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大陸の妖精

作者:sinの妖精
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FIND THE WAY



エルザ「アルト・・ナツ・・何故ここに・・・!?」


ナツ「何故もくそもねえんだよ!!なめられたまま引っ込んだらフェアリーテイルの名折れだろ!!」


アルト「エルザを助けに来たんだよ」


荒ぶるナツがエルザに歩み寄る


するとエルザは視線をナツからジュビアに移す



ジュビア「!!」


エルザの視線を感じたジュビアはビクッと身体を震わせる



ジュビア「あの・・・ジュビアはその・・・」


エルザ「帰れ」


エルザはジュビアを含め、この場にいる全員に冷たい言葉を吐き捨てた



アルト「エルザ・・!!?」


エルザ「ここはお前たちの来る場所ではない」



ルーシィ「でもね、エルザ・・・」


ナツ「ハッピーまで捕まってんだ!!このまま戻る訳にはいかねー」


エルザ「ハッピーが?まさかミリアーナ・・」


ナツ「そいつはどこだ!!」


ナツはエルザが呟いた人物の居場所を聞く



エルザ「さ・・・さあな」


しかし、エルザは質問に答えず俯いた



ナツ「よし!とりあえずハッピーが待ってるって事は分かった!!」


そう叫んだナツは一目散に駆けだした


それを見たアルトたちはナツを追いかけようとするが、エルザに剣を突き付けられ止められる



エルザ「ダメだ、帰れ」


グレイ「エルザ!!」


エルザ「ミリアーナは無類の愛猫家だ、ハッピーに危害を加えるとは思えん・・・ナツとハッピーは私が責任をもって連れ帰る、お前たちはすぐにここを離れろ」


ルーシィ「そんなの出来るわけない!!エルザも一緒じゃなきゃイヤだよ!!」


エルザ「これは私の問題だ、お前たちを巻き込みたくない」


グレイ「もう十分巻き込まれてんだよ、あのナツを見ただろ」


ルーシィ「エルザ・・・この塔は何?ジェラールって誰なの?」


ルーシィの問いにエルザは答えず、黙っていた



エルザ「・・・・・」


アルト「・・・ま、言いたくないなら言わなくていいけどさ」


アルトはエルザに近づきながら言う



アルト「あいつらがエルザの昔の仲間だろうが、俺たちは今の仲間だ」


エルザ「・・・・・」



アルト「どんな時でも、俺たちはエルザの味方だよ」



エルザ「か・・・帰れ・・・」


アルトの優しい声掛けにエルザは声を震わせて応える



グレイ「らしくねーな、エルザさんよォ・・・いつもみてーに四の五の言わずついて来いって言えばいーじゃんヨ」


アルト「誰が敵だろうと俺たちは力を貸す、エルザにだって怖いと思う時があってもいいじゃないか」


アルトたちがそう言うと、エルザが目に涙を浮かべながら振り返る



エルザ「この戦い・・勝とうが負けようが、私は表の世界から姿を消す事になる・・」


涙を拭いながら話すエルザ



アルト「!?」


グレイ「ど・・どういうこった!!?」


エルザ「これは抗う事のできない未来、だから・・・私が存在しているうちに全てを話しておこう」


エルザは少し考えた後、微笑を浮かべながら語り始めた



エルザ「この塔の名は〝楽園の塔〟・・・別名、〝Rシステム〟・・・10年以上前だ、黒魔術を信仰する魔法教団が〝死者を蘇らす魔法〟の塔を建設しようとしていた」


ルーシィ「死者を蘇らす魔法!!?」


エルザ「政府も魔法評議会も非公認の建設だった為、各地からさらってきた人々を奴隷としてこの塔の建設にあたらせた・・・幼かった私もここで働かされていた一人だったのだ」


アルト「えっ・・!?」


グレイ「なにっ!?」


エルザが元奴隷だった事を知り、驚愕するアルトたち



エルザ「ジェラールと私はその時知り合った・・奴隷だった私を助けてくれたのがジェラールだった・・・」


ジェラールは当時、拷問を受けていたエルザを庇い、身代わりとなって懲罰房へ入ったらしい


その後、ジェラールを救うため、幼きエルザは当時の奴隷仲間のシモンたちを率いて、反乱を起こしたのであった



エルザ「あの頃のジェラールは皆のリーダーで正義感が強くて・・・私の憧れだった・・・」


過去を語るエルザの表情がだんだん暗くなっていく



エルザ「しかし・・・ある日を境にジェラールは別人のように変わってしまった・・・もし人を悪と呼べるなら、私はジェラールをそう呼ぶだろう」


エルザは自分の過去を語り続けた



反乱を起こしたエルザたちは見事ジェラールの救出に成功した


しかし、救出されたジェラールの性格には以前のような正義感は欠片も残っていなかった


この世の全てに激しい憎悪を抱き、『黒魔導士〝ゼレフ〟を復活させる』と言いだした後、自分らを支配していた魔法教団を壊滅させたのだった



エルザはジェラールに反発したが、実力差で敵わず、塔の外へと放り出されてしまった



もし楽園の塔の事が政府や魔法評議会に知られたり、エルザ自身がこの塔に近づけば、奴隷仲間のショウたちを殺すという指示が下され、エルザは今までずっと仲間の命を背負って生きてきた



