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世にも不幸な物語

作者:炎花翠蘇
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第六章『辻斬り現る』

 カサカサと何か擦り合う音が聞こえ、輝は目を覚ました。微かに重たい瞼を開けると景色が上下に揺れていた。意識が朦朧とする中で今の状況を考えた。いつの間にか眠ってしまったらしい。疲労と歩くときの揺れがちょうどいい気持ち良さを生んで眠りに入ってしまった。
 頭を起こし、頬を軽く撫で目を覚まそうとする。ひんやりと頬が冷やされて気持ちが良い。ここ(幻想郷)に来てから自分の手の冷たさが役に立っている気がして来た。
 そういえば、眠ってどれぐらい経ったのだろう。まだ屍が出ているからそんなに時間は経っていないだろう。
「ごめん。いつの間にか眠ってた」
 謝ると侍は顔を横に振った。「気にするな」と言うことなのだろう。
「あと、活動時間残り何分?」
 質問に侍は手を開いて輝に見せた。多分、残り五分と言うことだろう。
 侍の答えに輝はそんなに寝ていないことが分かった、と言うか当たり前だ。二十分以上寝ていたら今頃地べたに寝ている所だ。
 まだ十五分しか経っていないことを考えるとそんなに移動していないのが分かった。一時間で地図の半分も達していなかったからたった十五分で白玉楼に着くはずはない。輝はとりあえず何処まで進んだか聞くことにした。
「白玉楼まで、あとどれくらい?」
 侍は一旦歩くのをやめて輝をその場に下ろし、懐に仕舞ってある地図を取り出し現在の場所を指で示した。示した場所は、白玉楼の直ぐ近くだった。
「え?」
 驚いて侍を凝視した。
 侍は輝の疑問を予測したのか輝が質問する前に後ろ方を指差した。侍の指差した方を見ると屋敷があった。よく大河ドラマで出てくる屋敷があった。一見古さを感じさせる建物だが、立派な屋敷がそこにある。
「もう白玉楼に着いたの?」
 侍はコクリと頷く。
「俺が寝ている間に?」
 また侍はコクリと頷く。
「よく時間内にここにたどり着いたね。俺が一時間ぐらい歩いても半分も行ってなかったのに」
 輝が質問をすると侍はキョロキョロと辺りを見て何かを探していた。多分、輝の質問が長いから返答が頷くだけでは無理だと判断して小枝か石で地面に字を書くのだろう。丁度いい小枝が見つかったらしく、地面に書き始めた。
「え~と・・・主が白玉楼に連れて行けと命令を出し、拙者が主を背負って暫く進んだあと時間内に到着するかどうかお訊ねしようとたら、主がぐっすりとお眠りになっておったので、起こさないように走って目的地に連れてきました・・・か、なるほど」
 読み終わった輝は、ここまで考えているのかと驚いた。
「とりあえず、ありがとう」
 侍は片膝を着き、頭を下げた。
 こんな仕草を見ると、魂が無くとも感情があるように見える。
「さぁて、いきますか」
 掛け声とともに、侍が頷き輝を肩に担ぎ白玉楼へと歩き出した。
 いざ近くで見ると遠くで見たときより屋敷の立派さが増した。つい見入るほどに。
 古さと言うか何と言うか、それが何とも言えない雰囲気を出していて、一言でまとめて言うなら「凄い」だ。
 取りあえず誰か居ないか門の周りを探してみたが、誰も居なかった。屋敷の中に居るかと考え声を掛ける事にした。
「すいませーん、誰か居ませんかー?」
 何も反応も無い。留守か、それとも気付いていないだけか。
 そんなことを考えていたら輝が何かに気が付いた瞬間、侍は輝を抱え後ろに跳んでいた。否。輝が気付く前には既に侍は後ろに跳んでいた。
 ドォン!!と地響き共に土煙が上がっていた。さっきまで輝たちが居た場所に。
「え!?」
 突然のことだった為何が起こったか把握するのに時間が掛かった。だがそれも出来なかった。把握する間もなく土煙の方から女性の声がした。
「死者に攫われた人間かと思っていたが、やはりそうでは無いらしいな」
 土煙が徐々に晴れて行く。
「貴様は一体、何者だ」
 土煙が晴れ声の主が見えてきた。
 身長はやや低めで銀髪のショートヘヤーで黒いリボンをしている。緑色の目立つ服を着ている。その女性の背には長刀があり腰には刀、今は刀を手にしてこちらに向けている。そして側には巨大な人魂がついている。
 こんな人いたか?輝は女性を見て闇風が教えてくれたかどうか必死に思考を働かせている。確か見たことがあるが思い出せない。
 今の状況だと、悠長に考えている暇は無い。
 あの女性は輝たちのことを警戒している。先ずは説得をして警戒を解いて貰いこちらの話を聞いて貰うしかない。
「ちょっと待って、話っ―――」
