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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  八十七話 Link start to G

 
前書き
はい、どうもです!!

今回はまぁ……以前のタイトルを見てくださった皆様ならば分かるかと思われます。

GGO突入です!

あぁ、そうだ。リョウのアバターも出ますよw

では、どうぞ! 

 
前方を進む和人のバイクに続いて、涼人はハンドルを回す。病院の敷地に入った途端に和人が急激にスピードを緩めたため少々驚いたが、その理由にはすぐに知れた。敷地内を歩いて居る人々がことごとく、非難の視線を向けているためだ。
涼人の乗るワゴンタイプの軽乗用車は、なんやかんやでマニアなおっさん使用のカスタムが施してあるせいか……まぁ、まだ騒音も少ない。と言っても電気自動車主流のこの2025年に置いてはそれでもまだ煩いが……和人の乗るタイ製のオンボロバイクは、最早絶望的とも言えるほどに煩く、排気ガスがうっとおしい。直葉などはたまに後ろに乗ると必ず不満を爆発させる。

……まぁ、それも後ろに乗って和人にしがみついて居る時、彼女がどんな顔をしているか知っている涼人には微笑ましい光景にしか見えないのだが。

少し病院自体からは遠い所にある駐車場に車を乗りいれ、車を降りる。
病院の全景を見上げると、涼人は何とも言えない感慨深さと懐かしさを覚える。東京都の千代田区に在るこの都立病院に併設されたリハビリテーション・センターは、和人と涼人。二人がSAO終了後に筋力を回復するためリハビリ患者として入院した場所でもあるからだ。

「あんときゃきつかったなぁ……」
のんびりとそんな事を呟きつつ、涼人は寒空の下を歩き出す。何しろ殆ど無い筋肉を一から取り戻さなければならないのだから、まあ初めはきつかった。手すりに捕まり無理やり体を立たせたり、初めはベッドに乗るのも一苦労だったものだ。和人などは目尻に涙を浮かべて居たと思う。
まあかく言う涼人も何回か心が折れ掛けたが……互いに励ましあって、或いはからかいあって乗り越えたリハビリの日々だったことは間違いない。

「ん〜んんん〜ん〜ん〜♪」
鼻歌を歌いながらのんびりと進むと、前方に正面入り口が見えてくる。既に和人が其処に立っていて、涼人を待ちかまえている。

「遅いぞ〜、兄貴」
「バイクの方が駐車場近いんだから当たり前だ。待つのが嫌ならこっち乗りゃ良かっただろうが」
「いやだってなぁ……ほら、バイクにも慣れておきたくてさ」
「成程。ならアドバイスくれてやる。次からは後続の車両に配慮して減速するようお勧めするぜ少年」
「む……」
唸った和人にニヤリと笑いながら、涼人は「ほれ行こうぜ」と促しながら自動ドアをくぐる。

「へ〜い」
若干不満そうながら、和人も続いて入り口をくぐった。


――――

「なぁ……兄貴」
「ん〜?」
トイレを済ませ、三階まで上がるエレベーターに乗る。と、和人が不意に、ボソリと声を掛けてきた。やけに声が重たい。

「兄貴は今回の事、どう思う……?」
「どうって……死銃やらゲーム内で撃たれたら死ぬ、云々?」
「あぁ」
問い返した涼人の言葉に和人はコクリと頷いた。それを見てから、涼人は言う。

「偶然、ってのが一番確率的に高いだろ。ゲーム内で死んだら何の仕掛けもなく死にました。なんざ、量子物理学でも大脳生理学でも、つか科学ですらねえ。オカルトだぜ?」
「そう、だよな……」
言うと、和人はコンパネに向かって俯く。

「なんか心配事でもあんのか?」
「いや……」
と、エレベーターの扉が開いた。歩きながらも、和人は話す。


「兄貴さ、アインクラッドの意味って……知ってるか?」
和人の言葉に、涼人は首を傾げた。

「意味……?あぁ、あれか?茅場のおっさんが何かの雑誌で言ってた……あー、An Incarnating Radius《アン・インカーネイティング・ラディウス》、だっけか?確か意味は……」

《具現化する世界》

それが、彼らが二年の時を過ごした浮遊城の名に込められた意味だった。
茅場は、同じ雑誌で、こう語っていた。「そこでプレイヤーの皆さんは、数々の夢が現実となるのを見るでしょう。剣、怪物、迷宮、そのようなゲーム的記号の具現化に留まらず、プレイヤー自身をも変容させていくだけの力が、あの世界には存在します」と……

「確かに茅場の言うとおり、俺達《プレイヤー》はあの世界に居て……変わった。俺もアスナも……多分みんなだ。もし、もしも茅場の言ってた事をそれ以上に捉えるとするなら……有るんじゃないかと思えるんだ。プレイヤーどころか、世界すら変えて、俺達の知らない何かで……」
「VR世界から……人を殺す方法?」
繋ぐように問うた涼人の問いに、和人は小さく首を振る。

「ん〜……不安を拭う材料になるかは知らねえけど……可能性だけの話をするなら、んなもんよりもっと可能性高い説有るぜ?」
「え……なにそ「おっ!来たね桐ヶ谷兄弟!」うわっ!?」
突然和人の言葉を遮った声は、快活な女性のそれだった。涼人達の居る第三入院病棟はこの病院内では比較的人が少ない場所だが、それでも流石にその声量はどうなんだと言いたくなる声で、正面の部屋から一人の女性が顔を出していた。引っ込んだその女性に口をポカンと開けている和人を引きずって、部屋に入る。

