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もしチー外伝 苗っち、最悪の修行に挑むの巻
時系列:なのは15歳の時代
場所:第97管理外世界 スターシップ蓬莱島
その日も苗とぽんずは仙界での修行に明け暮れていた。
魂魄分裂によって複数個所での同時活動が可能な苗は、これといって生活や家族関係に不都合なく活動することができるため、本体の苗とぽんずが仙界(蓬莱島)にいても周囲は気にしないのだ。
そしてそんな修行の折、2人は師匠である伏羲に、あるものを紹介されていた。
お兄ちゃん――みんなからは太公望とか呂望とか王奕とか伏羲とか師叔とか……色んな名前で呼ばれているが、私は基本的にお兄ちゃんか呂望の名前で呼んでいる。なんか知らないけどものすごいおエライさんらしい。
「で、お兄ちゃん。結局この『仙界最強七天陣』って何なの?」
床に現れた八角の中華風図形を指さして、私は最大の疑問を単刀直入に聞いてみた。
問われたお兄ちゃん(伏羲)は小さく頷き、説明を始める。
「うむ。これはその昔、数人の仙道たちが修行用に作った特殊な空間宝貝での……この中には様々な宝貝の技術を使用して再現された仙人や道士の幻がいるのだ」
「幻が?つまり……竜吉公主さんみたいな美人さんと仮想デートするために土行孫さん辺りが発案した恋愛シミュレーションゲームだね!!」
「ちゃうわボケ。確かにそんな類の質問がされたことはあるがの……要するにこの中だと現実には簡単に戦えないような相手とも戦い、修行を積めるのだ。この世界は夢渡りの世界に近いため、中で死んでも実際に死亡することはない。腕試しにもってこいの宝貝なのだよ」
お兄ちゃんは陣を教鞭みたいな棒でこんこんと床を叩きながらそう締めくくった。
宝貝というのは簡単に言えば仙人界特有の武器で、その中でも空間宝貝は一種の閉鎖空間を自分の好みの法則に書き換えて使用するというものすごく高度なものだ。つまりスゴイ。
しかし、「その昔」ということは今は使われていないのだろうか?
そう思って質問してみると、良い所に気が付いたと褒めてもらった。ついでに頭もナデナデされた。恥ずかしいが悪い気がしないのが何ともアレだ。私って実は甘えっ子願望があったんだろうか?
「いや実はな?昔に楊戩の奴が目一杯強い仙道のデータを入力して練習したところ、入力システムがバグって出現する仙人が特定の7名に固定されてしまったのだ。以来、この陣に入って勝利を得た者は殆どいない。数少ない勝利者も2,3回勝ってからは飽きてしまい使わなくなり、またそいつらに匹敵する道士や仙人がそれ以降現れなかったために長らく封印されていたのだ」
ピポパポと音を立てて表示されたこの陣をクリアした人間は……
1.楊戩 2.哪吒 3.竜吉公主 4.燃燈道人
5.聞仲 6.張奎・・・・・・・・・
「あの、お兄ちゃん。なんか化物クラスの仙道ばっかりなんだけど」
「当然であろう?なにせ中に待っているのが化物なのだから」
クリアした人はその誰もが仙道の中でも上の上に位置する最強集団であり、私がぽんずと二人掛かりでも勝てないような怪物が揃っている。
……猛烈に嫌な予感がするのは気のせいでありましょうか?そっとぽんずを見てみると、ぽんずも嫌な予感を悟ってか尻尾が伸びている。
「あの、お兄ちゃん。もしかしてこの陣に私が入るとか言わないよ……ね?」
その問いに、お兄ちゃんはニコリと笑う。
「何を言い出すかと思えば……そんな事をこのわしが言う訳なかろう?」
「だ、だよね~!ほっ……」
「おぬしだけでは100%クリア不可能だからぽんずも一緒に連れて行け」
「あっれぇぇぇーーー!?」
現実は常に非情である。
「無理無理絶対に無理じゃ~!!許してたも~~!!」
