先輩の傷
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第三章
「ただ一緒にいるだけなのよ」
「よくそれで一ヶ月続けてるわね」
「今朝もそうしたのよね」
「声かけても反応ないのに」
「そうした人なのに」
「だからね、好きだからよ」
それでというのだ、あくまで。
「一緒にいるのよ」
「それでなのね」
「あんたも根性あるわね」
「そうしたサボテンみたいな人と一緒にいるなんて」
「しかも好きだなんて」
「私の方から告白しようと思うけれど」
それでもだというのだ。
「何か反応なさそうだし」
「実際ずっと反応ないでしょ」
「無反応でしょ」
「本当にサボテンみたいに」
「無愛想よね」
「サボテンキャンバスとかいう漫画もあったけれどね」
友人達はそれぞれの昼食のメニューを食べつつ由紀に言う、食べているのは焼きそば定食やレバニラ定食、カツ丼、ラーメンといったものだ。間違っても乙女チックなメニューではない。
「あの先輩の無反応さはね」
「ちょっと凄過ぎるわね」
「由紀正直言って可愛いわよ」
「美人って言ってもいいわよ」
その外見の得点は高いというのだ。
「性格も明るくて面倒見よくて」
「何につけても根性があるわよ」
「そのサボテンみたいな先輩と一月通学一緒なんだから」
「そうしたところもポイント高いわよ」
「間違いなくね」
「けれどね」
それでもなのだった、慎は。
「その由紀に反応なしって」
「何なのよ、一体」
「あの先輩何かおかしくない?」
「まさか女の子に興味ないとか」
そうした予想さえ出て来る始末だった。
「所謂ボーイズラブの人とか」
「確かに、そう言われてもおかしくない外見よね」
「背は高いし筋肉質でね」
「そっちの趣味の人にももてそうだし」
「じゃあ先輩は由紀には興味がなくて」
「実は男の子にとか」
「そうかも知れないけれど」
それでもというのだ、由紀は。
「私は先輩がね」
「好きなのね」
「その気持ちは抑えられないのね」
「うん、だからね」
由紀は友人達の言葉を受けながらだ、顔を曇らせてもだった。それでもくじけていない顔で言うのだった。
「私このまま先輩といるから」
「何があってもって感じね」
「先輩がガチでそっちの趣味の人でも」
「それでもなのね」
「一緒にいるのね」
「ええ、いるわ」
まさにだ、そうしていくというのだ。
「これからもね」
「何か勇者ね」
「そこまでいくとね」
「由紀も根性座ってるわ」
「あらためて思ったわ」
「一月で駄目なら二月よ」
その気持ちは変わらないというのだ。
「やっていくから」
「じゃあね」
「今から」
こう話してだ、そしてだった。
由紀は実際に慎と通学、行きも帰りも一緒にい続けた。慎は相変わらずこれといった反応を見せない。しかし。
ある日だ、帰っている時にだった。彼は横にいる由紀にだった。
顔を向けた、由紀はそれを見て驚いてだ、こう言った。
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