 話の途中で行き成りこちらに向かってきて刀で斬りにきた。
 侍は輝を後ろに投げ、刀を刀で受け止めた。
 ギギギッ!と金属が擦り合っているのが聞こえる。二人とも動かない。
 先に動いたのは女性のほうで、侍から距離を取った。
「死者だと思っていたが、案外出来るようだな」
 そう言って背中にある長刀を抜いた。
「次は、本気だ」
 長刀を持って構えた。やはり二刀流の剣士だったか。
「そこの人間」
 そんなことを考えていたら、不意に声を掛けられた。
「なんでしょうか?」
「何か言おうとしていた様だが・・・私は不審な奴らの話なんて聞く耳を持たない」
「・・・・・」
「先ずは斬る、話はそれからだ」
 説得は無理だな。
 最悪の状況だ。もう侍の活動限界まで3分を切っているのに戦闘になるなんて、しかも輝の体力は少ししか回復していないのに最悪な状況だ。
 輝は立ち上がり、相手に聞こえないように指示を出した。
(もう時間がない!とりあえずこっちの話を聞いて貰う状況にさせるしかない。相手の刀を折るか、二本の刀を落とせ!)
 指示を聞いた途端、一気に間合いを詰め斬りに掛かった。
 女性も侍とほぼ同時に斬りに掛かった。
 ギンギンギンギンギンッ!!
 金属同士がぶつかり合う音が激しく鳴る。
 唖然とした。まるで夢でも見ている気分になった。飛び交う斬撃、交差する刀、鳴り響く金属音、凄まじい斬り合いだ。時代劇で見るような斬り合いとは比べ物にならない。今、輝の目の前で行われている斬り合いは本当の斬り合い、剣士と剣士の斬り合い。
 輝は動けなかった。二人の斬り合いに見入ってしまったのもあるが、それ以前に恐れてしまい動けなかった。侍と女性は、ほぼ互角と見えていたが。
「!?」
 侍が押され始めた。よく見ると侍の着物に斬られた跡が所々に出来ていた。対する女性の方は斬られた形跡は見られない。侍と女性の強さは女性の方が上回っている。
 自分も加勢しようかと思ったが、返って足手まといになるだけだ。一旦引くか?嫌駄目だ。活動時間も残り1分も無い。侍も残り時間が少ないと解かり、勝負を賭けた。
 左から来る刀の攻撃を止め、二撃目に来た長刀の攻撃をバックステップで避けた。二人の間合いが開いた。女性は大振りに振るった為一瞬隙が出来た。侍はその一瞬の隙を突き、一気に間合いを詰め、横一閃に刀を振るった。
 だがそこには誰もいない。
「甘い!」
「なっ、マジかよ!」
 声がしたのは上からだった。
 侍の横一文字斬りをジャンプして避けていた。女性は落下速度を利用して侍に攻撃を仕掛ける。侍はその攻撃を受け止めようとしたが無残にも侍の刀は真っ二つに折られ、そして女性が着地したのと同時に侍を左腰から右肩までを斬った。
「侍!」
 左腰から右肩まで斬られた侍は崩れ落ち、地へ帰っていった。
「・・・・ヤバイな、こりゃぁ」
 最悪だ。今の状況は最悪の中の最悪だ。
 だけど輝は何故か冷静だ。自分でも不思議なくらいに冷静に今の状況を考えている。たぶん、否、確実に次は輝を斬りに来る。つい一時間程前に映姫と冗談で『上で死んだら小町の代わりに死神やらない?』と言う会話をしたと言うのに、上に行く前に現実になりそうだ。
「はは」
 こんな事を考えたら不思議と笑ってしまった。
「何を笑っている?」
「ん?いやぁただ死んだ跡の就職先が早々に決まったもんでつい笑ってしまっただけですよ」
「可笑しな奴だな」
「そりゃぁどうも」
 見栄を張っているつもりだが、心中は穏やかではない。屍は後五分経たないと出せないし、体力は万全じゃない。むしろ、すべてが万全であっても勝てるかどうか解からない。
 挑発をしてみるか?いや無理に近いだろ。あっちは実戦経験を積んでいるに違いない、輝みたいな奴の挑発に乗る訳が無い、むしろ挑発した所で火に油を注ぐだけだ。
「さて、次はお前だ」
 耽々と女性は構えた。
「やっぱり?」
 本当に殺された洒落にない。女性も女性だ。自分如きに本気で来るなんて一刀で十分なのに・・・・。このまま素直に殺されるのも癪だと思い挑発を心がけてみる。
「あの~付かぬ事をお聞きしますが」
「なんだ」
「二刀で俺を斬る気なんですよね?」
「・・・・。そのつもりだが」
「はぁ~~~~~」
 大げさに溜息をついた。
「なに二刀で俺を斬ろうとしているんですか?」
「・・・・は?」
「いいですか・・・。俺の強度は障子紙並みだ!」
「・・・・。貴様は何を言っている?」
 額に手をつき、また大げさに溜息をついてから呆れたように言う。
「だ~か~ら、障子紙如きの俺に二刀もいらないと言う事ですよ。兎に遣られる自信だってあるんだ」
「なっ!?」
 輝が言い放った言葉に女性は驚いている、それもそのはず。自分のことをここまで弱く言う奴なんているだろうか?断言しよう・・・・いない!
