ひねくれヒーロー
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恐怖に対する恐怖
恐怖には、恐怖に対する恐怖というものしかない。
—アラン—
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恐怖に対する恐怖
◇◆◇サイ◇◆◇
頭痛と腹痛を訴え、座り込んでしまったソラ君を背に庇い、仮面の男と対峙する
今の今まで気配など感じなかったというのに、足音一つ立てずに現れた男
男はただボク達を見下ろしながら、思案しているようだった
ボクだけでは対処できない
早い所、援軍を呼ばなければ
ポーチの中に入っている照明弾を手に取り、上空に向けて投げつける
何秒かした後、まばゆい光を放ちながら破裂する
これでまじらず上忍やマイト上忍だけでなく、寺の人も集まってくる事だろう
しかし、光に動じた様子もなく、立っているだけの男は低く笑いだす
「・・・何が、可笑しいんです?」
おどけた様にユラユラと体を小刻みに動かす男
挑発か、それとも、別の何かか
武器を構えたまま相手の出方を伺う
「いや〜まさか侵入者がボク1人だと思ってるんでスか〜?
今頃頼りになる人たちは先輩と遭遇してるでしょうねぇ
・・・ちょっとどいてくれるかな?
別にその子殺したりしないから、ネ?」
先輩と呼ばれる侵入者がまだいるらしい
火ノ寺に態々侵入してくるほどの輩、少なく見積もって上忍クラスの実力を持っているはず
ボクで対処できるのか?支援を主体とするボクに?
ここ三日ほどの修行で体術は向上したが・・・不安が過ぎる
今はソラ君を守るべきか、それとも任務ではないのだから、彼を見捨てて上忍達の元へ合流するか
考えが追いつかないうちに攻撃が開始される
手裏剣を投げつけられ、思わず飛び退いた
少しずつソラ君から引き離されていく
ソラ君の元へ戻ろうとすると、それを阻むようにクナイが飛んでくる
「まー誘拐する手間が省けたから良いんスかね〜
巫子さんとこに連れて行くだけで済むし・・・楽っちゃ楽?」
「何を言ってるんですか・・・
忍法・超獣戯画!」
墨で描いた獣たちをけし掛け、一気にソラ君の元まで戻る
痛みで失神したらしい、倒れ込んだ彼を背負う
「うわ、吃驚したっ面白い術使うねキミ
先輩の爆発よりもよっぽど芸術っぽいや」
「・・・それって、褒め言葉ですか?」
「えー・・・うーん・・・やっぱ今のなし
先輩にバレたらタダじゃ済まされないや」
何なんだろうこの人・・・
ボクじゃ、この人の相手は色んな意味でツライ
こういう人の相手は鶸茶だって、相場が決まっているんだ
フー先輩が言ってたから間違いない
トルネ先輩も納得してたからきっとそうだ
「風遁・神風!」
突如、複数の竜巻が仮面の男を襲う
術を行使した人物を探し出すと、見知った少年がいた
あれは、イカリ御嬢さんの・・・確か油女シュロとかいう・・・
「薄墨、無事か!?」
油女シュロの背後から現れた鶸茶が駆け寄ってくる
あの仮面の男と同じく、仮面をつけているけれど、キミは不審者に見えないね
何故だろう あぁ、そんなことよりも
鶸茶・・・
「ああいう手合いは鶸茶の専門だよね?」
「何の話
・・・あー・・・こいつかー・・・」
一瞬驚いたように身をすくめ、ボクが指示した方向へ首を向ける
仮面の男を眺めて、半ば諦めた様に笑った
「知ってる人?」
「・・・ん、知ってるっちゃ知ってる」
煮え切らない答えに顔を顰める
こんな男と何時出会ったというのか
ビンゴブックなどにはいなかったはずだし、どうやって知り得たのか
「・・・アレレ?
仮面付けてるけど・・・え、もしかして、え?
え?
・・・暗部に、なっちゃったんスか!?」
「・・・うん
つーか、お前もオレの事知ってるんだな?」
「おっとっと」
美味しそうな響き
生唾を飲み込むと2人から首を傾げられ、油女シュロは気持ちは分かると同意された
仮面の男は失言を恥じるかのように口元を覆うふりをした
蟲を羽ばたかせ、油女シュロがボクに語りかける
「おい根の
ちょっと上忍たちと合流してこい、ここは俺らでやるから」
「・・・悪いけど、ボクは鶸茶と組んでいるんだ
キミがソラ君を連れて合流してくれないかな」
「あれ何か凄い喧嘩腰に聞こえる
お前がいると戦いづらいんだよ
組んでる組んでないは別として指示に従えよ」
「いきなり出て来てそう言う事言うんだ?
