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SAO-銀ノ月-

作者:蓮夜
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第二十二話

 
前書き
リズ視点。 

 
 明くる日。
客足が遠のく時間である昼頃に、いつものようにオーダーメイド品の作成をして、それから休憩がてらお昼ご飯でも食べようとしていたところ、店員NPCのハルナが、武器の強化を頼みたいという客が来たことを告げた。

 こんな時間にお客が来るなんて珍しいな、と思いつつ、若干うわずった声で「いらっしゃいませ!」と来た客に告げる。
……やっぱりまだ、慣れない。

 そこにいたお客は、短髪で漆黒のコートを上に羽織り、その下には同じ色の……和服だろうか? を着ていて、こちらを少し驚きながら見ていた。
驚かれる原因は、確実にアスナが私に施した、髪型や服のカスタマイズのせいだろう。
初めて来たお客にはたいてい驚かれるものの……不本意ながら、リピーターも増えるためにこのままにしておく。

 漆黒のプレイヤーの得物は、一般的にはレアアイテムとされている《カタナ》だったが、カタナのエクストラスキル習得条件が明らかになった今、そんなに珍しくは無い。

 ただの服にしか見えない防具も手伝って、あまりハイレベルなプレイヤーには見えない為に、中層プレイヤーだと当たりをつけて接客モードに入っていった。

 ……それから数分後。
私の店に来た、この漆黒のプレイヤーが、中層プレイヤーどころか攻略にも参加しているプレイヤー、傭兵《銀ノ月》であることと、……若干、ムカつく奴だということが分かった。
逆を言えば、それ以外は全くわからないわけだけど。

 だけど今。
いっっっちばん、わからないことと言ったら。

「……なんで私、こんなところにいるんだろう……」

「ん? 夢遊病か?」

 「違うわよ」、と隣のショウキにツッコミを入れているこの場所は、今までいた《リズベット武具店》ではなく、第五十層《アルゲート》だった。

 『日本刀《銀ノ月》を必ず強化する』という条件で受けたため、私の店にあるインゴットでは、……認めたくないけど……ショウキのカタナ《銀ノ月》を強化するのは不可能だ。
しかも、《鉄の町》とまで呼ばれる第五十五層《グランサム》に売っている、一般的にインゴットでは、多分、まだ《銀ノ月》の強化には分不相応だ。

 だからショウキの提案で、《リズベット武具店》の店番をハルナに任せ、モンスタードロップ品やらなにやら、様々なモノを扱っているらしい、この《アルゲート》に来たのだ。
……私は来たの初めてどころか、年の近い男性と遠出するのも初めてだというのに、横にいるショウキは、全く動揺もしていないのがちょっと悔しい。

「さて、まずはインゴットを売ってる店を探しつつ、知り合いの店に行こうと思う。……色々ゴチャゴチャしてるから、はぐれるなよ、リズベット」

「はぐれないわよ! ……それと、どうせ呼び捨てにするなら『リズ』で良いわよ」

 ……いくらゴチャゴチャしてるからって、はぐれないわよ、子供じゃあるまいし……
ブツブツと言う私に、「分かったよ、リズ。行こう」などとのたまうショウキと共に、人がすし詰めになっている商店街へ歩きだした。

「……相変わらず、人でゴチャゴチャしてるところだ……」

 人ごみが苦手なのか、私の横を歩くショウキは少しげんなりとした声をだしていた。

 対する私は、フィールドに出ない自分にとってはモンスタードロップ品自体が珍しく、また、初めて来た場所ということもあって、見るもの見るものが珍しく、色々と辺りをキョロキョロ見回していた。
ひしめき合う食べ物屋の屋台や、冒険帰りにアイテムを分配しているプレイヤーたち、怪しい地図を売っているNPC……

 そんな調子で歩いていると、NPCが経営している店みたいだけど、店の外にインゴットが飾ってある、インゴット屋……と、言うのだろうか……を見つけた。

「ねぇショウキ。あそこにお店があったから、とりあえずあそこに――」

 問いかけの言葉を途中で切ったのは、問いかけた対象であったショウキが、なんと自らの横から消えていたからだ。
……もしかして。万が一の可能性だけど、キョロキョロ回りを見るのに必死で、はぐれた……?

 はぐれないと大声でタンカをきった手前、簡易メール……フレンド登録をしていなくても、名前が分かっていて、同じ層にいるならメールが送れる……を
使って、助けてもらうのも気が引ける。

 急ぎ、慌ててショウキを捜すが、この人ごみの中じゃ、人が多くてあの黒衣が見当たらな……

「おい、リズ」

「わひゃあ!」

 背後から突然名前を呼ばれたことに驚いて、謎の声をだしながら少し飛び上がった。
当然ながら、その声の主はショウキであり、呆れたような顔でこちらを見ていた。

「ど、どこ行ってたのよアンタ!」

 私が、ついつい照れ隠しついでに問い詰めてしまうと、ショウキは困ったような顔で返事をした。

「どこって……ちょっと食い物買ってくるって言わなかったか?」

 確かに、ショウキの手には、クレープのようなものが二つ、手に握られていた。
もしかして、色んなものを見るのに夢中で、話を聞いていなかったのかもしれない。

「……もしかして、はぐれたと思ったか?」

「そ! ……そんなわけ、無いじゃない……」

 ショウキの笑いを含んだ質問に、何とも言葉尻が下がった答えを返していた。
くうう、恥ずかしい……と、俯く私の前に、ショウキからクレープもどきが一つ、差し出された。

「ほら、せっかく買って来たんだから食えよな」

「……食う」

 そういえば、まだ昼ご飯を食べていなかったことを思い出し、私の現金な腹の虫が自己主張を始める。
ショウキの手からクレープもどきを貰い、口に運ぶ。

「……む」

 不覚にも、甘くて美味しかった。 
 

 
後書き
原作のリズが可愛くて書くのが辛い。

それはともかく、相変わらず主人公であるショウキの容姿が不鮮明なこの作品ですが、何故かこの頃、『七夜 志貴』に似たようなキャラが脳内再生されます。

黒い和服に黒いコート、日本刀を帯びた七夜志貴……意外と似合って……る?

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