戦国異伝
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第百九十話 龍王山の戦いその十一
毛利家の軍勢は兵を収めそのうえでだった。
夜になるとその闇に紛れて退いていった、それを見てだった。
信長は全軍にだ、すぐにこう告げた。
「勝鬨を挙げよ、しかしじゃ」
「追うことはですか」
「それはですか」
「うむ、せむ」
それはというのだ。
「かなり戦った、それでな」
「では、ですか」
「次ですな」
「次の戦で」
「決めるぞ」
毛利との戦自体をというのだ。
「よいな」
「では殿」
明智が信長に言って来た。
「高松城へ」
「うむ、行くぞ」
「あの城は。お言葉ですが」
「力攻めはじゃな」
「半兵衛殿も仰っていますが」
彼もまた思うというのだ。
「あの城は力攻めでは」
「陥とそうとすればな」
「この大軍でもです」
二十万のこの軍勢でもというのだ。
「大きな損害を出します」
「そうなるのう」
「しかもです」
それに加えて、と言うのだ。明智はさらに言う。
「悪戯に時を失います」
「さすればな」
「東国もそろそろ」
明智もこのことを念頭に入れて考えている、これは織田家の家臣の者なら誰もがそうなっている。今は。
「怪しくなってきておりますので」
「迂闊に時を失えばな」
「攻められます」
「わかっておる、だからな」
それでだとだ、信長は明智に応えてからだった。
竹中に顔を向けてだ、こう言った。
「では半兵衛」
「はっ」
「このまま高松城に進む」
「そしてですな」
「策はあるな」
「あの城についても知っております」
それ故にというのだ。
「策を出させてもらいます」
「では頼むぞ」
「そしてその策で」
どうするかとだ、竹中は信長に語る。
「あの城を攻め」
「そうしてじゃな」
「毛利との戦を終わらせましょう」
「わしは毛利を滅ぼすつもりはない」
信長もだ、この考えはなかった。
「毛利家の人材も欲しい、特にな」
「特にとは」
「あのご老人じゃ」
にやりと笑っての言葉だった。
「元就公じゃ」
「毛利元就殿ですか」
「あの御仁の智が欲しい」
それ故にというのだ。
「そして三人の子息も他の人材もな」
「毛利家の全ての人材をですか」
「わしは欲しい、わしは強欲じゃからな」
笑ってこうも言った信長だった。
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