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戦国異伝

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第百九十話 龍王山の戦いその五

「そうしようぞ」
「まずは懸命に戦いますか」
「ここは」
「既に武具は貰っておる」 
 織田家からだ、宇喜多家も織田家に入ったからだ。
「鉄砲も長槍もな」
「弓矢もですな」
「全て」
「うむ、しかしな」
 宇喜多はその織田家から貰った長槍を見た、その普段の倍はある長さの槍を見てそのうえで言うのだった。
「長いのう」
「ですな、とても」
「かなりの長さですな」
「これだけの長さがあれば」
「毛利の軍勢も寄せつけませぬ」
「そしてじゃ」
 そして、と言う宇喜多だった。
「鉄砲もな」
「はい、これまでは我等にも鉄砲を使える者はいましたが」
「何分鉄砲の数が少なく」
「それで、ですな」
「とても使うまでいきませんでしたが」
「しかし多くの鉄砲を頂いた」
 その信長からだ。
「これだけのものがあるからな」
「だからですな」
「この鉄砲も使い、ですな」
「戦いましょうぞ」
「殿のご命があるまで」
「うむ、そうしようぞ」
 宇喜多は己の家臣達の言葉に頷き先陣を務めることになった、そのうえで毛利の軍勢に向かって前を進む。
 元就は山の本陣から彼等を見た、そしてまずはこう言った。
「ふむ、先陣は」
「はい、宇喜多の家紋です」
「宇喜多家が先陣です」
「宇喜多直家は家督を譲り出家したと聞いておる」
 元就は静かな声で述べた。
「だとすれば率いておるのはな」
「その家督を譲られた」
「そうじゃ、息子の宇喜多秀家じゃ」
 その彼だというのだ。
「あの者が先陣を率いておる」
「確かあの者は元服したばかり」
 隆景がこのことを言う。
「ですから戦の経験も少ない筈です」
「初陣は済ませておるがな」
 元就はこのことは知っていた。
「しかしな」
「確かに戦の経験は少ないですな」
「その通りじゃ、じゃが」
「その筋はですか」
「うむ、よい」
 だからだというのだ。
「迂闊に戦えぬ相手じゃ」
「侮ることはですな」
「できぬ、だからな」
 それでだというのだ。
「ここは慎重に攻めるぞ」
「父上が話された通り」
「その様に」
「そうじゃ、わしが自ら采配を執る」
「刀と刀が打ち合う場に出て」
「そうされますか」
「そうでもしなければじゃ」
 到底、というのだ。
「負けるといってもじゃ」
「毛利の武門の意地が見せられぬ」
「それ故に」
「織田信長も来ておるのじゃ」
 それならば余計にだった。 
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