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ハイスクールV×D ライド10
「いい加減にして欲しい……」
球技大会当日……四季は一人此処最近の木場からの視線に頭を抱えていた。上の空の割には四季にだけは殺気を向けてくる。四季としては以前一誠とのコンビを相手にした時にやりすぎた程度しか心当たりは無いし、はっきり言って木場や悪魔側の事情になど興味も無い。
流石にこう毎日だといい加減殺意が湧いてくる。……主に詩乃さんの手作りのお弁当を全然味わえなかったりとか。
内心、『あの時ブラスター・ブレードの方で叩き斬っておくべきだった』と思う中、匙と一誠が気合を入れて応援しているリアス対ソーナのテニスを観戦していた。
「行くわよ、ソーナ!」
「良くってよ、リアス!」
リアスのサーブがソーナのコートに突き刺さり、バウンドしたボールをソーナが打ち返す。……此処までは普通のテニスだ。
「お喰らいなさい! 支取流スピンボール!」
「甘いわ! グレモリー流カウンターを喰らいなさい!」
高速回転を加えて打ち返されたボールはリアスのラケットに当たる事無くボールが軌道を変えて急速に落下して行った。
『15-30!』
「魔力籠めてないか、あれ?」
「籠めてるわね、あれ」
魔力込みの派手な試合を始めた二人に呆れた視線を向ける四季と詩乃。流石に普通の人間相手に魔力を使うと言う大人気ないマネはしていないだろうから何も言う気は無いが、納得してやっているのなら、魔力を使おうが必殺技を使おうが、相手をKOしようが問題は無いだろう。
「やるわね、ソーナ。さすが私のライバルだわ」
「うふふ、負けた方が小西屋のトッピング全部乗せたうどんを奢る約束、忘れていないわよね」
「ええ! 絶対に私が勝たせてもらうわ! 私の魔動球は百八式まであるのよ?」
「受けて立つわ、支取ゾーンに入った物は全て打ち返します!」
何処かのテニス漫画みたいなことを言ってやる気は十分と言った様子の、駒王学園内に居る悪魔達の二人のトップ。どうでも良いのだが、二人とも貴族な割りに掛けの対象が庶民的過ぎる気がする。
実際、木場&一誠との戦いでは、少しでも致命傷になるのを避ける為に、この世界に於いては聖剣と言う分類に属するブラスター・ブレードだけはなく、魔剣と言う分類になるブラスター・ダークの漆黒の剣の方を選んだわけである。
「昨日の事って冗談よね?」
「……ごめん、少しだけ本気で検討した」
詩乃の問いかけにそう答える。実際、何処まで冗談だったかは疑問だが昨日のソーナからの勧誘には、本気で心が揺らいでいた。人間の寿命よりも長い年月を大切な人共に過ごせる。リアスの勧誘の時には話題に上がらなかったために一切検討しなかったが、冷静になって考えればそれも可能である。
「私達が今の立場のままで居る理由……忘れたわけじゃないでしょ?」
「すみません、忘れてません」
ぶっちゃけ、どんな決意も隣に居る人が関わると全て投げ出しそうになる四季である。まあ、四季としても三大勢力の何処かに所属しない理由と言うのは、各勢力に対する問題点が挙げられる。
悪魔についての問題点はやはり、純潔の悪魔が優遇される貴族社会……転生悪魔として悪魔になっても生き難いだろうと言う点。
堕天使については四季の持つブラスター・ダークの漆黒の超兵装。過激派の連中に所在が知られるのは危険と言う判断から。
天使はやはり……
「……『聖剣計画』……」
其処まで考えた後、妙にパズルのピースが会う気がした言葉を呟く。『聖剣計画』、己の神器に眠る守護竜が、その計画の事を知った時に怒りを感じていたから良く覚えている。
“「負けられない……その剣が……その剣があれば、聖剣を超えられるんだ!」”
確かに木場は四季と戦った時にそう叫んでいた。
(……あいつ、まさか聖剣計画の生き残りか?)
