ひねくれヒーロー
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神を信ずるというのも恐ろしい
神を信じないというのは恐ろしい。神を信ずるというのも恐ろしい。
—有島武郎—
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神を信ずるというのも恐ろしい
◇◆◇シナイ◇◆◇
ジャシン教、湯隠れときたら飛段だ
原作を知っている奴の八割はそう思う事だろう
残り二割は忘れているか読み飛ばしているかだな
・・・湯隠れ出身は覚えてたぞ!
サソリと別れてから、どうしてあんなとこに居たんだろうと情報を探っていると、何が何やら分からなくなった
頭から湯気が出ている私を発見したシュロが、調べ物ならしてくるZEと高らかに宣言した
言質を取ったのをいいことに、こき使いまくると色々見逃せない点が出てきた
ジャシン教がメジャー宗教になっていた
戒律は隣人を殺害せよとかいう奴なのにメジャーになっていいの?
そう思っていると、どうやら約二年の間に信者の数が倍増したらしい
しかもジャシン教の信者、何故か湯隠れと雨隠れに二分されている
原作での雨隠れは暁リーダーペインの本拠地
現在でも雨隠れは小南によって統治されている
以前見た小南の様子からして、小南がジャシン教を布教しているのではないかと思える
コンを里抜けさせようとした言動は、ジャシン教へ入信させるつもりだったのではないか
そんな想像が浮き上がる
何故二年前からなのか
コンがトリップしてきたのも同時期
この世界には何人か、他の世界の記憶を持った人間がいる
再不斬の話によれば、白が宗教に凝り始めたのは二年ほど前とのこと
月隠れの記憶を得たのは二年前だったのではないか
また、小南が言った”あの方”の存在
どうもマダラの事とは思えない
幸せな世界など、奴は作りたがるか?
何故その世界にコンが必要なのか?
暁を使ってまでコンを守るのは何故なのか
あの方とやらはマダラではない
コンのことを知り、転生者の存在を知り、コンを守ろうとする
絶対マダラじゃない
他の誰かが、飛段を傀儡と仕立て上げ、暁とジャシン教を動かしている
黒幕がいる筈だ
そしてその黒幕は二年ほど前にこちらの世界に現れたに違いない
恐らく黒幕はコンと同じ月隠れの住人だったのではないか
そうじゃないと、コンを何故知っているのか理解できない
「シナイよ・・・その、ジャシン教とやらに何か問題があるのじゃな?」
三代目はジャシン教を知らないようだ
まぁ、ここ最近の宗教だからなぁ
「・・・はい
火の国の宗教団体の中にもジャシン教へ改宗する者が増えてきております
・・・中忍試験後から、急激に」
シュロ作成のグラフでも持ってくればよかった
改宗者の人数が跳ね上がりすぎて冗談だと思うほどだったから持ってこなかったけど
「・・・暁は、布教でもしにきたのか?」
多分布教目的だと思う
飛段がジャシン教信者っていう原作知識がなければ、暁とジャシン教は結びつかなかった
「そこで、確認のために火ノ寺に、私達六班の誰かを行かせて頂きたい」
火ノ寺
原作では「火の国に火ノ寺あり」と謳われた場所
ここでは火ノ寺は、火の国の宗教施設の情報が集まる場所でもある
この寺で、二年ほど前から挙動があやしくなった人物がいると言う情報と———
中忍試験の前に、黒い外套の男が現れたという情報があった
「火ノ寺か・・・あい分かった
元・守護忍十二士の地陸に手紙を送っておこう
六班の誰か、と言ったの?
六班全員(・・・・)ではなくとも、構わんのか?」
六班か————
「・・・理想ならば、六班全員で行きたいところ
しかし、シュロもイカリも中忍としての任務が、あの子は根での修行が終わっておりません
・・・木の葉の現状を考えると、そのような我が儘など言ってられませぬ」
「・・・良かろう、修行にも実践は必要だ・・・
鶸茶と薄墨を、御主に預けよう」
・・・薄墨って誰だ?
いや、そんなことよりまさかダンゾウ様から許可が得られるとは・・・
それにダンゾウ様はコンを外に出したくなかったはず
前の雷の国への任務では色々言われたのに・・・
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、必要なら仕方あるまい」
「・・・フッ・・・珍しいのうダンゾウ
それでは出来るだけ六班を揃えられるよう調整してみようかの」
・・・だけど、流石に六班全員は無理だろうな・・・
私もこの後すぐ任務に赴かないといけない
イカリも久しぶりの休暇、明日から任務が組まれているはず
シュロは元々休みは不規則な部隊に所属している
任務だからと言って所属から離れるのは・・・な・・・
◇◆◇コン◇◆◇
「鶸茶ってツンデレなの?」
行き成りこの子は何を言い出すのか
思わず口に入れた兵糧丸を吹いてしまった
気管に入り込んで噎せ返る
吐血した血は仮面に付着し流れでなかった
仮面から漂う血の匂いが噎せ返りそうで気分が悪い
「鶸茶?」
「・・・とりあえず、誰が言った?」
サイがツンデレなんて言葉知ってるわけがない
誰かが入れ知恵したに違いない
そう確信して問いただす
「フー先輩」
「トルネと仲違いしやがれ」
思わずフーを呪う
くそ、女子高生かと見間違うほどの仲良し具合なんて裂けろ裂けてしまえ
心の嘆きに任せて立ちあがって、彼らがいる筈の休憩室へ向かう
変な事を教えるなと釘を刺さなければならん
当然のごとく後ろをついて来るサイはスルーだ
扉を開けようとした瞬間、向こう側から扉が開いて仮面を強打する
デコいてぇ
ピシッと嫌な音が仮面から聞こえ、向こう側から謝ってくる声がやけに遠く感じた
「・・・・・・にい、さん・・・?」
二つに割れた仮面が床に落ち、カーンと高い音が場を静まり返す
サイの声が耳に入ってくる
その時になってようやく仮面が外れていることに気がついた
顔を両手で隠す
見られた
鶸茶が、ねたみコンだとバレてしまう
「・・・鶸茶、顔を良く見せて」
無言で首を横に振る
座り込んで顔を隠す
「・・・トルネ!フー!来て、こっち来て!!」
出来るだけ見られないように、他人の空似だと、目の錯覚だと言い張れるように
大声でトルネとフーを呼びながら、顔を隠し続けた
「鶸茶・・・!
