戦国異伝
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第百九十話 龍王山の戦いその四
「攻めるにしてもな」
「迂闊に攻められませぬか」
隆元が言ってきた。
「だからこそですか」
「山に入りな」
そしてそこを陣として、というのだ。
「攻める、よいな」
「わかりました、それでは」
隆元が応えてだった、毛利の軍勢は足を速め織田軍より前に龍王山に入った、彼等が入ってからだった。
信長は本陣で報を受けてだ、将兵達に言った。
「ではじゃ」
「はい、攻めますか」
「その毛利の軍勢を」
「いや、攻めはせぬ」
それはしないというのだ。
「受ける、あちらまで行ってな」
「敵の攻めをですか」
「あえて受けてですか」
「そうして戦われるのですか」
「この度は」
「そうじゃ」
まさにだ、そうすると言うのだった。
「それでいくぞ」
「ですか、それでは」
「そうして戦いですか」
「この戦に勝ちますか」
「その様にして」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「ではよいな」
「はい、それでは」
「そうして」
「殿、その戦の仕方ですが」
明智が言うのだった。
「おそらく毛利は必死に来ますので」
「その五万の軍勢でじゃな」
「迂闊に戦えば負けはしませぬが」
「多くの兵を失うな」
「はい、ですから」
それでだというのだ。
「疲れた兵を下がらせ」
「そうしてじゃな」
「はい、新手を前に出して」
「丁渡朝倉氏と戦った時の様にじゃな」
「そうです」
あの朝倉宗滴との戦の時と同じくというのだ。
「宇喜多殿の軍勢が疲れましたら」
「下がらせてな」
「新手を出し」
「それを繰り返してじゃな」
「戦うべきかと思いますが」
「その通りじゃな」
信長も言うのだった。
「それではな」
「はい、それでは」
「数は力じゃ」
信長がいつも戦でも政でも頭の中に入れていることだ、これがあってこそ敵に対して勝てる第一歩だというのだ。
それでだ、明智のその言葉を入れてだった。
そのうえでだ、龍王山の方に進む。すると。
緑の山の中にだ、見えにくいがだった。
「毛利の軍勢じゃな」
「はい」
「あの者達が布陣していますな」
先陣を率いる宇喜多秀家にだ、宇喜多家の家臣達が答える。
「その数五万」
「それだけいますな」
「うむ、斥候の報通りじゃ」
まさにというのだ。
「それではな」
「はい、では」
「我等は」
「殿のお言葉通りじゃ」
信長のそれに従いというのだ。
「我等は毛利の攻めを受けてじゃ」
「そうして、ですな」
「殿の命があれば」
「下がる」
そうするというのだ。
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