リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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第五十六話 擬似融合
前書き
大輔達が再び再会。
ユーノ「食事の用意が出来たよ。どうかな?」
なのは「うん、とても美味しいよユーノ君!!」
アリサ「悔しいけど、私より美味しいわ」
賢「だけどおにぎりの握りに少し問題があるね。おにぎりは米を潰さないようにこう…」
はやて「賢兄、お料理教室はまた今度な?」
賢「うぅん…」
一輝「リリカルアドベンチャー、始まるぜ」
大輔は学校が終わるのと同時に田町に向かう。
大輔「(お袋に頼んで、別の学校に行きてえ…)」
日増しに増加するストレスに、母親に頼んで、別の学校かもしくは特別教室に行きたい。
最近は先生からも最近は人付き合いが悪いと言われている。
デジタルワールドの復興作業中、賢に手伝わせたらどうだとそれとなく聞いてみたが、彼等に賢を受け入れる気など皆無だった。
大輔「これからは賢と行動するか…。」
約束でもあるし、何より自分の精神衛生状に良くない。
隣のフェイトも苦笑している。
賢「大輔!!」
はやて「大輔さーん!!フェイトちゃーん!!」
はやての車椅子を押して大輔の元に向かう賢。
大輔はその車椅子はどうしたのか首を傾げた。
はやて「デジタルワールドの町で偶然見つけたんよ~。少し古いけど乗り心地はええ。」
フェイト「よかったねはやて」
大輔「これで一々賢にお姫様抱っこされないで済むな」
はやて「え…あうぅ…」
赤面するはやて。
どうやらお姫様抱っこが相当恥ずかしかったようだ。
賢「とにかく家においでよ。お母さんがおやつを作ってくれたんだ」
大輔「そっか、賢のお袋さん。料理上手そうだしな」
フェイト「お邪魔するね」
賢「ただいまお母さん」
「お帰りなさい賢ちゃん…あら?お友達?」
賢「うん、彼女がフェイトで隣が大輔…僕の親友だよ」
大輔「初めまして、賢には世話になってます」
「まあ…賢ちゃんがお友達を連れて来るなんて…ちょっと待ってて頂戴ね?」
家に招かれ、紅茶と手作りのケーキを出してくれた。
大輔「ん…美味い!!」
フェイト「本当!!」
はやて「めっちゃ美味しい!!」
賢「やっぱりお母さんの作ったケーキは最高だね…僕、ある物を持ってくるから寛いでて?」
大輔「おう」
賢は部屋にあるノートパソコンを取りに行く。
「賢ちゃん、前より凄く明るくなったのよ。お友達どころか恋人まで」
はやて「恋人…」
赤面するはやてだが、賢の母親は言葉を続ける。
「今の賢ちゃんを見ていると、昔の自分をひっぱたいてやりたいと思うの」
フェイト「え?」
「おばさんね、賢ちゃんの事を無意識に治ちゃん…賢ちゃんのお兄さんと重ねていたのかもって、そう思うの……」
大輔「賢の兄貴…」
「賢ちゃん、本当は自分を見て欲しかったのかもしれない……勉強やスポーツが万能で、有名な天才少年を子に持って、おばさんは天狗になっていたのよ…おばさん、賢ちゃんの事を理解してあげられなかった」
フェイト「…………」
大輔「でも、おばさんは自分の過ちに気付けた。そうでしょ?」
「…っ」
大輔「大切なのは、過ちから目を逸らさないで受け止めること、そしてそれを反省して二度としないようにすることでしょ?」
「ええ…ええ、そうね」
涙を流しながら頷く賢の母親に、大輔達は穏やかに微笑んだ。
「私、パートに出掛けるから…ゆっくりしていって」
そう言うと賢の母親は出掛けた。
賢「待たせてごめん……」
賢はノートパソコンをテーブルに置く。
ブイモン[それは?]
賢「大輔とブイモンに僕からのプレゼント。」
ノートパソコンの画面に映し出されたのは、スナイモンである。
蟷螂のデータから作られており、正確な機械のようにターゲットを追い詰める冷酷な性格から、ワクチン種やデータ種から恐れられている。
目を持たない代わりに頭から生えた真っ赤なセンサーがターゲットの位置を正確に捉えることが出来るデジモン、個体によっては完全体とも渡り合えるらしい。
しかし…。
大輔「スナイモンのデジゲノムがどうしたんだ?」
賢「このスナイモンのデジゲノムが、ブイモン単体の超進化に必要なんだ。」
ブイモン[え?]
