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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  八十八話 鉄火場

 
前書き
はい、どうも鳩麦です!!

ふぅ、というわけで今回からGGOでの行動開始となります。
銃と硝煙のにおいにまみれた世界の冒険。お楽しみください!

では、どうぞ!! 

 
「さってと……どうすっかねぇ……」
リョウは迷っていた。
選択を……では無い。人生に……でも無い。
最も一般人が陥りやすく、おそらく人生で一度は迷うであろう物……道にだ。

「そもそもブリッジってどっちだっつーの」
今回の任務の主要目的は、このGGOのどこかに居る筈の《死銃》に接触、後、彼の銃撃によるリアルプレイヤー死亡のメカニズムに関する調査だが、そのためにはまず、死銃と接触しなければ話にならない。そのために、和人は涼人にある提案を持ちかけて来た。
BoB(バレッド・オブ・バレッツ)と言うこのGGOにおける最強プレイヤー決定戦に参加し、上位に……あわよくば優勝する事で、全力で目立とうと言うのである。
死銃が銃撃しているのは全員がトッププレイヤー。つまりこの世界の最強に近付いてみれば、死銃自ら此方に注目し、アプローチしてくるだろう。と言う算段らしかった。あわよくば、死銃本人が、その大会に参加しているかもしれない。とも。

まぁ実際の所、その計画はほぼ間違いなく破綻するだろう。とリョウは踏んでいた。
BoB予選の開催日は今日だ。その日にダイブしたゲームでその日の内に装備を整えその日の内にトッププレイヤーの内に(あるいはそれを目指す物たちの中に)もぐりこんで戦りあおう等、正気の沙汰ではない。
大体、参加云々以前に初期金額の1000クレジットごときで装備を整えることすら出来るか疑問なのだ。大会など夢のまた夢だろう。

「おまけに……エントリーへの道まで見失ったと来たもんだ。こりゃもう、てっとり早く死銃に会うのは諦めた方が良い感じかもな……」
一応、今日一日に限ってはキリトの気まぐれに付き合うつもりで居た。それ以外にする事は思いつかなかったし、現実性云々は別として、確かに的を得ていると言えなくも無い案だったからだ。
と言うわけで先ずは互いに装備を整えることから始めようと、不盾に分かれて武器屋を探して……入り組んだ地形のせいで見事に迷った。

「路地にゃ入るもんじゃ無かったか……」
裏通りの方が面白いものが有りそうな気がして、路地に入った結果がこれだ。勘弁してほしい物である。と、歩き続けた細い道の先に、ほんの少し広めの道が見えた。

「おっ、救いの光?」
大した期待もせずにその通りに出る。案の定大通りに続きそうな物ではなく、本当に少し大きいだけの人通りの無い裏通りが続いているだけだった。

「やれやれ……んん?」
と、リョウの視界にやたらと派手な建物が映った。
こんな人気の無い通りだと言うのに、その店はまた凄まじいネオンライトの看板を掲げて、そこにはcasinoと書かれている。

「ふーん……マジであんのな」
このゲーム、GGOには、通貨還元システム。と言うのが有る。
ゲーム内通過を現実の通貨に。あるいは現実の通貨をゲーム内の通貨に変換し、プレイヤーが得ることが出来るシステムである。
このゲームが日本でも有名な点は、このシステムを利用して、ゲーム内で金を稼いでその稼ぎで日々の生活を営む……所謂、「プロ」の存在が有るからだ。
そしてその魅力を利用した物として、ゲーム内には巨大カジノが有ったりする。法律的には民営賭博と余りそん色ないため限りなくグレーだが、このゲームを運営する《ザスカー》と言う会社はアメリカに本社を置く会社で、そのためか一応日本の警察の目を逃れていたりするらしい。

目の前にあるのは、そんな法律逃れ(アウトロー)の一角かと、ボーっと考えつつ、リョウはふと思いついた。

「……」
メニュー画面を開くと、その端に自分の持ち金が表示されている。勿論数は1000クレジット。バリバリの初期金額だ。

「……いっちょやりますか」
どちらにせよ、明日からは金も稼がねばならない。まぁ、此処でスッたとしても、初期装備にはナイフの一本もあるわけで、なんとかなるだろう。

「博打は男の生き様だ!……ってな」
そんなことを呟きながら、リョウは店の中へと入って行った……

────

「……はぁ……」
「No……NOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」
リョウは困っていた。……何にかと言うと、現在の状況にである。

