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エクシリアmore -過ちを犯したからこそ足掻くRPG-

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第四十一話 フェイト・リピーター

 せめて先陣くらい切らねば、大人として恰好がつかないな。一番槍、行かせてもらう。

「エリーゼ、頼むっ」
「はい!」『まかせて~!』

 ハンマーを振り被る。エリーゼの足元に展開する魔法陣が、鎚に闇色の刃を付加した。
 これを握っていると、まるで死神になった気分だと、若い頃は何度も思った。

「ベンヴェヌート――」

 骸殻限定発動、足のみ、5秒間。マクスウェルのいる位置まで、一気に跳ぶ!

「「エンフェルネ!!」」

 上から闇色の鎌を振り下ろした。
 マクスウェルはこれを、バリアを展開して止めた。
 口の端が吊り上がるのを抑えられなかった。受け止められることは想定済みだ。

 頭上を守るために術を使っているなら、下からの攻撃は防げない。

 地上で背中合わせに、銃とショットガンを構えるアルヴィンとジランドの銃撃は防げまい!
 息の合った――とはまだまだ言えないが、アルヴィンとジランドから間断なく浴びせられる鉄の弾。それなりに効くだろう、ご老体?

『小癪な!』

 マクスウェルが使った技はサイクロン。竜巻を起こす技だ。
 足下にいたアルヴィンとジランドをカマイタチが切り裂いた。

「グレイヴ!」

 イバルが発動した精霊術により、土が固まり竜巻にぶつかった。アルヴィンもジランドもその隙に離れ、竜巻が砕いた土塊はマクスウェルの視界を少しの間だけ遮る。

「エリーゼ! アルヴィンを!」

 闇の鎌が解けたハンマーでバリアを叩いて、反動を利用して離脱する。

「ティポっ」『行っくよ~!』

 エリーゼの魔法陣は、今度はアルヴィンの銃に加護を与える。

「いつでもいいぜ!」
「「ティポチェイサー!!」」

 アルヴィンの銃から放たれたのは、ティポを模したミサイル。

 マクスウェルは旋風に身を変えてミサイルを躱す――が、そう簡単には逃がさない。そのミサイルは追尾式だ。
 マクスウェルも気づいたようで、瞬間移動をくり返す。

 その状況でセルシウスが飛んだ。
 その位置が、転移したマクスウェルが現れた場所にドンピシャリ。

『お許しを――はぁっ!』

 回し蹴りからの突きこみ。純粋な格闘技だ。セルシウス、意外と肉体派だったんだな。

 動きが止まったマクスウェルに着弾するティポ型ミサイル。この隙を逃すわけがないのが――ジランドという男だ。

「セルシウス、来い!」
『はいっ』

 セルシウスがジランドの傍らに浮遊して戻った。

「『パーフェクトバニッシュ!!』」

 ジランドが放った弾丸が冷気を帯びた光線に変わり、マクスウェルに着弾する。
 さすがにこれなら……!


『理解できん』


 冷気の霧が晴れた時、マクスウェルはそこに健在だった。

『眠り踊れ、地水火風。深奥に集いて我が鉄槌となれ』

 マクスウェルが両腕を振り上げる。知っている、この感じ。他でもない私自身を瀕死に追いやった術。

「散れッ!!」

 とっさにそれしか言えなかった。マクスウェルが、天上に展開した4色の魔法陣から隕石群を降らせるほうが速かった。

『エレメンタルメテオ!』

 隕石が降ってきて爆ぜる。吹き飛ばされているはずなのに、目に映る景色がスローモーションのようだった。

 全員が星空の地面に放り出され、転がった。
 生々しく漂う血臭と、呻き声。

 ――連れてくるべきではなかったのかもしれない。

 俺はまた選択を誤ったのか? 「エル」を失った時のように、また俺の間違った選び方で、仲間、を死なせる、のか?

 蘇る。ジルニトラ号で、〈クルスニクの槍〉のコンソールにはフェイリオとユースティアがいた。いたのに、天井が落ちて潰されて。
 ああ、また、また喪うのか、俺は。喪って初めて後悔するのか。

「まだ、だ……」

 イバ、ル…? っく、立つな…! またマクスウェルにやられるぞ!

『諦めよ。もう立つのがやっとではないか。終わったのだ』
「何度退けられようが、俺は、挑む。そのたびに、敗北したと、しても」
『それでは同じことのくり返しではないか! 無為を積み重ねているだけだ』
「……結果が前と同じでも、過程において前進できたならそれは進歩だ。俺はミラ様を救い出す旅路で見てきた……間違った考えを持って、他者を踏み躙って、道を踏み外しても、それでも正しい道へ戻って進み直せるのが人間なんだ」

 イバル――

『そんなものは詭弁だ!』
『詭弁であるものか!! 私は源霊匣によって顕現している。大気のマナ無しに。貴方が言う所の「くり返し」の成果が私を生き返らせた。だから、この私が、詭弁でない「証」だ』

 セルシウス――

「テメエの目に無駄に映ろうが、こちとら血ヘド吐いてここまで漕ぎ着けたんだ。人間が生きてる時間は1秒だって同じじゃねえぞ。くり返しだってなァ、必要だからこの世から無くならねえんだ。一言で俺らの人生片付けられると思うなクソジジイ。精霊の雑な物差しで測れるほど俺らは簡単に出来てねえ」

 ジランド――

「エレンピオスの人たちを……アルヴィンや、ジランドさんやセルシウスを見捨てなきゃ生き残れないなら、そんな命、要りませんっ」『どっちかが死んじゃうなんてヤダ! みんな一緒がいいんだー!』

 エリーゼ、ティポ――

「納得なんかしてやらねえ。あんたの使命も、今の世界の在り方も! それがどんだけ正しかろうが、間違った道をまっすぐ進んでも、光に辿り着けるって知ってるからな!」

 アルヴィン――


 くり返してきた。そうだ。私だってかつては膨大な数の運命をくり返してきた。今度こそ正史でエルと穏やかに静かに暮らせると信じて、過去の〈私たち〉はそうと信じて〈エル〉を送り出したんだ。世界を削りながら運命をくり返して。今際にはいつも視えない呪いのバトンを〈俺〉に渡し続けて。

 私が何百人目の〈私〉かは知らない。だが俯瞰すればこの何百回か目で、運命は変わった。いるはずのない二人目の娘が産まれ、エルと〈俺〉を救った。


 “そうなったら引かないよな、お前は”

 “ルドガーってさ、無茶もするけど、絶対に挫けないよね”


 変えられる。そう知ったなら、挑まずにはいられない性格なんだよ。俺は、ルドガー・ウィル・クルスニクは!

 剣を杖代わりに立ち上がる。
 ああ、こんな痛み、兄や友人たちの時と比べれば霞も同然だろう? 立てないはずがなかったじゃないか。この腑抜け。

『こ、こやつら……理解できぬ! 何故立ち上がる、何故認めぬのだ!?』
「俺たちが――人間だからだっ!」

 さあご老体、第2ラウンドと行こうじゃないか! 
 

 
後書き
 タイトルに拘りました。とにかくそれは主張したい。
 そしてイバルが一番に立ち上がったことに注目していただきたい。
 拙作の旅で最も成長したのはイバルなのです。

 余談ですが、戦闘シーンって難しいですね(T_T) 
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