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背中

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第四章

「あまり意識してなかったわね」
「意識すると凄いからね」
「そうした独特の文化があるのね」
「だから関西の他の府県から好かれてないんだよ」
「その理由がよくわかったわ」
 テレサにしてもというのだ。
「本当にね」
「だからそこは注意してね」
「嫌がらせのレベルが高い場所みたいだけれど」
「はっきり言ってそうだよ」
 その元京都府民の言葉だ。
「だからそうしたことをテレサやテレサの親戚の人にしてきたらって思うと」
「心配なのね」
「若しそうなっても怒らないでね」
「怒る時は背中を見てからね」
「またそこで背中なんだ」
「そう、背中を見てね」
 それからだというのだ。
「私達は怒ると思うから」
「そうなのね」
「それじゃあね」
 こうした話をだ、二人で飲んで食べながら話をした。そうしてだった。
 それからだった、その結婚式の時にだ。
 望み通り金襴緞子を着たテレサを見てだ、明るい表情の彫のある顔立ちでだ、テレサと同じ肌の色の人達が賑やかに騒いでいた。
「いやあ、よく似合うな」
「テレサも完全に日本人ね」
「日本の和服かあ、これが」
「日本の結婚式なのね」
「いいものだな」
「そうよね、綺麗よ」
 こうスペイン語で話をしていた、しかし。
 そのスペイン語を聞いてだ、祐也は手伝ってくれている結婚式場の人達にこっそりと囁いた。
「実はうちの女房になる人ですけれど」
「あの金襴緞子の人ですよね」
「ラテン系の」
「はい、日本にずっと住んでて日本語普通に喋りますけれど」
 それでもというのだ。
「実はスペイン語の方も」
「お喋りになるんですか」
「そっちも」
「はい、ですから」
 スペイン語がわかる、それでだというのだ。
「あの人達がどう話しているのかも」
「おわかりになられるんですか」
「そうなんですね」
「はい」
 実際そうだというのだ。
「ある程度ですが」
「それで何とでしょうか」
「何とお話してるんでしょうか」
「特に悪いことじゃないですね」
 その彼等の言葉はというのだ。
「普通に結婚祝いです」
「そうですか、それじゃあ」
「安心してですね」
「聞いていればいいですね」
「見ていれば」
「はい、ただ」
 ここでだ、祐也はというと。
 彼等からだ、部屋のもう一方を見た。それは彼の方だ。そこに彼の結婚祝いに京都から来た親戚達がいるがだ、彼等はというと。
 どうも萎縮していた、そうしてだった。
 その彼等を見てだ、祐也はスタッフの人達に言うのだった。
「こっち側は」
「ご親戚の方々はですね」
「新郎さんの」
「何かですね」
 どうにもというのだ。
「違いますね」
「雰囲気が、ですね」
「どうにもですよね」
「静かっていうか何ていうか」
「違いますね」
「普段は違うんですよ」
 彼が知っている親戚一同はだ。 
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