カジノの中は、まぁ案の定というかリョウの他には客は一人しかいなかった。リョウは何となくNPCとの1VS1(サシ)ポーカーをしていた。このゲームは簡単に言うと、勝てば勝つほど自分の金が増え、そしてどんどん強い相手と戦う羽目になる。と言うタイプの物でリョウはためしに限界挑戦をしてみようと、やめるかに中の選択値を延々Yes選択し続けた。NPC相手なら、いくら自分が掛け事に強いとはいってもいずれ負けるだろうと踏んでいたのである。
しかし実際は全く敗北することなく、結局50連勝近く勝ち続け……

『そもそも彼奴らとやってても全然負けねぇ時点でなんかおかしいと思うべきだったんだよな……』
思えば和人や直葉、中学の事の同級生達とこんな感じのゲームをした時も、自分は殆ど負けたことが無かった。思えばそれは本来ならあり得ないことだったのだ。確率的に。
つまり……どうやら自分は、とんでも無く賭け事が強いらしい。それで稼ごうとは思わないが、まさかこんな才能があったとは……自分でも知らなかった。

「リアルラック高すぎだって言われるわけだ……」
キリトに良く言われた文句をおもいだして、リョウは苦笑しながら目の前で英単語で《無い》を意味する一文字(二文字?)をやたら喚きまくっているギャングのボスっぽい太ったおっさんの顔を見やる。その時だった。

「うっわぁ!!すっごいね君!!」
「おうっ!?」
突然、真後ろから声がしてリョウはビクリとしながら振り返る。見ると、先程から居た自分を覗いた唯一人の客らしき女が、此方のテーブルを覗き込んでいた。銀色の髪をショートカットにした小顔から覗く紅い眼は驚いたように見開かれ、けれどもなんともキラキラとした光を内包している。

「ストレートフラッシュとファイブカードなんて……こんな勝負始めてみた!実力で!?」
やたら興味深々に聞いてくる女にリョウは一瞬引いたが、しかしすぐに気を取り直す。

「少なくとも自分では、チートコードを使った記憶はねぇな……」
「だとしたら凄いリアルラックだよ!って、あれ?なんだろ、これ」
そう言うと、何やら《無い》以外の言葉を喚き散らしたふとったNPCの台詞の後で、リョウの前に選択肢が出現していた。ご丁寧にそこにはNPCが喚いたであろう言葉が乗っている。
英語で書かれたそれは、簡単に訳すると、「テメェイカサマしやがったな!?」と言った感じの、いかにもな台詞が並んでいた。当然、していないのでNOを押す。すると何やら口汚い台詞をそのNPCがさんざんわめき散らし、その後……

「はぁっ!?」
「っ!」
どたどたと足音を立てながら、奥の扉から黒服の男達が次々に飛び出してきた。無意識に確認したその数は十。彼等の手には一様に……黒い鉄で出来ているであろう部分と、所々恐らく木製であろうオレンジ色の部分を持つ姿の下部に曲線を描いたマガジンの付いた、一目で銃と分かる物体を持っている。確か名前はAKとか言った気が……

「ちょ、ま、おいおいおい……!」
「何してるの!来てっ!」
「うおっ!?」
彼らが並びきるよりにも前に、隣の女がリョウの手を引っ張って正気に戻す、とにかくヤバい状況なのは確認せずとも分かった為にリョウはそれに従い……

「そこに飛び込んでっ!!」
「うおおおっ!!?」
「fire!!!」
言われるままに目の前に会ったバーカウンターに転がり込んだ。次の瞬間……

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッ!!!!!と言う凄まじい破裂音と共に、リョウ達の前斜め上に会ったバー用だろう酒瓶が次々に砕け散り、その中身をぶちまけて、ガラス片が飛び散り、木片がばらばらと跳ねまわって所々の金属部に当たった弾丸がチューン!と高い音を立てながら火花を散らした。
反射的に、飛びこんだカウンターの方に背を思い切り押しつけて車線に入らないようにする。
隣では、同じ体制で先程の女が座り込んでいた。

