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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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許す慈悲は人殺しを育てる


人殺しを許す慈悲は人殺しを育てるに等しい。
——シェイクスピア「ロミオとジュリエット」——

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許す慈悲は人殺しを育てる











◆◇◆コン◆◇◆



綱手の制止を振り切り、飛び出して早数分

すでに里の外にでて森の中を走りぬけている

鴉は追いつきそうで追いつけない、そんな速度を保って低空飛行している

木々の合間を飛び立つ鴉、一体何の目的があると言うのか


「あ・・・」


しばらくすると荒れた大地が広がり、1人の男が倒れていた

こいつは確か音の四人衆の1人、次郎坊・・・

なら近くにチョウジがいるはず

ポーチに常備している兵糧丸を数個取り出し、チョウジの姿を探す

・・・っと、その前に後始末しておかないといけない

そう呟いて倒れ、すでに死亡している次郎坊の首と胴体を小刀で切り分ける

復活しないだろうけれど、念には念を入れなければならない

首を持ってチョウジを探す

ありがたいことに鴉はオレの上空を旋回したまま、待ってくれているようだ

木によりかかり、座り込んでいるチョウジを発見し、強制的に兵糧丸を流し込む

狐火で発光弾代わりに上空へ浮き上がらせ、医療班を呼ぶ信号を灯す

・・・ごめんチョウジ、オレこんなことしか出来ない


再び動き始めた鴉を追って、木々を走り抜けた


「友達想いなことで、よござんすねえ巫子さんよ」


翼を目元にあてて、オヨヨっと泣き真似をする鴉

・・・よく落ちないな


「・・・その、芝居がかった口調やめねえ?」


感情が籠もっていないのが良く分かる

からかう目的でもない、嘲るわけでもない

ただ台本に書かれていることをそのまま読んでいるかのような口調


「いやいや、これがあってこその鴉さまなんでねえ
 ・・・全く、なんでお前みたいなカスに旦那は執着してるのやら
 鴉如きには理解不能さね」


カス・・・そこまで言われるのは初めてだ


「旦那って、イタチか?」


「おや、珍しく察しが良い
 そう、イタチの旦那がオレの契約主・・・つっても、あの旦那じゃないがな」


あの旦那じゃない?


「お前も、別の記憶を?」


イタチのように別世界の記憶を持っているのだろうか


「自分だけが特別だと御思いで?ホンットーにクズであられますね」


・・・こいつヤダもう・・・

溜息をつくと同時に血が垂れた

ふと、下を見ると見たことのある男たちが倒れている

ネジと・・・鬼童丸!

すぐさま木から下りて、鬼童丸の首を狩り取り、ネジに兵糧丸を食わせる

・・・あ、気絶しているのに食わせて詰まらせたりしないかな

全然考えてなかった

チョウジの時と同じように狐火信号弾を打ち上げると、先ほどとは違い、返事の信号弾が打ち上げられた

どうやら、チョウジは医療班によって搬送されている最中らしいな

この早さならネジも大丈夫だろう

2人の首を持って再び走り出す


「・・・いやはや、まるで死神のようだ」


イヒヒと笑われ、首をかしげる

何が死神なのか

黙って見上げていると、また嫌な笑い声を上げられた


「巫子さん、アンタは人を殺すことに疑問を持たないのかい?
 ・・・怖くは、ないのか?」


疑問?

怖い?

そんなもの、あるにきまってるじゃないか

だけど


「誰かの死よりも、殺しへの恐怖よりも、自分が死ぬ方が怖い」


誰だってそうだろう

まずは自分ありき、自分の生存があってこそ人は誰かと関わる

自分が死んでしまっては、何も出来ない

だからこそ——


「オレは生きたい、夢に生きて死んでいきたい」


たとえ早死にすると言われても、忍を止めろと言われても

忍になるという夢をあきらめたくない

夢のためなら、そのためなら——


「死んでも良い」


「・・・本末転倒とはこの事、かねえ」


・・・何を呆れたような目で見ているんだお前は


切り倒された森を迂回し、走り続けると森を抜けると草原が広がっていた

ナルトが立ちつくし、君麻呂が乱入者であるオレを警戒している

鴉は桶のはるか上空を旋回して、これから起こるであろう場面を待ち望んでいるかのように笑った


桶から煙が出て、サスケが出てきた

異形の姿は一瞬だけ、元のサスケに戻ると、ナルトの制止など聞く耳持たぬといったように走り去る

ナルトがその後を追い、邪魔しようとする君麻呂に次郎坊の首を投げつける


「・・・?
 次郎、坊?」


一瞬だけひるんだすきに、ナルトは走り去った

・・・小刀を構え、君麻呂と対峙する

身を隠す森に移動は出来なさそうだ

真正面からの真剣勝負・・・起爆札は三枚だけ、毒の塗ったクナイも手裏剣も十に満たない

今から毒を調合する事も出来ず、あるのは痺れ薬の塗った予備の小刀


「・・・ふむ、傷一つないところを見れば、君が倒した訳じゃないようだ」

「・・・ただ単に後始末してきただけさ」


叩きつけられた骨の刀とそれを受け止めた小刀から、甲高い金属音が響きわたる


「! あーもう、血継限界キライ!!」


叫ぶと血が飛び散る

君麻呂の手首から飛び出した骨を避けて距離をとった

どこからでも骨を出せる

厄介だな


「そう言わないでくれ、大蛇丸様の野望をお助けできる大切な力なんだ」


指から骨が打ち出され、僅差でチャクラを練り終わる


「そうかい・・・オレの知ったことかよ!火遁・業火九球!」


狐火で燃やしつくし、相殺する

オレの狐火を見て、君麻呂の顔色が変わった


「・・・小柄、吐血、乳白色の髪、小刀、そして・・・炎
 
 そうか

 キミが

 キミが大蛇丸様に火傷を負わせた、不届き者かァッ・・・!」


・・・大蛇丸信者として、許されない所業をオレは仕出かしている

完全にブチ切れた様子の君麻呂の攻撃を何とか避けつつ、距離を保つ


「死ね!」「木の葉旋風!」「いけ・・・!」


迫りくる骨が飛び出した黒い影に弾かれ、その骨を覆う砂


「リー先輩・・・それに・・・」


名を呼べば大きく頷いたリー先輩

手術、成功したんですね


「・・・誰だ?」


骨の刀を生成し、構える君麻呂


「木の葉同盟国、砂の忍だ」


そこは、名乗ってあげようぜ


「砂の、我愛羅・・・」


名を呼ぶとこちらに向き直った


「・・・泣いてないのか」


は?


「いや、別に泣かないけど・・・?」

「何故泣いていない」


間髪入れず問われる

何故って言われても・・・


「先輩、この人わかんねえ」

「ボクもさっぱりです」

「何なんだお前たち」


呆れかえらないでくれ君麻呂


「・・・コンとやらは泣いているんじゃないのか」



・・・



「それは誰から言われた?」

「うずまきナルトだが」


・・・もしや

”あの病室で泣いていた奴がコンっていうんだってばよー”

みたいな紹介をしたのか?!

もしくは”いっつも泣いてるんだってばよ!”みたいな紹介か!?

確かにオレは涙脆いがそこまで泣いていない、泣いていないぞ


「・・・もう、いいや・・・真面目に戦おう・・・」

「真面目だが」

「黙ってろ」



 
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