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『自分:第1章』

作者:零那
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『人格分け』

ホームレスで、男の所で寝泊まりさして貰ってた生活。
でも、其処に帰るのが嫌になって帰らん日が続いた。
朝迄、時間潰してから帰った。
男が仕事行ってたら、数時間寝てから出る。

暇そうな日だったら、男に金渡して店に来て貰ったりした。


あ、かけもちしてた前の店は勿論辞めた。
オーナーとの事があった後日、事実を話した。
出勤したく無いと。
ママは、まだ知り合ったばっかりで仕事でも役立たずな零那なんかの為に、怒ってくれた。

で、違う店を紹介してくれた。
店は、交互に出勤する事になった。

解りにくいから店名...

友達が紹介してくれて面接を受けた店、ママの店が『Rouge』

今回かけもちで行くことになった『MATSURI』

MATSURIママは、太鼓祭りが大好きで、笛もカナリ上手。
青年団のOB達が褒めるほど。
盛り上がってる時の合いの手は『ソーリャッ!ソーリャアー』が暗黙の了解。
そのテンションについていけず、初日から不安しかなかった。

カウンターの上で踊る元気なママを見て、瞬間的に引いたのも事実。
でも、まぁ...
祭り好き、祭り命、が多い此の地域には、愛される店でもあるらしい。

MATSURIママの笛とかけ声が聞きたくて、踊りを見たくて、来る人は多い。


零那は、やっていけるかどうか怖かった。
『スナック』って、ひとくくりになってても、中身は店によって全然違うくて...

ママの店は、基本的にシッカリお客さんと向き合ってお話しする感じ。
ママ自身が優しくて情の深い人やから、相談事とか悩みも真剣に聞いてくれるし、お客さんとの距離が近くてファミリー的な感じが多い気がした。

MATSURIママの店は、基本的にアゲアゲ系でカラオケもかかりまくってて、盛り上げてなんぼって感じ。
騒いでストレス発散したい人には是非!って店。


このギャップに慣れるまで時間がかかった。

自分なりのスイッチを入れんとMATSURIでは働けんかった。
基本的に人前で騒ぐタイプでも無いし、音痴やから歌うんも怖いし。
でも、お金払って貰うんやし、お酒飲まして貰うんやし...

早く酔ってしまって馬鹿になって騒いでしまおう。
シラフじゃ性格的に無理。

歌も、昔のデュエットとか、お客さんに教えて貰いながら覚えた。

どっちの店も自分なりに頑張った。
MATSURIは、ママからの紹介で入った。
だから、ママのメンツもあるし...
やっぱりプレッシャーは強い。

何より、酒の席。
客もいろいろ。
MATSURIの客層とRougeの客層も違う。
対応を学んだ。

MATSURIは、酔ってないと客によっては少しキツかった。
勿論、普通に喋ってて、ウルサくて聞こえにくかったりして怒る客も居た...
暇な時間帯は静かやから、慣れるまで耳の感覚がおかしかった。

『売上』を上げる事。
それは、こっちで学んだ。
ボトルどれくらいだったら空けるとか、キープさすとか...

セクキャバでも売上はあったけど、強引な売上はした事がない。

此処は半強制的にノルマがあった。
田舎やし、店の存続の為に、それなりに売上は必要なんは理解できる。

Rougeでは、売上とか言われたことなくて、てか、最低限のするべき事とかだけで、後は見て覚えてって感じだったから...
今考えたら、ママ自身が飲んで飲んでってしてた。
客によっては零那を紹介してくれてボトル入れて貰ったり。

零那自身が汲み取らなあかんかったこと、全然出来てなかった。
MATSURIで売上を学んでからはRougeでも考えた。
でも、客層違うし方針も違うし...どうしたら良いか解らんかった。

ママは口に出さんだけであって、売上は上げた方が良いに決まってるよね?
ただ、客を間違えたり方法を間違えると怖いし...
下手な遠慮が悪循環を招いた。

MATSURIでは、オ-ダ-や本数、正の字を自分で書いてた。

それを、最後にママが計算して会計する。
客によってはセクハラ料金が発生してた。
基本がはっちゃける店やから、お触り無しでも触る人は居る。

チークダンス中に指入れされたこともある。
アゲアゲ系の時はジャンプで盛り上がってる。
その時は下着ずらされたりブラ外されたり、胸をモロ晒されたり...
今の時代なら摘発されるかもって事もあった。



ママの店は、ママの人間性もあって、基本的に優しいお客さんが多かった。
親身になってくれるお客さんも。
MATSURIで働いて疲れた次の日は、こっちで癒されてしまってる感じ。
あかんやんか。
自分がお客さんを癒したり楽しませたりせなあかんのに。
完全に、ママに、お客さんに、甘えてしまってた。

カウンター越しやと緊張するからって隣行ったりしてた。
汚い話、売上いけると思ったら馬鹿みたいに飲んだりオ-ダ-頼んだりした。
甘えられるのが好きそうな客には、わざと『女』を利用した。

プライベートの零那じゃ無く、仕事が始まれば、店の零那に切り替えなあかん。
でも、基本的に甘えるのが下手やし嘘つくのも下手やし、どうにもならん事もあった。
それでも、一切可愛げの無い自分が、何とか少し可愛らしくなれる様にはなった...

 
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