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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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閑話 お養父さん、怒る


別名・イカリのいじめ事件
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閑話 お養父さん、怒る







◇◆◇イカリ◇◆◇








バシャッ



気がつけば上空から落とされたバケツと、その中に入っていた汚水を被っていた

次の授業の話をしていたヒナタが顔面蒼白になってハンカチを差し出してきた


「イ、イカリちゃん! 大丈夫・・・!?」


「平気
 ヒーちゃんにはかからなかった?」


あのまま歩き続けていたら、きっとヒナタに掛かってしまっていた事だろう

避けなくて良かった

どうやらヒナタには雫の一滴もかかっていないようで安心した


上を見上げれば、人影はすでになく・・・だが気配は今もある

・・・窓から身を隠しただけか


追い掛けて吊るしあげるのは簡単だ

だけど

女子にそんなことして良いものだろうか

男子と違って真っ向からケンカするわけにもいかない

それに原因が原因だ

ケンカをしてどちらが勝っても負けても、また新たな人が私に攻撃してくるだろう


「え・・・ちょ、イカリ大丈夫か!?」


びちょびちょになった私を見つけたコンが、狐火を出して温めてくれる

ありがたい

しかし汚水を被ったのだから、まずはシャワーでも浴びたいところだ

コンは先生に言ってくるといって、私達を保健室に向かわせた

小さな体で足早に走るコンが、今にも転びそうで不安だった



「イカリちゃん・・・もう先生に言うしかないよ・・・」



確かに最近になってエスカレートした行為の数々・・・

私が黙っているのを良いことに周囲にまで被害が及んでいる


演習中、事故に見せかけて飛んでくるクナイ

もう少しでペアを組んでいたイノに当たるところだった


男女合同演習でも、キバとナルトと組んでいた時、ナルトの荷物にまで墨汁を零されていた

ナルトは何もしていないというのに


最近ではコンにまでも、被害が及んでいる

吐血して倒れたコンを保健室に運びもせず、教師にも知らせず放置した女子グループ


彼女たちが立ち去ってから春野サクラが保健室に運んでくれたから良かったものの・・・


命にかかわることをどうしてそんな風に笑ってられるのか


私一人が抗議したところで彼女たちの行為をエスカレートさせるのは、編入初期で身に染みた


ヒナタの言ったように、イルカ先生に助けを求めるか

しかし、それでは解決しないように思える


シュロから女子のいじめにはどう対応すればいいのか聞いたこともあるけれど・・・

”いじめられたことがないから分かんない”としか返って来なかった



・・・女子のいじめって、どうすればいいですか・・・



元々、いじめっ子グループは春野サクラを苛めていた

しかし山中イノとの出会いにより、イノ率いる主流グループがサクラを護衛し、いじめっ子達を跳ね除けるようになった

ヒナタは旧家出身、そのなかでも有名な日向家ということもあって、敵に回すと不味いと察知しいじめの対象にはなっていない

むしろ将来甘い蜜を吸おうとおべっかを使ってくる始末


いじめられっ子たるサクラがいじめの対象から抜けたことにより、彼女たちはフラストレーションがたまっていた

そんな中編入してきた私

元霧隠れの戦災孤児、血の繋がらない家族、思想の違い、スパイ疑惑


いじめの材料は大量にあった


かくして私に、サクラの代わりにいじめられるという悲劇が襲った


極めつけは、男子クラスから流れてきたある噂



———うちはサスケは、志村イカリのことが好きらしい———



くのいちクラスから絶大な人気を誇るうちはサスケ

殆ど接触を持たなかったはずなのに、何故かそのような噂が湧きでた


その噂が流れ出していじめはエスカレートし・・・今に至る


呼び出されてサスケに近寄るなと何度言われたことか

話し掛けてすらいない


シュロと一緒にいるときに、奴の方から声をかけてくるだけだ

あいさつされたらし返すのが常識だろうに

それすらも彼女たちは嫉妬する


本当、どうにかならないものか