ボクは任務でここにいるんだから、キミに従う理由はないんだけど?」
「いやいやオレは正規の補充要員として来たわけだからな?
オレは正規部隊の中忍だぜ?
一応お前より階級上だから命令聞けよ?」
「この任務での上司はまじらず上忍だよ
彼女の命令ならともかく、キミの命令なんか知らないよ?
そもそも本当に補充要員だか分からないのに、聞くわけないじゃないか
ねえ鶸茶」
「喧嘩すんな」
「あのー・・・仮面の子と修行僧の子だけ、置いていってくればいいんスけど」
「・・・薄墨、上忍とこへ合流
ソラ連れて行くより早く合流できるだろ
行け」
「・・・分かったよ」
庇ったままのソラ君を置いて、足早に駆ける
去り際に油女シュロへ中指を立てることを忘れない
コンビの仲を裂く者あれば挨拶せよ、フー先輩からの教えだ
油女シュロは何やら口を開いたまま立ち尽くしていたけれどどうでもいい
今はまじらず上忍達の元へ合流し、彼女たちを引き連れて戻ることを考えよう
待っててね、鶸茶
◇◆◇シュロ◇◆◇
「おいアイツ中指立てていったぞ!?オレそこまで嫌われるような真似したか!?」
思わずコンに向かって叫ぶ
蟲たちに牽制させ、クナイを構える
「大体犯人の想像ついた
・・・変な事教え込みやがって、修正するのに手間取るじゃねえか・・・」
ギリっと歯を噛みしめる様子が薄ら寒い
・・・やだコンさん怖い・・・
「んーと、とりあえず巫子さん?
—————暁に、来ないか?」
そこの油女も一緒で構わないぞ?
笑いながらオレ達に声をかけたトビ———いや、うちはマダラ
先程までの、他人を小馬鹿にしたような物言いは何処へ行ったのか
アニナル見てても思ったが、凄い演技力だよお前・・・
さっきデイダラと一緒にいた時も、後輩キャラ演出しやがって
「何が目的だ?うちはマダラさんよ?」
気配を消し、差し向けていた蜂の一匹がマダラに潰された
・・・ご丁寧にクナイを使いやがって、アンタなら態々潰す必要なんかないだろう
攻撃なんて全部すり抜けるんだ
避ける必要すらないのに、挑発のつもりか?
良いぜ、今に見てろ
「先程は碌に挨拶も出来ないまま去られたが・・・久しぶりだな、うずまきクシナの護衛よ」
「・・・てめえはオレと同じ記憶持ちかよ・・・
なら、オレが着いていかないのは・・・分かってるよな?」
「フッ・・・オレと同じだと・・・?
一緒にしないでもらいたいものだ
邪神さまのご要望だ、お前たち家族を暁に連れて行く
まぁ、今回は別の目的があるのでな」
オレ達、家族?!
コンだけじゃないのか?
コンに対する人質扱いだとでも言いたいのか
「うちはマダラ、お前は邪神の、パルコの命令を聞いているのか?」
気絶したままのソラを眺めていたマダラに、コンが低い声で問いかける
「・・・その名を、呼ぶか
記憶は戻っていないようで安心したよ
イタチが余計な真似をしてくれたおかげで心配だったが、あぁ———良かった」
心底安著したとでも言いたげに、ゆっくり息をついてから応えたマダラ
パルコは、コンに記憶を思い出してほしくない?
イタチは記憶を思い出せと言ったらしいが、思い出すことによって何かが変わるのか?
「さて、安心できたところで、本来の仕事に取り掛からせてもらおうか
影分身の術」
おいおい、影分身使えたのか
まぁ、力量的には使えて当然か
分身のマダラがソラの元へ真っ直ぐ駆けてくる
本体は瞬身の術で消え去った
どこから来るものかと周囲を見渡しつつ、蜂に分身を相手取らせる
コンが小さく叫ぶ
「シュロ!」
眼前に現れるマダラにすかさず術を、一筋のカマイタチを発生させて切りつけた
「風遁・風切りの術!
