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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
  第五話 フロアボスとの戦い

キリトたち御一行は運悪くリザードマンの集団に遭遇してしまい蹴散らして回廊に到達したためか安全エリアを出て三十分が経過していた。そのためか、軍のパーティーに追いつくことはできないでいた。

「ひょっとしてもうアイテムで帰っちまったんじゃねぇ?」

「いや、あの中佐殿の性格を考えるとそれはありえないな」

おどけたようなクラインの言葉にソレイユが反論した。回廊の半ばほどまで進んだとき、かすかだが悲鳴が聞こえた。その悲鳴を聞いた一行は駆け出すが敏捷力に優れたキリト、アスナ、ソレイユ、ルナがクラインたちを置き去りにして、左右に大きく開いた大扉の前に到着する。

「おい!大丈夫か!」

キリトが叫びながら半身を乗り入れる。扉の内部は地獄絵図そのものだった。HPバーを七割も残して暴れるザ・クリームアイズ。対して、軍の連中のほとんどはHPバーを赤く染めている。

「早く転移アイテムで離脱しろ!!」

ソレイユの叫び声が響く。しかし、次の瞬間絶望の表情で軍のプレイヤーが叫び返してきた。

「だめだ・・・!く・・・クリスタルが使えない!!」

「な・・・・・」

その叫びに絶句するキリトたち。そんな中コーバッツがあり得ない言葉を叫んだ。

「何を言うか・・・ッ!!我々解放軍に撤退の二文字は有り得ない!!戦え!!戦うんだ!!」

「馬鹿がっ!!」

命を顧みないコーバッツにソレイユが悪態を吐く。軍の残りメンバーを数えてみると二人足りないということが分かった。それはすなわち二人死んだに他ならない。その時、ようやくクラインたちが到着し、キリトが状況説明を行い、クラインの顔が険しくなる。一同がどうするか思案している中、コーバッツが無謀なことをする

「全員・・・突撃・・・!」

そういってHPに余裕のある八人が突撃していくが、悪魔の口から攻撃判定あるのガスが吐き出され、斬馬刀で切り飛ばされる。斬り飛ばされたのはコーバッツであった。HPバーが消滅してしまったため、その体はポリゴン化し砕け散った。リーダーを失った軍のパーティーは瓦解してしまい、逃げ惑っている。

「「だめ・・・だめよ・・・もう・・・」」

掠れた声がアスナとルナから聞こえた。その声を聴いたキリトが二人を止めようとするがその前に二人はボスめがけてつっこんでいった

「「だめーーーーーーッ!!」」

「アスナッ!」

「チッ・・・」

「どうとでもなりやがれ!!」

そういってキリト、ソレイユ、クラインたちも後を追う。アスナとルナの捨て身の一撃は、悪魔の背中に命中したが、HPの減少はほとんど見られない。グリームアイズは怒りの雄叫びとともに向き直ると、猛烈な速度で斬馬刀を振り下ろす。その余波に当てられ体勢を崩してしまう。そこへ斬馬刀が振り降ろされる。

「・・・させるかよ」

その自棄に落ち着いた声とともに斬馬刀が受け止められた。受け止めたのはソレイユ。膝をクッションに使いたいしたダメージもなく攻撃を受け止めた。そして、後ろにいる二人に向かって言った。

「頭を冷やせ。今自分にできることを考えろ」

その言葉が言い終わるとともに再び斬馬刀が振り下されてくる。今度は受け止めるのではなく刀身で滑らせ攻撃をそらせた。擦れ合う刀身から火花が散るが、そんなのお構いなしにソレイユは攻撃をそらした。その後、グリームアイズの攻撃に備えるため体勢を立て直していく。
体勢を立て直したアスナとルナ、キリト、ソレイユが悪魔の追撃に備える。すべての攻撃が致死と思えるほど圧倒的な威力で襲い掛かってくる。防御に徹している四人だがHPは徐々に削られていく。
最初こそ膠着状態となっていたが、このままではキリトたちがジリ貧で負ける。しかし、いきなりその膠着状態が破られた。悪魔の攻撃がキリトを捉えたのだ。