水を被り、精神的に落ち込んだ私は早退を決め、自宅に帰る


珍しく縁側で茶を啜っている養父と遭遇

アカデミーが終わる時間でもないのに帰宅した私に目を丸くしている


「・・・早退したのか?」


「はい
 少し気分が優れなくて・・・」


見え見えの仮病だ

それでも心配そうに声をかけてくださる


「風邪か?」


そう聞かれれば心が痛む

言いたいことは山ほどあるけれど、言って何になると言うのか

沈み込む心を無理やり浮上させて、明るく装う


「いえ、大丈夫です
 ・・・念のため、早めに休ませていただきます」


・・・顔を合わせるのがつらい

シャワーを浴びて、足早に自室へ戻り布団にもぐった



その時、私は知らなかったのだ

養父の行動を

何も気づかれていないと思っていたのだ

ある程度監視が付いていることは知っていたのに、養父に報告されているということが思い浮かばなかったのだ


全て、後からコンによって知らされたこと






その日から私は————









◇◆◇コン◇◆◇



女子のいじめって怖い

そう思っていたけれど、そんな思いなんか比じゃないほど・・・恐ろしいものを見た

激怒した親の姿ほど、恐ろしいものはない







イカリへのあまりの仕打ちに抗議しようとヒナタと2人、話し合った

いじめっ子グループが溜まり場としている空き教室に乗り込みに行く


オレとヒナタだけだけど、それでも言わなきゃと思った

そもそも今授業中だからな

堂々と教室でサボるとは・・・その度胸が妬ましい・・・



イカリが早退するほど気に病んでいる

なんとかしなきゃ、でもどうすればいいか分からない

そんなオレ達が話しあって決めた答え———それが抗議


何もしないよりマシだ


そんな思いで一歩一歩グループへ踏み出す


「えー何よあんた達ぃ」

「うっわ、病気男までいんじゃん
 キモーイ」

「マジだるいわー
 根暗と病気がうつるからさー、どっか行ってくんなーい?」


・・・心が、折れそうです・・・

あれ、こんな奴ら木の葉にいていいの?

お前ら絶対現代社会にいるべき人間だろ

つーか伝染らないよ常識で考えろ


あぁでも、こんな奴ら高校でいたな・・・

どうしてこういう奴らって揃いも揃って微妙な不細工ばっかりなんだろう


化粧したら化ける系の不細工ってブスって言うに云えないから辛い


「あの・・・イカリちゃんに水かけたの、貴方たちでしょう?」


ヒナタ・・・お前って奴はなんて良い子なんだ・・・

こんな奴等にも怯まず戦えるなんて・・・


「えーなにそれー言いがかりー?」


「白眼で、見たよ!
 それに前からああいうことしてるのが貴方達だって、知ってる・・・!」

「あのさ、お前らいい加減にしたら?
 イカリはいっつもサスケのこと、なんとも思ってないって言ってるだろ」


「はぁ?マジむかつくし
 つーかサスケ君のことなんとも思ってないとかー」

「「ありえないー」」


・・・こいつらやだ・・・


「ありえないのはお前らの思考回路の方だから
 正直サスケって顔だけだし」


正直歳とったらモテるのはシカマルとかシノのほうだから

サスケはそのうちナルシストはちょっと・・・ってなっちゃう立ち位置だから!


「うっわ、不細工がなんか言ってるんですけどー」

「チビで病気で不細工って、マジ終わってるー
 サスケ君に僻んでるんじゃないのー?」


・・・オレの脳みそがおかしくなりそう


「つーか志村ってーシュロ君にもなんか言い寄ってるじゃんー?
 気に入らないしー」


・・・!

ピンときた

ヒナタと顔を見合わせる

そうか、原因はサスケだけじゃなくてシュロにもあったか・・・

つーかこのじゃんじゃん女、シュロのこと好きなのか・・・


「シュロは性格ブスは嫌いだぞ」

「うっさいわねチビ!」


・・・真っ当なアドバイスだったと思うんだけど・・・


「とにかく・・・!イカリちゃんにこれ以上ちょっかい出さないで! 
 仮にも忍者を目指す人間がして良いことじゃ・・・ううん
 人として、して良いことじゃないよ・・・!」


・・・・・・


ヒナタが思わず怒鳴り、一瞬静けさが襲う

直後、いじめっ子共は腹を抱えて笑いだした


「うける!マジうける!何それ、根暗のわりにツボ押さえてる・・・!」


「ムキになって怒鳴ってやがんのー!
 うっわ、もう一回聴きたいっ」


「つーかうちら、別に忍者なろうと思ってないしー」


・・・ん?


