゃんがオタクだってこと知ってるだろうに。隠す意味あんのかね?
で、そんな部屋の中心にいた白音ちゃんは部屋に入ってきた俺に近付いて来ると
すんすん
いきなり俺の口元に顔を寄せてきて匂いをかぎ始めた!?
「な、何!? どうしたの!?」
「……お兄ちゃんの口元から黒歌姉さまと龍巳姉さまの匂いがします」
「えぇっ!?」
俺はとっさに口を抑えて口臭を確かめる。でもチョコの匂いしかしないよな?
「す、するか?」
「私鼻はいいんです。……あのチョコ食べたんですね」
「うっ、2人のチョコ知ってたのか?」
「まぁ一緒に作りましたから」
な、なら知ってて当然か。でも
「直接口つけて食べてはいないからな?」
「当たり前です。そんなことしてたら今ここで殴ってます」
あはははぁ~、冗談に聞こえねぇ。
「(でもあのチョコを食べたのなら、私もちょっとくらい良い思いしても……いいですよね?)」
「ん? なんだって?」
「いえ何でも。それよりお兄ちゃん、私のチョコももちろん食べてくれるんですよね? それとも……もしかしてもうお腹いっぱいですか?」
「まさか! ちゃんと白音ちゃんのも貰うよ。っていうか高1の、それも運動部男子の胃袋なめんなよ?」
まぁ龍巳や白音ちゃんほど大食いでもないけどな。っていうか2人のどこにあんな量の飯が入るのか未だに不思議だぜ。
「えっと、じゃあ……」
そう言って先程までの超至近距離から少しだけ離れる白音ちゃん。その両手は部屋に入っていた時からずっと後ろに回されていた。つまりそれは黒歌姉や龍巳のように突拍子もない物が飛び出してくる可能性が低いということで……白音ちゃんは毎年同様普通のチョコくれるようでよかったぜ。
「ハッピーバレンタインです、お兄ちゃん!」
そう言ってにっこりしながらこちらに差し出してきたのは
「おぉっ!」
定番のラッピングされた箱や袋ではなかったけど、それ以上に豪華なものが出てきた! 差し出されたのは1本のリボンが巻かれたおしゃれなガラスのコップ。そしてそのコップには棒状のクッキーにチョコをからませたもの、いわゆるポッキー状のお菓子が20本くらい挿してあった。そして何が豪華だったかというと
「すげぇ! これ全部味が違うのか!?」
そう! ポッキーのチョコ部分の色が全部違っていたのだ!
「はい! 中のクッキーも手作りなんですけど、チョコも全部で18種類の味付けを作ってみました!」
マジでか!? じゃあこれマジで全部手作り!? やべぇ! めっちゃ嬉しい! そりゃさっきまでの2人のチョコもあれはあれで男として嬉しかったのは否定しないけど、それとは別種の嬉しさだ!
「えっと、じゃあ早速貰っていい?」
「はい、とりあえずそこ座ってください」
と言って指されるのは床においてある例の人を駄目にするクッションだ。白音ちゃんはこれが好きなようで部屋に4つも置いてあったりする。
という訳でその内の1つに腰を下ろすんだけど……
「じゃあ失礼します」
「えぇっ!? 白音ちゃん!?」
い、いきなり白音ちゃんが膝の上に横座りで乗ってきたぁっ!?
「ちょっ!? 白音ちゃん!?」
「黒歌姉さまと龍巳姉さまのあのチョコ食べたんですよね? ……なら私もこのくらい良いじゃないですか」
うっ……それを言われると
「という訳で私が食べさせてあげます」
「ってどういう訳!?」
繋がってない! 前後の文脈が繋がってないよ白音ちゃん! って
「あの、白音さん? あなたは何をしておいでなのでしょうか?」
いかん、あまりのことに変な口調になっちまった。でもしょうがないって! だって食べさせてくれるって言ってたからてっきり黒歌姉みたいにあ~んってされると思ったのに、白音ちゃんがいきなりポッキーの先を咥えたと思ったら、反対側をこっちに差し出してきたんだから! っていうかこれって
「ふぁい、ど~ひょ」
やっぱりか!? っていうかこのポッキーゲームまがいのことをしろと!?
「あの、白音ちゃん……」
じ~っ
「いや、だから……」
じ~っ
「その……」
じ~っ
「……」
じ~っ
ぱくっ……
視線から来る無言の圧力に負け、差し出されるポッキーを咥えてパリポリと食べ進む。そして唇と唇が触れ合いそうになった所でポッキーを折り、顔を離して口の中身を咀嚼する。
「……」
「……」
いやそんな不満そうな顔されましても。あのまま白音ちゃんが咥えてた部分まで食べ進めろとでも言うつもりかこいつは。っていうか白音ちゃん、こっちが食べ進める間もじっと俺の顔見てくるもんだから恥ずかしいやらドキドキするやらでせっかくのチョコの味に集中できないし。
と、俺が口の中のチョコを飲み込むと同時に、待ってましたと言わんばかりに先程と同様の方法でチョコを差し出してくる白音ちゃん。
「……」
「……」
これを合わせて残っているポッキーは17本。……長い戦いになりそうだぜ。
「お疲れ様、イッセー」
「おぅ……」
今俺は火織の部屋の椅子に座ってうなだれていた。黒歌姉、龍巳、そしてまさかの伏兵の白音ちゃんを乗り越えてようやくここまで辿り着いたぜ。長く厳しい戦いだった。っていうか白音ちゃんには完全に油断してたせいもあってもう精神的な疲労が半端ない。でもそれらの誘惑を乗り越えついにここまでやって来た!
