リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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第五十八話 離れていく心
前書き
大輔と賢が行動を開始する。
大輔「飯の準備出来たぞ!!」
なのは「うわあ~!!中華料理のフルコースだ!!」
ルカ「中華まん、いただきます」
ブイモン[その肉まん俺が狙ってたんだぞ!!]
コロナモン[全部同じだろが!!]
ギルモン[ラーメンラーメン!!]
はやて「そんなに慌てて食わんでも誰も取ったりせえへん」
大輔「実を言うとあんまんの中に、チョコレートを入れた奴が入ってるんだ。それをゲットした奴のリクエストを聞いてやるよ」
フェイト「よーし、頑張って探さなきゃ!!」
アリシア「私がチョコまんをゲットするんだから!!」
アリサ「あ~ら、私に勝てるつもり?」
はやて「中華粥のお代わりゲットのためや…」
ルカ「大輔さんの中華料理は誰にも渡さない…」
賢「うん、かつて僕を救ってくれた大輔のためだ。ここは僕が一肌脱ごうじゃないか」
すずか「あの…これ食事だよね…?」
なのは「みんなの殺気が怖くて食べられない…」
ユーノ「しかも微妙に論点がズレてるような気がしなくもないしね」
チビモン[リリカルアドベンチャー、始まるよ!!]
厳しめ要素あり。
大輔と賢が行動を開始する。
その隣にはフェイトとはやてがいる。
ブイモン[ブイモンヘッド!!]
ブイモンの必殺技でダークタワーは音をたてて倒れた。
賢「……」
はやて「賢兄?」
無言の賢にはやては首を傾げる。
賢は倒れたダークタワーに触れた。
賢「……以前の僕だったら……カイザーの時の僕だったら……何か分かったかもしれない……」
何処か苦しそうな表情で呟く。
賢「少しでもデジタルワールドの復興のために勉強を繰り返したけど……今の僕には……これがどういった仕組みになっているのか……全く分からない……」
頭脳だけならカイザー時代の自分にも今の自分は劣らないという自負はある。
しかしカイザー時代のような天才的な閃きをすることはない。
ワームモン[賢ちゃんは戻りたいの…?デジモンカイザーに?]
ワームモンの言葉に賢は慌てて首を振る。
ワームモンの瞳はとても悲しそうに潤んでいる。
賢「そんな意味で言った訳じゃ…ないんだよ。あの時の僕は……自分でも分からない程頭がスッキリしていて……何でも分かる気がしたんだ……でも……一番大切な事が分かっていなかった……」
賢は自分の拳を見つめ、悔しげに顔を上げる。
はやて「でも今の賢兄は違うやろ?それにもしまた間違えたら私が賢兄を止めるから心配あらへん」
賢「はやて…ありがとう」
ワームモン[ごめんね賢ちゃん。僕がもっとしっかりしていたら……]
賢「…ワームモンが悪いんじゃないんだよ、悪いのは……全部僕なんだ」
フェイト「…そんな悲しいことを言わないで。確かに罪を犯したかもしれない。でも償うことは出来るよ…それに罪を犯したなら私だって…」
大輔「フェイト…お前にも賢にもそれぞれ事情があった。お前はプレシアのため、賢は自分の居場所のため…。」
賢「いや、フェイトはともかく、僕は…自分の意思でやっていた。これを建てたのは僕。デジモン達を傷つけたのも僕…。僕が償わなくてはいけない罪…」
ブイモン[…だったら俺達がしなくちゃいけないのは…]
ギルモン[この世界にある全てのダークタワーつう奴をぶっ壊すんだろ?]
大輔「だな、そうだよなダスクモン」
大輔が呼ぶと、背後からダスクモンが現れた。
賢「ダスクモン!!?」
はやて「何でダスクモンがここに?」
ブイモン[そういや、話してなかったな]
ブイモンは賢とはやて、フェイトにダスクモンがこの世界にいる経緯を話す。
賢「まさか、ダークケーブルの暗黒のエネルギーが現実世界にまで影響を及ぼすなんて…」
大輔「なあ、ダスクモン。」
ダスクモン[何だ?]
大輔「これから俺達はダークタワーとダークタワーをデジモンにする奴をぶっ潰すつもりだ。悪いと思うけどお前の力も貸してくれないか?」
今は一体でも強い力を持つデジモンが必要なのだ。
今の自分では仲間を守りつつ、戦う自信がない。
ダスクモン[…いいだろう。]
大輔「サンキュー。ダスクモンもD-3に入れればいいのにな」
フェイト「無理だよ。D-3に入れるのはパートナーデジモンだけなんだから」
賢「確かに今は無理だけど、D-3にダスクモンのデータを入力すれば出来ると思うよ」
はやて「え?出来るんか?」
賢「うん、デジヴァイスでパートナーデジモンが進化するためには、デジヴァイスにパートナーデジモンのデータを入力しないといけないんだ。今日のノルマを達成したら、ダスクモンのデータを大輔のD-3に入力しよう…まだ容量があればいいけど……」
はやて「ああ、スナイモンのデータ入れたりしとるからなあ……」
その時、ここから少し離れた町から爆音が聞こえた。
大輔「何だ!!?」
ワームモン[賢ちゃん!!もしかしたらあの女が何かしたのかもしれない!!]