「俺は、貴女と侍が斬りあっているのを見ただけでビビる人ですよ?なのに、貴女は二刀で斬りかかろうとしていた」
「・・・何が言いたい」
 女性の顔が変わった。さっきまで驚いた顔が一変して、怒りがこもっている顔になっている。意外と挑発に乗ってきた。
「何度も同じ事を言わせないでください」
 息を吸い、一拍置いて。
「障子紙如きに二刀もいらないと言う事だ」
「・・・・・・」
 女性は刀を構えながら下を向いている。怒りを堪えているのかな?ならばもう一押し。
「もしかして、二刀も使わないと障子紙(俺)を斬れないとか?」
「・・・・・ろう」
「ん?」
「ならば良かろう・・・貴様如きの障子紙!この白楼剣だけで十分だ!!」
 そう怒鳴り、長刀を鞘に戻し白楼剣と呼ばれる刀を構えた。
「かかってこいやぁッッ!!」
 輝の声を合図するかのように女性は突きをする体制で突っ込んできた。
 もしかしたら止められるかもしれない。怒りのせいで攻撃が大振りになっているのか。
 今はそんなことどうでもいい。チャンスは一度きり、止め損ねたらあの世行き。
「はぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
 女性が近づいてきた。
(神よ、我に力を!)
 パァァンッ!と乾いた音が鳴り響いた。
「なに!?」
 刀は残り数ミリ位で止まっていた、否、止めた。
「真剣○浜取りぃぃぃい!!」
 合掌をするかのように、突きの攻撃を止めた。まさか漫画で見た技が出来るとは思わなかった。ありがとう白○兼○君、君のおかげで助かるかもしれない。
「甘いわァッッ!!!」
 前言撤回。やっぱ助かりそうにありません。
 止められたのにも関わらず、力を入れてきた。このまま押して刺すつもりだ。
「くっ!」
 この状態を何とかしないと助からない。だけどこの状態を乗り越えたとしても助かるとは限らない。八方塞がりだ。
「まちなさい、妖夢」
 声がした。
 妖夢と呼ばれる女性は輝の方を見ず、声のした方を向いていた。輝も声のした方を向こうか迷ったが、押す力が弱まったので輝も声のした方を向いた。
 声の主は門の前に立っていた。背は輝と同じかやや上、髪は桃色で肩まで伸びている。頭にグルグルのマークが描かれた帽子(?) を被っていて水色の着物を着ている。そして女性の周りには人魂が浮いていた。
「幽々子様!なぜ止めるのですか!?」
 幽々子と呼ばれる女性はゆっくりと歩いてきた。
 幽々子と言う名前に覚えがあった。映姫が言っていた名前だ。
「閻魔様から連絡があったの。外界から落とされた人間が来るからよろしくとのことよ」
「・・・・」
 妖夢は固まった。そしてゆっくりと輝の方を向き、再び幽々子の方を向いた。
「幽々子様、外界から落とされた人間の特徴は?」
「え~と確か・・・カチュウシャをしていて、背は閻魔様より上、小町よりやや下、能力は・・・なんだっけ?」
 人差し指を唇に当て「う~ん」と言いながら考え始めた。なんだがわざとらしさが有る様に見えるのだが気のせいだろうか。暫くして「あ」と声上げ、手をポンと叩いた。
「そうそう、屍を操る程度の能力よ」
「カチュウシャをしていて、背は閻魔様より上小町よりやや下、能力は屍を操る程度の能力・・・・」
 再び輝の方を向く。何度も見なくともカチュウシャをしている男性なんて輝しかいないだろう。
「幽々子様もしかして・・・・」
「今まさに貴女が刺し殺そうしている人よ」
 妖夢は白楼剣の力を抜いた。
 輝は手を放すかどうか迷ったが、これ以上攻撃はしないと思い手を放した。その後妖夢は白楼剣を鞘に収め、気まずそうに輝の方を向いた。
「すみませんでした!私が早とちりをしたばっかりに彼方を危険な目に会わせてしまって、本当にすみません!」
「いや、そんなに謝らないで下さい。誰だって間違いは有りますし」
