『曹徳の奮闘記』改訂版
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第五十二話
「ど、どういう事だ美羽ッ!!」
やっと風邪が治ったから復帰して美羽に三日間の出来事を聞いていたら愕然とした。
「言葉通りじゃ長門。長門が風邪で倒れた日、徐州から曹操の追撃から逃げてきた劉備達一行が荊州へ逃げたいから一時的に妾達の領土を横断させてほしいと言ってきおったものじゃから仕方なく通したのじゃ」
美羽は嫌そうにその時の事を思い出して俺に言う。
「何で通したんだ?」
「妾とて最初は断ったのじゃ。しかしのぅ、あやつら少数ながら民間人も連れて避難していたのじゃ」
………何かオチは分かった。
「妾が断ったら北郷とか言うのが「天下の袁術が民間人を見殺しにしたら世間は何と言うのかな?」と脅してきおったのじゃッ!!」
………やっぱりな。
「それで仕方なく通行を許可したのじゃ」
「………まさか普通に通らせたのかッ!?」
もし、武器を預からないまま通らせたなら約束を破って街を襲って街が占拠される可能性もある。
「そこら辺は大丈夫なのじゃ。通行する時は全兵士の武器を取り上げて監視の兵士で包囲させて通行させたのじゃ」
「………それを聞いて安心した………」
「流石に妾も何もしないのは都合が良すぎるのじゃ。まぁ最後は荊州に行くまでの物資が心細いとか言うて食糧の提供を言うてきおったがそれは拒否しといた。何で反董卓・袁術連合軍の敵に食糧を提供せねばならんのじゃッ!!いい加減にしろと言いたかったのじゃ」
美羽がプンスカと怒っている。
「御嬢様……立派になられて………」
いや泣くなよ七乃。
「それで劉備軍は?」
「あっという間に荊州へ行ったのじゃ」
「そうか………てか、荊州に行っても劉キや劉ソウが許可すると思うか?」
「………その荊州なんじゃが……劉キ殿の命はもはや僅からしいのじゃ」
「ッ!? それは本当か美羽ッ!!」
俺は思わず叫んだ。
「本当じゃ。昨日、劉ソウ殿から手紙が来て書いておったのじゃ」
「………そうか。ありがとうな美羽」
もし、劉キ殿が死んだら荊州は……劉備に取られるな。
「曹操が南陽へ進撃するのは無いのか?」
俺は七乃に聞いた。
「はい、間者からの報告では曹操軍は占領地域の治安維持に必死になっています。まぁこれは荊州と南陽を除いた地域の治安は低いですからね」
俺達は一ヶ月の猶予がある時に各地へ大量に間者を飛ばして、袁紹、曹操、劉備、孫策、劉璋の有らぬ噂を広げるように仕向けた。
これは効果があるところとあまり無いところに分かれた。
袁紹と劉璋の領地では噂で治安が悪くなったりした。
曹操と劉備の領地はあまり効果は無かった。
しかし、孫策の領地はかなり揺れ動いている。
袁術と同盟をしていたのに、形勢が不利になると即裏切った等と建業では噂が広まった。
荊州は元々反董卓・袁術連合軍には参戦していないので除外された。
荊州の劉キと劉ソウは俺達と戦いたくなかったので袁紹には「黄巾党の残党が荊州内で活発化している」と言って出陣を拒否していた。
涼州には間者を送ってない。
馬謄は信用出来る人と月達涼州勢は言っていたから送っていない。
「なら罠の設置を早くしないとな」
真桜の工作隊が何とか頑張って、今のところ全体の三分の二が終わっている。
「取り敢えずは作業を続けるしかないな」
俺はそう思った。
―――陳留―――
「………合肥が取られていたなんて………」
曹操は玉座で溜め息を吐いた。
「仕方ありません華琳様。満寵も戦死して兵士も殆どが袁術軍に降って情報が無かったのですから」
新たに曹操軍の軍師になった郭嘉は曹操にそう言う。
「まぁ過ぎた事は仕方無いわ。奪い返せばいいのよ………ただ、今は駄目ね」
「どういう事ですか華琳様?」
夏侯淵が曹操に聞く。
「まだ冀州と徐州の治安は改善されてないわ。改善されるまで動けない。それに……涼州の馬謄が袁術と手を結んだ情報もあるわ」
実際は誤報であるが。
「これからの方針は冀州と徐州の治安が改善されるまで動かないわ。そして、それが終わってから涼州を攻める。いいわね?」
『御意ッ!!』
夏侯淵達は曹操に頷いた。
―――建業―――
「………合肥が袁術に占領された。袁術の狙いは我等であろう」
周瑜が玉座で報告する。
「どうするのじゃ策殿? 儂は何時でも命を捨てる覚悟は出来ておるが………」
黄蓋は孫策に言う。
「駄目よ祭。美羽達は大砲も持っていらはらんだから突撃したら一方的にやられるわ」
黄蓋の言葉に孫策はそう言った。
「一応、穏と亞莎が巣湖南岸の濡須口に砦を整備しているわ。冥琳、兵力は?」
「何とか五万にまでいくが、やるのか?」
「えぇ、美羽とは戦わないといけないからね(それに万が一負けたら私の首を美羽にあげるしかないわね。……あの時、美羽の味方をしてあげたらこんな事にはならなかったのにね………)」
孫策は心の中で己の過ちを反省しつつ、席を立った。
「戦の用意よ。美羽に孫呉の力を見せるわ」
孫策はそう言った。
後書き
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