ひねくれヒーロー
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解決策は必ずある
どんな困難な状況にあっても、解決策は必ずある。救いのない運命というものはない。
災難に合わせて、どこか一方の扉を開けて、救いの道を残している。
—セルバンテス—
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解決策は必ずある
◆◇◆シュロ◆◇◆
ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!
生存本能が今すぐ逃げろと訴えかけている
火柱を何十個と作り出し、それをオレ達にぶつけてくるコン
君麻呂の骨すら溶かしたその炎は、掠るだけでも大ダメージ
特に蟲使いのオレはアウト
既にオレの盾となった蟲たちは、燃え滓となり風に散って行った
体内に残っている蟲たちは怖い、逃げよう、死んでしまうと泣き叫んでいる
そんな弱気な事を言う奴らじゃないのに・・・
四方八方に逃げ惑うオレを見て笑うコン
次々と炎が出現する
「これが、神殿の狂い巫子か・・・!」
突如真横から聞こえてきたマダラの声に驚く
お前も逃げてんのかよ
そう言おうと口を開き掛けると炎の球が目の前を飛んでいった
頬を掠め、肉の焼ける匂いが漂う
・・・マダラの頬が、抉れた
すりぬけも効かないのか・・・?
「ぐぅ・・・まさかこれほどとは・・・」
「おいこら
なんでお前まで逃げてんだ!?」
「・・・いやー暴走抑えることは出来ないんスよねーアハッ」
唐突にトビモードに入るな
抉れた頬から嫌な臭いが漂う
「何の目的でソラから尾を引き出した!?」
「邪神様があるべき場所へ戻してこいって言うもんでね!
どうしてこうなった!」
「どうしてこなたぁぁぁ!
あ、あれだな、共鳴反応って奴だよな!?
コンの正気を取り戻せれば大丈夫だよな!?」
会話してる間にも炎の球や火柱が撃ち込まれてくる
本当に地獄の業火だよ!
別の場所に逃げようにも、コンは自分が目視できる場所から遠ざからないように炎を打ち込んで来る
しばらくしてドーム状に炎が練り上げられ、オレ達を囲い込んだ
逃げ道は、ない
マダラですら顔が青褪めている
といっても見えるのは抉られて仮面が破損した部分と首筋ぐらいなのだが
「そうそうそう!
早くしないと巫子さん死んじゃいますよ!
あの子生命維持の分まで尾を出しちゃってるから!
鎮めないとソラ君の尾を入れられないんスよ!」
「そう言えば二本も尾出してた!?
・・・おい、なんでソラの尾を入れる必要があるんだよ」
「・・・あるべき場所に戻すと言ったろう
巫子は、人柱力だからな」
ソラに入っていた尾は、コンに封印されていた九尾・パルコの尾?
邪神はパルコで、マダラはパルコの手下っぽくて、コンに尾を入れなきゃいけない?
コンの憶測——パルコが実体を欲しがっている
コンを完全な人柱力とすることで体を乗っ取ろうとしているのか?
「・・・邪神はパルコで間違いないんだな?」
「・・・あぁ、間違ってはいないな
オレから取り返した尾が、ちょっとした事故で世界に散らばってしまってな
それを回収して、人柱力に封印しなおそうとしているだけさ」
マダラから取り返した?
どう言う意味なのか、また新しい疑問が浮かぶ
それよりもまず、今はコンの憶測が正しいかどうか
「パルコは実体が欲しいのか?
コンを、乗っ取るつもりか?」
「いいや、あの方は人柱力が欲しいのさ
・・・まぁ乗っ取りに関しては間違っていない
それよりも、早くしないと巫子だけでなくオレ達も死んでしまうぞ?」
腑に落ちない
聞けば聞くほど奴の言葉からは疑問しか思い浮かばない
事故とは何なのか、人柱力が欲しいとはどういうことなのか
頭を振ってマダラと別れて走り出す
大火傷を覚悟して、暴走し続けるコンの前に降り立つ
「・・・ウ゛ゥゥゥゥ・・・」
低く唸る声
平常時のコンからは考えられないほどの敵意
「コン、分かるか?オレだ、シュロだ
落ち着け、な」
何度も炎を作り出して疲れたのだろうか
荒い息と身構えたその姿から予想する
「・・・う゛?」
四足で身構えたまま、首を傾げる
しばし目が泳ぐ
・・・いけるか?
「シュロだ、思い出せ
シュロパパだぞー」
正直、自分でも厳しいと思う
こんな呼びかけで正気に戻れば、木遁はいらない
流れる沈黙
「・・・・・・」
ニタッ
コンが笑んだ瞬間、目の前に炎を投げつけられた
蟲の盾を生贄に、辛うじて避ける
やっぱりダメだ
どうやって正気を取り戻せばいい?
