ひねくれヒーロー
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幸福があります
私達は踏みなれた生活の軌道から放り出されると、もうダメだ、と思います。
しかし、実際はそこに、ようやく新しい良いものが始まるのです。生命のある間は幸福があります。
—トルストイ—
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幸福があります
◇◆◇鴉◆◇◆
みなさまお久しぶりでございます
うちは次男坊里抜けのさいに、お前何しに来たの?と多数の方が思われたことでしょう
あっしも、途中から巫子さんに存在を忘れ去られてしまいまして・・・
しかもなんか気づけば巫子さん、ぶっ倒れてた
慌ててコピー忍者を誘導して回収させやした
本来の目的が果たせないわ、死に掛かってるわでもう大変
本当に体の弱い方ですぜ
まぁ驚いたのは次男坊が、兵糧丸を与えていたことなんですがね
ははーん?ライバルじゃないけれど、身捨てられない友人枠?
そんな感じ?
どう思われますかイタチの旦那
「え・・・あぁ・・・え?」
団子に集中して何一つ聞いてなかったんですね分かりやす
急に話題を振られたために口からみたらしを溢す旦那
慌てて拭うものを探すが、布巾もティッシュもないため暁マントで拭き始める
「いやいやいや、ダメですダメです
もうそこらの葉っぱで良いですから、マントはダメですって」
「いや、でも・・・あぁ・・・」
みたらしがどんどん垂れていく
・・・あっしが人間の手を持っていたらすぐ拭うのに・・・
役に立たない手羽先なんぞ、火遁で焼かれて美味しく頂かれた方が価値がありやすね
みたらしに苦戦するイタチの旦那を放っておき、己の手羽先を眺めた
「・・・イタチ、お前何をしている・・・?」
「・・・マダラ、か」
ぐるぐる仮面の男・・・暁ではトビと名乗るうちはマダラ
何やら巻物を持って我々の元へ近づいて来た
イタチの旦那は巻物に注目している
「急にシリアスぶっても、みたらしのタレ付いたまんまでやすよ」
だからマントで拭わないでくだせぇ
「・・・相変わらずうるさい烏だな・・・
イタチ、この間の件はどうなった?」
この間・・・
火ノ寺に記憶持ちらしき奴がいたという報告
それの確認に赴いた件か
たしか火ノ寺に言ったのはデイダラの坊主
あいつにゃ、記憶持ちかどうか判断する術はない
「あぁ、やはり火ノ寺に記憶持ちが居た
それもまじらずシナイの記憶持ちだ」
暁が、いや、マダラが異様に恐れているのは、まじらずシナイの存在
ここ一年ほど、暁の計画の一部が阻止される原因でもある
「・・・そうか
やはり”あの方”の力も、万能ではないということか・・・
まじらずの世界から来たものは全てイレギュラー
計画の邪魔になる可能性が高い
・・・早々に始末すべきだな」
奴のやることなすこと、こちらの予測を遥かに超えている
暁はたった一人の女に翻弄されていると言っても良いんでしょうかね
火の国における改宗率が他里に比べて低いのは・・・火ノ寺の記憶持ちが影響?
「火ノ寺に誰を赴かせる?
多少警戒されていると思うが・・・」
暁が火ノ寺を探っていると知られちゃいましたしね
イタチの旦那がもう一度行くわけにも行きやせん
木の葉の追い忍部隊でも配置されてたら、抜け忍の旦那はアウトっすわ
「・・・サソリとデイダラ・・・いや、サソリと角都にでも行かせるか
確か火ノ寺には賞金首がいたはず
奴なら喜んで行くだろう」
賞金首、地陸とかいう坊主ですね
たしか守護忍十二士とかいう組織の構成員
「この間からサソリは砂に行ったはずだ
・・・鬼鮫は波の国に行った
暇なのはデイダラぐらいじゃないか」
小南、飛段両名はジャシン教関連でお忙しい
寺に警戒されているであろうイタチの旦那はダメ、鬼鮫の旦那は旅行中
サソリの旦那は・・・新作の人形担いで嬉々として旅立っていきやした
妙に生き生きしてたのが印象的です
人形なのにっ
「・・・デイダラと角都・・・ダメだな、不安要素しかない
仕方ない、デイダラとトビで行くことにしよう」
意外と爺孫みたいで落ち着くかも知れやせんよ
ゼツさんを外に出すわけにゃいきやせん
だからといってデイダラの坊主と・・・マダ、トビの旦那・・・
「不安だ」「不安でやす」
「・・・失礼だなお前たち
ということで、オレはデイダラを誘いに行く
アジトは任せたぞ
・・・デ〜ダラせんぱーい!!」
・・・うちはの演技力は世界一・・・?
