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戦友

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第四章


第四章

「わしはな」
「それはそうだけれどね」
「まあそれも人生だけれど」
「しかしだ」
 辺りを見回しながらの言葉だった。
「どうしたの、今度は」
「わし等の国も随分変わったが」
 彼が戦争に行っていた時と比べてだ。国はかなり変わった。別の国になってしまったと言っても過言ではない。新しい建物が建てられテレビも洗濯機も一変した。ブラウン管といったものはなくなり薄いプラズマテレビになってしまった。それだけでなくパソコンまである程度であった。
「この国も変わったのかな」
「変わったから今仲良くしてるんじゃない」
「そうよ」
 また子供や孫達に言われるのだった。
「戦争よりも平和と愛」
「それとお金よ」
「今度はお金か」
「銃撃つよりコイン投げ合った方がいいでしょ」
 今度の言葉はこうであった。
「人は死なないし豊かになるし」
「それだけいい時代になったのよ」
「そうか」
「そうよ」
 また彼等に告げられるのだった。
「平和になったのだからね」
「それを楽しめばいいんだよ」
「それでメアリーも結婚するのか」
 考えがつながった。そういうことだった。
「本当に幸せになればいいのだがな」
 最後に思うのはそれだった。思いつつも不安であった。メアリーはこれからどうなるのか。それを考えながら式のその時を待つのだった。
 式のその日になって。彼は家族の待合室にいた。そこでイライラした感じで部屋の中をうろうろと歩き回っていた。不安げな顔で。
「だからお父さん落ち着きなって」
「今ここで不安になってどうするのよ」
「今日だな」
 宥める子供や孫達に対して告げた。彼等の話は聞かずに。
「今日結婚するんだな」
「それ何度も言ってるじゃない」
「何を今更」
「まだ相手を見ていないんだが」
 彼が気にしているのはそこであった。
「どんな奴なのか」
「いい人よ」
「それは間違いないよ」
「それは何度も聞いているぞ」
 イライラとした感じの顔になって彼等に言葉を返した。
「それでもだ。百聞は一見にしかずだ」
「まあそうだけれど」
 遠い東の国の諺が出て話がさらに進む。
「それでもまあ」
「落ち着かないと」
「落ち着いて相手が来るか?」
 それでも気分が収まることはなく彼等に問い返すのだった。
「実際のところ」
「それは今日わかるんだろ?」
「だから慌てない慌てない」
「ついでに焦らない」
「焦ってはいないがな」
 そうは言っても実際は違う。口でそれを否定しても態度は違っていた。
「相手の家族もまだか」
「それももうすぐよ」
「だから落ち着いてって」
「紅茶をくれ」
 ここまで言われてやっと自分でも落ち着くことにしようと決めた。それで席に座ってから周りに紅茶を頼んだのであった。彼の好きな紅茶を。
「紅茶なの?」
「コーヒーじゃなくて」
「わしは紅茶だろう?」
 こう彼等に言い返すのだった。座った後で。
「コーヒーはやらんだろ、昔から」
「まあ確かにね」
「それはね」
 彼等もよく知っていた。伊達に家族をやっているわけではないのだ。
「だったら。紅茶をな」
「わかってるよ」
「じゃあ紅茶淹れよう」
「コーヒーもね」
「飲み物まで変わったものだ」
 ここでも時代が変わったことを実感するアルフレッドだった。彼の時代は紅茶だけだった。しかし今は違っていた。彼の国でもコーヒーを飲むしココアを飲む者もいる。それもまた変わったのだ。
「まあいい。では紅茶をな」
「わかったわ」
「おっ、いい香りがするな」
 ここでであった。不意に誰かの声が部屋の中に入って来た。
「いい豆を使っているらしいな」
「んっ!?」
 アルフレッドはそれを聞いてふと何かを思い出した。懐かしい何かを。
「この声は」
 聞き覚えのある声だった。遥かな昔に。かなり低くはなっていたがそれでもであった。その声は彼の記憶に訴えかけるものであった。
「そっちでもコーヒーを飲むことになったとは聞いていたがな。中々趣味がいいんじゃな」
「御前は・・・・・・まさか」
「んっ!?」
 アルフレッドが声をあげると向こうもそれに気付いたらしい。顔を彼に向けてきた。
 
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