DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)
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愛するがこその告白
私とお母さんが甲板に戻った時、ウルフとお兄ちゃんはお父さんに正座させられ説教を受けている最中だった。
1時間にも満たない時間だが、お母さんに言われた事柄が頭から離れないでいる。
『お父さんが言っていたわ…“双方が同意の上で、互いに身体だけの関係を続ける事に反対はしない…でもウルフは間違いなくマリーを心から愛してる!マリーの事を身を犠牲にしてまで守った、ウルフの気持ちを裏切るようなことは絶対に許さない!”この意味が分かる?貴女の考え方一つで、彼の人生までも変わるのよ!』
『前世で貴女がどんな人生を送ってきたかは分からない…でも、今この時代を生きるのであれば、先人たる私達大人の云うことを聞きなさい』
『お父さんはね…幼い頃から想像を絶する苦労をしてきたのよ…あんな風に見えてもね。軽視して良い存在じゃないことを解りなさい』
『私達は貴女の親よ。貴女がどう思おうともね…』
前世での私は、何をやっても上手く行かない人間だった…
だからアニメやゲームに逃避し、その世界に入ることを心から望んだ。
そして今ココにいる。
DQ5の主人公の人生は、類を見ない程の悲運であることはよく知っている…
私では耐えられないだろう…でも父は耐えたのだ。
なのに私はあの人を軽視していた…
父のチャラさが原因…だけではない。
私が他者を見下していたのだろう。
こんな女だからサマンオサの洞窟ではウルフを危険な目に遭わせてしまったのだ。
それなのに…こんな私を娘だと言ってくれる人が居る。
『親』と言う言葉で、私を優しく包み込んでくれる人達が居る。
こんなに嬉しいことは他にない。
私もウルフと、あんな夫婦になりたい…
そう…
尊敬するお父さんとお母さんの様な夫婦に…
その為には、私が変わらなければならないのだ。
そしてその方法は………
長時間に及ぶお父さんの説教から解放されたウルフとお兄ちゃん。
正座地獄より脱し足が思い通りに動かないのだろう…
根性で立ち上がったお兄様は、フラつきながらアルルさんの方へと歩み寄り、平静を装っている…
しかしウルフの方は、立ち上がるだけの根性はなく、這いずりながら水夫等の邪魔にならない端へと行き、足の痺れが引くのを待とうとしている。
私は彼の側まで近付くと、倒れ込む彼の頭を膝枕し、かける言葉もなく見つめている。
「あ、ありがとうマリー……何か恥ずかしい所を見せちゃったね…」
恥ずかしそうに呟くウルフ…
彼は凄く可愛い。
「マリー…どうしたの?元気ないけど…俺、何かしちゃった?」
しかし思い悩む私に気付いた彼は、足の痺れもお構いなしで体勢を変え私の正面に座り込むと、心配そうに私に語りかけてくる。
「私ね………お母様に怒られちゃった………」
どう言って良いのか分からなかった…
「え!?さっきのアルルとの事で!?」
「ううん…違うの…ウルフ…貴方の事でなの…」
正確には違う…私の人生のことでなのだが…それにはウルフが大きく関わる。
もう私の人生に、彼の存在は必要不可欠なのだから!
「お、俺の事………!?」
「私ね…最初はウルフの事、好きじゃなかったの…」
そう…好きとか嫌いとか…そう言う感情は一切無かった…
「それは俺だって…嫌いじゃなかったってだけで、好きになったのはジパングでだし…」
「違うの!私のは違うの…そう言うのじゃなくて…もっと酷いの…」
気付けば私は泣いていた…
きっと彼を失いたくないからだろう…
本当のことを語ったら、彼は私から離れていってしまう…そんな恐怖からだろう。
「私にとって出会った頃のウルフは、性的欲求を満たす為だけの男の子だったの…」
最低な考え方だ…
「せ、性的…?」
「可愛らしい男の子…他の女に手を出される前に、私が童貞奪っちゃお!そんな邪な気持ちでウルフに近付き、誘惑し続けてたの!興味が無くなれば、違う男の子に乗り換えよう…そんな不埒な考えで…」
私にとっては、この世界に存在することも、現実逃避のお遊びだったのだ。
これが現実であることには目を瞑って…
「お父様には、それが最初から分かっていたの…それでお母様に怒られましたの…………ごめんなさいウルフ…こんな女、嫌いですよね…」
お父さんは凄い…
お母さんに嫌われるかもしれないのに、よく告白することが出来たと思う。
私は不安で死にそうだ。
「マリー…今でも俺の事は性的に好きなだけ?」
「違うの!!今は違うの!私、ウルフが大好き…ウルフの事を愛してるの!本当に…本当なの…信じて…」
思ってもない台詞だった。
私はウルフを愛してる…
自らを犠牲にしても私を守ってくれる彼のことが、今では何より愛しているのだ。
「じゃぁ、途中経過なんて関係ないよ。今、相思相愛なら俺は満足だ!これから二人の愛は何よりも強固な物だと証明して行こう…リュカさんとビアンカさんよりもラブラブな事を見せつけようよ!」
私はこの人に全てを捧げよう。
お父さんがお母さんに、自らの事を告げた様に私もウルフに全てを伝える。
「マリー…愛してるよ…」
溢れる涙をハンカチで拭いつつ、彼が私に愛を囁く。
私は親にだけでなく、彼にも愛されているのだ…
ウルフの首に抱き付き、泣きながら呟いた。
「私も愛してる…ウルフのことが大好き!」
その日の晩…船室で私はウルフに全てを語った。
転生者であること…
転生者とは何か…
彼は驚いていた。
でもこう言ってくれた…
「あまり関係ないよ。マリーはマリーだろ?俺の愛した女はマリーなのだから」
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