大輔「行こう!!」
ブイモン[ブイモン進化!エクスブイモン!!]
ワームモン[ワームモン進化!スティングモン!!]
大輔「フェイト、乗れ!!」
フェイト「うん!!」
賢「はやても!!」
はやて「分かったで!!」
フェイトとチビモンは大輔と共にエクスブイモンに。
はやてとギルモンは賢と共にスティングモンに。
ダスクモンは瞬間移動で現場に急行した。
ダスクモンが大輔達より先に現場に向かうと、アンキロサウルスを思わせるアルマジモンが進化したアンキロモン。
そして伊織がサンダーボールモンの攻撃で吹き飛ばされた。
ダスクモン[チッ…]
瞬間移動で伊織を抱え、即座にサンダーボールモンを弾いた。
伊織「あ…」
ヒカリ「あ、あの…デジモン…」
タケル「闇の…デジモン…!!」
どこか怯えたようにダスクモンを見つめるヒカリ。
そして敵意を込めた目でダスクモンを見るタケル。
そしてエクスブイモンとスティングモンが到着した。
京「あれは…大輔!?ってことはブイモンの成熟期!!?」
ホークモン「一乗寺賢…フェイトさんとはやてさんも!!」
フェイト「行くよチビモン!!」
はやて「ギルモンも進化や!!」
チビモン[チビモン進化!ブイドラモン!!]
ギルモン[ギルモン進化!グラウモン!!]
大輔がフェイトと、賢がはやてと共にパートナーから飛び降りた。
エクスブイモン[完全に消え去ってしまえ!!エクスレイザーーー!!]
ブイドラモン[ブイブレスアロー!!]
スティングモン[ムーンシューター!!]
グラウモン[エキゾーストフレイム!!]
四体の必殺技がサンダーボールモンに炸裂し、サンダーボールを爆散した。
京「殺した、の…?」
ヒカリ「なんてことを…」
ブイモン[ふう…]
ブイモン達は成長期に退化すると、それぞれのパートナーの元に。
賢「お疲れ、ワームモン」
大輔「ブイモンもよくやったな」
ブイモン[へへ]
伊織「大輔さん!!」
大輔とブイモンの会話に割り込むように伊織が向かって来る。
作り物の笑みを浮かべて伊織の方を見遣る。
大輔「何だ伊織?」
伊織「何だじゃありません!!デジモンを殺すなんて…なんてことを…!!」
大輔「奴は敵だ」
伊織「だからって殺すことはなかったじゃないですか!!追い払えば…」
大輔「その追い払うことすら満足に出来なかったお前にそんなこと言う資格があると思ってんのか?」
京「だからって…デジモンを殺すなんて最低よ!!」
大輔「キメラモンを殺した時は喜んでたじゃないか」
京「え…?」
大輔「キメラモンもれっきとしたデジモンだぞ?キメラモンが死んだ時は喜んでた癖に何言ってんだ?」
京「でも、キメラモンは…」
大輔「キメラモンを倒すのを俺とブイモンに押し付けておいて、てめえらはただ見物してただけの癖に偉そうな口叩くんじゃねえよ」
京「だってあの時、キメラモンを倒せるのは…」
大輔「確かにあの時、キメラモンを倒せるのはマグナモンだけだった。でも援護くらいは出来たはずだろうが、全て俺とブイモンにキメラモンを殺すのを押し付けた臆病者の卑怯者」
京「…っ!!」
言い返せなくなった京は唇を噛み締めた。
タケル「大輔君、言い過ぎだよ!!」
大輔「てめえも同罪だろ!!卑怯者!!」
タケル「え…?」
大輔「てめえらはあの戦いを俺達に全て押し付けたんだ…もう俺達はお前らに指図されない…卑怯者にああだこうだと言われる筋合いなんかねえからな!!」
ヒカリ「大輔君!!」
バシィッ!!
ヒカリが大輔の頬を勢いよく叩いた。
フェイト「大輔!!」
はやて「何するんや!!」
大輔「……」
ヒカリ「何でそんな酷いことを言うの…?そんな酷いことを言う大輔君なんか嫌いよ!!」
大輔「嫌い…ねえ…嫌いで結構…寧ろ好都合」
ヒカリ「え…?…っ!!」
タケル「ヒカリちゃん!!」
胸倉を掴まれ、顔を近づかせられるヒカリ。
それで気づいた。
大輔の表情は笑っているが、目が笑っていないことに。
自身を見つめる目が嫌悪に満ちていることに。
大輔「俺もあんたが大嫌いだよ…殺してやりたいくらいにな…」
ヒカリ「え…?」
殺意に満ちた声にヒカリの表情が凍り付く。
そしてヒカリにだけ聞こえるように小さく呟く。
大輔「俺さ…7年前の光が丘テロの…グレイモンのせいで家が目茶苦茶になって俺自身死にかけたんだ…」
ヒカリ「え…」
光が丘テロ。
グレイモン。
知らないはずの大輔が何故それを?