コンの理性がない状態で、どうやって———
「・・・うぅ・・・」
コンの真後ろ、急遽作られた塹壕からうめき声が聞こえる
その声は・・・ソラ?
塹壕を背に、見方を変えれば塹壕の中の者を庇うように身構えるコン
暴走しているコンのそばにいて、どうして無事でいられるのか
ふと過ぎった思いに従い、隠れられそうな場所を探し、蟲をけし掛け、すぐさま身を隠し息をひそめる
蟲に気をとられたコンは、蟲を焼き尽くしてきょろきょろと辺りを見回した
マダラも既に折れ倒れた木々の中に姿を隠し、気配をたっている
しばらく様子を見ていると、誰もいないと判断したコンが塹壕からソラを引きずり出した
服を噛んで引きずり出し、チャクラによって損傷した傷を舐めている
まるで、唾液で傷を癒そうとする獣の親のよう
徐々に静まっていく、体を覆う炎のチャクラ
ソラを助けようとした直後コンは暴走した——のではなく、助けるために暴走した、の間違いなんだろう
マダラが強いというのは周知の事実
オレ達じゃ、相手にもならない、サイがいても勝ち目はない
上忍たちが助けに来たとしても、倒せるのか分からない
パルコの部下となったマダラに対抗し得る力を、九尾の力を使えば助けられる
そんな賭けごと染みた発想に、身を委ねたのではないのだろうか
ソラを塹壕の中に隠し、その身を癒そうと舐める姿からオレはそう思った
生命維持が出来ていないと言うのは大問題だ
しかし、コンが鎮まらないことには治療も出来ない
このまま自然に鎮まるのを待っていれば、いずれは———————
「無事かシュロ、鶸茶!!」
ブワッ
コンの炎が荒ぶった
◆◇◆シナイ◆◇◆
侵入口を作るのに大分時間をかけたがようやく突入できる
炎のドームを水遁で抉じ開けて突入すればそこは地獄絵図
なぎ倒された木々
雑草すら消し炭となった大地
燃え広がる炎が悪魔のように踊っている
中心部分にいるのは恐らく暴走したコン
妖孤の衣によって覆われた姿は醜悪とも呼べる
傍らで倒れたソラに今にも止めを刺そうとしているのか、開いた口から見える牙が月光に照らされている
どうやら、状況は限りなく悪いらしいな—————
「なんでこのタイミングで来るかなァァァァァッッ!!」
「色々台無しじゃないスかァァァァァァッッ!!」
足場にしていた木から蹴り落とされる
無事な姿を確認出来て嬉しいよシュロ
「うわぁ」
「シナイ!」
でもどうしてマダラと一緒に蹴ってくるのか分からない
蹴り落とされたがガイにキャッチして貰って体制を立て直す
よくよく見てみれば、マダラは仮面が一部壊れ、その素肌が火傷を負っていることが分かる
シュロも所々火傷を負い、2人とも満身創痍とまではいかないが、ボロボロだ
一体何があったんだろう
「オレ等が!死にかけてんのに!ようやく希望が見出せたのに!」
「何ナンすかアンタ!毎度毎度こっちの計画邪魔するわ次々と修正してくるわ!
人知を超えた領域で何を察知してやがる!?
アンタ本当に人間スか!?」
「人間です」
「一体何なんだお前たち・・・」
地団駄を踏みながら叫び続ける2人に距離を置く
ガイと顔を見合わせ、首を傾げる
どうしたんだろうか
シュロはマダラのことを目の敵にしていたというのに、どういった心変わりだろうか
「コンの暴走がようやく鎮まりそうだったってのに!ふざけんな!」
「とっとと角都に倒されてしまえ人外!ふざけんな!」
「・・・ごめんなさ・・・い?」
思わず謝ってしまう
マダラ、お前勢いで本音暴露してるだけじゃないのか
というか人を人外扱いしないでくれ
しかし、先程から妙に静かだな
暴走しているコンはどうした、そう思って振り向けば————
何アレ
「なぁシナイ、オレの見間違いだろうか・・・
気のせいでなければ、高密度のチャクラのドデカイ塊が宙に浮いてるんだが・・・」
「なぁガイ知ってるか、現実からは逃げられない
・・・まるで黒い太陽だな・・・」
コンの口から高密度のチャクラの塊が作り出されている
徐々に大きくなっていく塊で、すでにコンの姿が見えなくなっている
「ど、どーすんだよ先生!あれはヤバイって!!