「うっわ……カジノってこんなイベントあったんだ……」
「なんなんだよ、オイ……」
同時に全く違う台詞を吐いて、リョウは頭を押さえる。
店内に居た筈のこのバーのマスターやそのほかのNPC達はとっくにどこかへと消え、カウンターの外からは絶え間なく破裂音……否、銃声とその他破砕音が響いている。
隣で女が苦笑する気配がした。

「あははは。災難だったねぇ。まさかこんなことになるなんて思ってなかった?」
「そりゃなぁ……おれ今日GGO初日なんだ。それなりにやってそうなアンタがしらねぇなら、俺も知るわけねぇわな」
「あはははっ!そっか、だからそんな何も装備して無いんだ。リアルラックが有ったのにこんななんて、運良いのか悪いのか分かん無いね」
「全くだ。是非とも神って奴に直訴してみたいね。そんで……」
軽く愚痴を言って少し落ち着いたところでリョウは問う。

「この状況、巻きこんじまった事はすまねぇ。破れかぶれでカジノなんか入った俺のミスだし、後で必ず詫びる。けど、正直ルーキーにもなってねぇ俺じゃあこの状況を収集できそうにねぇんだ……だから……」
「この状況を収集する方法を教えてほしい?」
「……悪い。頼めるか?」
そう言って彼女の方を見ると、彼女は一度クスリと笑った後に先程と同じくニコリと笑った。

「此処でNPCにキルされるのは私もやだもん。良いよ。そのかわり、このイベント終ったら、ちゃんとなんかおごってね?」
「……おうっ!」
そう言ってニヤリと笑い、リョウは大きく頷く。それに答えるように彼女も頷き……ふと、思い出したように首をかしげた。

「そう言えば、男の子みたいな話し方だね?女の子だよね?」
「…………すまん。男だ。俺」
彼女は少しの間、ぽかんと口を開けていた。

────

「…………」
「おい、ちょい?」
口を開けたまま固まる彼女の前でぷらぷらと手を振り、首をかしげながら聞くと、彼女ははっとしたようにブンブンと首を左右に振る。

「あ、うん。大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから……」
「あー、ん、自然な反応だな。アンタまともだ」
「あははは……」
乾いた笑い声を洩らす彼女に、涼人ははぁ……と溜息をつく。その音もまた、銃撃の音にかき消されたが……と言うかいつまで撃たれるのだろうか。

「さてと……で、どうするのが良いか、指示願えるか?」
「オッケー。じゃ、脱出か殲滅か、どっちかだね。まあこのカジノ、私達が入って来た出入り口以外は多分開かないし、試そうにもあのNPCに他の扉塞がれちゃってるから、殲滅しか選択肢は無いかなぁ……」
「さいで……」
今もなお銃声は店内に響き続けており、時折そのなかにおそらくはあのデブNPCの物であろう下品な笑い声が響いている。そんな中、彼女はアイテムストレージを取り出すと幾つかの部分をト、トンッとタッチする。
途端に、彼女の腰に一丁のSMGと、何やら円柱状の物体が現れた。

「……なんだ?それ」
「うん?私の武装だよ。こっちがMP7で、こっちはライトセーバー」
そう言って、彼女は左にSMGことMP7。右にライトセーバーこと円柱状の何かを持つ。

「って、ライトセーバーってマジか?そんなんあんの?」
「え?あぁ。あはは。この世界じゃ凄くピーキーだけどね。それより、あんまり暇は無くなったかも……」
「あ?あぁ……」
気付くと、銃声がやんでいた。おそらくはすぐに、カウンター外のの黒服達が此方に接近してくるのだろう。

「私が飛び出すから、これ使って援護して」
「ん、っと……」
手渡されたのは、どちらかと言うと、四角っぽいフォルムの黒い軽機関銃だった。銃身が短く、これにも曲線型のマガジンが付いていて、なんかどっかの映画で見た気がする。