「ぐっ!!」

「き、キリト君!?」

HPが大幅に減少する。キリトの装備とスキル構成は攻撃特化仕様であるため一発の攻撃の直撃が命取りになるのだが、今のキリトにはそれ以外のことでの迷いのようなものが見えた。
そんなキリトを見てソレイユはルナたちに向かって叫んだ。

「ルナ、アスナ、クライン!少しの間持ちこたえてくれ!」

「難しいけど・・・わかった!!」

ソレイユの声に三人を代表してルナが答える。その答えを受けたソレイユはキリトの元まで近寄り言った。

「キリト、奥の手があるなら使え。このままじゃ全滅だ」

「・・・わかった!」

ソレイユの言葉にキリトはメニューウインドウを呼び出し、可能な限り早く操作する。
少しするとキリトの背中にはもう一本の剣が現れ、その操作をし終えるとキリトは三人に向かって叫んだ。

「いいぞ!!」

クラインは一撃くらい退いていく。アスナとルナはキリトの声に背を向けたまま頷き、突きと斬撃を繰り出す。

「イヤァァァァ!!」

「ッ!!」

残光を残す二人の一撃はグリームアイズの剣と衝突し火花を散らせる。大音響とともに両者がノックバックで距離ができ、間合いができる。

「「スイッチ!!」」

そのタイミングを逃さずキリトとソレイユが叫ぶと、正面に飛び込む。硬直から回復した悪魔が剣を大きく振りかぶる。炎の軌跡を起こしながら振り下される剣をソレイユが刀で弾き返す。予想以上の力で弾かれたため悪魔が大きく仰け反った。そこに背にある新たな剣の柄を握り、抜きざまに胴に一撃を見舞う。初めてのクリーンヒットに、悪魔のHPを大きく減少させた。

「グォォォォ!!」

仰け反りから回復した悪魔が憤怒の叫びを上げながら、上段の斬り下ろし攻撃を放とうとする。それをソレイユは切り上げ向かいうち、刃が交えるとともにボスフロアに金属音特有の甲高い音が響きあう。激しく散りあう火花。
その時、ギンッという音とともに悪魔が持っていた武器が砕けた。その信じられない光景に誰もが絶句しているとソレイユがキリトに向かって叫んだ。

「キリトッ!!」

「!!」

その声に反応して、キリトがラッシュを開始する。

「うおおおおおおあああ!!」

キリトの二刀が流れる星のように次々と攻撃を繰り出していく。ソレイユはラッシュに参加せず抜刀の構えでひたすら待ち続けている。甲高い効果音が立て続けに唸り、星屑のように飛び散る白光が空間を灼く。そして、キリトの隠し技、エクストラスキル≪二刀流≫の上位剣技≪スターバースト・ストリーム≫の連続十六連撃が終わる。それでも体力を削りきることは不可能だった。
そこへソレイユがキリトに向かって再び叫ぶ。

「下がれッ!!」

その言葉に従い大きく下がるキリト。近くに目標を失った悪魔は対峙するプレイヤーの中で比較的近くにいた居合いの構えをとっているソレイユに向かって突進していく。
それを見た一同が何かを叫ぼうとしたが、それより早くソレイユの落ち着いた澄んだ声が響いた。

「終わりだ」

その声が響くと同時に鯉口をきった。その瞬間、黄金色の軌跡を描いた斬撃が悪魔の体を斬りつけ、悪魔の体力ゲージをゼロにした。

「ゴァァァァァァァァァ!!」

という悪魔の絶叫が響き、輝くかけらとなって爆散した。
ソレイユは深い溜息を吐き、右手で髪をかきあげながら振り向く。その顔には疲労が見て取れた。ある程度キリトたちに近づくと勢いよく座り込んだ。
キリトのほうを見てみると、キリトは剣を鞘に収めると意識を手放し寝っ転がっていた。



「だ、だいじょうぶ!?」

「ああ、何とかな」

ソレイユはダメージらしいダメージは受けていないので、精神的な疲労を受けているだけである。そのため、回復に使うポーションも今は役に立たない。それに気づき何もできない自分を責めるようなルナを見てソレイユはルナの腰に手を回し引き寄せる。