つーかアイツ逃げやがった、先生たちが開けた穴から逃げやがった!!」
本当だ、マダラがいない
引き際を心得てるな
「とりあえず、あれが私達に当たると危ないな?」
「危ないどころじゃ済まないなアレは」
死ぬよな
うむ、死んでしまうな
「なんであんた達落ち着いてんだよ!」
「「当たると危ない、なら当たらなければいい!」」
ガイと2人で頷きあって、そのまま兵糧丸を口に含む
チャクラ補給して頑張るぞ
「・・・は?」
状況についていけていないシュロが呆然としている
「シナイ!」
「おう・・・カタパルト準備オーケーだ」
雷球を作り出し、足をかける
伸ばした腕に捉まったガイがチャクラを練り合わせる
徐々に私達から距離を置くシュロを尻目に、照準を合わせる
「カタパルトの術———射出!」
瞬時に変わる風景、コンの真横に出現した私達はそのまま作戦を開始する
急に現れた私達に目を見開くコン
驚いたコンが瞬きを終えるころに、私はソラを抱き上げて確保する
兵糧丸を口に含ませ、そのままカタパルトで再び離脱、シュロにソラを頼む
振り向いて再び移動する場所を確認し、ガイの様子を伺う
「木ノ葉昇風!!」
空中に向かって突き上げる回し蹴りが、ガイが練りに練り上げたチャクラを伴った回し蹴りがコンの顎に食い込む
衝撃でチャクラの塊ごと宙に浮くコン
炎でガイが火傷を負ったようだが気にせずに、そのままカタパルトでチャクラの塊の真下へ移動
得意の空中歩行で留まる
「・・・カタパルト、射出!」
チャクラの塊の真下に雷球をぶつけ、全力のチャクラで加速させ、天高く飛ばした
肉眼では目視できない距離まで飛ばされたチャクラを眺め、チャクラ切れで落下する私
しばらくして、熱風が身を襲った
◆
「シナイ、起きろ」
目を開けると、何時も通り濃いガイの顔がアップで映った
変な声出そうになった
ガイに手伝ってもらって身を起こせば、私の腹を枕にボロボロのコンが寝ていた
・・・どうやら、暴走は鎮まったらしい
「ふん!」
「痛い!」
身を捩ってコンを腹部から落とす
ゴチっと鈍い音が頭部から聞こえ、小さく叫んで飛び起きたコン
きょろきょろとあたりを見回して、私の顔を見た
「・・・!
遂に人外認定を受けたシナイちゃんが起きた・・・!」
「良い度胸だ」
コンの顔を鷲掴み、そのまま力を込めて握りしめてアイサツしてやる
何やら挙動不審に動くコンを放置して、シュロの姿を探す
すぐ近くでソラの治療に当たっているようだ
すーすーと寝息が聞こえてくる所を見ると無事らしい
・・・私が寝ていたのは、チャクラ切れか
ため息が出てくる
「・・・カカシじゃあるまいし・・・」
「チャクラ切れで倒れるとは、珍しいなシナイ」
元々チャクラ量が少ないから節約する癖がついたからな
滅多に倒れることはなかった
「ガイ、足の火傷は?」
「うむ、何故かキレイに癒えた
呪術だからだそうだが・・・よくわからん」
五代目が仰った誰かを呪う、人を蝕む火、呪術の火か
コンが敵ではないと判断したから火傷が消え去ったのか
シュロにも火傷があったはずだが今はない
「私が気絶してからどうなった?」
不覚にも気絶してしまった
報告書どうしようか・・・
「落ちてきたお前を見て、コン君が正気に戻ってな
死にかけていたコン君に、仮面の男が何やら術を行使して容体が落ち着いた」
逃げたのにもう一度戻ってきたのか
炎のドームが消え去ったからか?
「シュロが仮面の男と話して、そのまま彼は立ち去って行った
それからお前とソラ君とコン君の治療・・・
今に至ると言う所だな」
「・・・迷惑をかけた」
一応この小隊のリーダーなのに無様な姿を晒してしまった
もうすこしマシな作戦を立てるべきだった
なんでこう力技で解決しようとしたんだろう
「気にするな
こういう時のためにオレがついて来たんだからな!」
親指を立てて笑うガイに毒気を抜かれる
・・・みんな、無事だった
それで良いか
そう思って笑うガイに同じように笑いかけようとした瞬間
シュロが蟲を伴って駆け寄って来て叫んだ
「先生!
地陸さんが———————殺されたッ!!」
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◆シナイちゃんの脳内◆
当たらなきゃいいよね
↓
なら当たらない所に捨てちゃえ
↓
地面だとソラ君危ないよね、あ、空に捨てちゃおう
↓
カタパルトで物質加速射出、きっと遠くまで行くよね
↓
自信満々で試したことのない発想を実行するよ
↓
空までいったは良いけど爆発の余波で気絶しちゃった てへぺろ(・ω<)
だいたいこんな感じ
マダラさんサイドは次回ね
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