「MP5Kって銃。セーフティーは外してあるから、じゃ、行くよ……!ってそだ、名前……」
彼女がそう言った、その時だった。

──ピンっ……──

「っ!やべっ!!」
「え!?ちょと!」
聞き耳のスキルを鍛えていたリョウが、行き成り立ち上がった。と、次の瞬間……

『マジかよ……!?』
リョウは見た。飛び出した瞬間に、一斉に此方に銃を向けようとする左右に居る前に出た二人の黒服と……その間を縫うように既にリョウの眼前まで迫った、パイナップルのような形の丸い球を。

「っの、やろぉ!!」
反射的に、リョウは思いっきり何も持っていない右腕を振る。そうしてそれで、飛んできた灰色のパイナップルを……殴った。

「っと!」
「え、え!?」
隠れたリョウに、女が驚いたように目を向く。その瞬間。

ドガァン!!!!

「っ!」
凄まじい破裂音と共に、カウンターの向こう側で爆風が駆け抜けたのが分かった。その音を聞いた瞬間に彼女も理解したらしく、カウンターから飛び出す。


「ふっ!」
乗り越えたカウンターから着地した瞬間、まだ爆発によって起こった煙で前の見えない中に、彼女は突っ込んだ。右手に持つ円柱状の物体の突起をカチリと音を立てて押し込むと、円柱の先端から頼もしい相棒が姿を現す。先端の丸い、大体一メートル強の長さを持った光の刃だ。これは本来は《フォトンソード》と呼ばれる近接戦闘用装備で、斬りつければコンバットナイフを遥かに超えるリーチと威力を持つ彼女のメイン武装の一つだ。とはいっても、先程も言った通りこの世界ではかなりピーキーな装備であると言える。理由は……言わずとも察していただきたい。

自分でも自信のある突撃で土煙を抜け、敵の姿が見える、黒服は突如突貫してきた自分に驚いたのか銃を構えようと此方を向くが、遅すぎる!

「やっ!」
狙うは並んでいる中で左端に居る黒服だ。ブラックジャックに使う筈の台を踏みつけて跳躍。相手が此方に銃口を向けるよりも前に、一気に接近しきると……

「りゃぁぁ!」
一閃。黒服の右腕から左わき腹を、真っ二つに切り裂く。それを確認もせずに着地した姿勢のまま脇の下を通して左手のMP7を右に向ける。
パパパパパンッ!と言う音とともにかなり軽いリコイルショックが腕に伝わる。フルオートで放たれた十発の4.6x30mm弾が、彼女の右横で銃を構えていた黒服に当たり、体をはねさせながら黒服はもんどりうって後ろに倒れる。装てんされている弾丸は40発。残弾は十分にある。と、その奥に更に二人の黒服が自分にAKを向けているのに気付き、彼女は舌打ちして、バックステップ。射線から離れようとするが、そこで気付いた。黒服達に赤い光の線が当たっている。あれは……

考え切るよりも前に、タララララララララララッ!ッと言う殆ど途切れの無いフルオートの射撃音が聞こえ、横から黒服達に弾丸がぶち当たる。二人をいっぺんに撃ったせいか彼等は怯んだだけで倒れないが、その隙を逃すまじとばかりにMP7を向ける。間髪いれずに引き金を引いて、そのまま彼等は倒れた。

「ナイスアシスト!!」
自分でも自覚できる程に楽しげに笑いながら、彼女は相変わらずキーの高い自分の声で叫ぶ。

「どうも!」
バーカウンターから顔を出していた女性のような顔立ちの青年は、ニヤリと笑うと片手で持ったMP5の銃口を上に向けて溜息。が、その彼を、突然何本もの赤い光の線が貫く。

「っ!その光の線避けて!!」
言いながら、自分の方へも向いて居た赤い光を避けるために、近くにあったルーレットの台の裏へと飛び込む。

「は?うおおおぉぉっっ!!!?」
直後、ドガガガガガガガガガガガガガガッッ!!と言う彼女達の物と比べると幾分か重めの銃声が鳴り響き、バーカウンターと青年が居た部分を蜂の巣にする。幸い、寸前で青年は頭を引っ込めたため何を逃れたようだった。