「ち、ちょっ!!」

「わりぃ。少しの間だけこのままでいさせてくれ」

初めは抵抗していたルナだったが、ソレイユの言葉を聞いておとなしくなる。それから少しの間だけ二人は抱き合ったままだった。幸い倒れたキリトが心配で全員そっちのほうを向いていたため二人が抱き合っている姿を見られることはなかった。

「キリト君!キリト君ってば!!」

悲鳴にも似た叫びでアスナがなかなか目を覚まさないキリトを呼んでいる。しかし、その叫びに呼び戻され、キリトの意識が覚醒する。無謀なボス戦が終わり、一同はボス部屋で休憩をしていた。疲労しているソレイユにはルナが付き添っている。そんな様子をキリトが認識すると、アスナが泣き出す寸前のように眉根を寄せ、唇をかみしめている。

「バカッ・・・無茶して・・・!」

叫ぶと同時にキリトの首にしがみつくアスナ。しかし、キリトが

「・・・あんまり締め付けると、俺のHPがなくなるぞ」

と冗談めかしに言う。それを聞きアスナは真剣に怒った表情でハイ・ポーションをキリトの口に突っ込んだ。

「もっと他に言うことあると思うんだけど・・・・」

「キリト君にそれを求めること自体間違ってる」

それを遠くから見ていたルナとソレイユは二人そろってため息を吐きあきれ果てている。そうしている間にクラインが遠慮がちに声をかけた。

「生き残った連中の回復は済ませたが、コーバッツとあと二人死んだ・・・」

「・・・そうか。ボス攻略で犠牲者が出たのは、六十七層以来だな・・・」

「・・・これじゃ、自殺と変わんないよ」

絞り出すように言うルナ。クラインは大きくため息を吐き切り替えるようにキリトとソレイユに訊いた。

「そりゃあそうと、オメェラ何だよさっきのは!?」

「・・・言わなきゃダメか?」

「おれも?」

「ったりめぇだ!見たことねえぞあんなの!」

アスナとルナを除く、部屋にいる全員がキリトとソレイユの言葉を待っている。それに気づいたソレイユは大きく溜息を吐いた。

「・・・エクストラスキルだよ。≪二刀流≫」

おお・・・というどよめきが、軍の生き残りと風林火山から流れた。そして、当然の興味を顔にうかべ、クラインが急き込むように問いかけた。

「しゅ、出現条件は」

「わかってりゃもう公開してる」

キリトの言葉にクラインが唸る。次いでソレイユのほうに視線を向けるキリトを含めた一同。その視線を受けたソレイユは溜息をつき説明に入った。

「おれのは知ってのとおり≪剣聖≫っていうエクストラスキルだ」

「いや、それは知ってるよ。知りたいのは最後に使った技だよ」

見たこともない技に興味津々なキリト。

「・・・ああ、あれね。≪剣聖≫スキルの最上位剣技≪ワールド・エンド≫だよ」

「どんな技なんだ?」

よほど興味深いのかしつこく聞いてくるキリトに、ソレイユはすごくうんざりしている。

「超高速で単発の居合い斬り。一言でいえば、タメ技。納刀して居合いの構えを取った時間によって斬撃の威力と速度が増すっていう技。デメリットとして、スキルディレイが溜めた分だけ長くなる、直線的にしか動けない、などがある。・・・ほかに聞きたいことは?」

「でもさ、≪剣聖≫スキルで居合いってできるものなのか?」

「≪剣聖≫っていうほどだからな」

キリトの疑問に肩を竦めながら答えるソレイユ。

「け、≪剣聖≫の出現条件は!?」

「さあ?」

ソレイユの説明が終わり、クラインがスキルについてここぞとばかりにがっつくが、ソレイユの言葉を聞いて肩をおとしている。そんなクラインを無視してキリトが再びソレイユに訊いた。

