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美しき異形達

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第三十六話 古都においてその七

「そこも見るか」
「明日はね」
「ああ、まあ他にも回るしな」
「京都は三日いるからね」
 菊が笑って薊に言った。
「その三日の間にね」
「京都の色々なところ回るんだな」
「そう、金閣寺も銀閣寺も清水寺もね」
「平安神宮もだよな」
「四条大橋も行ってね」
「牛若丸の」
 牛若丸、まだ元服する前の源義経が武蔵坊弁慶と一騎打ちをしそこで彼を懲らしめ家臣とした場所とされている。
「あそこか」
「あそこも行ってね」
「牛若丸なあ」
「好き?義経さん」
「好きだよ、格好いいからな」
 薊は笑って菊に答えた。
「鎌倉は頼朝さんだけれどな」
「頼朝さんねえ」
「すげえ不人気だけれどさ」
 日本の歴史上屈指の不人気さを誇っている、頼朝に匹敵する不人気となると幕末の大老井伊直弼位であろうか。
「鎌倉幕府開いて鎌倉を作ってくれた人だよ」
「歴史にある通りね」
「けれどあたしは好きじゃないよ」
 薊はいささか顔を顰めさせて頼朝についての好き嫌いを語った。
「正直言ってな」
「そうなのね」
「陰険な感じするんだよ、義経さんのことといい」
「あのことね」
「ああ、判官贔屓って訳じゃないけれどさ」
 それでも、というのだ。
「好きになれないな、鎌倉幕府自体も」
「というか鎌倉幕府って暗くない?」
 こう言ったのは向日葵だった。
「江戸幕府はこうして映画村にもなって面白い感じがするけれど」
「鎌倉幕府ってな」
「時代が古いせいかも知れないけれど」
「暗いか」
「そんな感じするのよ」
「頼朝さんも北条家も陰謀好きなイメージあるんだよな」
 薊の個人的な見方であるがだ、こう言うのだった。
「暗殺とかな」
「お家騒動とかね」
「源氏ってそればっかりだったんだよな」
 それこそ保元の乱の頃からだ。
「それで誰もいなくなったっていう」
「ある意味凄いわね」
「徳川幕府もそういうことあったけれどさ」
 徳川家光は実の弟である駿河大納言徳川忠長を切腹させている、決して憎くもない共に育った弟ではあるが。
「源氏は極端だったからな」
「本当に誰もいなくなったからね」
「それで北条家になったけれどな」
 朝廷から将軍を迎え執権である北条家が実験を握る形になったのだ。
「その北条家もな」
「有力な御家人を次々と倒していったわ」
 菖蒲がこの歴史的事実を指摘した。
「そして北条家の中でも」
「殺し合いあったよな」
「ええ、最後までね」
「そのせいかね、鎌倉幕府ってな」
「暗いイメージがあるのね」
「平安時代の方がよくね?」
 こうも言う薊だった。
「それだったら」
「ええ、本当にね」
「あたしそう思うよ」
 この京都が長く栄えたその頃の方がというのだ。 
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