◇◆◇小南◆◇◆
雨隠れの中枢
天高くそびえる神の塔
振り続ける雨を、雲を眺め続けるあの方の傍に侍る
ふとあの方が呟いた
——もうすぐなんだけどな——
何がもうすぐなのかしら
「・・・どう、されました?」
炎が揺れ動く
人の形もとらずにただそこに居るだけの炎
——もうすぐ、一つに至る計画の失敗の余波が治まると思った
だが・・・なれの果てに世界が壊されるのは、お気に召さなかったらしい
世界って卑怯だよな
あんな形で修正役を投入してくるとは思わなかった——
修正役・・・まじらずシナイのことですね
あの女が達成する任務と言う任務が、我々の計画を間接的に阻む
邪神さまが練り上げた計画すらも全てを破壊していく
「あァ?
んじゃーその修正役とやらを殺しちまえば良いじゃねえか」
同じように傍らに控えていた飛段が声を上げる
物事はそう簡単にはいかないものよ
炎となったあの方は笑ったように声をかける
——実に飛段らしい言葉だ
だが、それができたら・・・どれだけ良いか
こんなことなら月を潰すべきではなかった・・・——
珍しく落ち込んだ声が響き渡る
こんな時にはどうするべきなのか
私には分からない
「ジャシンさまよぉ
あんまし難しい事は分かんねえけど・・・もうやっちまったもんはしょうがねえだろ
目的を、やり遂げるしかないんだろ?」
眠そうにあくびをしながら答える
飛段の言葉に少しだけ、気分を浮き上がらせたらしい
無意識の彼の言動が、邪神様を持ち直させる
・・・私には出来ないこと
——そうだな
あぁ・・・早くあの子が満ちれば良い・・・そうすればシアワセになれるんだから——
そうですね
早く、シアワセな世界を、作り出して見せましょう———
◇◆◇コン◇◆◇
任務が入った
何時も修行ばかりで、根での任務は久しぶりだ
しかも今回の任務、どうやら一日では終わらないらしく、それ相応の準備をするよう言い渡された
サイと2人で行動する任務ではなく、正規部隊と組む任務
正体がばれないか今からかなり不安
木の仮面や陶器の仮面では前の様に壊れてしまう
しかし、このトモダチマスクさえあればそんな心配は御無用!
布製のお陰でひび割れで壊れる心配はない
万が一に備えて下にももう一枚マスクを装着している
かなり息苦しいが、正体がばれるよりマシだ
待ち合わせ場所である門に向かい、サイと合流
正規部隊の人間が来るのを待つばかり、そう思っていると見知った人間が現れた
「お待たせして申し訳な——————ブフゥッ?!」
口元を抑える間もなく崩れ落ちたその人は、とてもよく見知った人
シナイちゃん・・・
ごめん・・・トモダチマスクなんか着てごめんなさい・・・
だからへたり込んで笑わないで
乙女座りして顔を隠して笑わないで
「鶸茶、何なんですかこの人」
「・・・あんまり、ツッコまないであげてくれ・・・」
サイがドン引き・・・珍しい事もあるもんだ・・・
すっごいプルプルしながら笑い続ける先生を見て、任務に不安がよぎったのであった
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