「ちゃーっす」
「おっす!お久しぶり桐ヶ谷君達!」
「ども。安岐さんお久しぶりっす」
「お、お久しぶりです」
ニコニコと元気印なスマイルで二人を迎えたのは、長身ナース服の女性。胸についているネームプレートには、安岐(あき)という名字が書かれている。涼人と和人がこの病院に入院していた頃、リハビリの担当教官……もとい、担当看護士だった女性だ。
ちなみに、このスーパースマイル。リハビリ患者に対しては必要に応じて際限なく怖くなれるので注意が必要である。
と、そんなことを思っていると、安岐が突然涼人の肩やら脇腹やらを触り始めた。

「わとと……」
「おっ、ちゃんと食べてるみたいじゃない。上々上々。食べ過ぎてふとらないようにねー」
「はは、うぃっす」
お次は、と言った様子で和人に触れる安岐を見ながら、涼人は苦笑しつつおくにある椅子を見た。
リクライニング式の椅子に、アミュスフィアが備え付けてある。その横には……心電モニター装置が備え付けられている。自分達の心臓に何か異常が有れば、即座に安岐さんが対応してくれる訳だ。

「安全……ね」
少し苦笑してから、後ろで安岐さんとなんやかんや言っている和人に目を向ける。

「おい、美人さんとなんやこんやしてるのは良いが、さっさといかねぇと日が暮れるぞ」
「あのなぁ……」
そう言うと、涼人と和人は上半身裸になり、安岐さんに電極を張り付けてもらう。

「ちなみにこれ、寝てる間に風邪ひくとか、無いっすよね?」
「おや涼人君、君は現職のナースを何だと思ってるのかな?」
「ですよね~」
ハハハと笑って、涼人はアミュスフィアをかぶる。隣の和人もじゅんびOKだ。

「んじゃ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
スゥッと、一つ息を吸う。胸にあるのは、不安よりも高揚感。ALOに始めて行った時と同じ、新たな世界への期待と、胸の高鳴り。

「「リンク・スタート!」」
いつも通りのキーワードと共に、彼らの意識は飛び立った。

────

降り立った場所で、先ず初めに目に入ったのはオレンジ色の光だった。夕焼け空。外がまだ青空だったせいか、少しだけ違和感を感じないでもない。
そうして、周囲に目を移す。ALOとは全く違う雰囲気と、そして匂いを持った街。
背の高いコンクリートと鋼鉄の建物がそこらじゅうにそそり立ち、無数の空中回廊がそれをつなぐ。あらゆる場所から照らされるネオンの光と照明、街灯が世界をより一層明るく照らし、一見しても何が何やらさっぱりなごちゃごちゃとした街づくりは、どこか電気街の裏通りを思わせる。地面は当然、鉄板で加工されていて、歩きやすいが土の感触は感じない。道行く者たちの靴音とざわめきはBGMとなり、そんな混沌とした、しかしどこか統一性を持った世界を表す一部となる。暑苦しく、むさくるしい男達が、腰に銃をつりさげて歩いて行く。近未来的で、けれども余り秩序を感じない。そんな世界。

「へっ……良いねぇ……」
SBCグロッケン。それが、この街の名だ。

────

「すっげぇな……」
隣から声がして、涼人は隣を見る。状況から察するに、今この場に居るのは自分で無ければキリトだろう。そう思っていた。
そこに……一人の少女が居た。

「……あー、お嬢さん、どちらさま?」
透き通るように白い顔、長い黒髪、線の細い顔立ちに、色の薄い唇。
それはどう見ても……少女としか見えない。そんな美少年(?)アバターが、そこに居た。

「は?兄貴、なに言って……」
首を此方にまわしたキリト……多分、否。自分を兄貴と呼んだからにはキリトの筈だ。彼の顔が……カチンッ、と音を立てて固まった。

「?どした?」
「いや……兄貴……だよな?」
「あぁ、俺は自分の弟が美少女……つか男の娘化してて若干混乱中だが……まぁリョウコウだな……キリトだよな?」
「あ、おう……って、美少女!?」
言うと、キリトは「まさかっ!?」と言いたそうな顔で、周囲を見回し、近くのガラス窓に近寄る。

「な、なんじゃこりゃ!?」
と、男にしては若干高めの……これも十分に女で通用するであろう声がきこえ、リョウは苦笑しながらそちらへと向かう。が、その苦笑は、ガラス窓に近づいた時点でキリトと同じく固まった。
窓ガラスに映る美少女っぽいキリトの隣には、残念ながらあまり認めたくない事実が映っていたからだ。

「おいおい……」
ざっくりとしたショートカットの赤毛。中性的で一見するとボーイッシュな少女。と言った印象の顔。高い背。胸こそ無い物の、そこに映っていたのは印象だけ言わせてもらうなら、《スタイリッシュでボーイッシュなお姉さん》と言った感じの容姿に変身した……自分の姿だった。

「あー、なんつーか……Why?」


2025年12月13日 
VRMMOFPS《仮想現実多人数同時参加型ファースト・パーソン・シューティング》
GGO《ガンゲイル・オンライン》

Link start


First story 《依頼と事件の始まり》 完

 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

というわけで、ようやくGGO突入!!
FU-!FU-!!

アバターはキリトに合わせて少しガールズ的な感じで。
スタイリッシュな赤毛ショートカットのお姉さん的なのです。

強いて言うなら兄貴というより今回は姉貴な感じかなw

ではっ! 
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