「で、火織もその……今年もくれるのか?」
「まぁ用意はしてるけど、流石にもうお腹もいっぱいなんじゃない?」
「そ、そんなこと無い無い! まだまだ食えるって!」
俺はその言葉に慌てて椅子から立ち上がり、ベッドに腰掛けていた火織に詰め寄った! ここまで来たのに火織に、好きな女の子にお腹がいっぱいだからチョコを貰えないとか、そんなことあっていいはずがない!
「ふふっ、イッセー、そんながっつかなくても」
「あっ」
そこで気付いた。俺慌てるあまりいつの間にか火織の肩に両手を置いて鼻と鼻が触れ合いそうなくらい顔を接近させちまってた!
「ご、ごめん火織! 俺つい!」
「もう、本当にイッセーはエッチよねぇ」
「うっ……」
俺は急に恥ずかしくなり、そのままぺたりとその場に座り込んでしまう。そんな俺に火織は苦笑すると、机の引き出しからラッピングされた箱を1つ取り出して渡してきた。
「はい、どうぞ」
「あぁ、ありがと」
ようやく最後に来て普通にチョコを渡されたよ。いや今までが異常過ぎたんだけど。というわけで早速包装を解いて中身を見よう。なんたって今日一番楽しみにしてたことだからな。少しでも早く火織のチョコが食べたい!
そして手早く包装を解き、少し大きめの箱を開けた………………瞬間!
ビヨ~~ンッ!!
「うひゃあっ!?!?」
「ぷっ、あっはっはっはっ!! 『うひゃあ』だって! あっはっはっ!」
箱の中からピエロの人形が飛び出してきた!? っていうかこれってチョコじゃなくてびっくり箱じゃねぇか!!
「火織ぃっ!」
「あっはっはっ! ごめんごめん。でもみんなも色々サプライズ用意してたし、私も何かしかけてみたくって。……でもまさか『うひゃあ』って、イッセーちょっと驚きすぎ!」
そう言ってお腹を抑えてなおも笑い続ける火織。
「そんな笑わなくったっていいじゃねぇか。楽しみにしてたのに……」
「ごめんって、そんな拗ねないでよ。ちゃんとその下にチョコ入ってるからさ」
「下?」
俺はなおも箱の中からバネでビヨンビヨン跳ねてるピエロをバネごと引っこ抜く。するとその下には
「っ!!」
デコレーションされたハート型。そして中央には『Happy St. Valentine To Issei From Kaori』の文字が。何も知らずに受け取れば本命チョコと間違えそうなくらい立派な手作りチョコが入っていた。
「なんか食べるのもったいないくらい立派なチョコだな……」
「えぇぇ、せっかく頑張って作ったんだからちゃんと食べてよ」
「おぅ」
誤って落としたりしないよう慎重に箱から取り出し、端の方からかじってみる。するとなんと本体のチョコは二重構造になっていて中にはイチゴ味のクリームが入っていた。幼馴染み1人に渡す義理チョコに一体どれだけ手間かけて作ってくれたんだ、火織。
「美味しいよ、火織。めちゃくちゃ美味しい」
「そっか、よかった」
そう言ってにっこり笑う火織。その笑顔を見て……
あぁ……やっぱり俺、火織のことが好きだ。この笑顔を独占したいし、チョコだって今度は義理じゃなく本命として欲しい。
来年こそ、いや来年は無理でも再来年、もしくはもっと先になるかもしれないけど、いつか火織から本命のチョコが貰えるようがんばろう。でも今は……
俺は思わず涙が零れそうになるのを堪えつつ火織のチョコを欠片も残さず味わって食べた。いつか必ず火織を振り向かせてみせると決意しながら。
こうして俺の今年のバレンタインは幕を閉じた。
……閉じたら良かったんだけどなぁ。
「「はい、イッセー♡」」
「ふぁい、おふぃいひゃん♡」
夜の2家合同のバレンタインパーティーにて問題は起こった。食後のチョコレートケーキを食べる時になって上半身下着姿の黒歌姉と龍巳がおっぱいを寄せてその谷間に、そして白音ちゃんは口を大きく開けて舌を突き出しその舌の上にケーキを乗せて迫ってきたのだ!
「ちょっ!? 何やってんだお前ら!?」
っていうかここには家族全員揃ってるわけで、つまり親の前だぞ!? こんな所見られたら……
「懐かしいわねぇ、私も昔やったわ」
「うんうん、男のロマンだよなぁ」
えぇ!? うちの親的にはOKなの!? っていうか親のそんな思い出話聞きたくなかった! で、でも流石にうちの親はあれでもおじさんとおばさんは……
「詩織、俺もあれ」
「何言ってるんですかもうっ! ………………子どもたちが寝た後に、ね?」
こっちもか!? っていうかこの親にしてこの娘ありだった! この親たち性に関して寛容すぎんだろ!
「か、火織! お前から何か言ってやって……」
「男の見せ所よイッセー!」
「えぇっ!?」
まさかの俺1人アウェーかよ!?
「「イッセー♡」」
「おふぃいひゃん♡」
「え、ちょっ!?」
更にそのまま迫ってくる黒歌姉に龍巳、白音ちゃん! あぁ、もうっ!
「勘弁してくれぇっ!!」
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