技には技で
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第四章
「やってみる」
「やってみるか」
「いいか、見ろよ」
彼は一旦スパーリングを止めた、そしてだった。
身構えなおしてだ、それからだった。
連続した右足での蹴りをだった、突きのそれを。
インタウに向かって放ってみせた、そして受けてもらってからだ。
彼にだ、鋭い目で問うた。
「どうだ」
「あいつのあの蹴りには及ばない」
「そうか」
「しかし筋はいい」
それは、というのだ。
「最初にしてはな」
「じゃあこれでいくか」
「敵の技をやってみるか」
「これしかないだろ」
そう考えてのことだというのだ。
「かわすことも防ぐことも出来ないのならな」
「そうだな、同じ技でな」
「やり返すしかない」
「そういうことだな」
「そしてだ」
ここでさらに言うホアだった。
「これで精々互角だな」
「ああ、あいつも強いからな」
「俺の方が僅かに強いにしてもな」
「それでもな」
「この技は編み出したあいつの方が強い」
「そこまで考えるとな」
「これで互角だ」
この蹴りを身に着けてようやく、というのだ。
「精々な」
「互角だとな」
「まだ勝てない」
引き分けになる、単純な計算では。
「だからな」
「それでだな」
「もう一つ技が欲しいな」
「じゃあどうするんだ」
「ムエタイは確かに足だ」
足で闘う格闘技だ、それ故にホアもチャオのその足技に負けたのだ。
「しかしそれだけじゃない」
「拳もあるな」
「これも使う」
そうして、というのだ。
「勝つ、絶対にな」
「そうするか」
「ああ、ちょっとビデオ観ていいか」
「待ってくれ、チャオの試合のビデオだな」
「それあるか?」
「前の試合の時のあれでいいか」
「ああ、あの時も観ることは観たがな」
それでもだというのだ。
「もっと観たい」
「勝つ為にだな」
「ムエタイでもそうだろ」
「相手を知ってこそだからな」
「あいつの技だってな」
そしてだ、彼自身もというのだ。
「知ってこそ勝てるからな」
「前に観た時は勝てると思っていたな」
「ああ、あの技も観たがな」
ビデオでだ、ホアはそうした事前の研究も怠らないタイプだ。それでそうしたこともしっかりと行っていたのだ。
しかしだ、それでもだったのだ。
「その時は大したことはないと思ったさ」
「勝てるって思っていたな」
「絶対にな、けれど戦ってみたら」
実際にそうしてみるとだったのだ。
「駄目だった」
「そうだったな」
「観ることと闘うことは違う」
この違いもだ、ホアは噛み締めていた。今この時に。
「それもよくわかったよ」
「負けてだな」
「だからな、余計にな」
それだけにというのだった。
「俺はもう一回あいつのビデオを観てな」
「研究してだな」
「勝つ」
必ずだ、そうするというのだ。
「そうするからな」
「わかった、じゃあな」
「観るさ、また」
こう言ってだ、ホアはインタウと共にチャオのその試合のビデオを観なおした、彼の足技だけでなく動き全体をだ。
そしてだ、十回程観たところでこう言った。
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