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美しき異形達

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第三十六話 古都においてその四

「新宿駅の前とか、あとさいたまアリーナとかな」
「橋の下もよね」
「ああしたところで撮影してるよ、いつも」
 そして映像として出るのだ。
「神奈川の方でも時々な」
「特撮はそうよね」
「だからあまり珍しいとは思わないけれどな」
「関東はいいわね、けれどね」
「やっぱりそこで言うことは」
「奈良の山奥よ、私の住んでいたところは」
「十津川とか吉野よね」
 菊が言った。
「ああしたところよね」
「もっと深い場所だから」
「確か吉野とかって凄い場所よね」
「そこよりさらになのよ」
 その吉野より、というのだ。
「もっともっと奥の。同じ奈良県の他の地域の高校にも簡単には通えない場所だから」
「本当に平家の隠れ里みたいな場所なのね」
「忍者ものの撮影には使えると思うけれど」
「映画とかドラマの場所としては」
「全く無縁な場所よ。今度は奈良に行くわよね」
「けれど裕香ちゃんの実家には」
「コースにないから」
 その旅行の、というのだ。
「とても入られないからね」
「甲賀よりも遥かに凄いのね」
「甲賀とか伊賀は今は普通でしょ」
「まあ。観光地でもあるしね」
 特に伊賀上野市はそうだ、忍者がそのまま観光になっているのだ。忍者は子孫達の懐にも貢献しているのだ。
「それなりにね」
「奈良の奥は違うから」
 その南はというのだ。
「だから帰ろうとも思わないのよ」
「もっと言えば思えないとか?」
「あまりにも不便な場所だから」
「奈良はそれなりに栄えてると思っていたけれど」
 菫はこう考えていた、実際に。
「けれどなのね」
「そう、南の方はね」
「そんな感じなのね」
「人口も全然違うから」
「そのこともいつも言ってるわよね」
「ええ、そうでしょ」
「一生戻らないかもね」
 こうも言った裕香だった。
「というかそうそう戻れない場所だから」
「高校に入学されてから戻られたこともなかったのですね」
「うん、一度もね」 
 裕香は桜にも答えた。
「そうした場所だから」
「そうなのですね」
「高校の三年は戻らないかもね」
 こう答えた裕香だった、そしてだった。
 一行はそのお白州に入った、そこに入りそうしてだった。
 菖蒲がだ、こう言った。
「ここで沢山の人が裁きを受けたのね」
「劇の中でね」
 裕香が菖蒲のその言葉に応える。
「そうなってるわね」
「そうよね」
「何十年も撮影に使われてきた」
 まさにここはとだ、菖蒲はその言葉にいささか感慨を込めていた。
「そうした場所ね」
「うん、名前のある役者さん達が一杯いたのよね」
「まさにあそこで」
 菖蒲は階段のところを観てこうしたことも言った。 
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