美しき異形達
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第三十四話 湖のほとりでその九
「幾ら八条グループの旅館を利用していてもね」
「手が出ないな」
「そう、だからね」
「輸入牛なんだな」
「ええ、そうよ」
それで、というのだ。
「そうなっているのよ」
「そうか、まあいいけれどな」
「いいのね」
「そりゃ近江牛は食いたいさ」
薊の本音である、紛れもなく。
「けれどな」
「それでもなのね」
「肉食えるのならいいさ」
それで、というのだ。
「肉は肉だしな」
「薊ちゃんらしい言葉ね」
菫が薊のその言葉を聞いて向かい側に座っている彼女に言った。
「それはまた」
「だろうな、あたしもそう思うよ」
自分でもと言う薊だった。
「それはな」
「食べることがなのね」
「ああ、好きだよ」
実際にとだ。薊は笑って菫に答えた。
「だから肉だとそれだけでな」
「いいのね」
「ベストじゃないけれどベターだよ」
それになるというのだ。
「本当にな」
「それじゃあね」
「食おうか」
こう言ってだ、そのうえ。
七人全員でいただきますをしてからすき焼きを食べるのだった、そのすき焼きを。
そのすき焼きの肉を食べてだ、菊は満面の笑顔で言った。
「いやあ、夏のすき焼きってね」
「これもいいんだよな」
薊は焼酎も飲みつつその菊に満面の笑顔で応える。
「暑い時に暑いものを食うのも」
「それもね」
「汗かくけれどな」
「汗かいたらお風呂入ればいいしね」
それで済むからというのだ。
「いいのよね」
「そうなんだよな、焼酎も美味いし」
「薊ちゃんすき焼きには焼酎なの」
「ああ、そうなんだよ」
それを楽しむというのだ。
「日本酒と一緒ってのが多いけれどな」
「焼酎でもなのね」
「こうして楽しんでるよ」
一見すると水に見えるその強い酒を見つつの言葉だ。
「美味い組み合わせだよ」
「そうなのね、じゃあ私もね」
菊は日本酒を飲んでから焼酎も飲んでみた、そしてこう言った。
「本当にいいわね」
「だろ?すき焼きに焼酎ってのもな」
「いいのね」
「ああ、酒回るのは早いけれどな」
夏に焼酎は特にだ、暑い時にアルコール度の高い酒を飲むとアルコールの周りは実に早い。薊はそのことを言うのだ。
「いいんだよ」
「そうね、本当に」
「夏に焼酎ね」
向日葵はビールを飲みつつ言うのだった。
「それもいいのね」
「あれっ、向日葵ちゃんいつもビール飲むよな」
「夏はね」
「昼もそっちだったしな」
「うん、私ビール好きだから」
実際にとだ、向日葵はそのビールで赤くなった顔を満面の笑顔にさせて答えた。
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