お願いだから・・・!」
横でずっと、縋るように名前を呼ぶサイのことなどお構いなしに・・・顔を隠していた
・・・あれ?
サイ、オレの顔を見て兄さんって呼ばなかったか?
・・・シンって、どんな顔だったっけ・・・?
オレの顔と、シンの顔って似てるのか?
トルネが慌てたように毛布でオレを隠した
フーとサイが何やら言い争っている
毛布があるから一安心、そう思って気を緩めたのがダメだったんだろう
引っ張られる感覚
「うわっ!?」
毛布をはぎ取って目の前に現れたのはサイ
目を見開いてこちらを見ている
「やっぱり・・・兄さん・・・」
泣くのを堪えるように恐る恐る呟いた
・・・泣きたくなるほど、オレの顔は似ているのか
だけどな
「・・・薄墨、オレは、お前の兄じゃない
オレは鶸茶だ」
毛布を顔に巻きつけて立ちあがる
バラバラになった仮面はトルネが回収してくれた
・・・変化の術でも使って、誤魔化せば良かったのだろうか
まさか仮面が壊れるとは思ってなかったから咄嗟に対応が出来なかった
・・・仮面の下に仮面でもつけるべきかな
「・・・でも・・・こんなに、こんなに似てるんだよ・・・」
オレの知ったことか
流石に声には出せず、心の中で呟く
フーが代わりの仮面を差し出してくる
その仮面をつけて毛布をはずし、サイにかける
少しの間サイはうつむいて、何かを言おうと何度か口を開く
だけど言葉は出てこずまたうつむいてしまった
トルネが何やら助け船を出そうかと俺等の間を行ったり来たり
最終的にフーに首根っこ引っ掴まれて引きずられていく
あー・・・あの光景シュロん家で良く見かけるわー・・・
シュロを構おうとひっつきに来て、無視されて、しょげている所をフーに回収される
いつものことだな
2人がまた休憩室に引っ込んだのを確認して、地べたに座る
隣の床をぽんぽんと叩いて、サイも座るよう促す
ゆっくりと座ったサイを見て、少しずつ話しだす
「似てようが似てまいが、オレは鶸茶なんだ
お前の兄とは別人だ
オレと兄を混同すんな
・・・それは、兄さんへの侮辱になる
分かるな?いや分かれ、とりあえず分かっとけ」
「・・・」
だんまりか
「・・・オレは兄じゃない
でも、オレは薄墨の相棒だ
それで良いじゃないか」
キョトンとした顔で目を合わした
なんだその顔は
「相棒?」
相棒じゃ不満か
「そうだ
それにさぁ、オレそんなに兄に似てるか?
こんな青白くて痩せっぽちで、小さかったか?違うだろ?」
確かシンって結構ガタイ良かったよな
140㎝ぐらいしかないオレとダブるっておかしいだろう
あ、似てるのってもしかして子供時代?
「・・・割に口やかましくて慌てん坊なのは似てるよ」
多分、その口やかましいっていうのは意味が違うと思う
オレが重箱の隅をつつくかのように、サイに駄目だしするからか
マナーやらを口酸っぱく教えるのがやかましいと思ってんのだろうか
基本的にボロが出ないように、根では口数少なくで通してるんだけどな
あと———
「・・・慌てん坊?」
オレって慌てん坊?
涙脆いとか嫉妬深いとかはよく言われるけど、慌てん坊って・・・
「結構ね
・・・あと、雰囲気」
・・・これからは行動に気をつけよう
「そんなアバウトな・・・」
肩を落として呟いた
サイから笑い声がする
何を笑ってんだ・・・
「心の、温もりの正体が分かったよ
———きっと、ボクは淋しかったんだ
兄さんが死んでしまってから
だから」
・・・だから?
「なんでもいいから、その隙間を埋める人が欲しかったんじゃないのかなぁ」
「他人事みたいに言うなよ・・・」
「なんだかしっくりこなくて・・・」
そこで照れるな
「ところで鶸茶の顔は露出しちゃいけないものなの?」
ろ、露出・・・
「いや、表で活動してたから・・・な?」
首を傾げて何かを考え込むサイ
しばらくたってから目が輝いた
「・・・!
あ、イカリ御嬢さんのお友達だね!」
・・・わぁバレた
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題して火ノ寺編、スタートかな
コンの顔云々は、ボクの脳内イメージがシンの顔に近いからです
あくまで近いから、ですけど
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