大陸の妖精
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・番外編・ X778 アルトとリサーナ
前書き
リサーナが死んだ場面にアルトも立ち会ってたという設定にします
その方がエドラス編の時、何かと都合が良いので(笑)
ここは日差しが差し込む森の中
その森の中にある巨大な湖のほとりに一人座る黒髪の少年
そして、その数メートル後ろの木の陰には桜色の髪をもつ少年一人と、空を飛ぶ青い猫が一匹、隠れていた
アルト「・・・・・」
黒髪の少年、アルトは水面に映る空を見ながら一人物思いにふけていた
どうやらこの森の中に来ると思いだす仲間の女性がいるらしい
ナツ「いいかハッピー、絶対に〝リサーナ〟の名前は出すなよ!あくまでも自然にアルトを釣りに誘うんだ」
ハッピー「あい!分かってるよナツ」
二人はひっそりと話し合った後、笑顔でアルトに話しかける
ナツ「アルトー!一緒に釣りに行こうぜー!!」
ハッピー「おいしいお魚釣ろう!!」
アルト「ナツ、ハッピー・・・!」
アルトは二人の登場にいささか驚きながらも、笑顔で答える
アルト「ごめん、今日は遠慮しとく・・・今は一人にしてほしいんだ」
ナツ「なーに言ってんだよ!!今日みたいな天気こそ絶好の釣り日和じゃねえか!!」
アルト「いや、でも・・・」
ハッピー「あい!いつまでもリサーナの事で塞ぎ込―――むぐっ」
ナツ「バカっ!!」
アルト「!」
〝リサーナ〟という女性の名前を聞いたアルトがピクッと肩を震わせる
その光景を見たナツが急いでハッピーの口を手で塞ぐ
ハッピー「むぐぐっ!!」
ナツ「あ、アルト!今のは・・・!!?」
咄嗟に言い訳しようとしたナツが黙りこむ
無表情のアルトの背後に見える負のオーラを感じ取ったからだ
アルト「ナツ・・・ハッピー・・・」
座り込んでいたアルトがゆっくりと立ち上がる
ナツ「あ゛・・・あ゛い」
ハッピー「むぐっ・・むぐぐ・・・」
アルト「今は一人にしてくんねえかなァ!?」
静かな怒りを声にのせ、ナツたちに言い放つアルト
ナツ「お、おおおう、分かった!!じゃあまたあとでなー!!」
ハッピー「むぐーっ!!(今のアルト怖いよー!!)」
恐怖に包まれたナツたちはそそくさとアルトの前から去って行った
アルト「・・・はぁ、バカだ俺・・・せっかくナツたちが励まそうとしてくれたのに・・・」
誰もいなくなった後、再びアルトは湖のほとりに座る
アルト「・・・・・」
アルトはリサーナの最期を思い出していた
昔、ミラに半ば強引に手伝わされた仕事の依頼
リサーナとエルフマンもミラの仕事の手伝いをするためアルトと同じくミラに同行した
◆◇◆◇◆◇◆◇
鉛色の空の下、依頼を遂行するため深い森の中に入っていたアルトたち
視界の悪い雨の中でアルトとリサーナがエルフマンと対峙していた
全身接収に失敗したエルフマンが暴走し、敵味方の区別がつかない状態になっていたのだ
アルト「リサーナ、危険だ!今の暴走したエルフマンじゃお前を攻撃しかねない!!お前は下がってろ!!!」
リサーナ「ううん、あたしなら戦わずにエルフ兄ちゃんを正気に戻せるかもしれない!ここはあたしに任せて!!」
アルト「っ・・リサーナ!!」
叫ぶアルトがリサーナの腕を掴む
リサーナ「大丈夫、あたしを信じて!!」
アルト「!!」
かつて自分が言ったセリフをなぞるかのように言うリサーナ
アルト「・・・信じるぞ、リサーナ!!」
リサーナ「うん、アルトは先にミラ姉と合流して!!」
目から互いの気持ちを読み取ったアルトとリサーナは背を向けあった
アルトはミラの元へ走り出し、リサーナはエルフマンとの接触を試みた
それから少し経ち、アルトは急いでミラをその場に連れてきたが遅かった
エルフマンの攻撃によって、リサーナの身体は完全に消え去ってしまったのだ
◆◇◆◇◆◇◆◇
アルト「あの時・・・俺が無理やりにでもリサーナを止めていれば・・・」
後悔の念に苛まれるアルト
アルト「・・・あれから2年・・・お前は俺を許してくれるか?リサーナ」
アルトが誰も居なくなった森の中で一人問う
答えの代わりに心地良いそよ風が吹いた
今日も愉快な笑い声が飛び交うギルド、その名もフェアリーテイル
そんなフェアリーテイルの書庫の中から可愛らしい悲鳴が響く
