リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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第四十八話 うまい話には裏がある
前書き
アリシアの紋章入手。
はやて「リリカルアドベンチャー、始まるで!!」
恨めしいまでに照りつけじりじりと首筋を灼く、燦々たる日射し。
足下に広がる細かな砂は踏みしめる度にずぶりと沈み込み、一足ごとに体力を奪う。
下降知らずの気温。
ふわりとも吹かない風。
コロッセオを脱出した子供達は、再び地獄の炎天下の中、砂漠地帯を歩き続けていた。
エテモンはスカルグレイモンとの鬼ごっこ中の為、しばらくは戻っては来れないだろう。
大輔「今回はスカルグレイモンに助けられたな…」
賢「スカルグレイモン本人にその気はないだろうけどね…」
今だけはスカルグレイモンの恐ろしい顔も神様のように見えるから不思議だ。
あんな神様は嫌だけど。
子供達の疲労が激しい。
早く休ませてやらなければ。
フェイト「あっ…!!大輔、あれ!!」
フェイトが大輔の服をひっぱり前を向かせる。
その先にはなんと、何十メートルはあろうかという巨大なサボテンがそびえ立っていた。
あれだけ大きければ、さぞや広い日陰が出来るだろう。
涼を得ようと、子供達は一目散にサボテンの根元を目指して走った。
全員【あ…あれ…?】
各々の口から、困惑の声。
あるべきものが、望むものがない。
アリシア「日陰がなーーーいっっっ!!!!!!」
からからに乾ききったアリシアの喉から出た声は、とても悲痛なものだった…。
後にニャロモンは語るのだった。
賢「し…蜃気楼だった……」
やがて消えていくそのサボテンは、蜃気楼だったと判明。
それと同時に皆はまたその場にへたり込んでしまった。
アリサ「詐欺ね」
大輔「ちょっと違う…」
そう言葉を交わしているが、そんなに体力は余っていなかった。
ゲンナイ『選ばれし子供達よ』
全員【ん?】
聞き覚えのある声がした方を見遣る。
サボテンが消えた場所、砂が取り払われた下から見覚えのあるレンズ。
そして見覚えのある赤い服が現れた。
ゲンナイ。
タグと紋章の存在を教え、子供達をサーバ大陸へ導いた存在。
大輔「おい、爺!!敵が進化を妨害するって何で言わなかったんだ!?ええっ!!!!?」
大輔がこめかみに青筋を浮かべながら叫んだ。
他の子供達もゲンナイを絶対零度の視線で見つめていた。
ゲンナイは大輔の気迫に圧倒されるが、取り敢えず口を開く。
ゲンナイ『あー…すまん。忘れとった』
全員【はあっ!!!!?】
ゲンナイ『どうにかなるかなーと思っとったし』
全員【おいぃいいいいいいいっっっ!!!!!!!!!!?】
そんなもの凄く適当な理由であんな苦労をしてまでファイル島からここまで来させられたのか?
自分達の命が結構崖っぷちだったのを知り、衝撃を受ける一同。
ブイモン[ふざけんなああああっ!!]
激怒したブイモンが殴り掛かるが、映像なので当たらない。
全員の絶対零度の視線がゲンナイに突き刺さる。
物理的にダメージを与えられないなら精神的にダメージを与えるまで。
ゲンナイは冷や汗を流しながら逃げるように消えた。
ギルモン[あああっ!!]
フレイモン[あの野郎逃げやがった!!]
フレイモンが拳を震わせながら叫んだ。
ブイモン[むあああっ!!あの爺、次に会ったら絶対に殴ってやるからなあああああああっっっ!!!!!!]
ブイモンの怒りの咆哮が砂漠地帯に響き渡った。
ようやく怒りも収まり、子供達が足を動かそうとした時。
砂漠で……というか陸地で聞こえるはずのない、船の汽笛の間延びした音が子供達の耳に届いた。
うなだれた顔をようやく上げると、目の前には大きく立派な豪華客船。
……豪華客船!!!!?