あの赤い光は、《弾道予測線(バレッド・ライン)》と言うこの世界における守備的システムアシストだ。攻撃側に、自信の心音に反応して着弾地点の収縮、拡大を繰り返す攻撃用システムアシスト。《着弾予測円(バレッド・サークル)》が有るのに対し、この線は、自身に対して攻撃を行う弾丸やレーザーの描く軌道が前もって表示されるシステムである。これのお陰で、度胸と反射神経さえあれば、フルオート射撃でも人によってはかなり回避できる。

「にゃろっ!」
と、青年がカウンターからMP5を腕だけで出して反撃を試みているのが見えた。数発が黒服に命中するが、それだけでは流石に怯まない。
それどころか……

──カチッ、カチッ……!──

「ちょっ……!?弾切れかよっ!?ちょっと!予備弾倉は!?」
「ごめーん!出してる暇なーい!!」
「ちょおおおお!」
悲痛な声に苦笑しつつ、彼女はこの場を切り抜ける策を考える。

「しょうがない!」
流石に中途半端にMP7で射撃しても切り抜けることは難しそうだ。此処は……

「一か八か!」
そう言うと、彼女は懐から細い空き缶のような物体を取り出す。ピンを抜いて……

「君っ!!伏せて耳ふさいで!!」
「は!?ちょっ!?」
スロットの向こう側に向かって、重いっ気に投げた。数秒後……

バンッ!!!!

と言う音とともに、システム上に設定された強烈な音と光がまき散らされた。

スタングレネード。
実在する手榴弾の一種で、殺傷能力は無いが強烈な音と光で敵勢力を撹乱するのに使われる手榴弾である。
破裂音と同時に、スロットマシンを軸にするように旋回しつつ黒服達の方へと突撃する。少し遠い距離の壁際に居る四人の黒服達はふらついたように千鳥足になっている。気絶《スタン》状態だ。この好きに、ぶった切る!!!

「はァァァっ!!」
鍛えたAGLをフルに使って二十メートル近い距離を一瞬で駆け抜け接近。左足から右足への踏み込みでライトセーバーを再び一閃。首を落とし、踏み込んだ右足を軸に左半の身を反転させて体を180度回転。伸ばした左手の先にあるMP7銃口が黒服の一人に向くや否や発砲。そのまま左足で踏ん張って回転を止め、同じく跳ね返るように左足を前に出して突進する。既に撃たれた黒服は倒れ、MP7の残弾は残り二十発。まだスタンは二秒残っている。一気に三人目の黒服へと接近。後一秒!

『六式……!』
体を思い切り前傾形にして、一気に加速。駆け抜けざまに……黒服の片腕を落とす。そのまま……

「オッ!!」
更に奥に居た一人に向かって……斜め上に向かって振り切ったブレードを……振り下ろす!!

「リャァァァッ!!」
左の肩口から斜め右へと真っ二つに切り裂かれた黒服は、そのままポリゴン片となって消えた。

────

「ふぅぅ……」
ちょっとドキドキだったな~。そう思いながら彼女は溜息をつく。
しかし……

──ゴトッ……!──

「っ!」
音に対して、反射的に振り向いた。そこに……片腕のままコンバットナイフを腰だめに構えて自分に接近する黒服が居た。
いつの間に接近されたのか、その距離は既に、一メートル近い。反射的に手に持ったブレードで迎撃しようとするが……

『間に合わな……!』
痛みは無いが、訪れるであろう衝撃に反射的に身を堅くした。その時だった。

ドガガッ!!

という聞き覚えのある連射音が短く響き、おそらくは7.62x39弾であろう弾丸が目の前の黒服を吹っ飛ばし、ポリゴン片に変えた。

「さっすが……お見事」
反射的にそちらを見ると、おそらくは初めにグレネードで吹っ飛んだ敵が落としたのであろうAKを両手で持った青年が。ニヤリと笑いながら立っていた。
無意識の内に、口元がほころぶ。

「ありがとっ!!」
それが、彼女と彼の、出会いであった。
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

いきなり戦闘シーンでしたw意図せずブラクラみたいになったなww
今回登場しました彼女、このGGOにおける重要キャラであることは、みなさん既に思い当るところと存じます。
結構元気の良いヒロインですので、みなさん彼女とともにこのGGOを楽しんでいただければ幸いですw

ではっ!
 
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