 早とちりで人を斬りかかるのはどうかと思うが。
「そうよ、妖夢。早とちりで斬りかかるのは今に始まった事ではないでしょ♪」
「うっ」
 今に始まった事じゃないのか。一体どれだけ早とちりをしたのやら。
「それにしても、君凄いわね」
「え?」
「妖夢の攻撃を止めるなんて、中々出来ないわよ」
「そ、そうなんですか!?」
 輝が驚くと、「そうなのよ」と返してきた。あの時は無我夢中だったな。人間窮地に立たされるとなんだか解からない力が出るものなのか。
「私が止めていなかったら、今頃串刺しになっている所よ。ふふっ」
 微笑みながらさらりと恐ろしいことを言った。
「笑い事じゃありませんよ、幽々子様!」
 確かに、笑い事で済まされる問題ではない。死んで笑い事で済まされたら泣くぞ。
「あ、そういえば自己紹介がまだね。私の名は、西行寺幽々子、よろしく」
 満面の笑みで言った。その笑みは美しくて綺麗な笑みだ。
 輝は満面の笑みを見た瞬間、意識が途絶えた。






 体に温もりを感じる。不思議に感じて目を開けたら知らない天井が見えた。
「ここ・・・どこ?」
 いつの間にか気を失っていたらしい。何時からだろうか?確か、幽々子が自己紹介をしてそれから・・・・されから?・・・全く思い出せない。
布団から起き上がり辺りを見渡した。寝かされていたのは和室の部屋だ。輝以外は誰もいない。
 ここはもしかして幽々子の屋敷かも知れない。断言は出来ないが。
「体は大丈夫ですか?」
 一人で考え込んでいたらそこへ妖夢がお盆を持って入ってきた。その後ろに幽々子も続けて入ってきた。
「よかった~死んでいなくて」
「幽々子様縁起でもないこと言わないでください」
「だって死んでいたら閻魔様に怒られるもの~」
 本人の目の前でなんちゅう会話をしとるんじゃ、と心の中でツッコム輝。
「あの~なんで俺こんな所にいるんですか?」
 二人は輝の側に座り、質問に答えた。
「私が自己紹介した後、突然糸が切れたように倒れたのよ。目は白目向いているし、口からは魂みたいなものが出ているし、とにかく大変だったのよ」
 意識が無くなっている間にすごいことが起きていたようだ、特に口から魂。流石(?)幻想郷、恐るべし・・・。
「あ、俺まだ自己紹介してないですね」
「そういえばそうね」
 輝は掛け布団を退かし、正座をして名乗った。
「俺の名は輝、(かがや)くと書いて輝です」
「私は名乗ったからいいわね」
「私は魂魄妖夢、庭師兼幽々子様の警護役しています」
 全員自己紹介が終わった後、輝はふと疑問を持ち質問した。
「ちなみに二人は幽霊ですか?」
「いえ、私は半人半霊、つまり人間と幽霊のハーフです」
「私は亡霊よ、アキ」
 幽々子にもアキと呼ばれた。輝と呼ぶよりアキの方がよびやすいのだろうか。
「へぇ~そうなんですか」
 亡霊はともかく半人半霊は聞いたこともなかったので驚いた。世の中にはまだ知らない妖怪やら幽霊がいるものだと思う。だけど亡霊って実体化しただろうか。さっきから幽々子がお盆の上に載っている食べ物を盗ろうとしては妖夢に手を叩かれているから実体があるのだろう。いや、半霊と亡霊だからお互いに触れるのか。
 一人でそんな事を考えていたら不意に幽々子が話しかけた。
「アキが何考えているか、だいたい察しが付くわ」
「え?」
「?」
 なんだろう、このデジャブ感。前にもあった気がする。
 幽々子は突然片足と肩を露出させた。肩まで露出しているせいで胸の谷間まで出てしまっている。
「ちゃんと本物よ☆触ってみる?」
「なっ!!」
 ボォオッ!←輝が赤面した音。
「ゆ、幽々子様!!」
「本当に赤面したわ。面白い」
 幽々子は輝の赤面を見てケタケタと笑い出した。妖夢は早く服を着てくださいと急かしている。
 輝は直ぐに視線を外した。
