剣の世界で拳を振るう
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平穏に向けて
前書き
壷井 遼太郎(つぼい りょうたろう)
あの後の事を話そう。
まずこの事件の犯人であったオベイロンこと須郷は、原作の通りに病院へと向かった和人に襲い掛かり、そこへ俺が乱入して須郷を気絶させたことは言うまでもない。
間もなくやってきた警察に引き渡し、晴れて終了の兆しが見えてきたと言えよう。
須郷が所持していたALOの管理権限と買収したSAOのデータを親父が買収仕返し、
更には今回の事件でレクトの大多数の社員も捕まった為、親父は人事選考を行って信頼できそうな人材を集めた。
何処からそんな金が出てきたのか気になったのだが、あえて聞かないことにした俺は利口なのかもしれない。
そして事件から数日が経過し、監視か解かれた親父が”シード”と言う原作のアレを開発し、
俺の心配も荷を下ろす事となった。
シードを作った切っ掛けを聞けば「SAOはもう無理だがアインクラッドならば復活させられる」とのことで、100層のボスをヒースクリフとしてやりたいそうだ。
また、SAO事件の再開はしないようで、「あの頃から私の夢は叶っていた」だ、そうだ。
ただ、このアインクラッドはALOを軸にしてアップデートするため、ボスの調整と入れ替え、難易度等を検討し、魔法や飛行に適正をつけることを考えているそうだ。
たまに俺も手伝いに駆り出され、将来は此処で社員に!と俺の将来が決定してしまった気がした。
そして今日はSAOのフレンドや、特に親しかったプレイヤー達が集まり、
クリアの打ち上げを行うと和人から直接言われた。
俺は快く承諾し、学校の帰りに指定された場所へと赴くことになった。
因みに俺の学校は和人達とは違う。
俺は学校へ行かず、そのまま親父の研究所に入り浸っている。
それも暇なときだけなので、基本的にニートと変わりがない。
そんな俺が今考えている事と言えば原作の終了後の話である。
後日談とか和人は大人になって~になった等の情報が無いのだ。
即ち人間本来の人生に戻ったと言うこと。そしてそれは未来に向けて頑張っていくと言うことだ。
俺はその事に考えを巡らせながら待ち合わせ場所であるエギルが経営しているバーへと向かって行くのだった。
「おぉ!来たかケン!」
入店早々にスーツを着たクラインが手を上げて声をかける。
「久しぶりですねクライン」
俺はクラインに一礼して隣に座った。
一応現実なわけだから歳上は敬わなくてはな。
「おいおい、敬語は無しにしようぜ?
SAOを駆け巡った仲じゃねえか。固いこと言いっこなしだぜ」
「…了解だクライン。
ところで…スーツにバンダナはどうなんだ?」
「オメェまで言うのかよ…何つーか、名残なんだよこれは…」
「まぁ、スーツにバンダナはあまり見ないから。
逆に耐性無くて違和感バリバリなんだよ」
「そうかぁ?」
そんな他愛のない話をしていると、俺の前に茶色の水が入ったグラスが置かれる。
前方を向けばこの店のマスターであるエギルが立っていた。
「お疲れ。その後はどうなんだ?」
「ああ、特に問題はないよ。強いて言えばキリトがアスナとイチャコラしてるってだけだな」
「そうか…まぁ、お前も早く彼女見つけて身を固めちまえよ」
「まだ早えよ」
一つ笑いあった後、エギルはまたグラスを拭く作業へと戻っていく。
「あの…」
「ん?」
俺の後ろから控え目に声を掛けられる。
振り返れば髪を2つに縛った背の低い女の子がいた。
「…えーっと、私、シリカって言います。
一応自己紹介しておいたほうが良いかなぁって思いまして…」
「あぁ、そう言うことなら…ケンだ。よろしく頼む」
俺はカウンター席から立ち上がり、シリカと名乗った女の子に自己紹介をした。
「オメェらよぉ、現実なんだから本名名乗れよ…」
「そ、そうですよね!すみません!