全員【うわあああああ!!?】
危ういところで船の進路から外れる。
豪華客船は先程まで子供達のいた場所の正にその真上に、砂を割り停止した。
唖然とする子供達を、船の上から見下ろす水兵カラーを身につけたデジモン。
なのは「ヌ……ヌメモン!!」
ヌメモンは航路で他のデジモンを見るのが珍しいのか、飛び出した目だけを覗かせてこちらの様子を伺っている。
大輔は疲労している子供達を見て、ヌメモンに向けて叫ぶ。
大輔「ヌメモン!!少しでいい、船で休ませてくれないか?」
声を張り上げ頼むが、ヌメモン達は警戒を解こうとしない。
アリシア「ヌメモンなら私に任せて」
ルカ「…どうする気?」
ルカが横目でアリシアを見遣る。
アリシア「こうするの!!ヌメモーン。私達疲れてるんだ。この豪華船で少し休ませて?オ・ネ・ガ・イ」
上目遣いにばちーんとウインク。
ヌメモンは、一瞬でオチた。
フェイト「………」
大輔「フェイト?」
フェイト「私、アリシアの将来が物凄く不安になってきた…」
大輔「胸中察するぜ」
本当にどっちが姉なのやら…。
何やら知らないうちに、選ばれし子供達はこの漂流生活において、随分と精神的にも肉体的にもタフになりつつあるらしい。
可愛い子には旅させよとは言うが、いいことなのかどうかは誰にも分からない。
アリシア「私達、お風呂入ってくるね。」
大輔「ああ」
アリサ「大輔」
大輔「ん?」
アリサ「覗くんじゃないわよ!!」
大輔「しねえよ!!」
顔を赤くして言う大輔。
賢とユーノの顔もほんのり赤い。
案内された食堂に至るまでが、一流ホテルが船の中に入ってしまったかのような豪華さに開いた口が塞がらない。
ぴかぴかの通路を抜けるとホテルのエントランスホールみたいに全面ガラス張りの庭園とか、高級ソファとテーブルとか、
受付のカウンターまで見たことが無い装飾品や骨董で埋め尽くされている。
大理石の床はつるつるで、汚れひとつない。
所狭しと並べられたテーブルに、清潔そうなテーブルクロスが掛けられ、
見渡す限りのバイキング形式の料理である。
1番手前には大きな皿と箸、スプーン、フォーク、全部ある。
テーブルに並べられた料理にルカは涎を飲み込んだ。
ルカは見た目によらずとんでもない大食漢である。
集めた食料の殆どがルカの胃袋に収まってしまう。
それなのに全く太らない、神秘の身体の持ち主なのだ。
大輔達は苦笑する。
しかし、これは笑い事ではない。
自分達と同じように選ばれた3人のうち2人はルカと同等の大食漢なのだから。
ルカ「…食べる……!!」
真っ先に飛び出そうとしたルカを制止するのは大輔である。
大輔「待て待て、フェイト達が来るまで待たないと駄目だろ」
思いっきり料理に視線が釘付けである。
視線がどれを1番最初に取ろうかと狙いを定める捕食者の目になっている時点で説得力は果てしなく皆無である。
ワームモン[大輔、そんな目で言っても説得力が全然ないよ]
大輔「ぐっ…!!」
その時、子供達をスコープで盗み見、にやりと笑う者がいた。
コカトリモン[選ばれし子供たちの運命は、このコカトリモンが握ったぎゃあ!!]
バサバサとお飾りの翼を鳴らすのは、巨鳥型デジモンのコカトリモン。
エテモンの忠実な部下だ。
コカトリモン[念のため、エテモン様にあいつらをどうするか聞いとくがや]
操舵室のコンピュータから、ダークネットワークに信号を送る。
だがエテモンからの返答はなかった。
それもそのはず、エテモンは今現在、スカルグレイモンと壮絶な逃走劇を繰り広げているのだから。
そうとは知らないコカトリモンはいくら待っても返事がないのでしびれをきらし、仕方なく船内通信でヌメモン達に指令を送った。
コカトリモン[アルビャ~ト(アルバイト)で働くヌメモン達、今月の給料を倍にしてやるから、選ばれし子供達を捕まえるがや!!]