「小町の言う通り本当に初心だったのね」
 幽々子は未だに笑っている。
 小町も余計なことを言って、絶対にこんな状況を予測していたに違いない。妖夢は輝以上に慌てていた。
 ギュルルルル、とお腹の虫が鳴った。
「よかったらこれ食べてください」
 妖夢が差し出してきたのは先ほど持ってきたお盆、乗っていたのはおにぎり三つ。
「・・・・・・・」
 また、おにぎりか。ここの所おにぎりしか口にいてない。正直に言ってもう食べたくない。だけど断れば妖夢の行為を無駄にすることになる。それになにか食べないと体力が持たない。
「どうかしましたか?」
 不安そうな顔をして妖夢が聞いてきた。
「え、なんでもありません。作ってくれてありがとうございます」
 おにぎりを一つとり食べようとしたら、幽々子が食べたそうな顔をしておにぎりを見ていた。
「あの、よかったらおにぎりどうぞ」
「いいの?」
 幽々子の目が輝いた。
「は、はい。俺は一つで十分に腹が膨らむから大丈夫です」
「では、遠慮なく♪」
 幽々子はおにぎりを受けとり、幸せそうに食べ始めた。幸せそうにおにぎりを食べる人始めてみた。
 輝はおにぎりを食べながらこれからどうするか考えた。
 映姫はここに来れば何とかしてくれると言っていたが、正直に言って不安だ。今頃輝を生贄にした二人はいったい何をしているのだろうか。
「あ」
 確かあいつらはここに行くと言っていた気がする、すっかり忘れていた。いろいろあったから無理も無い。
「食べながらで失礼ですか、訪ねたいことがあるのですが」
「はい、なんですか?」
「ここに、すごい勢いでツッコミを入れる奴とすごくボケを連発する漫才のような二人組みここに来てませんか?年齢は俺と一緒です」
「風と零ね」
 即答だった。
「やはりここに来ていたのか、あいつら」
「あの二人面白かったわよ。ここ数日退屈はしなかったわ」
「何時ここを出ました?」
「何時だっけ?妖夢」
「確か、アキさんが来る2~3時間前にここを出ました」
 一歩遅かったか。
「どこに向かったか聞いていますか?」
「博麗神社に行くと」
「何処に在るか教えてください」
「今から行くのですか!?」
「はい」
 今行かないとこの恨みや怒りその他もろもろは収まらない。
「もう少し休んだ方が」
「妖夢さん、俺何時間ぐらい眠っていましたか?」
「え?一時間くらいですが」
「なら平気です」
「「?」」
 幽々子と妖夢は同時に首を傾げた。


 輝たちは門の前に立っていた。輝は少し下がってくださいと指示し、二人が下がったことを確認してから意識を集中した。探しているのは馬の屍。人の屍があるのなら動物の屍があっても可笑しくはない。
「見つけた」
「「?」」
「来い!」
 地面から甲高い唸り声を上げながら馬が出てきた。
「「おー」」
 二人は意外と驚いてくれた。
「よっと」
 もう一体屍を出し、手をかして貰い馬に乗った。
「即席ですが博麗神社への地図です。馬で行けば直ぐに着きます」
「ありがとうございます」
「アキ、よかったら死んだ跡ここで働かない?」
「幽々子様!」
 考えることは皆一緒らしい。でもなんで死ぬ前提なのだろう。
「すいません。映姫様に死神やらないかと誘われていて」
「あら残念。だったらバイトでやらない?弾むわよ」
「考えときます」
 馬を博麗神社に行く方角へ向かせて、二人にお礼を言う。
「色々とありがとうございました」
「お気をつけて」
「死んだら連絡して」
 幽々子が言った言葉が気になるが馬を走らした。後ろを向くと二人の姿は小さくなっていた。馬を全速力で走らせ博麗神社へと向かった。
 
 

 
後書き
バトルは大変です(汗)
以前より疲れました。 
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