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背中

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第五章

「いつも皆で集まって。京都のお友達にも来てもらって楽しく騒いでるんですよ」
「ああ、新郎さん京都の人でしたね」
「そうでしたよね」
「はい、京都生まれで親戚も」
 彼等もだというのだ。
「京都育ちです」
「そうですよね」
「生粋の京都人ですよね」
「皆さんそうで」
「もっと明るいんですね、普段は」
「そうなんですけれど」
 それでもだ、今はというのだ。
「何か違います」
「何でしょうか」
「この自体は」
「わからないです」 
 祐也は首を傾げさせた、だが。
 親戚一同との明るい話を一段落させたテレサがだ、彼のところに来て笑顔でこんなことを囁いて来たのだった。
「ねえ、背中だけれど」
「ああ、言ってたよね」
「そうよ、背中ね」
「背中だったね」
「皆の背中見てみて」
 こう彼に言うのだった。
「そこをね」
「背中をねえ」
「そうすればわかるから」
「それじゃあ」
 祐也はテレサのその言葉に頷いた、そしてだった。
 まずはテレサの親戚一同の背中を見た、もっと言えばその背筋n状況をだ。
 すると皆しゃんとしている、背筋がぴんと立っている。そうして満面の笑顔で話している。その彼等を見てから。
 祐也、自分の親戚を見る。すると。
 彼等はだ、どうかというと。
 背筋がどうにも曲がっている、そして元気がない。その彼等を見て。
 そうしてだ、こうテレサに囁き返した。
「うちの親戚はね」
「萎縮してるわよね」
「うん、普段は違うんだよ」
「他所の人に対してもよね」
「ぶぶ漬けを勧める時なんかね」
 その京都独特の嫌味を繰り出す時もというのだ。
「背筋立ってたよ」
「威張った感じでよね」
「そう、無意味な位にね」
「そうよね、けれどね」
「今はだね」
「私達見て萎縮してるわね」
 テレサと彼女の親戚達をというのだ。
「そうなってるわね」
「そうだね、これはね」
「私のことは伝えていたわね」
「スペイン生まれってことはね」
「言葉では聞いてたけれど」
「実際に見て、それにテレサの親戚の人達に賑やかさも見て」
 それでだというのだ。
「皆萎縮してるんだね」
「京都の人って外国に慣れてるわよね」
「観光の街だからね」
 世界各国から観光客が来る街だ、それが京都だ。
 しかし祐也の親戚達、彼等はというと。
「皆殆ど外国の人達と関わらない仕事でね」
「しかもなのね」
「そう、それにね」
 それに加えてというのだ。
「スペイン語をここまで一度に沢山、しかも賑やかに聞いたのははじめてだろうし」
「それで戸惑って」
「萎縮してるんだね」
「萎縮してたらね」
「嫌味を出す余裕もないんだね」
 京都人の十八番とさえ言われているそれをだ。 
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