「・・・なんでアカデミー来てんだよ」



「えーうちの親が行っとけっていうからー」

「普通のガッコよりぃ かっこいい子多いんだよねー」

「なんかアカデミーの方が、頭よさげ?みたいな?」


・・・ふざけてんのかコイツラ

揃いも揃って馬鹿ばかり、救いもねえバカしかいねえのか

ヒナタもオレも、忍者に成りたいという心を踏みにじられ、怒りしか湧いてこない

あのヒナタまでもが拳を握りしめて、血を流しているのだ

忍者として今まで続いて来た家を、侮辱しているのだこいつ等は


・・・ふざけるな


ヒナタと目を合わせて、構えた

アカデミーで習う基礎の体術の構え

その意味を理解したグループは途端に顔色が変わった


此方くのいちクラス五指に入る体術使い、ヒナタ

彼方短期なら男子No2のシュロと打ちあえるこのオレ


サボリ常習犯の問題児女子グループ、言わずもがな、成績は最下位・・・


実技なんて汚れるからしないとか言いだす輩ども

瞬時に力の差を感じ取ったのか慌て始めた


問答無用、このまま引き下がれるか

大人げないとは思いつつも、こいつらは忍びになりたいと思って入学した奴全てを侮辱した

許してなるものか!








飛びだそうとした瞬間、轟音を立てて教室の引き戸が開け放たれた










「ならば即刻アカデミーより立ち去れ!!」













数人の教師を引き連れて乱入してきたのは、1人の老人

オレはこいつを知っている

原作の登場人物で、俗に言う嫌われ者に分類する男・・・


志村、ダンゾウ・・・・!


「イ、イカリちゃんの、お養父さん・・・!」


そして何故かイカリの養父

教師たちは皆怒っている

・・・ならばって、もしかして・・・話最初から聞いてた?


今まで怒鳴られたこともないのだろうか

ダンゾウの一喝で涙目になったいじめっ子共

泣きながら教師に助けを求めようとしている・・・が、教師から一枚の書類を突き付けられた


ちらっと見えたその書類には、確かに”退学”の文字が見えた




・・・




・・・・・・その書類を突き付けられた女子は教師に引きずられて教室を後にする




1人の教師——たしか教頭クラスの偉いさん——がダンゾウに深深と頭を下げ陳謝




その後のことは、ほとんど呆然としていたオレ達を置いて話が進んで行った




・忍者になる気がないと公言したこと

・サボリの常習犯で進級も出来ないほど授業を受けていないこと

・いじめの被害を受けていた者がイカリ以外にも下級生にまで及んでいたこと

・そもそも、親が入学してからアカデミーに納める教育費を支払っていないこと



その他諸々の理由から、翌日いじめっ子グループはアカデミーより姿を消した

・・・命まで、消されてないよな・・・?


ダンゾウが、ほかの教師までもが激怒していた理由

忍者いや、アカデミーの存在意義そのものを侮辱されたと感じたからだった

原作でも、やり方はどうあれ、木の葉のためを思って行動していたダンゾウだ

未来を担う若手に、あんな奴らがいたら激怒せざるを得ないだろう


やる気すらないのなら”忍者学校”に通う資格はない


その後彼女たちがどうなったかは知らないが、分かったことがある



イカリはもう苛められないということ


オレは、本気で忍者になりたいのだと、再確認できたこと


・・・志村ダンゾウが、意外と養女を気にかけていたこと





その日からオレは———














「「志村ダンゾウが好きになった」」















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・・・中学のとき、実際こういう女子が、私とは別のクラスにいたらしい


同窓会でネタにされていたのを思い出して書いてみました

気分が悪くなった方、ゴメンナサイ
 
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