まさか、大輔の言葉通り、大輔は光が丘テロの被害者?
大輔「あれから7年…ようやく思い出せたよ…街を巻き込んだ怪獣ごっこは楽しかったか?光が丘テロの犯人さん?」
今までヒカリに向けていた好意は、記憶を弄られたことで、憎しみと好意が逆転していた物。
本来の記憶を取り戻した大輔は7年間、今まで抑圧されていた憎しみを解き放った。
そのきっかけを作ったのは間違いなく彼ら。
ヒカリ「ーーーーーっ!!」
トラウマを刔られたヒカリは身体をガタガタと震わせた。
テイルモン[ヒカリ!!?]
タケル「ヒカリちゃん!!大輔君、ヒカリちゃんに何を言ったんだ!!」
大輔「ん?俺はただ本当のことを言っただけだぜ?」
憎しみの視線がヒカリを射抜いた。
伊織「一乗寺賢!!一体大輔さんに何をしたんですか!!?」
賢「は?」
はやて「何やのその言い方は!!賢兄のせいにするんやない!!全部あんたらの自業自得やろ!!自分の責任を賢兄に押し付けるんやないわ!!」
ホークモン[大輔さん、あなたは何故、一乗寺賢と行動を?]
大輔「お前らといるくらいなら賢と一緒にいた方が何万倍もマシだからだ。それに…」
パタモン[それに…何?]
大輔「俺と賢は親友だからな。お前らみたいな薄情な奴らとは違う。本当の友達」
伊織「そんな…その人はデジタルワールドを目茶苦茶にした張本人なんですよ!!」
大輔「じゃあ、お前らは俺からすればそれ以下の存在って訳だな…お前らと話してても時間の無駄だ。帰ろうぜ」
賢「…いいのかい?話さなくて」
大輔「いいんだよ。こいつらに話して事態がよくなるわけじゃねえし」
京「ちょっと待ちなさいよ!!」
肩を掴もうと、手を伸ばした京だが、フェイトが大輔を庇うように立つ。
フェイト「いい加減にして、これ以上。大輔を傷つけないで…あなた達はどこまで大輔を傷つければ気が済むの…?」
京達を威嚇するように睨み、大輔の背中を押すフェイト。
大輔「フェイト…」
フェイト「…行こう、大輔」
四人はこの場を後にした。
大輔「…………」
はやて「大輔さん?」
ゲートに向かう途中、立ち止まってしまった大輔を不思議そうに見遣るはやてだが、それに気づいた賢がはやての手を引っ張って、先を促した。
はやても原因に気付き、フェイトに視線を合わせる。
フェイトも頷き、大輔に歩み寄る。
フェイト「大輔、大丈夫?」
大輔「何が?俺は別に平気だ。大体、俺はもうあいつらのことなんか…」
フェイト「…嘘」
大輔「え?」
フェイト「大輔はいつも平気平気って言ってるけど、本当はそうじゃないよね?…あの人達の言葉に傷ついて…あの人達を傷つけたことを後悔してるよね?」
大輔「………」
フェイト「確かに大輔は強いと思う。でも、その強さはとても繊細で大きな優しい心から出来てるの…優しい人は…とても、傷つきやすいんだって」
大輔「馬鹿、そんなこと言われると泣きたくなるじゃないか……」
そっと大輔はフェイトを抱き締めた。
フェイトも微笑みながら抱き返す。
大輔「ありがとうな…フェイト」
フェイト「ううん…大輔が辛いと私も辛いから…」
大輔「……お前がいてくれて本当によかった」
フェイト「大輔…」
大輔「好きだ…フェイト」
フェイト「…うん…私も…」
二人の背中に回された腕に力が入る。
はやて「あ~あ、イチャついとるなあ…」
ダスクモン[フン…]
賢「けど良かったよ。フェイトが行かなかったら僕が大輔を慰め行ってたし」
ブイモン[俺も]
チビモン[私も~]
ギルモン[オラもだ]
ワームモン[僕も]
はやて「うちもや…大輔さんは少し優し過ぎるで…」
賢「あれが大輔が大輔である由縁さ。…優しさの紋章を持つ僕なんかよりも遥かに優しい人だ」
ブイモン[俺達が大輔を支えてやろう。誰が相手でも俺は大輔と大輔の大事な奴を守ってみせる]
ワームモン[僕だって賢ちゃん達を守れるくらい強くなる!!]
チビモン[私だって強くなるよ!!]
ギルモン[オラだってもっともっと強くなっぞ!!]
ダスクモン[お前達がどのような未来を創るか興味がある…最後まで共に戦わせてもらおうか]
賢「それは頼もしいや」
しばらくして大輔達は賢達の所に来て、現実世界に帰るのだった。
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