そして、8年の月日が経ち、再びこの塔に戻ってきたエルザはある事を決心したらしい



エルザ「私は・・・ジェラールと戦うんだ・・・」


そう言ったエルザの左目からは大粒の涙が流れていた




アルト「エルザ・・・」


エルザの過去を知り、言葉を失っていたアルトたち


そんな中、グレイがエルザに問いかける



グレイ「ちょっと待てよエルザ・・・話の中に出てきたゼレフって・・・」


エルザ「ああ・・・魔法界の歴史上、最凶最悪と言われた伝説の黒魔導士」


涙を拭ったエルザは、表情を切り替えた



ルーシィ「た・・確か呪歌(ララバイ)から出てきた怪物も『ゼレフ書の悪魔』って言ってたよね」


エルザ「それだけじゃない・・・恐らくあのデリオラもゼレフ書の悪魔の一体だ」


グレイ「!!」


アルト「あんな化け物を造りだせるなんて・・・どんだけすげえ魔力を秘めてるんだよ」


ジュビア「ジェラールはそのゼレフを復活させようとしてるって事ですか」


エルザ「動機はわからんがな・・・ショウ・・・かつての仲間の話ではゼレフ復活の暁には〝楽園〟にて支配者になれるとかどうとか・・・」


顔を俯かせながらエルザは言った



ルーシィ「そういえば、あのかつての仲間たちの事って どうしてもふに落ちないんだけど・・・」


ルーシィが怪訝そうな表情を浮かべる



ルーシィ「あいつ等はエルザを裏切り者って言ってたけど・・・裏切ったのはジェラールじゃないの?」


エルザ「私が楽園の塔を追い出された後、ジェラールに何かを吹き込まれたんだろうな」


ルーシィ「そんな・・・」


エルザ「しかし私は8年も彼等を放置した、裏切った事にはかわりはない」


ルーシィ「でも、それはジェラールに仲間の命を脅されてたから近づけなかったんじゃない!!それなのにあいつら・・・」


エルザ「もういいんだ、ルーシィ・・・私がジェラールを倒せば全てが終わる」



アルト「(エルザ・・・エルザは本当にそう思ってるのか・・・!?)」



『この戦い・・勝とうが負けようが、私は表の世界から姿を消す事になる・・』



アルト「(この言葉・・・エルザはジェラールに勝っても姿を消すことになる・・・まさかとは思うけど、全てが終わるって意味は・・・)」


アルトが思考を巡らせていると、ショウがよろめきながら近づく



ショウ「姉さん・・・その話・・・ど・・どういう事だよ?」


エルザ「ショウ・・・」



ショウ「そんな与太話で仲間の同情をひくつもりなのか!!ふざけるな!!真実はぜんぜん違う!!」


ショウが血相を変えて、怒鳴り散らす


奴隷だったショウたちがジェラールから聞かされた話はまったくの作り話


八年前、エルザはショウたちの船に爆弾を仕掛けて一人で逃げたという話だった



ショウ「ジェラールは言った!!姉さんは魔法の力に酔ってしまってオレたちのような過去を全て捨て去ろうとしてるんだと!!」


グレイ「ジェラールが・・・〝言った〟?」


ルーシィ「あなたの知ってるエルザはそんな事する人だったのかな?」


アルト「エルザがお前らの船に爆弾を仕掛ける現場でも〝見た〟なら話は別だけどな」



ショウ「お・・・お前たちに何が分かる!!オレたちの事何も知らないくせに!!」


一瞬言葉に詰まったショウだったが、再びエルザたちに向かって言い放つ



ショウ「オレにはジェラールの言葉だけが救いだったんだっ!!だから8年もかけてこの塔を完成させた!!ジェラールの為に!!」


エルザ「・・・・・」


ショウ「その全てが・・ウソだって?正しいのは姉さんで、間違っているのはジェラールだと言うのか!!?」



「そうだ」


ショウの叫びに答える声


その正体はカジノでアルトたちと対峙した巨漢の男、シモンだった



エルザ「シモン!?」


アルト「お前は・・・」


シモン「カジノの件はすまなかった、アルトレア・ウィルダント」


アルト「その事はもういい・・・だってお前はあの時暗闇の魔法を出した後、わざと俺たちを見逃してくれたんだからな」


グレイ「何っ!!じゃあ俺の氷の身代わりを攻撃したのもわざとか!?」


シモン「あぁ・・誰も殺す気はなかった、オレの目的はショウたちの目を欺くためだったからな」


ショウ「お・・オレたちの目を欺くだと!?」


シモン「お前も、ウォーリーもミリアーナも・・・皆ジェラールに騙されているんだ・・・機が熟すまで・・・オレも騙されているフリをしていた」



エルザ「シモン・・・お前・・・」


シモン「オレは初めからエルザを信じてる・・・8年間ずっとな」


気恥ずかしそうに頬を掻き、微笑みながら言うシモン


エルザはそんなシモンの姿を見て、歓喜の笑みを浮かべた



シモン「会えて嬉しいよ、エルザ・・・心から」


エルザ「シモン・・・」


二人は抱き合い、共に再会を喜び合った



ショウ「なんで・・みんな・・・そこまで姉さんを信じられる・・・何でオレは姉さんを・・・信じられなかったんだ」


その光景を見たショウは、その場に泣き崩れる



ショウ「くそぉおおおおっ!!!!うわぁああぁああ!!!!」


ショウが悲痛な叫び声を上げる



ショウ「何が真実なんだ!!?オレは何を信じればいいんだ!!!」


エルザ「今すぐに全てを受け入れるのは難しいだろう、だがこれだけは言わせてくれ」


泣きわめくショウに目線を合わせ、エルザが言う



エルザ「私は8年間、お前たちの事を忘れた事は一度もない」


エルザがショウの頭を抱く



エルザ「何もできなかった・・・私はとても・・・弱くて・・・すまなかった」


シモン「だが・・今ならできる、そうだろ?」


シモンの呼びかけにエルザは静かに頷く



シモン「ずっとこの時を待っていたんだ、強大な魔導士がここに集うこの時を」


ルーシィ「強大な魔導士?」




シモン「ジェラールと戦うんだ、オレたちの力を合わせて!!」

 
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