聖剣に分類される剣の所有者である以上、四季としては天使や教会に協力する気になれない……はっきり言って命が幾つ有っても足りないと思っている理由である。なにより、四季にとって命を賭すべき相手は詩乃であって、神などではない。
現在はそれほど過激な実験や研究は行なっていないらしいが、それでも前科が有る以上信用などできるわけが無い。
―『部活対抗戦代表者は大会本部まで……』―
四季がそんな事を考えている間に球技大会のリアス対ソーナの試合は、魔力を駆使した凄まじい……どこぞのテニヌを連想させる打ち合いの末に二人のラケットが壊れた事で両者優勝で方が着いた。
そして、放送で知らされるのは部活対抗戦についての放送。
「現実にも有るんだな……漫画みたいな事」
「普通はあるわけ無いでしょ?」
帰宅部な四季と詩乃については関係ないが、部活対抗戦は体育館で行なわれるドッチボールが競技らしい。オカルト研の面々……特にリアスは妙に気合が入っている。
まあ、ライザーに非公式とは言えレーディングゲームで負け、四季には二対一と言う圧倒的優位な状況でも敗北しているのだ、特に勝利に飢えていると言う事だろう。
(……聖剣計画の生き残り……本当にあいつの主は何やってるんだか)
聖剣計画の生き残りゆえに聖剣を超える力を秘めた超兵装ブラスターシリーズの一つを求めた。そう言う事だろう。
力への上と渇望。力を求める理由こそ異なるが、それは何処か『ブラスター・ダーク』と名乗る前の後のブラスター・ブレード……アーメスに憧れていた一人の少年剣士を連想させる。
さて、建前は生徒達が球技を通じて青春を謳歌しつつ、競い合う歓びを分かち合う大会なのだが、一誠は全男子から狙われていた。……少なくとも、アウェーで試合する国際大会の選手でさえ此処まで敵意は向けられないだろう。
その原因は事前に坊主頭と眼鏡の親友二人が、変な噂をばら撒いていた効果だろう。どうも、それに前後して四季が詩乃と同棲していると言う噂が流れているが、妙にそれに関しては納得されている雰囲気がある。真相は一誠自身が自分の噂を打ち消そうと新たに流した物だが……校内でも普段から仲が良い上に、四季が恋人かと聞かれたら即座にYesと答える所からも納得されている。
まあ、そうでなくても、
『学園の二大お姉様』と呼ばれている駒王学園のアイドルである、リアスと朱乃に投げる? その瞬間、味方さえも敵に廻る。今後の学園生活は恐ろしい事になるだろう。
小猫に投げる? 戦車の特性で簡単にキャッチできそうだが、学園のマスコットのロリっ子に投げるのは真理的に無理だろう。
アーシアに投げる? 癒し系の美少女に投げたら、当てた瞬間罪悪感に苛まれた上に周囲から冷たい目で見られるのは覚悟すべきだろう。
木場に投げる? 当てた瞬間、女子を敵に廻す事になる。
等など、他のオカルト研のメンバーには投げられず、逆に一誠には……リアスやアーシアとの同棲疑惑。四季にも同棲疑惑が有るがそれはそれ……二人も囲っている上に四季の方は恋人、怒りが向くのは自然と一誠の方に確定する。
……と言うよりも、周囲のギャラリーからは『イッセーを殺せぇぇぇぇぇ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!』とのコールが響き渡り、ボールを投げる選手も『死ね、野獣!』と殺意全開の叫びだ。
一誠が避けたりキャッチする度にギャラリーや選手からは残念そうな声が響く。会場全体……四季と詩乃を除いた会場全体の心が一つになっている。
そんな試合の中で中々当てられない事に苛立った者がボーとしていた木場に向かってボールを投げる。それに気付いた一誠が木場を庇うもボールの当たり所が悪く、治療係のアーシアと運搬用の小猫と共に倒れた一誠が引き摺られて出て行く事になる。
「ん?」
ふと、試合を観戦しつつ時折詩乃との談笑を楽しんでいた四季だが、メールが届いている事に気付く。しかも、そのメールが届いたのは賞金稼ぎの他に裏関係の依頼を受ける為に用意していた方の品。
そして、そのメールの内容に目を通して依頼の内容を確認すると詩乃を連れて体育館の裏まで移動する。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「どうしたの、四季?」
「いや、天界上層部と堕天使幹部からオレ達に依頼があった」
「まさか、天使と堕天使の戦争の協力じゃないわよね?」
「寧ろ逆だな」
流石に戦争に傭兵として参加する気はない。戦争が起こった場合はどの勢力にも協力する気はない。
「血塗られた聖剣……エクスカリバーが盗まれた」
「えぇ!?」
四季の言葉に思わず驚きを露にする詩乃。飽く迄四季と詩乃の二人はコンビとして認識されている。本命は四季なのだろうが、四季も詩乃に黙って危険な依頼に首を突っ込む気は無い。
エクスカリバーはかつての戦争で七つに砕かれ、折れた聖剣の欠片を格に七振りの剣として複製が造られ、それはカトリック、プロテスタント、正教会の三つの教会でそれぞれ二本ずつ管理され、最後の一振りは行方不明となったとされている。
「それにしても、そんな物を奪うなんて一体誰が?」
「それについては両方とも情報が来ていない。流石にそれを知られたら依頼を断られる。そう考えるべき大物か……」
持ち主の天界だけでなく堕天使からの依頼も四季の元に入っている。その情報から考えて、奪った犯人は堕天使側。確実に戦争に対する火種になりそうなマネをする様な堕天使は過激派の大物……。堕天使側の情報から推測すると一人しか浮かばない。
「……多分、『コカビエル』って奴だろうな」
「っ!? 嘘でしょ、そんな大物が!?」
「流石にオレの考えすぎ……で有って欲しいな」
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