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『自分:第1章』

作者:零那
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『想い』

仕事を一生懸命する。
出来んことも在る。
どうしても自分には相手できんタイプのお客さんも居る。
マダマダ、ド素人。
水商売の難しさ、厳しさ、素晴らしさ...身にしみて解り出した。

水商売を馬鹿にする奴は本気で殴り飛ばしてやりたい程。
後、他店に飲みに行ってるときに見かける、超適当にやり過ごそうとしてるホステスにもムカついた。
明らかに怠惰ってやつ。

努力してもいろいろと難しくて出来ん自分からしたら、出来るくせにしてないってのは尚更ムカついた。

ママを見て思った。
仕事として学ぶべき事は勿論やけど、女性として、大人として、常識として、学ぶべき事も多かった。
特に、自分は常識に欠けてるから尚更...。

娘の事も、バツイチな事も、施設出で頼る身内が居らんことも、ふと、良く来るお客さんと話してしまった。
『夜の女の子ってのは何かは闇を抱えてる。でも、そっか...家が無いんなら今引き取るんは無理やな...』
自分でもチャント解ってる事実。
其れを改めて突きつけられて泣いてしまった。

お客さんは悪く無い。
自分が弱いだけ。
解ってる事やんか。
チャント解ってる。
だからこそ...。

心底悔しい...
心底淋しい...
心底逢いたい...
ただただ抱き締めたい。


ただ...逢いたくて

~♪~

ただ愛しくて
涙も枯れて
キミの居ない
世界をさまよう
忘れたくない
キミの香りを
まだ
抱き締め
眠る夜が
Ah~孤独にさせる

~♪~


たまたま他のお客さんが歌う。
若い子。
年が近いお客さん。
更に上手い。
流行り?ってくらい、必ず1日1回は耳にしてる。
でも、歌い方とかによってはカナリ心に響く。
お客さんの歌で泣いたのは初めて。

なんかもう、この日はグダグダで仕事にならず、とにかく泣いて飲んで売り上げ貢献の方に徹しました。

零那が泣いたことによって、接客相手が、その歌を歌った人に変わった。
お客さんは面白がって、また泣かしたろ思て選曲してた。

一般的に恋愛ソングであっても、零那にとっては娘との別れソングに成り得る歌は、グッときて苦しかった。
だって...やっぱり大好きやし離れたくなかったし愛してたから...。
それでも...それでも...
だからこそ...
娘の為に手放した...

そう、だから、此処で泣くのは間違いだってのは解ってるんよ!!
せやのに涙が止まってくれんのんよ!!
せっかく、きつい蓋で閉じてたのに...
風呂の栓が外れたみたいにドバーッ!!って、どうしようもない。
欠陥人間で最悪な母親。


そんな母親、忘れてしまった方が娘も幸せに暮らせれる筈。

他人は、零那が娘を棄てたと思ってる。
仕方ない。
胸の内の真実を、薄っぺらな言葉で簡単に言いたくは無い。
周りにどう思われてても良い。
零那には零那なりの愛情表現がある。
零那なりに、娘を想っての事をしたまで...。


娘と同じくらいの子を見かけてはフラ~ッと靡いてしまう。
友達と居ても『おまえストーカーや!捕まる捕まる!』『放っといたら拉致りそうやなオマエ!』って言われてた。

いろいろ気遣ってくれて、夜勤の日以外は出来る限り毎日、交互に店に来てくれたり。
お金無いときは零那が店入る前に渡しといたりツケにしたり。


お客さんとして、友達として、大事にしてくれる人が何人も出来た。
お客さんにも支えられてた。
出逢いってのは凄く不思議で、凄く縁が在って...
やっぱり、人間は、人間同士の摩擦が無いと、成長も無いんやろなぁって思った。

ママと出逢えた事も、友達の紹介がキッカケ。
この友達も、元旦那の友達の1人。
でも『零那は零那。俺も助けて貰ったこと在るし、離婚して娘と頑張ってたのも知ってるし。娘と離れたけんって何も変わらんよ』って...
最高に嬉しい。
涙堪えるん必死やった。

 
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