貧乏アルバイターのヌメモンの目が輝いた。
大輔達が食事していた時、ヌメモン達が現れた。
ヌメモン達は大輔達目掛けて網を投げる。
いち早く反応したのはフレイモン。
フレイモン[ベビーサラマンダー!!]
フレイモンが放った炎が網を焼き尽くす。
大輔「いきなり何をするんだ!?」
コカトリモン『コカーッカッカッカッ!!お前達を捕まえて干物にしてやるがや!!』
コカトリモンの放送が聞こえた。
フレイモン[ふざけるな!!こっちが調理して鳥の丸焼きにしてやる!!]
フレイモンの身体が光に包まれた。
フレイモン[フレイモン進化!アグニモン!!]
アグニモンは腕に炎を纏わせる。
アグニモン[ファイアダーツ!!]
牽制に炎の手裏剣を放つアグニモン。
ヌメモン達は堪らず逃げ出してしまう。
アグニモン[おい!!雑魚は俺達に任せてお前達はフェイト達を!!]
全員【了解!!】
ヌメモンをアグニモンに任せて、大輔達は風呂場に向かった。
そして風呂場に辿り着いた大輔達。
しかし最初から脱衣所に行くはずのドアが全開で、その先にある風呂まで無遠慮にも全開になっている。
そして不自然なまでに窓が全開で、フェイト達もチビモン達もいない。
大輔「…まさか」
『オーッホッホッホ!!残念だったわねえ!!女の子達はしっかりと捕らえさせてもらったわ!!』
ブイモン[誰だ!!コカトリモンじゃないよな!!?]
『私はコカトリモンの親戚、アカトリモンよ!!冥土の土産に覚えておきなさい!!』
ユーノ「またオカマ口調の奴か…」
賢「はやてとすずか達をどうした!!?返答次第では許さないぞ!!」
アカトリモン『決まってるでしょー!!?捕まえて、干物にするのよ!!人間の干物ってどんな味がするのかしらね~?』
ブチィ…
アカトリモンの発現に大輔達の中の何かが盛大にキレた。
大輔『てめえ…』
通信室に響く大輔の声。
アカトリモン[あら?怒っちゃった?怒っちゃったの?いや~ん怖ーい]
コカトリモン[…………]
挑発するアカトリモンに対し、コカトリモンは無言である。
アカトリモン[あら?コカトリモン、どうしたのよ?]
コカトリモン[ほ、本当に怖いだぎゃあ…]
アカトリモン[何?どうしたの?ゲエッ!!!!?]
通信室のモニターに映るのは、凄まじいくらいの怒気と般若の如き表情を浮かべている大輔達とブイモン達である。
大輔『賢、ユーノ。今日の夕飯は?』
賢、ユーノ『鶏の丸焼き』
ブイモン『それに決定』
ワームモン『もう片方は串焼きにしてやる…』
ツカイモン『異議なし』
大輔『殺(け)す。デジメンタルアップ』
ブイモン『ブイモンアーマー進化!轟く友情!ライドラモン!!』
ワームモン『ワームモン進化!スティングモン!!』
ツカイモン『ツカイモン進化!ウィザーモン!!』
ブイモンがライドラモンにアーマー進化すると、大輔達はライドラモンに跨がる。
そして通信室に向かう鬼達。
アカトリモン[あ、あわわわ…ど、どうすんのよおおおお!!?]
コカトリモン[どうするも何も、おみゃーのせいだぎゃあ!!罰としておみゃーが制裁を受けるだぎゃあ!!]
アカトリモン[ちょっとお!薄情過ぎるわよあんた!!]
