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第八章

 父親の方がだ、こう言ったのだった。
「いい味だった、酒に合っていた」
「こうしたものを最初から食わせろ」
 息子の方も言う、二人共何様かという程偉そうだ。そのふんぞり返った態度でデリラとハイメに言うのだった。
「全く、この前はな」
「最悪だったな」
「ふざけたものを食わせてくれて」
「頭に来たがな」
「しかし今回は許してやろう」
「それなりの味だったからな」
 こう言ってだ、カウンターを立つが。
 ここでだ、まずは父親が言った。
「!?何だ」
「ああ、何だこれは」
 息子も言う、尚息子の名前は河原司郎という。
「口の中がな」
「異様に後味が悪いぞ」
「糞っ、何だこの味は」
「御前の店は客にこんなもの食わせるのか」
「作り直せ!」
「化学調味料でも入れたのか!」
 こう言って暴れ回りだした、店の中で怒鳴り散らす。
 だがその二人にだ、後ろからだった。 
 人が来てだ、二人共だった。
 羽交い絞めにしてだ、こう言ったのだった。
「おい、営業妨害だぞ」
「これ位にしておけ」
「警察だ、大人しくしろ」
「外国人だからって容赦しないぞ」
「何っ、警察が何だ」
「俺達を誰だと思っているんだ」
 二人はその警官達に対しても怒鳴った。
「警察なぞな、わしが政治家の汚物逸郎に言えばな」
「新聞記者舐めるなよ」
「警察なぞどうとでもなるんだぞ」
「それがわかっているのか」
「何言ってるんだ、こいつ等」
「日本語か?これは」
 二人は感情的になり何時の間にか日本語で話していた、それでスペイン人の警官達は首を傾げさせたのだ。
 それで首を傾げさせるがそれでもだった。
 人の店の中で暴れ回る二人を放っておける筈がなかった、それで激しく抵抗し叫び回る彼等を連行するのだった。
 その彼等を見送ってからだ、カルロスはカウンターの中にフェリペと共に出てだ、デリラとハイメにも言うのだった。
「お巡りさん達が俺が呼んでいたんだよ」
「それでか」
「ああ、店の中にな」
 最初からいたというのだ。
「私服でいてもらったんだよ」
「そういうことだったんだな」
「そうだよ、それでな」
「あの二人が暴れた時にか」
「動いてもらう様に頼んでおいたんだよ」
「最初からあの連中が暴れる様にしたのか」
 フェリペはここでこのことがわかった。
「あの料理に仕込んでたんだな」
「そうさ、最初は滅茶苦茶美味いって思ってもな」
 それが、というのだ。
「後味が抜群に悪くなる様にな」
「作ったんだよ」 
 そうだったというのだ。
「あの連中の話を聞いてるとな」
「ちょっとまずいと暴れるからか」
「後味を抜群に悪くすればな」
 暴れる、そのことを考えてだったというのだ。
「予想通りになったな」
「美味いもの食わせて黙らせるんじゃなかったんだな」
「ああいった連中は駆除しないと駄目だからな」
 つまり害虫と同じだというのだ。
「ああしてやったんだよ」
「成程な、頭使ったんだな」
「あと動画も撮って貰う様に頼んだからな」
 カルロスは笑ってフェリペ達に話した。 
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