「そういえばさ、ソレイユ。刀であの斬馬刀を受け止めてたけどよく平気だったな。刀って基本的に耐久値が低いのに」

「ああ、あれな。≪業物≫スキルのおかげだよ」

「わ、≪業物≫スキル?」

聞いたことのないスキル名に身をのり出して聞いてくるキリト。隣にいるアスナもその話題に食いついた。

「武器の耐久度を減り難くする効果があるエクストラスキル」

「そ、そんなスキルあるのか!」

「あるよ。おれだけじゃなくて、ルナやクラインたちも発現してるはずだけど・・・」

ソレイユの言葉に頷くルナとクラインたち。それを見たキリトがソレイユに突っかかる。

「なんで教えてくれなかったんだよ!」

「聞かれなかったから。それにアルゴには教えてあるぞ。定期的に情報を集めないお前が悪い」

その言葉を聞き崩れ落ちるキリト。アスナも目をそらしている。そんな雰囲気を察してかクラインがキリトとソレイユに向かってぼやいた。

「ったく、水臭ぇなあキリト。そんなすげえウラワザ黙ってるなんてよう」

「・・・こんなレアスキル持ってるなんて知られたら、しつこく聞かれたり・・・いろいろあるだろ、その・・・」

キリトの言葉にクラインは深く頷いた。

「ネットゲーマーは嫉妬深いからな。オレは人間ができてるからともかく、妬み嫉みはそりゃああるだろうなあ。それに・・・・・・まあ、苦労も修行のうちと思って頑張りたまえ、若者よ」

「勝手なことを・・・」

「・・・・・・」

楽しそうに笑うクラインにキリトはつぶやき、ソレイユは黙ったままである。そして、クラインは生き残った≪軍≫の生存者たちに伝言を軍全体に伝えるように言って帰らせた。それを見送ったとクラインはキリトたちのほうへ向き直り両手を腰に当てて言った。

「オレたちはこのまま七十五層の転移門をアクティベートして行くけど、お前らはどうする?」

「そちらに任せるよ。精神的にもうへとへと」

「俺もソレイユに同意」

ソレイユとキリトの言葉に頷くと仲間を引き連れ扉を開けてその先へと消えていった。それを見送った後、キリトとアスナは抱きしめあったままであったため、そんな二人にルナが遠慮がちに声をかけた。

「あの、お二方?私たちのこと、忘れてません?」

その言葉を聞いて、キリトとアスナは顔を真っ赤にして慌てて離れた。そんな二人の様子を見てソレイユが核爆弾を落とした。

「お前らもう結婚でもしたら?」

その言葉を聞き、キリトは顔に狼狽の色を浮かべ、アスナは真っ赤な顔をさらに紅潮させた。

「ななな、何バカなこと言ってんだよ、ソレイユ!?」

「そ、そうよ!それに、そういうのはきちんと段階を踏んでからじゃないと・・・」

わかりやすい二人にあきれ果てるソレイユと苦笑いのルナ。その場が落ち着くのに数分を要した。

「とりあえず、これからどうするんだ?」

落ち着いたのを見計らってソレイユがみんなに問いかけた。その問いに答えたのは意外にもルナだった。

「そのことなんだけど・・・私、ギルドを休もうかと思ってるんだ」

その言葉に驚いたものはキリトだけであった。アスナも同じ意見だったらしく頷いている。

「わたしもしばらくギルド休む」

「や、休んで・・・どうするんだ?」

「・・・君たちとしばらくパーティー組むって言ったの・・・もう忘れた?」

その言葉を聞いてソレイユが答える。

「俺は構わないよ。お前は?」

思い悩んでいるキリトにソレイユが訊いた。

「・・・俺も構わない」

ソレイユの問いに頷くキリト。それから、軽い雑談を交えながら十分な休憩が得られてから四人は外に出てクリスタルで各々の家がある層へと帰って行った。
 
 

 
後書き
せ、戦闘シーンってこれでいいのかな(゚ロ゚;))((;゚ロ゚)

オリジナル要素がなくて済みませんorz

文才が欲しい。閃きが欲しい・・・。

スキル説明
≪業物≫
武具の耐久値を下げにくくするスキル。武器だけではなく、防具にも有効。
熟練度を上げるのには、武器および防具を使い続ければいいのでそう苦労することはない。しかし、武器や防具を破損したりするとペナルティが付くこともあるので一概に簡単とも言いきれない。 
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