世にも不幸な物語
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五章『其々の出発』
~数日後~ つまり、今の時点で輝が映姫に見つかっている頃
「「お世話になりました」」
風と零は妖夢と幽々子に深々と頭を下げてお礼を言った。
「そんな畏まらないでください」
「いや、これはちゃんとお礼を言わないと」
「そうそう。風なんてただ騒いでただけだし。迷惑だったろ?」
「貴様がボケるからだろうがッ!!」
「what?」
「英語を使うなッ!!」
別れる間際まで何時ものやり取りをする二人。
「寂しくなるわ~。貴方たちの漫才見れなくなるなんて」
「幽々子様、我がまま言わないでください」
「大丈夫ですよ。当分幻想郷にいますから。そうだろ風」
「ああ、直ぐに帰るなんてもったいない事するか」
風たちは自分たちの荷物を確認して門を潜った。
「頼まれていた幻想郷の地図です。私が知る限りの所しか描けてませんが」
「いや助かるよ」
風は妖夢から地図を受け取った。
「何時でも遊びに来てね」
「「はい」」
二人は意気揚々と返事をした。
「地図も貰ったし、博麗神社に行くとしますか」
「おう」
零の掛け声と共に西行寺家を出発した。
歩いて風は思い出した。輝のことをまだ伝えていなかった事を思い出すが、西行寺家から随分と離れてしまっていた。
「どうした?」
「・・・なんでもない」
「ならいいが」
まぁ輝なら大丈夫だろう、となんも根拠も無く風は心配することを止め、博麗神社を目指すのであった。
その頃輝は、裁判所に似た所でたっっっぷりと5時間のお説教を受けた後、映姫になぜここに来たかを聞かれ輝はこれまで自分の身に起きたことを説明した。
輝の説明を聞いて映姫は溜息をついた。
「つまり、アキは訳も解からず幻想郷に落とされ、友達に置き去りにされ、挙句の果てに小町に仕事を無理やりやらされた、と言う事ね」
映姫はよくテレビとかで見る裁判官が座る所に似た場所にいる。
映姫にもアキと呼ばれてしまったが別に気にしていなかった。小町だけアキと呼ばれるのも変なので気にも止めなかった。
「はい。そうです」
輝はすぐ状況を理解してくれてすこしほっとしている。
「ハァ・・・」
映姫はまた溜息をついた。
何だか映姫は説明をしてから溜息をよくついている。
映姫は椅子から降り、輝の所に行き
「アキ、ごめんなさい」
謝罪をした。
「え!」
いきなり映姫が謝ったので驚いた。
「な、なんで映姫様が謝るんですか!?」
「だって、訳を聞かずに貴方の頭を殴ったり、怒鳴ったりしたから」
「いや、謝らないでください。悪いのは俺なんですから」
「でも・・・」
流石閻魔様、こういうこと関連だとしつこい。
「本当にいいですって。こっちの方が何倍も悪いのですから」
「・・・・」
まだなんか言いたそうな顔をしている。
映姫は怒ると怖いが、かなり優しい人だ。
理由も聞かずに殴ったことをこんなにも罪悪感をもってくれるなんて、なんか泣けてきた輝であった。
「もういいじゃないですか映姫様。アキが謝らなくていいって言ってますし」
「小町は黙ってなさい。だいたいあなたのせいでこんな事になっているのだから」
たしかに、事の発端は小町なのになぜか罪悪感を感じてないように見える。散々映姫にお説教を受けたというのに。もしかして小町にとっては映姫のお説教は何時もの事なのだろうか。
「とにかく、アキは早くここを出なさい」
「ここって・・・・地獄をってことですか?」
質問に映姫は頷く。
「本来、ここは死んだ者が来る所。アキはまだ生きているし尚且つ人間、妖怪だったらまだしも人間がここにいると命の保障は無いわ」
輝は映姫の説明を聞いて「マジですか?」と聞き返したら小町が変わりに「マジ」と答えた。
今までとても危険な所にいたなと改めて思い知った。
「そんじゃぁ、早く出ないと!」
