騎士道衰えず
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
第二章
チャーチルは受話器をすぐに取った。そうして言うのだった。
「私だ」
「首相ですね」
「ヒトラーにでも聴こえるか?」
まずは軽いジョークで返す彼だった。
「だとしたらかけなおすことを勧めるが」
「いえ、首相に聴こえます」
電話の向こうの声もジョークで返す。
「確かに」
「そうか。それで何の用だ」
「各国の政府の首脳達からの申し出ですが」
「ほう、スコットランドの観光だな」
またジョークで返すチャーチルだった。そしてこんなジョークも言ってみせた。
「ネス湖がいいだろう。そこで恐竜を見ればいい」
「いえ、観光ではなく」
「では何だ?」
「空のことです」
それだというのである。
「空のことでお話があると」
「何だ?空だというのか」
「はい、そうです」
「今空はどうにもならないのだが」
ドイツ軍が攻めてきてだ。それでだというのだ。
「それでもか」
「はい、それでだというのです」
「何かわからんがわかったと答えよう」
チャーチルはここでもジョークを話すのだった。
「ではあちらと会おう」
「それでは」
こうしてだった。あることが決まったのである。決まればその決まったことがすぐに実行に移された。そうしてイギリス空軍の基地にだ。
スピットファイアやハリケーン、タイフーンだけではなくだ。
他の国の戦闘機がだ。続々と来たのだ。その戦闘機達を見てだ。
イギリス空軍のパイロット達はだ。いぶかしみながら言うのだ。
「何だ?我が国の戦闘機だけじゃないな」
「ああ、マークもな」
「我が国のじゃない」
「あれは」
その中のだ。一機を見るとだ。そのマークは。
「フランスのだぞ」
「あれはベルギーだ」
「ポーランドもあるぞ」
「あそこにあるのはオランダだ」
「デンマークか、あのマークは」
「ノルウェーもあるな」
そうした国々はだ。どうかというとだ。
「どの国もドイツにやられた国ばかりじゃないか」
「降伏したんだろ?何でここにいるんだ?」
「我が国に」
「一体どういうことなんだよ」
彼等はこう言っていぶかしむばかりだった。しかしだ。
その彼等のところにだ。飛行服姿の面々が来てだ。たどたどしい英語で話すのだった。
「俺達も戦うんだよ」
「もう一回な」
「だからここに来たんだ」
「それでなんだよ」
こうだ。彼等はイギリス軍のパイロット達に話すのである。
「ドイツの奴等とな」
「もう一度だ」
「やってやるさ」
「おいおい、本当か!?」
イギリス軍のパイロットの一人がだ。
そうした言葉を聞いてだ。驚きの声をあげたのだ。
「またドイツと戦うってのかよ」
「そうだ。悪いか?」
「いや、言っちゃ悪いけれどな」
それでもだとだ。そのパイロットは言うのだった。
「あんた達もう国は」
「確かに降伏したさ」
フランス軍のパイロットの一人が答える。
ページ上へ戻る