ルーシィ「痛ーーーーーっ!!!」
悲鳴の正体はギルドメンバーの一人、ルーシィ
書類の整理をしていたルーシィがはしごの上から足を滑らせ、転落したようだ
ミラ「大丈夫?ルーシィ」
隣のはしごからミラが急いで降りてくる
ルーシィ「あはは、すみません・・・こーゆーの慣れてなくて」
ミラ「ごめんね・・・書類の整理手伝わせちゃって」
ルーシィ「ぜんぜん手伝いますよ!」
笑顔で答えるルーシィ
地面から立ち上がり、もう一度整理を始めようと一枚の小さな紙を取る
ルーシィ「ん?」
ルーシィは手に取った紙に違和感を覚える
見るとそれは書類ではなく、一枚の綺麗なスケッチ絵だった
ルーシィ「なんだろ、この絵」
ミラ「わぁ!なつかしい!!」
ルーシィが持つ絵を覗き込むミラ
そこには幼き頃のアルトたちが描かれていた
ミラ「子供の頃の私たちよ、リーダスが描いてくれたの」
ルーシィ「えええっ!!?」
絵に移っている人物がミラたちと聞いて驚くルーシィ
ルーシィ「じゃあ・・この裸の男の子がグレイで・・髪にウェーブがかかってる女の子がカナで・・・」
ルーシィが絵に移ってる人物を片っ端から言い当てていく
ルーシィ「この黒髪の男の子って・・・もしかしてアルト!?」
正面を向いて照れくさそうに笑っている少年を指さすルーシィ
ミラ「そう、この子がアルトよ」
ルーシィ「へぇー・・・!!」
少年の正体がアルトだと知ったルーシィは、絵の中に描かれているアルトを無意識に見つめていた
ミラ「・・・目の色が変わってるわよ、ルーシィ」
ルーシィ「!!」
ミラに声をかけられ、初めて我に返るルーシィ
ミラ「小さい頃のアルトも可愛いでしょ?」
ルーシィ「ええっ・・・!?いや・・・あの・・・私、別にアルトを見ていたわけじゃ・・・/////」
ミラ「いいのよ隠さなくて、好きな人の事なら気になって当たり前だし♪」
ルーシィ「うぅ・・・/////」
その時、ルーシィは絵に描かれているアルトの隣にいる一人の女の子に視線を移す
アルトの右腕にしがみつき、満面の笑みを浮かべてる白髪の女の子
ルーシィ「(この女の子・・・誰だろう?白い髪だけど、ミラさんじゃないし・・・)」
ルーシィが考え込んでいると、ミラが話し出す
ミラ「ちなみに、中央に描かれてるのがナツとハッピーね」
ルーシィ「えええっ!?マフラーしてるからナツは分かるけど・・・これがハッピー!?」
絵に描かれてるナツとハッピーも見たルーシィが驚いた
それもそのはず、絵に描かれたハッピーは青い猫ではなく、青い竜だったのだ
ルーシィ「ていうか、ナツとハッピーの出会いってどんな風だったんですか?」
ミラ「うーん・・そうね、あれは私がフェアリーテイルに入ってすぐの頃だから・・・今から6年くらい前の話ね」
そう言ったミラはルーシィに昔の出来事を話し出した
6年前
ナツ「アルトー!アルトどこだー!!」
アルト「なーに、どうしたのナツ?」
ナツ「卵だー!!!!卵ひろったー!!!!」
同時 まだ幼かったナツが、自分の身体よりふた回りほど小さな卵を抱えてギルドに帰ってきた
マカロフ「卵だぁ?そんなもん一体どこで」
ナツ「東の森でひろったんだ」
アルト「おっきい卵だな!」
ナツの抱える卵の大きさに目を丸くするアルト
卵の事を聞きつけたグレイたちもやってくる
ナツ「孵すためにもってきたんだ!」
アルト「何の卵だろう?」
ナツ「決まってるじゃねーか!ドラゴンだよ!ドラゴンの卵!!」
アルト「ドラゴン!?」
ナツ「見ろよ、この辺の模様とか竜の爪みてーだし」
ナツが嬉しそうに卵の模様を指さした
アルト「う・・うーん・・・そう・・だね」
グレイ「いや、どう見たって違げーだろ」
ナツ「とりあえず孵してみれば分かるんだよ!!つー訳で、じっちゃん!ドラゴンを誕生させてくれ」
アルト「マスターお願い!」
マカロフ「何を言うか、ばかもん」
目を輝かせるナツとアルトにマカロフが丁寧に語る
マカロフ「この世界に生命を冒瀆する魔法など無いわ、生命は愛より生まれるもの、どんな魔法もそれには及ばぬ」
アルト・ナツ「「・・・・・」」
マカロフの言葉を聞き、ナツとアルトが顔を見合わせ、口を開く
ナツ「何言ってるかぜんぜん分かんねえ」
アルト「強くなるには魔法より愛を鍛えればいいの?」