————下から!?」
斬りつけたつもりだったんだが、土の下から現れたマダラに蹴りつけられる
眼前に現れたのは、どうやらただの分身だったようだ
オレを蹴りつけた態勢で突如固まったマダラに、コンが襲いかかる
「木の葉旋風!」
やはり蹴りはすり抜けられ、そのまま捕まらないよう離脱
本当にどうやったらダメージを与えられるんだよ
「!
・・・体が急に重くなった・・・蟲か・・・?」
軽く体を触って確認するマダラ
「残念、幻術だ
・・・油女一族が蟲だけだと思うなよ」
・・・マダラ、正解! 本当は蟲なんだ!
ごめんなさい悔しいから嘘つきました!
前回使う間もなく死んでいったこの術、本当に・・・マダラに効いて良かったぜ
限りなく幻術に近付けたこの幻蟲の術・・・あっさり蟲だと見破られるとは悲しい
しかし、アイツのすり抜けのタイミングが分からない
無意識の時はすり抜けられないのか?
蟲たちのフェロモンによる嗅覚への攻撃は、回避しようがなかったのだろうか
この術が効いたということは、こいつがマダラ本体
影分身は蟲の大群に阻まれ、ソラに近付けていない
ダメージを与えることができない相手に、どう対応すればいいのか
影分身が消え、マダラが懐から何やら色紙を取り出した
・・・?
あれは三日月型じゃないけど、葬儀の時に使った紙か・・・?
「ふむ・・・手荒な真似はしたくなかったが、仕方がない・・・
・・・解!」
「!! ア゛ァァァァァァァァッ!?」
印を組み、紙をソラに投げつける
咄嗟に紙を掴んで止めたが、気絶していたソラが目を見開き絶叫する
この紙はただのフェイク?!
ソラの体から赤黒い邪悪なチャクラが湧きでてくる
コンが血相変えて、ソラを介抱しようと試みるも、チャクラに阻まれ身動きが取れない
一体何事だってんだ
思い出せ、アニナルでソラがどんなキャラクターだったかを
修行僧でナルトと何やらツンデレ気味に仲良くて、父親が守護忍十二士で・・・
「・・・無理やり起こすと、オレが1人死んでいくから使いたくなかったんだが・・・
さぁ、九尾の尾よ、在るべき場所へ還れ!」
・・・九尾の、尾?
九尾のチャクラを、培養した物じゃなかったのか?
それが、ソラに封印されている物の正体のはず
叫び続けるソラの体から巨大なチャクラの塊が引きずり出された
周囲までもが赤黒く変色し、まるで現実ではないような感覚に襲われる
圧倒的なチャクラの塊
もはや暴力と言っても良い
ゼェゼェと息を荒げるマダラは、呼吸を整えようとオレ達から距離をとる
ソラの封印を解いた術は、なにやら酷くチャクラを消耗するようだ
————今なら、ヤれるか?
脳裏に思い浮かんだ可能性が、オレに希望を持たせる
どんな条件ですり抜けるかは未だに分からないが、弱っている今なら、イケるんじゃないか?
そう思って、蟲へ指示を出そうとしたとき、火柱が昇った
「・・・コン・・・?」
振り向けば、変わり果てた姿
そうだ
コンは人柱力だ、ナルトと同じ、九尾の人柱力
—————————暴走しないと、断言出来るわけがない
仮面が消し炭となって零れ落ち、素顔が露わになる
地獄の業火とは、言い得て妙だ
あの炎が人を害さないと誰が思うのだ
荒れ狂う炎が徐々にコンの体を侵食して、まるでナルトの暴走モードのように、狐の尾を模る
ナルトと違うのは、その尾が二本だということ
「・・・ゥウ゛・・・グルルル・・・」
開かれたその目には、理性など欠片も見受けられず
ただ迸る殺意が、オレすらも敵と捉えている
四足で身構えるコンに、言葉など通じないのだと、心で理解した
「・・・マジで、暴走かよ・・・」
背中を伝う汗が、体だけでなく、心までも冷え切らせた
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久しぶりの更新です
割り込み投稿すると最新話として表記されないんですね・・・
キャラ紹介ページと閑話集を独立させるべきか否か
・・・面倒だからこのままで行くか
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