賢「ブイモンはワームモンやチビモンと違って純粋の古代種。だから進化の負担も段違いだし、通常進化も現代種に進化して緩和しなければならない。通常進化ですらそれなのに、超進化となると…ジョグレス進化だって負担を考えれば使わないに越したことはない」
大輔「このスナイモンのデジゲノムをどうするんだ?」
賢「本来、二体のデジモンが融合するなら本来膨大なエネルギー体が必要だけど、今回はエクスブイモンの進化先に必要なデジゲノムをD-3のプログラムに組み込むだけだから。エクスブイモンとスナイモンの組み合わせは…パイルドラモンになるらしい」
大輔「パイルドラモン?」
賢「ああ、ジョグレス体のパイルドラモンよりかなり弱くなるけど、ブイモンは純粋の古代種だから戦闘力は期待していいと思う。進化の負担もスナイモンが現代種だし、半分スナイモンのデジゲノムが緩和してくれるから、身体に掛かる負担は通常進化と変わらない。」
ブイモン[やった!!ゴールドブイドラモンもサジタリモンも進化出来る時間が短いから助かる!!]
フェイト「それにブイモン、あまり早く飛べないもんね」
ブイモン[うぐっ!!]
ジュエルシードのエネルギーを取り込んだことで寿命が飛躍的に伸びたことと、魔力を得たのはよかったのだが、元々魔法の素養がないブイモンの飛行魔法はお世辞にもあまりいいとはいいとは言えない。
例えるなら某人気漫画の緑の人に“俺様のは貴様のような情けない舞空術とは違うんだ”と言われた主人公状態。
はやて「でも、スティングモンとジョグレスした時もパイルドラモンになるならややこしくならへん?」
フェイト「…確かに」
チビモン[ええ~?同じデジモンでも全然違うよ]
ギルモン[見分けなんて簡単に付くぞ?]
はやて「うちらには同じに見えるんや。ブイモンのパイルドラモンに名前を付けへん?」
大輔「名前か…」
全員が名前に頭を悩ませるが、エクスブイモンとスナイモンの融合体、パイルドラモンの腹部のX文字が賢の視界に入る。
賢「エックス…いや…」
はやて「へ?」
賢「パイルドラモンイクスはどうかな?」
フェイト「イクス?」
賢「“イクス”はエックスの別称で、“未知数”という意味がある。デジゲノムを取り込んで単体でジョグレスするデジモンはブイモンしかいないだろうから、この名前が一番相応しいと思う」
大輔「パイルドラモンイクスか…格好いいじゃんか」
はやて「流石、賢兄やな!!センスええわ!!」
賢「あ、ありがとう。ブイモンもこれでいいかな?」
ブイモン[勿論!!パイルドラモンイクスか…]
新たな進化形態のきっかけを手にしたブイモンは拳を握り締め、天井を見上げた。
賢「出来るだけジョグレス進化はしない方向で行きたいんだ。僕も融合して分かったけど、あれの負担は四人で負っても凄まじい物だった。ブイモンとワームモンも幼年期になったし…」
大輔「俺も賢も凄い脱力感に襲われたしな…出来るだけやらない方向で行くのは賛成だ」
賢「うん、もしあれを二体で負担を負うことになったら…」
凄まじい負荷により死んでしまうのではなかろうか?
心と心が重なる感覚がする進化。
大輔はあの進化で賢をとても身近に感じた。
だから分かるのだ。
賢はまたパートナーを失ってしまうのが怖いのだ。
その気持ちを理解した大輔達は頷いた。
はやて「賢兄は優しいんやな…」
賢「そうかな…」
ブイモン[よし!!俄然やる気が出て来たぞ。]
大輔「明日からお前と一緒に行っていいか?ストレスが溜まって胃が痛い…」
賢「胃薬要るかい?」
大輔「お気遣いどうも…」
本宮大輔11歳の若さで胃薬の世話になるのだった。
後書き
名前はパイルドラモンイクスに決定。
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