マカロフ「ガキには早すぎたか」
エルザ「つまり、孵化させたければ一生懸命自分の力でやってみろという事だ」
頭にハテナマークを浮かべるアルトたちにエルザが歩み寄る
エルザ「普段 物を壊す事しかしてないからな、生命の誕生を学ぶにはいい機会だ」
ナツ・グレイ「「エルザ!!」」
ナツ「い・・いたのか」
グレイ「オ・・オレたち、今日も仲良くやってるぜ」
エルザの姿を見たナツとグレイが素早く肩を組み、エルザから離れる
アルト「エルザ、おかえりなさい!」
エルザ「あぁ、ただいまアルト・・・少し暑いな、水を持ってきてくれ」
アルト「あ、うん・・分かった!」
エルザの頼みを聞き入れたアルトが水を持ってこようとカウンター席に向かう途中
「待ちな、アルト!!」
綺麗な声がアルトの足を引きとめた
アルト「み、ミラさん・・・」
ミラ「アルト、お前はいつからエルザ派になったんだぁ?お前はアタシのしもべだと何度言ったら・・・」
ミラが文句を言いながらアルトに歩み寄る
エルザ「その辺にしないかミラ、アルトはお前のしもべじゃない」
ミラ「エルザか・・・ふっ・・・確か、前もこの話で勝負になったっけねぇ・・・」
エルザ「あぁ・・・そういえば、まだ決着がついてなかったな」
そう言ったミラとエルザは向かい合う
ミラ「アタシが勝ったらアルトはアタシの好きにするよ」
エルザ「いいだろう、私が勝てばアルトを解放してもらおう」
アルト「あれっ・・・オレの意思は?」
アルトが二人に気づかれぬようボソッと呟いた
二人は互いに数秒睨みあい、同時に殴りかかる
ミラ「くたばれエルザァ!!!!」
エルザ「泣かすぞミラジェーン!!!!」
凄まじい殴り合いの空気に耐えられず、アルトは二人の前からそーっと逃げ出した
アルト「ふぅー・・・もうっ、二人ともいい加減にしてほしいなぁ」
リサーナ「ふふっ、いつも大変だねアルト」
ため息をつくアルトの前に白髪の少女が現れる
アルト「あ、リサーナ!」
リサーナ「ねぇ アルト、あたしたちでナツが卵を育てるのを手伝おうよ!」
楽しそうに、笑顔で話すリサーナ
アルト「卵を育てる・・・かぁ」
アルトは少し考え、リサーナと同じく笑顔で答える
アルト「うん ナツに頼んでみようか、卵育てるのって楽しそうだし!」
リサーナ「というわけでナツ、あたしたちも一緒に育てていい?」
ナツ「アルト、リサーナ、手伝ってくれんのか!!」
リサーナ「うん!!なんか面白そうだし!!卵育てんの」
用意した柔らかいクッションの上に卵を置くナツたち
アルト「って言ったものの・・・どうすれば孵るの?」
リサーナ「昔・・・あっためたら孵るって本で読んだことあるよ」
アルト「あっためる!?それならナツの出番じゃん!!」
ナツ「おーともよ!オレの得意分野じゃねーか!!!!」
そう言ったナツが炎を吐いて卵をあっためる・・・というか焼く
リサーナ「きゃああーーーーー!!!!!」
その光景を見たリサーナが悲鳴を上げる
アルト「いいぞーナツ!!」
リサーナ「よくなーい!!」
リサーナは慌てて火を吐くナツを止める
リサーナ「ダメだよ!!そんなにそんなに強くしたらコゲちゃう」
ナツ「そ・・そうか?」
アルト「火がダメならどうやってあたためればいいの?」
リサーナ「ここはあたしにの魔法に任せて!接収・アニマルソウル!!!!」
魔法を使ったリサーナが、鳥の身体に変化した
アルト「おお!!鳥かぁ!!」
リサーナ「これであっためてみたらどうかな?こうやって」
鳥となったリサーナが卵をやさしく包み込む
ナツ「頭いいな!!」
アルト「やるな、リサーナ!!」
リサーナのアイデアに感心するアルトとナツ
そしてそんな様子を遠くから見つめるエルフマン
エルフマン「・・・・・」
カナ「どうしたの、エルフマン」
エルフマン「リサーナも姉ちゃんも全身接収使えんのにオレだけ使えねーんだ・・・漢なのに」
カナ「ああ・・・あんたら三人とも同じ魔法使うんだっけ?」
エルフマン「俺にも何か出来ることねーかなぁ・・・」
エルフマンは卵を見つめながら、そう呟いたのであった
後書き
アニメ要素も取り入れたので結構長いです
一旦区切ります
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