私、綾野 珪子(あやの けいこ)って言います!改めてよろしくお願いします!」
「俺は片桐 拳士だ。ごめんな?クラインが…つーかクライン。お前も名乗れよ」
「あ?おお!壷井 遼太郎(つぼい りょうたろう)だ。
24歳独身彼女募集tyぐぶぉほぉ!?」
明らかに犯罪な年齢に手を出そうとしたクラインに腹パンをお見舞いする。
クラインの身体は折れ曲がり、床に膝をつく。
「身だしなみ整えてから出直せ」
「あんたたち!少しは手伝いなさいよ!」
「リズさん!」
そう言ってこちらにやってきたのは黒髪でショートの女の子。
「私は篠崎 里香(しのざき りか)。よろしくね。
PNはリズベットよ」
「ああ、よろしく」
お互いによろしくと言い合っていたその時、入り口が開かれ、3人が入店してくる。
「遅刻はしてないぞ?」
「主役には遅れた時間を言ってあったのよ」
「久しぶり、ケン君」
「ああ。久しぶりだ。
松葉杖はもう取れたんだな」
明日菜が俺を見つけて手をあげる。
俺も手を上げ返してそう言った。
「さぁさ!パーティーを始めましょ!」
「「「「おお!」」」」
因みに親父は来ていない。
仕事とアップデートで忙しいと言っていた。
おおかたアルヴヘイムにアインクラッドを浮上させるために奮闘していることだろう。
「直葉、参加しないのか?」
俺は店の住みに陣取っていた直葉に声をかけた。
「あ、拳士さん。
いえ、皆仲が良いなぁって思って…」
「……ふむ。
急で悪いんだが……その、好きな人は居るのか?」
「……ええ!?
どどどどうしたんですか急にぃ!」
……あ、しまった。
これって遠回しな告白に聞こえるじゃないか。
「いや、告白じゃないぞ?
ただ、そう言う年頃だからこう言ったパーティーよりも彼氏を優先したいのかと思ってな」
「彼は今渋谷へ行ってます。
何でも買いたい物があるとかで」
「ふぅん。買いたい物が…………へ?彼氏いるの?」
「言ってませんでしたか?」
いや、聞いてないぞ。
和人じゃないのか?……誰だ?
「その彼氏とはいつ知り合ったんだ?」
「ど、どうしたんですか?急に…去年の3月ですけど」
去年の3月……まだSAOの中か。
……いや、気にしすぎなのかもしれないな。
「まぁ、末長く爆発しろ?」
「何でですかぁ!」
うーん、もう何が何やら分からなくなってきたな。
原作の直葉には彼氏がいたなんて事は無かったし…レコンか?
……違うな。まぁこの事は別に気にすることでも無いだろうし、俺も楽しむとしようかねぇ。
「よっしゃ!やっと見つけたぞGGO!
これで原作に関われる!」
とあるゲームショップにて、そう言って高笑いする一人の少年が目撃された。
「ただいま~」
「帰ったか。では行こう」
帰って早々に親父が出迎え、俺の手を引いた。
「まてまてまてまて!何処へ行くつもりだ!
俺は帰ってきたばっかだぞ!」
「無論、ALOだ。
今日はキリト君達にお呼ばれしている。
後13分程でスイルベーン上空にアインクラッドが出現する事になっている」
「いや、それは知っているが…」
「私はここにとあるシステムを組み込んだのだ」
「……どんなシステムなのかは聞かな」
「アインクラッドへ入るには入り口前に陣取っているボスを倒さなくてはならないのだ」
「最後まで聞けやくそ親父!」
やっぱりキャラがおかしいだろ!
原作何処行った!?
「早く準備したまえ。円も待っている」
「くそ……安堵の時は無いのか…」
渋々と連れていかれる俺は、半ば強制的にALOへとログインして待ち合わせ場所に向かい、
アインクラッドが現れると共に、皆と一緒に飛んでいくのだった。
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