急に恐ろしくなって少しだけパニックになる。
「まぁ、落ち着けアキ。まだ平気さね」
小町に宥められて輝は落ち着きを取り戻す。
死神の小町がまだ平気だと言うと妙に説得力があるから安心できる。
「とりあえず、白玉楼に行けば何とかなるさ。ですよね、映姫様?」
「そうね。小町の言う通り白玉楼に行けば幽々子も居るし」
また、初めて聞く名だ。風に教えて貰ったような気がするが早口で説明する奴だから話の四分の一しか理解してない。
「えっと、俺はその白玉楼と言う場所に行けばいいんですね」
「そう言う事になるわ。私が幽々子に連絡しとくから、場所分かる?」
「いえ、全く」
以前、風たちに小町が教えていたが状況が(輝だけが)大変だった為聞いていない。
「だったらあたいが連れて行くよ」
「あなたはまだお説教の途中よ」
「え!?」
「『え!?』じゃないわよ。さっきまでの5時間はアキとついでにお説教しただけ。あなただけのお説教はまだだから」
本当に温い方なんだ5時間。
「はい、これ白玉楼までの地図」
そんなことを考えていたら映姫が輝に地図を差し出す。
いつ書いたんですか?と言うツッコミを言うのを忘れて受け取った。
「ありがとうございます」
「おぅ、気にするな」
さも自分が渡したかのように小町が答える。
「なんで小町さんが偉そうに言うんですか」
「それもそうだな」
小町がそんな冗談を言ったらなんだか可笑しくなって笑ってしまった。輝に続いて小町と映姫も笑う。
ここ数日間、小町とこんな会話をしていた。それができなくなる事を考えると少し寂しくなる。
「色々とありがとうございました」
「気をつけて行ってね」
「たまに遊びに来きなよ。アキ」
二人が軽く手を振る。
「小町さんの仕事の手伝いに?」
お互いに苦笑いをした。
「そんじゃ、俺はもう行きます」
輝は頭を下げ出口の方に行ってドアを開けようとしたら映姫が話しかける。
「アキ」
「はい?」
「上で死んだら小町の代わりに死神やらない?」
それを聞いて苦笑いをし、しばらく間を空けて。
「はい、考えときます」
「映姫様~冗談キツイすっよ~」
「え?私結構本気よ」
「え―――――!」
輝は二人のやり取りを少し見てから部屋を後にした。
舟を降り船頭の屍を地に返して、後ろを見た。
彼岸花が風に揺れているのが見える。
懐かしむかのように暫く見てから前を向き地図を見ながら歩き出した。
「・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・」
息がすごく上がっていた。まるで持久走を走り終えた感じになっている。まだ一時間ぐらいしか歩いていないのに。
もしかして、数日間あの世とこの世を行ったり来たりしたせいなのかも知れない。
「これって・・・・俺の・・・・・霊・・力・・・みたいなものが・・・・け・・・・・削られてんの・・・かな?」
あまりにもの疲労に輝はその場に座り込んでしまう。
地図を見た。まだ半分位しか進んでいないが分かった。気合を入れて立とうとしたが、思うように力が入らず横に倒れてしまった。
このままだと危険だと思い、意識が朦朧とする中でどうするか考え、屍に頼る事にした。
「こん・・なことで・・・使いたく・・・・無かったな」
けれどそんな事は言ってはられない。
せっかく地図も書いてもらったのに、行く途中で死んでまた小町と映姫に会ったらいい笑い話だ。
意識を振り絞り、屍を探した。今の状況だと屍一体を操るがやっとかも知れない。いつ襲われるか分からないから侍の屍を探した。
「みつ・・・・けた」
すぐに屍を出して指示をした。
「すまないけど・・・・・俺をおぶって・・・ここに連れてって・・・・」
指示を聞き、侍は頷き輝をおぶって歩き出した。
輝は侍の背に揺られていつの間にか眠ってしまった。
後書き
今回はほのぼので終わりました。
次回はバトルがあります。
ページ上へ戻る