喧嘩しているうちに、通信室の扉が吹き飛んだ。
アカトリモン[!!?]
大輔「見つけたぞ…」
通信室に入ってくる鬼。
コカトリモン[くっ、かくなるうえは…!!]
スイッチを押すと、コカトリモンとアカトリモンが穴に落ちる。
脱出を謀るコカトリモンとアカトリモン。
大輔「逃げたぞ!!」
ウィザーモン[逃がさん!!]
賢「絶対に逃がすな!追え!!」
ライドラモン[見つけ次第丸焼きだあああああ!!!!]
今の彼らはすでに阿修羅と化していた。
コカトリモンとアカトリモンの命は後、どれだけ持つのだろうか?
スティングモン[見つけたぞ!!]
客船の地下の脱出口から逃げようとしたコカトリモンとアカトリモンをスティングモンが発見するとウィザーモンが駆け付け、コカトリモンとアカトリモンに雷撃を繰り出す。
アカトリモン[ヒイィイ!!?]
ウィザーモン[逃がさんと言ったはずだが?]
コカトリモン[元はと言えばお前のせいだぎゃあ!!責任とってお前が丸焼きになれだぎゃあ!!]
ライドラモン[ブルーサンダー!!]
ウィザーモン[サンダークラウド!!]
アカトリモン[ちょ、いやああああああ!!!!]
二体の雷撃をまともに受けたアカトリモンは文字通り黒焦げになり、逃げようとしたコカトリモンに合流したアグニモンとスティングモンが通せんぼする。
スティングモン[ヘルスクイーズ!!]
スティングモンの頭部の触覚が伸び、コカトリモンを捕らえると、エネルギーを奪い尽くす。
アグニモン[サラマンダーブレイク!!]
強烈な回し蹴りで、コカトリモンをアカトリモンの近くまで吹き飛ばすと、全員が一斉に技を放った。
ライドラモン[ライトニングブレード!!]
スティングモン[ムーンシューター!!]
ウィザーモン[マジックゲーム!!]
アグニモン[バーニングサラマンダー!!]
四体の技がコカトリモンとアカトリモンに炸裂し、二体を星にした。
そして、無事に干物にされそうになった女子陣を救い出し、どうやらコカトリモンとアカトリモンに漬物石にされていたチビモン達も復活すると同時に、デジモン達は火事場泥棒上等、ありったけの食料を豪華客船から掻っ払って、子供達と合流した。
夢のような客船を後にし、一行は再び炎天下の砂漠を進んでいた。
ボーッという低い音に、子供達は足を止めた。
ルカ「ん?」
そして背後からの音に振り返る。
そこには、一行に迫り来る巨大な船の姿があった。
全員【うわああああああっ!!!!】
驚いた10人と10匹は、無我夢中で駆け出した。
フェイト「何で動いてるの!!?」
ユーノ「さっきの攻撃で誤作動を起こしたのかな…?」
ひたすら走って逃げるしかない子供達に、船は確実に近づいてくる。
もう駄目かと思われたそのとき、またも巨大サボテンが熱気に揺らいだ。
その根元には影…本物だ!!
子供達を追うしか頭になかった船は避けきれず、サボテンに激突。
豪華客船は空高く跳ね上がり、遥か上空で爆発した。
賢「蜃気楼じゃなかった…」
あんな大きな船がぶつかったというのに、平然と立っている巨大サボテン。
呆然としながら見ていると、サボテンの頭に鮮やかな桃色の花が咲きはじめた。
愛らしいそれがゆっくりと開くにつれ、アリシアのD-3がちかちかと明滅する。
アリシア「あ…っ」
開ききった花の中から、石盤が光を放ちながら浮かび上がる。
アリシアの紋章がD-3に収まったのだった。
賢「これで6つ目…か…」
これで6つ目の紋章が揃った。
残る紋章は…4つ。
後書き
オリジナルでアカトリモン登場。
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