我が剣は愛する者の為に
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修行編 その四
「さて、今回の修行は今までのとは違った修行をする。」
今朝、いつもの様に朝食を食べ終わりいつもの通り二人が向かい合った時だった。
師匠が今までとは違った修行方法にすると言い出したのは。
今日の今日まで、打ち合いと基礎体力の向上など基本的な事しかやっていない。
だから、どんな修行をするのか楽しみでもある。
「今回の修行は氣を扱えるようにすることだ。」
「ついに、氣の扱い方を教えてくれるのですね!」
「やけに、嬉しそうだな。」
「そりゃあ一番やりたいと思っていた修行ですからね!」
元気よく返事をする俺を見て師匠は少しだけ苦笑いをする。
どうやら俺が今までにないテンションで話しかけているから、少し引いているのかもしれない。
だって、氣だよ氣!!
あのドラ○ンボールで出てくる氣だよ!!
師匠は空は飛べないと言っていたけど、それでも十分魅力はある。
今までにないハイなテンションに若干圧倒されている師匠。
げふん、と明らかに息をあげて言う。
「意気込みは充分だが、氣の修得するにはかなりの日数がかかる。
私は戦闘で扱えるようになるまで二年は掛かった。」
「まじですか。」
あの某サイヤ人は一発でかめかめ波撃てたけど、あれはやっぱり例外なのか。
師匠で二年なら俺はもっとかかるぞ。
「だが、私の時と縁の時とは決定的に違いがある。」
「違いですか?」
俺が考え込んでいる中、師匠がそう言った。
「私の時は一人で氣の修行をしたが、縁は違う。
私は氣を扱う事ができるから、具体的な助言を言う事ができる。
これがあるのとないのとでは違いが大きい。」
師匠の言うとおりだと思う。
打ち合いをしている師匠だけを見てきたから忘れていたが、師匠は氣を扱う事ができる。
俺の目の前には既に氣を扱う人がいるのだからその人からアドバイスを貰えば、結構早く使えるようになるかもしれない。
そう言って師匠は近くの木に近づいて行く。
「まずは氣について説明しよう。」
そう言って師匠の説明会が始まる。
「氣というのは誰の中にでも流れている。
それは人間だけではなく動物も植物にも流れている。」
某サイヤ人は元気玉を作るとかにそんな事を言っていたな。
あれってどの世界でも共通なんだな。
「氣は動氣と生氣という二つの氣が身体の中に流れている。
動氣は身体などを動かすのに必要な氣。
生氣は生きるために必要な氣だ。」
へぇ~、と俺は感心した声をあげる。
動氣と生氣。
この二つがあるというのは知らなかった。
「私達が剣を振ったり、走ったりするのにもこの動氣を消費する。
生きるためには生氣を消費している。
これらを補給するには食事をとる事で補う事ができる。」
「それってつまり・・・・」
この説明を聞いて俺はようやく師匠が野宿を主体にするのか分かった。
俺が気がついたのを見て、師匠は笑みを浮かべる。
「そうだ。
私達が生きているのはこの自然の恵みがあってこそだ。
故に私は自然の氣を感じる事で感謝するようにしている。
自然がなければ私達は生きる事ができないからな。」
話が逸れたな、と言って師匠は話を戻す。
「その中で動氣を戦闘に使う事ができる。
主に使い方は大きく分けて二つ。
強化型と放射型だ。」
師匠は右手を強く握りしめ、思い切り殴る。
木は軽く揺れるだけで何も起こらない。
「何の装備もなく木を殴っても揺らす程度だろう。
しかし。」
同じ様に構えて、そのまま拳を突き出す。
さっきは軽く揺らす程度だったのにバキ!、という音と共に師匠の拳は木にめり込んだ。
師匠は拳をゆっくりと木の中から抜く。
それを俺は唖然と見つめる。
「強化型は言葉の通り身体を強化する事ができる。
さっき見せたとおり、扱えればこの程度の木くらいめり込ます事くらい簡単だ。
他にも足を強化して速度を上げたりと応用は自分次第だ。」
次に、と言って師匠は先程の木から距離を開ける。
「放射型も言葉の通りだ。
氣を撃ち出す事をさしている。」
師匠の右手に氣が集まる。
おお、あれが氣か。
表現するなら淡い光を放つ弾と表現するべきだろうか。
先程から言っているがドラ○ンボールがポウポウ撃っているあれだ。
それを木に撃ち込む。
先程めり込んだ穴に直撃して、完全に木が折れる。
ドォン、という鈍い音が聞こえた。
「このように大まかに分けて二つある。
修行内容は簡単だ。
自身の体内にある氣を感じればいい。
それをさっきのように撃ち出せばひとまず終了だ。」
「えっ?
それだけですか?」
「あくまでな。
そこから強化の修行、放射の方も実戦に使えるまで修行しないといけない。
何より、氣を扱う事に慣れないとな。
それではやってみろ。
普段私と共に生活しているのだ。
氣を感じるのは難しくないはずだと思うが。」
師匠の言葉を聞いてとりあえず、眼を閉じる。
数分間くらい集中してみたが何も感じない。
どうしよう、と目を開けて考える。
見かねて師匠が言う。
「ふむ。
縁、一度氣を撃ってみなさい。」
突然、助言とは程遠い言葉が飛んできた。
「ええ!?
まだ氣の何たるかさえ分かっていないのいきなり撃ってみろって。」
「さっきも言ったがお前は私と一緒に生活をしている。
既にお前の中で氣というモノを感じているのやもしれん。
ともかくやってみろ。」
「はぁ・・・」
とりあえず、師匠が折った木の隣にある木に照準を合わせる。
掌を突き出し、力を込める。
こういうのは頭の中でイメージすると出やすいかも。
自己解釈をして、頭の中でさっき見た氣をイメージする。
そして。
「はぁぁ!!」
その叫びと共に俺の掌から光の弾が飛び出す。
そのまま木にぶつかり、木の幹が完全に折れる。
出た。
俺が氣を撃った。
あまりのあっけなさに実感が湧いてこない。
その時だった。
カクン、と膝が抜けて前のめりに倒れそうになる。
倒れそうになる所を師匠に支えられる。
「言っただろう。
動氣は身体を動かすのに必要だと。
最初からあれほどの氣を撃てば動けなくなるのは当たり前だ。」
「ははは・・・でも、こんなにあっさり撃てるだなんて。」
「ほぼ毎日と言っていいほど野宿と自然に囲まれての修行を行っているんだ。
無意識に氣というものを感じていたのだろう。
ともかく、おめでとう。
明日からはこの氣の扱い方に慣れ、使いこなせるようにしないとな。」
「今からでも大丈夫」
と言おうとしたが途端に睡魔が俺を襲う。
抵抗も空しく、俺は眠りに落ちた。
「寝たか。
いきなりあれほどの氣を撃てば当然だな。」
腕の中で眠っている縁を見る。
そして一撃で幹を折った事に少し驚いていた。
氣は撃てると思っていた。
しかし、あれほどの威力だとは思っていなかった。
これはひょっとすると氣に関しても天性の才能を持っているやもしれん。
縁を抱えて、毛布に寝かせる。
本当にこの弟子には色々と驚かされる事ばかりだ。
後書き
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