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SAO-銀ノ月-

作者:蓮夜
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第二十三話

 
前書き
ちょっと更新が遅れました。 

 
 俺とリズはさらりとクレープもどきを食い尽くし、リズが見つけたインゴット屋に入ろうとしていた。
最初はエギルの店に行こうと思っていたのだが、まあ、リズが見つけてくれたインゴット屋に入ってみても別にいいだろう。

「いらっしゃい」


 店というより、小屋のような店内に入ると、カウンターに座り込む老人から声がかかる。
その店内の内装も相まって、昔ながらの八百屋のような雰囲気を醸しだしていた。

「モンスタードロップ品ばっかだな……」

 棚に無造作に置いてあるインゴットを手にとって見てみるものの、《鑑定》スキルを上げていない自分には、インゴットがモンスタードロップであることぐらいしか分からない。
ここはおとなしく、横でインゴットを眺めているピンク髪の鍛冶屋に任せよう。

「どうだ?」

 他のところでインゴットを見ていたリズに問いかけてみると、なんだか微妙な顔をしながら振り向いた。

「うーん……まあまあ良いのは揃ってるんだけど、あんたのカタナ以上となると……ちょっと微妙かも」

「だよなぁ……」

 やはりと言うべきか、専門家であるリズ的にもあまり芳しくない、微妙な評価だった。
偶然入った店に、掘り出し物はないか……

「えっと、あと見てないのは……そこにある、《ゴーレム》系統のモンスターからとれるインゴットね」

 ゴーレム系統。
その名から連想出来る通り、岩や土、鉄で出来た、何かから守るために配置されている巨大な人形である。
元々が元々であるため倒した時のドロップ品にはインゴットが出ることもあり、プレイヤーを苦しめた防御力がそのままインゴットとして手に入るとして、プレイヤーたちが狙うことも多い。

 もちろん店にとっても掘り出し物なのだろう、特設コーナーを設けて、それぞれのインゴットに『あのゴーレムからとれたインゴット』などと、モンスターの名前付きでデカデカと宣伝している。
……そのおかげで、専門家ではない俺にもそのインゴットの価値がわかった。

「……リズ。あそこに並んでるインゴットの名前」

「言わないでよ……」

 なんともリズの店で見た覚えがある名前だ、と言おうとしたが、直前でリズからストップがかかる。
優秀なインゴットとして、リズの店でも使用していたのだろう。

 ともかくこれで、あれらのインゴットは使えないとわかってしまった。

「まあ、どれもこれもたたっ斬った覚えもあるしな……リズ、他の店に行かないか?」

 元々の目的地であった、《エギル》の店に向かうことを提案する。
エギルの店に掘り出し物があれば御の字、なくても情報は聞ける。
これで見つからなかったら、それこそ《鼠》にでも頼るしか……

「お客さん。今、なんとおっしゃいましたか?」

「は?」

 あの小憎たらしい《鼠》の顔が脳内でフラッシュバックした後、リズを押しのけいきなり老店主が問いかけてきた。

「は……いや、他の店に行こうかと……?」

「違います違います、その前です」

 その前……?
あのネズミ面を脳内から押し出し、つい先程の自分の言葉を思いだす。

「『どれもこれもたたっ斬った覚えもある』って言ってたわよ、あんた」


 呆れ顔のリズに言われ、先程の自分の言葉を思いだす。
……そういえばそんなことを言ったか。

「はい、その腕を見込んで是非ともお願いが……」

 お願い、という老店主の頭上に金色のクエスチョンマークが点灯した。
一時的にパーティーを組むことになっているリズにも、そのマークは見えたようで、俺の横から少し身を寄せて聞いてくる。

「これって、《クエスト》よね?」

「ああ。十中八九そうだな」

 クエスト。
この浮遊城《アインクラッド》に用意されているもので、内容はお使いや何かの護衛、特定モンスターの討伐など多岐に渡る。
クエストの条件になっているNPCの大体はその場からあまり動かず、何か困っているところを声をかけることで発生する……この老店主のように、例外はあるが。

「お願いとは何でしょう?」

 クエストには手慣れた俺の言葉に、老店主のクエスチョンマークが点滅し始めた。
クエストについての説明が入る合図だ。

「実は、数ヶ月前にいきなり、この店に《転移門》が出現しましてな」


「転移門?」

 転移門とはもちろん、各層の入口にあるワープポイントである。
層を指定することによって、解放してある層ならばどこにも瞬時に……って、今更説明することでもないな。

「分からないのも無理はありません、こちらへ」

 俺たちが首を捻っているのを見て取ってか、老店主は先程まで自分がいたカウンターの裏側にあった扉の元へ、俺たちを案内した。

 そして、その扉を開けた先に。

「――転移門」

 確かに転移門であった。
この小屋ともとれる店に入っているため、本物よりは幾分かは小型だが。

「そして、この転移門を起動させると、何やら草原のような場所に飛ばされまして……そして、目の前には巨大なダンジョンがありました……お願いします。このダンジョンを攻略してくれませんでしょうか……このままでは、いつモンスターが街に来るか……」

 草原のような場所に飛ばされ、目の前のダンジョンを攻略するクエスト……危険はあるが、(もしかしたら)未だに未踏の地であるダンジョンを、一番乗りで攻略出来るかもしれない……
そして、レアダンジョンにはそれ相応のレアモンスター、レアアイテムがあるのだ。

 ナイスな展開じゃないか……!

「わかりました、やりましょう」

「それはありがたい! 是非ともお願いします!」

 老店主が喜びながら礼を言い、俺の視界の左端にあるクエストログが更新される。
思いがけずにラッキーが舞い込んだものの、不安点はある。

「リズ。お前は戦闘職じゃないんだから、店で待ってろよ」

 言いたくはないが、不安点の中の一つはこれだ。
何が起きるか分からない未踏のダンジョンに、戦闘慣れをしていない鍛冶屋を連れて歩くわけにもいかない。

 しかし、このピンク髪鍛冶屋は予想外に。

「私だって戦闘スキル上げてるんだから、手伝いぐらいは出来るわよ」

 ――という返答だった。
「あのな……ダンジョンは何が起きるか分からないことぐらいは知ってるだろ?」

「だけど、ゴーレム系統とかホネ系統のボスモンスターだったら、あんたのカタナより私のハンマーのほうが有効よ?」

 なんだか、またも口喧嘩に発展しそうな――もしかしたら、もう発展しているか――俺たちを止めたのは、意外にも、俺の視界に移った老店主のある行動だった。

 老店主は、俺たちが口喧嘩をしている間にミニ転移門まで歩き、何をどうしたのかは知らないが、ミニ転移門を起動させていたようだった。

「……あとはお願い致します」

「ちょ、まっ……!」

 俺の制止の声も届かず、老店主が店に戻る扉を閉めたと同時に。
俺とリズは、日頃お世話になっている、転移のライトエフェクトに包まれていた…… 
 

 
後書き
……どなたか、リズをキチンと書く方法を教えてください。
まだデレてないので、という理由《言い訳》も限界になってきましたッ……!

感想・アドバイス待ってます。 
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