「まーお!」
「ワハハハ……実は今日のわしはブラック呂望なのだ!この呂望容赦せぬ!!」
「そんなご無体な!?」
「では、逝って来い!!」
けりっ、とお兄ちゃんの蹴りによって身体を浮かされた私は、そのまま陣の中へと落ちて行ったのでした。
「う、う~ん……はっ!!ここは!?」
がばりと起き上がると、私は八角形の形をしたステージのような場所に立っていた。
そしてその前には――話が正しければ恐らくこの宝貝の作り出した幻であろう7人の仙道の姿が――
「フォフォフォ……新たな挑戦者が来たか」
三大仙人にして元崑崙山教主――元始天尊。
「フッ。何度来ようとも打ち払うまでだ」
元金鰲島総司令官にして金鰲三強が一人――聞仲。
「トレビアーンな戦いを期待するよ、君!」
金鰲島で一大勢力を築いた金鰲三強にして破壊の貴公子――趙公明。
「めんどくさい……でも、君を追い払えないと眠れないみたいだ……ふぁあ……」
滅多に目を覚ます事のない三大仙人最強の仙道――太上老君。
「あはん♡本当なら妾一人で十分なんだけどぉ……お色気出し過ぎちゃうと作者に止められちゃうのよねぇ~?」
金鰲三強であり、歴史の道標と通じていた最悪の妖狐――妲己。
「ふぅむ……なかなかに見どころのありそうな仙道ではないか。どれ、一手ご指南……」
三大仙人が一人にして元金鰲島教主――通天教主。
「私はこのような茶番に興味はありませんが……フフ、他の6人に勝てたなら相手をして差し上げますよ?」
太上老君が一番弟子にして自他共に認める最強の道士――申公豹。
「はは、は……」
「……なーお」
そこにいた7名は、旧スーパー宝貝所持者(申公豹を除く)全員だった。
いや、どうやってこれに勝てと?
「イヤァァァーーーー!!た、助けっ助けてお兄ちゃん!!お願い!!無理!これ無理な奴!!」
「ま……まーーーお!!」
『ライオンは我が子を千尋の谷に突き落とす……自力で乗り越えてみせよ!お主の能力とぽんずの能力なら理論上やってやれぬことはない!!』
「鬼!悪魔!邪魔外道の眷属ぅ~~~!!」
その後の戦いは凄惨を極めた。
開幕と同時に聞仲の禁鞭によって吹き飛ばされ2人とも仲良く即死。
立ち上がったところに趙公明の金蛟剪が繰り出した七色の龍によって即死。
なんとかそれを逃げようとした先には通天教主の六魂幡に拘束されて即死。
更に元始天尊の盤古旛、重力千倍によってブラックホールに閉じ込められて即死。
なんとかそれを躱して立ち向かったところ妲己の傾世元禳に阻まれ衝撃波で即死。
その隙にダラダラしてた太上老君を倒そうとしたら怒られて太極図戦闘形態で即死。
ついでに暇になった申公豹の雷公鞭が飛んできて不意を突かれて即死。
そしてまる3日終わりのないデスルーラに挑み続けた二人だったが、結局は元始天尊と通天教主をどうにかこうにか倒す以上の進展がなく、流石にこれ以上はヤバイと思った伏羲が救出するまで続いたという。
この後一週間の間、苗はトラウマから伏羲の身体に抱き着いて離れない状態が続き、逆にぽんずはこんな修行をやらせた伏羲に暫く敵意をおさめてくれなかったという。
「ところで師叔は何でこんなことやらせたんさ?」
「他の仙道に弟子を甘やかし過ぎだって言われてのう……一応は四宝剣とぽんずの助力を使えば突破できると踏んだのだが、その辺も含めて再修業だな」
「苗ちゃんが可哀想ッス……というか本当に申公豹さんにも勝ち目あったんスか?」
「あやつは幻であってもあの世界が茶番だと気付いておる。適当に相手をしてやれば勝手に帰るよ」
え?これ、最早リリなのじゃなくて封神演義?細かい事は気にするな!
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